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Pineスクリプト(Pine Script)でMACDを作成する方法


今回はMACDのインジケーターを作成する方法を紹介していきます。
シンプルなものと、少し手を加えてマルチタイムフレーム表示に対応した2つを解説していきます。
下図の上側がシンプルバージョン、下側がマルチタイムフレーム表示対応バージョンです。

★image1_Pineスクリプトで作成した2種類のMACD

1.MACD(シンプルバージョン)の作成

それではシンプルバージョンから作成していきます。
MACDを描くにはビルドイン関数の「ta.macd」があらかじめ用意されていますのでこちらを活用していきます。

スクリプト全体の内容は以下の通りです。
最低限、設定値を変更できるようにしたものです。

★image2_MACDシンプルバージョンのスクリプト全体

1-1.Indicator関数の記述

初めにインジケーターの宣言ですが、MACDはサブチャートに表示をしたいため、「indicator」の引数にoverlay = false を加えることで、サブチャートへの表示を指示しています。

★image3_MACDシンプルバージョンのindicator関数の記述

1-2.設定の「パラメーター」タブに追加する項目

MACDの基本的なパラメーターは、「Fast MA期間」「Slow MA期間」「Signal 期間」の3つです。
「input.int()」を使ってそれぞれを「パラメーター」タブの項目に追加し、設定値が「fastMA」「slowMA」「SinLength」という変数に代入されるように設定します。

★image4_MACDシンプルバージョンの設定の「パラメーター」タブの追加項目を記述

1-3.MACDのビルドイン関数「ta.macd

ここで、新しい形式が出てきます。
MACDのビルドイン関数「ta.macd」は計算結果(戻り値)として、以下の3つの値を返してきます。

①MACD
②シグナル
③ヒストグラム

この3つを受け取るためには、下図の左辺のように[①, ② , ③ ]で受け取る3つの変数を記載します。
今回は①は「macdLine」、②は「signalLine」、③は「histLine」という変数で受け取るので、[macdLine, signalLine, histLine]という書き方です。

★image5_MACDシンプルバージョンのビルドイン関数「ta.macd」の記述

1-4.plot関数でラインとヒストグラムの描画

最後に、「macdLine」「signalLine」「histLine」の3つの変数に格納されている値を、plot関数を使ってチャート上に表示します。

★image6_MACDシンプルバージョンのplot関数を記述

以上で、MACDの完成です。

★image7_MACDシンプルバージョンをチャートに表示

2.MACD(マルチタイムフレーム表示対応バージョン)の作成

次はマルチタイムフレーム表示対応バージョンです。
スクリプトで追加される内容は以下の通りです。

  • 2-1.MACDをマルチタイムフレームで表示します。
  • 2-2.ヒストグラムの傾きにより、ヒストグラムの色を塗り分けます。
  • ※塗り分けの判定式が追加になりますが、if else文を使わずに判定式を表現します。

スクリプト全体の内容は以下の通りです。
機能を追加した分、先ほどよりも長くなっています。

★image8_MACDマルチタイムフレーム表示対応バージョンのスクリプト全体

2-1.MACDをマルチタイムフレームで表示

indicator関数と設定の「パラメーター」タブの基本項目3つについては、先ほどと同じなので省略します。
異なるのはMACDの計算からで、以下の値が代入される変数を定義します。

・_CurMACD:MACDの現在値
・_Signal:シグナルの現在値
・_CurHistogram:ヒストグラムの現在値
・_PreHistogram:ヒストグラムの1期間前の値

★image9_MACDの計算(マルチタイムフレーム)

次に、マルチタイムフレームの処理です。
設定の「パラメーター」タブに表示したい時間足を入力できる項目「マルチタイムフレーム」を追加するために、input関数(「input.timeframe()」)を使います。
また、「マルチタイムフレーム」に設定した時間足を代入する、「IptPeriod」という変数を定義します。

さらに、指定したシンボル/時間足の値をリクエストできる「request.security」という関数を使って、「マルチタイムフレーム」に設定した時間足(「IptPeriod」に代入された時間足)の値を取得します。

★image10_「表示中のチャートのシンボル/IptPeriodに格納されている時間足」の「MACDの現在値(_CurMACD)」の値が代入される形

具体的には、例えば「CurMACD」という変数であれば、「表示中のチャートのシンボル/IptPeriodに格納されている時間足」の「MACDの現在値(_CurMACD)」の値が代入される形です。

これで、マルチタイムフレームの計算が完了しました。

2-2.ヒストグラムの傾きによりヒストグラムを色分け

塗り分けの判定式を、if else文を使わずに三項条件演算子で表現してみます。
判定したい内容は以下の通りです。
ヒストグラムが

  • 0より上にいる時にグリーン系の色で
  • 0より下のときにレッド系の色で塗り分けし、

なおかつ、

  • 上昇中は明るい色、
  • 下降中は暗い色で塗り分けを行います。

★image11_「plotColor」という変数に暗い緑色(his_colorUp2に指定した色)が代入

具体的には、例えば「ヒストグラムが0より大きい(CurHistogram > 0である)/ヒストグラムの現在値が1期間前の値以下(CurHistgram > PreHistogramuではない)」の場合、「plotColor」という変数に暗い緑色(his_colorUp2に指定した色)が代入されます。

※この記述方法の詳細については、「Pineスクリプト(Pine Script)の三項条件演算子「?:」の使い方」をご覧ください。

2-3.plot関数で各変数を描画

最後はいつものplot関数で、各変数に格納された値をチャート上に描画して完成です。

★image12_各変数に格納された値をチャート上に描画して完成

完成したMACDインジケーターです。

★image13_完成したMACDインジケーター

設定画面からは、下図のようにマルチタイムフレームの指定ができるようになります。

★image14_マルチタイムフレームの指定

今回まで、まずは簡単なインジケーターを直ぐに作れることを目的に説明してきました。
次回以降で、これまで使用してきたビルドイン関数などの詳細などを紹介していく予定です。

3.参考スクリプト シンプルバージョン

インジケーター名:MACD_Base

機能:
MACDを表示する。

//@version=5
indicator("MACD Base",overlay = false)
 
SigLength = input.int(title='Signal 期間',  defval = 9,  minval = 1)
fastMA    = input.int(title="Fast MA 期間", defval = 12, minval = 1)
slowMA    = input.int(title="Slow MA 期間", defval = 26, minval = 1)
 
[macdLine, signalLine, histLine] = ta.macd(close, fastMA, slowMA, SigLength)
 
plot(macdLine, color=color.blue)
plot(signalLine, color=color.red)
plot(histLine, color=color.orange, style=plot.style_histogram)

4.参考スクリプト マルチタイムフレームバージョン

インジケーター名:MACD_mtf
機能:
MACDをマルチタイムフレームで表示ができる。
ヒストグラムの推移を塗り分けできる。


//@version=5
indicator("MACD mtf",overlay = false)
 
//MACD期間の設定
SigLength = input.int(title='Signal 期間',  defval = 9,  minval = 1)
fastMA    = input.int(title="Fast MA 期間", defval = 12, minval = 1)
slowMA    = input.int(title="Slow MA 期間", defval = 26, minval = 1)
 
//MACDの計算
source = close
[_CurMACD,_Signal,_CurHistogram] = ta.macd(source[0], fastMA, slowMA, SigLength)
[_,_,_PreHistogram]              = ta.macd(source[1], fastMA, slowMA, SigLength)
 
//マルチタイムフレームの設定
IptPeriod = input.timeframe("D",title="マルチタイムフレーム")
 
CurMACD      = request.security(syminfo.tickerid, IptPeriod, _CurMACD)
Signal       = request.security(syminfo.tickerid, IptPeriod, _Signal)
CurHistogram = request.security(syminfo.tickerid, IptPeriod, _CurHistogram)
PreHistogram = request.security(syminfo.tickerid, IptPeriod, _PreHistogram)
 
//ヒストグラム色指定 プラス側2色
his_colorUp1=color.new(color.lime,  transp = 50)
his_colorUp2=color.new(color.green, transp = 50)
//ヒストグラム色指定 マイナス側2色
his_colorDn1=color.new(color.maroon,transp = 50)
his_colorDn2=color.new(color.red,   transp = 50)
 
//条件によるヒストグラムの塗り分け
plotColor = CurHistogram > 0 ? CurHistogram > PreHistogram ? his_colorUp1 :
his_colorUp2 : CurHistogram < PreHistogram ? his_colorDn1: his_colorDn2
 
//各データのプロット
plot(CurMACD,      title = "MACD",        color = color.blue,linewidth = 2)
plot(Signal,       title = "シグナル",     color = color.red, linewidth = 2)
plot(CurHistogram, title = "ヒストグラム", style = plot.style_histogram, color =
plotColor, linewidth = 3)
plot(0,            title = "ゼロライン",   color = color.gray,linewidth = 1) 

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