フォールス・ブレイクアウトとは?プライスアクションの基礎知識
相場における抵抗と支持は、市場参加者から最も意識される存在です。
過去の高値や安値のほか、高値や安値の密集区域といったポイントやゾーンは確認されればされるほど、相場は頭打ち、または底打ちしやすく、その後大きく反落、あるいは反騰しやすいと考えられます。
そういった重要な抵抗や支持をブレイクした際、投資家には順張りの判断や思惑が生まれやすいです。
要するに、重要な抵抗を上に抜けていくと、大幅な上昇余地が広がり、ショート筋の損切りやロング筋の買い増しが想定されます。
反対に、重要な支持を下に抜けていくと、ロング筋の損切りやショート筋の追撃が想定され、さらなる安値トライにつながりやすいです。
しかし、高値や安値のブレイクがあったものの、ヒゲを残して反対方向に逆戻りしてしまい、その後にトレンド転換をもたらす場合もあります。
事後的に言えば、高値や安値の一時更新が「見せかけ」であったことです。
その見せかけのサインは「フォールス・ブレイクアウト」です。
フォールスとは罠、あるいはダマシのことです。
フォールス・ブレイクアウトは、まさにブレイクアウト自体がダマシのサインであることを示します。
「シグナルのダマシ自体がシグナルになる」というプライスアクションの考え方が凝縮しているのが、このフォールス・ブレイクアウトです。
フォールスブレイクアウト
日本の罫線分析の世界には、「鬼より怖い一文新値」という言葉があります。
過去の高値はロング勢の買い、安値はショート勢の売りのターゲットになりやすいものです。
しかし、いったん目標を達成してしまうと、達成感やそれ以上は上がらない(下がらない)という失望感、行き過ぎへの警戒感から、買い上げてきたロング勢、売り叩いてきたショート勢の一部が利益確定を始めます。
この「裏切り者」の存在がフォールス・ブレイクアウトにつながり、やがては反対勢力の新規参入によって、トレンド転換が起こります。
これが投資家事情で見たフォールス・ブレイクアウトの実情といえるでしょう。
ポンド/円 月足
上はポンド/円の月足チャートです。
2020年3月(③)につけた安値は、重要な支持ゾーンだった2019年9月安値(②)を下回り、2016年10月安値(①)に接近したものの、結局それよりも高い価格で引けました。
重要な支持ゾーンに対する一時のブレイクがダマシであったことを示し、フォールス・ブレイクアウトのシグナルを点灯しました。
ダマシであったこと自体がシグナルとなり、逆に上放れの機運が高まりました。
実際、その後かなり上昇しており、見事なサインです。
「底割れ」と思いきや、その後ショート勢の「踏み上げ」が発生し、一転して上昇の土台となったわけです。
このように相場が山や谷を作るときは、ロング勢とショート勢の間で騙し合いが起こりやすくなるもので、それがフォールス・ブレイクアウトにつながっています。
こうした安値更新がダマシに終わるのは、ショート勢の一部が抜け駆けして利益確定に走ったことが一番大きな理由と考えられます。
ショート勢も決して一枚岩ではなく、勢力内部で裏切りや寝返りが起こることもあります。
特に、過去の最安値近辺は売り手にとってみれば大きな損失を抱えかねない「最前線」といってよく、脱落者が出やすいポイントです。
フォールス・ブレイクアウトが過去の最高値や最安値近辺で出現しやすい理由は、そうした投資家心理にあるといえるでしょう。
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陳 満咲杜(まさと)
中国・上海生まれ。
1992年来日、日本語学校を経て日本大学経済学部に入学。
生活費と学費をアルバイトでまかないながら在学中より株式投資を開始。
大学卒業後、中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期(1999年)のFX業界へ。
香港や米国の金融機関で実務を重ね、トレーダーとしての経験を積む。
GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。
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