フィボナッチの活用例|ドル円のアベノミクスの値幅観測を振り返る
1.アベノミクスの値幅観測を振り返る
相場の値動きにフィボナッチ比率を当てはめて、その後の展開を推測するテクニカルが、フィボナッチ・リトレースメントやフィボナッチ・エクスパンションです。前者はトレンドの押し目や戻りを探るために、後者はトレンドの進む先の目標を探るために用いられるのが一般的で、多くのトレーダーに用いられています。この記事では、そんなフィボナッチの活用例を見ていきます。
下画像はドル円の週足チャートで、2012年後半から始まったアベノミクス相場の値動きを表しています。アベノミクスの初動となった第一波動A-Bと、その押し目の波動B-Cに、フィボナッチ・エクスパンションを引いてみましょう。値動きの目標は、Cの価格にA-Bの値幅の61.8%(100%)を足した水準であり、ここにラインが引かれます。
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実際の値動きでは、Bの高値を更新してDをつけた後に停滞する時間が長くかかりましたが、Dを更新した流れで61.8%の水準に迫りました(E)。そこから一旦調整の下落を挟み、再度上昇に転じると一気に100%の水準まで到達しました(F)。その後、Fを更新してGをつけ、それが天井となって下落トレンドに転じていきます。
この例から分かることは、A-B-Cの上昇波動と押し目があった時点で、E(110.089円)やF(121.843円)に向けた上昇を予測できるということです。仮にCから反転上昇した後にエントリーするならば、EやFの水準で利益を確定する戦略を立てることができました。
2.小さな局面を確認
アベノミクスの値動きについて、もう少し小さな局面を見てみましょう。下画像では、波動B-Cのあとに、Dの高値を作りに行く流れが確認できます。C-Cb-Ccにフィボナッチ・エクスパンションを引くと分かりますが、高値Dとは、この100.0%の水準だったわけです。また、Dの後に控えるEは、161.8%の水準でもあります。
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さらに、下画像のようにEの高値を含むフィボナッチ・エクスパンションを引くと、161.8%が目標になることが分かります。実際の動きとしては、Eから下落して押し目を作ると、その後は一気に上昇し、161.8%の水準で長らく停滞。結果的に、そこから上昇して2007年の高値124.130円をわずかに上回る125.854円(G)をつけ、そこから下落に転じました。
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なお、中長期の上昇トレンドの転換を見るには、40期間の移動平均線(40MA)を表示するのが有効です。ローソク足が40MAよる上に位置すれば上昇トレンド、下に位置すれば下降トレンドと判断することができます。下画像の場合、Gの高値の後に40MAを明確に下回り、これが下降トレンドへの転換となりました。
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3.アベノミクスの初動を日足で見る
ここまでに週足の大局を見てきましたが、次は日足に落とし込んで見てみましょう。アベノミクスの初動では、日足でどんな値幅観測ができたのでしょうか? 下画像は、ドル円の日足チャートです。2012年10月に40MAを明確に上回る流れが生まれ、さらに直近の高値を上回った波動A-Bと、その押し目の波動B-Cにフィボナッチ・エクスパンションを当ててみます。
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Cで押し目を作り上昇するものの、61.8%の水準で一度押し戻され、Cの水準まで下落しました。しかし、そこから再び上昇に転じると一気に上昇して61.8%(80.757円)を突破し、100.0%(81.676円)も難なく達成。82円台半ばまで値を上げました。その後は81円台後半から82円台後半で横ばい推移がしばらく続きましたが、そのレンジを上抜けると上昇の勢いを強めて161.8%の83.164円も達成しました。
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日足チャートで振り返ると、アベノミクス相場は40MAを上抜いたポイントがトレンドの転換点になったと考えられます。それ以降は40MAが明確な右肩上がりになっており、トレンド転換の確度が高まったものと考えられます。
本記事の監修者:平野朋之氏
ネット証券で、FX業務全般、自己売買部門のディーラー、投資情報室の情報発信、セミナー講師などの業務に携わる。現在は独立して株式会社トレードタイムを設立。マーケット情報の発信や投資教育を行うかたわら、オリジナル手法での自己売買も精力的に行う。
フィボナッチ・リトレースメントが示す各ラインで反発せずに押し目が深くなり、あるいは反発しても高値も更新できないようならば、相場の転機であるという予測を立てることができます。
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