エリオット波動解説(第八回)トライアングルと複合修正について解説
今回のテーマはトライアングルと複合修正になります。まずはトライアングルについて見ていきましょう。
トライアングルは基本的には次のような構造になっています。
図70
全体がABCDEの5つの波動からなっており、ABCDEそれぞれがジグザグです。このジグザグがダブルジグザグになっていることがよく観察されています。まれに、ABCDEのうちどれか1つがトライアングルになることがあります。最もトライアングルになりやすいのはE波です。ABCDEのどれかがフラットや複合修正になることもまれにあります。
トライアングルには次の4つのパターンが存在します。
図71
※DVD「エリオット波動原理の基本 vol.3」 パンローリング株式会社刊より抜粋
次の図はトライアングルがどこに出現するのかインパルスを例に示したものです。
図72
そうです。トライアングルは修正波ですがインパルスの2波には原則として出現しません。波動がフラクタルになっていることを考えると次のような場所にもトライアングルが出現することになります。
図73
これをよく見ればお分かりだと思いますが、トライアングルのEの位置に出るトライアングルを除いて、トライアングルが完成すればその一回り大きな波動は「間もなく終わる」というサインになります。
ちょっと分かりにくいと思いますのでテスラ株のチャートで説明します。次のチャートは、2020年9月頃から2021年4月にかけてのテスラ株の1時間足チャートです。
図74
4波がバリアー型トライアングルに、iv波がノーマルトライアングル(収縮型トライアングル)になっているのがわかります。4波の位置にバリアー型トライアングルが出た時点で「あと5波が完成すればこの上昇もおしまいだろう」と心構えができます。続いて、5波に入り、その(v)波を進行していたときにivの位置にトライアングルが出現しました。
いよいよ「間もなく終了」のお知らせです。ここでエリオット波動原理を知っていたら続く下落を回避できたかも知れません。もちろん、次のように225CFDの日足チャートにもトライアングルを見つけることができます。トライアングル完成後には一旦の天井を付けています。
図75
Bのトライアングルを3時間足で拡大してみると次のようにバリアー型トライアングルになっていることが分かります。
図76
※DVD「エリオット波動原理の基本 vol.3」 パンローリング株式会社刊より抜粋
バリアー型トライアングルでは原則としてB-Dラインが水平になります。そして株価は水平になっているB-Dライン方向に抜けるのです。テスラ株のチャートの4波でもそのことが確認できます。カウントに慣れるまでは、トライアングルを見つけるのは少し難しいかも知れません。
次のチャートのどこがトライアングルなのか一目で分かりますか。
図77
正解はこちらです。
図78
ここではジグザグのB波がバリアー型のランニングトライアングルになっていることが分かります。
図79
トライアングルに関してはたくさん研究が進んでいて全部書くと本一冊でも足りないくらいの分量になるのでこの辺でやめておきますが、最後に大事なことを一つだけ書いておきます。
通常、トライアングルのトレンドラインはA波終点とC波終点を結んだものと、B波終点とD波終点を結んだものの2つになります。一般的にE波はA-Cライン上で終わりますが、図79のようにA-Cラインに届かずに終わることも、図80のようにA-Cラインを超えておわることも珍しくはありません。ただし、収縮型トライアングルにおいてEが、C波終点を超えることはありません。
図80
図81
では、次に複合修正について説明します。複合修正とは、その言葉通り、修正波がくっついたものです。「ELLIOTT WAVE PRINCIPLE」には「Combinations」と書いてありますから、複合というよりは修正波の連結とイメージしたほうがいいかも知れません。
複合修正には大きく分けて次の2つの種類があります。
ジグザグ系の複合修正
ダブルジグザグとトリプルジグザグのことです。これは、第七回で説明しました。
エリオット波動解説(第七回)ジグザグとフラットという2つの修正波について解説
フラット系の複合修正
これには、ダブルスリーとトリプルスリーがあります。ここで「スリー」とは修正波という意味です。つまり、2つの修正波が連結したものがダブルスリーで、3つの修正波が連結したものがトリプルスリーです。トリプルスリーは滅多に出現しないので実践的にはダブルスリーだけを覚えていればほぼ大丈夫です。
ダブルスリーには、次の5つのパターンがあります。これで全てです。
図82
※DVD「エリオット波動原理の基本 vol.3」 パンローリング株式会社刊より抜粋
WとかXとかが出てくると見るからに難しそうですがこの5つのパターンしかありません。ここで大事なのは、ダブルスリーにはジグザグは出ても1つだけということです。ダブルスリーとトリプルスリーは、原則としてフラットと同じように横這いの修正波です。
1つ目の修正波をW、2つ目の修正波をY、(トリプルスリーの場合は3つ目の修正波をZ)とナンバリングします。ダブルスリーやトリプルスリーにおいては、W波、Y波、Z波がアクション波になります。
そして、アクション波である修正波を連結しているのがX波と呼ばれるリアクション波です。このX波は、修正波ならどんな波形でも大丈夫です。ただし、トリプルスリーの時は1つ目のX波にトライアングルは出ません。どんな修正波でも大丈夫ということはX波自体が複合修正、つまり、ダブルジグザグでもダブルスリーでもいいのです。
ここで第一回に登場したダウの月足チャートを思い出してください。
エリオット波動解説(第一回)用語説明と基本的な見方・使い方について解説
図7
④波部分が約15年に及ぶ長い横這いの修正波になっています。これは、一般的には次のようにフラットとトライアングルの複合修正と解釈されています。
図83
もちろん波動はフラクタルですから、小さなディグリーの波動にも複合修正は出現します。そして、どんなに複雑に見える波動でもエリオット波動原理のルールに適合するようにカウントできるのです。
次の図は225CFDの5分足チャートです。ダブルジグザグが進行中と想定されています。
図84
ここでは、W波がダブルジグザグ、X波もダブルジグザグとカウントされていて、Y波はまだ途中までしか完成していません。X波部分に注目すると、X波は、ジグザグの(w)波、ダブルスリーの(x)波、ジグザグの(y)波で構成されていることが分かります。
(x)波のアクション波はw波がフラット、y波がトライアングルになっています。
こんな複雑な波動をまるでパズルを解いていくようにどんな波形が絡み合っているのかを見つけていくのもエリオット波動原理の醍醐味です。実際はこんな細かい作業をしなくても横這いの部分はまとめて「フラットまたは複合修正」と判断しても全体のカウントに影響はありません。
ちょっと難しくなってしまいましたが、「ダブルジグザグはジグザグの代わりに出る」「ダブルスリーはフラットの代わりに出る」とだけしっかり覚えてください。
第八回は以上です。次回の第九回はフィボナッチについて説明します。
一般社団法人エリオット波動研究所代表理事 有川和幸氏監修
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