株式の基礎

ストックオプションとは|メリット・デメリットや仕組みなどをわかりやすく解説


ストックオプションとは、自社株の購入権を意味し、従業員等に付与することでインセンティブを高める効果があります。

本記事では、ストックオプションの意味、仕組み、よくある質問などを解説します。

ストックオプションとは

ストックオプションの仕組みや具体例などを解説します。

  • ・仕組み
  • ・目的
  • ・具体例
  • ・新株予約権や従業員持株会との違い

仕組み

ストックオプションとは、従業員等に対する報酬付与の仕組みです。

ストックオプション付与の対象者に対して、特定の株価で自社株を購入できる権利を与えます。

株価が上昇した後に権利行使すると、時価よりも安い株価で自社株を取得可能です。

時価との差額が従業員等に対する報酬になります。

目的

ストックオプションの目的は、主に3つです。

業務遂行前、業務遂行中、業務遂行後の3つの視点があります。

  • ・業務遂行前:人材獲得
  • ・業務遂行中:会社の成長に対する貢献の動機付け
  • ・業務遂行後:過去の貢献に対する報酬

業務遂行前:人材獲得

特にスタートアップの場合、人材獲得は容易でありません。

自己資金を事業に投入する必要があり、人材確保のために十分な資金を準備できない可能性があります。

そこで、ストックオプションを報酬の一部として付与し、社外の給与水準との差を埋めます。

ストックオプションの内容次第で、人材を確保しやすくなると期待できます。

業務遂行中:会社の成長に対する貢献の動機付け

ストックオプションは仕事に対するやる気を引き出す手段としても使われます。

将来の株価が上昇すればするほど、ストックオプションを得た人材の報酬は大きくなります。

ストックオプションが付与されていない場合と比較して、より勤勉に働いてくれると想定可能です。

また、会社に対してより大きな貢献を期待できます。

業務遂行後:過去の貢献に対する報酬

事業が順調に拡大した後、会社の成長と今までの業務遂行に対する報酬としてストックオプションが機能します。

ストックオプションの権利を行使して株式を買い、市場で売却することで利益(=報酬)が発生します。

具体例

ストックオプションを導入した具体例として、以下の企業を挙げられます。

  • ・株式会社メルカリ
  • ・スマートニュース株式会社
  • ・オイシックス株式会社
  • ・株式会社カカクコム
  • ・株式会社クラウドワークス

東証上場企業の30%近くがストックオプションを導入しているとされ、導入企業数は多数に上ります。(2025年2月時点の情報で執筆)

新株予約権や従業員持株会との違い

  • ・新株予約権との違い
  • ・従業員持株会との違い

新株予約権との違い

ストックオプションと新株予約権は、特定の株価で株式を購入できる点が共通している一方、目的が異なります。

ストックオプションは、経営陣や自社従業員等に付与されます。

一般投資家等が購入できるのは、一般に公開された新株予約権です。

税制も異なっており、条件を満たしたストックオプションは一定の優遇措置があります。

従業員持株会との違い

従業員持株会は、従業員等の給与から一定額を天引きして自社株を購入する制度です。

会社から補助金が支給される例もあり、従業員等にとってメリットがあります。

会社側のメリットは、補助金を経費として処理できること、自社の業績に対する従業員等の関心を高められることが挙げられます。

ストックオプションの種類

ストックオプションは、大きく分けて2種類あります。

  • ・無償ストックオプション
  • ・有償ストックオプション

無償ストックオプション

無償ストックオプションとは、従業員等がストックオプションを得る際に対価を支払う必要がないものを指します。

無償ストックオプションには2種類あります。

  • ・税制適格ストックオプション
  • ・税制非適格ストックオプション

税制適格ストックオプションの場合、権利行使して株式を取得した際に課税されません。

株式の売却時に課税されます(譲渡課税)。

税制非適格ストックオプションの場合は、権利行使して株式を取得した際に課税され(給与課税)、株式の売却時にも課税されます(譲渡課税)。

給与課税の最高税率はおよそ55%、譲渡課税の税率はおよそ20%です。

有償ストックオプション

有償ストックオプションとは、従業員等がストックオプションを得る際に対価を支払うタイプです。

税制適格ストックオプションと異なり、ストックオプションを得られる人材に条件がありません。

このため、社外の専門家等に幅広くストックオプションを付与できます。

ストックオプションのメリット

  • ・優秀な人材の確保につながる
  • ・従業員等のモチベーションが上がる
  • ・従業員等にとって損失リスクは限定的

優秀な人材の確保につながる

スタートアップ企業の場合は特に、優秀な人材確保のための資金調達に苦労する可能性があります。

現預金が限られる中で人材を集めるために、魅力的なストックオプションの提示は有効だと考えられます。

従業員等のモチベーションが上がる

ストックオプションを付与された従業員等は、自社が発展すると自分の収入増に直結します。

給与等に加えて追加の報酬が期待できるため、ストックオプションがない場合に比べてモチベーションが上がると期待できます。

従業員等にとって損失リスクは限定的

ストックオプションを付与された従業員等にとって、損失リスクは限定的という点もメリットです。

無償ストックオプションの場合、従業員等は支出を伴わないので、期待通りの結果にならなくても金銭的な損失は発生しません。

有償ストックオプションの場合は、状況次第で損失を被る可能性があります。

しかし、ストックオプションを取得する際に支出した金額に限定されるので、大きな損失を回避しやすいと考えられます。

ストックオプションのデメリット

  • ・従業員等による正確な理解が必要不可欠
  • ・株価が下がると従業員等のモチベーションが下がる可能性
  • ・ストックオプション行使後に辞めてしまう可能性

従業員等による正確な理解が必要不可欠

ストックオプションが有効に機能するためには、ストックオプションを付与される従業員等による正確な理解が必要です。

ストックオプションの内容は企業ごとに異なり、付与条件や権利行使の条件は様々です。

後になって、従業員等の理解と実際のストックオプションの条件が異なる場合、従業員等の不満が募ってしまう可能性があります。

株価が下がると従業員等のモチベーションが下がる可能性

株価は上昇する場合もあれば下落する場合もあり、株価下落の際には従業員等のモチベーションが低下する可能性があります。

このデメリットを避けるために、株価は下がる可能性があることを事前に知ってもらうことが必要です。

また、株価が下がった後、業績回復とともに株価も再上昇する可能性があることについて、理解を深めてもらう必要があります。

ストックオプション行使後に辞めてしまう可能性

従業員等がストックオプションを行使して多くの報酬を得た後、退職する可能性があります。

とはいえ、ストックオプションがなければもっと早く退職した可能性や、逆にストックオプションがあったから従業員等が努力して企業に発展をもたらした可能性も考えられます。

ストックオプションに関するQ&A

ストックオプションに関するよくある質問は、主に以下の通りです。

  • ・ストックオプションを導入する際の注意点は何ですか?
  • ・ストックオプションの導入が向いているのはどのような企業ですか?

ストックオプションを導入する際の注意点は何ですか?

ストックオプション導入に際しての注意点として、主に下の2点が挙げられます。

  • ・ストックオプションの設計
  • ・従業員等のストックオプションに対する理解

企業活動の内容は企業ごとに千差万別であり、企業ごとに適切なストックオプションの設計が必要です。

現在の企業の姿だけでなく、成長プランに合わせることも大切です。

また、ストックオプションを付与される従業員等による、ストックオプションの理解も重要です。

ストックオプション行使の条件などを正確に理解していないと、後日、トラブルに発展する可能性を否定できません。

ストックオプションの導入が向いているのはどのような企業ですか?

ストックオプションの導入が向いている企業の例として、以下が挙げられます。

  • ・資金力が十分でないが優秀な人材が必要
  • ・将来的に株式公開を希望
  • ・給与に加えて別の報酬体系構築を希望

スタートアップ企業は資金力に問題を抱えている例が少なくないと考えられ、ストックオプションが有効な可能性があります。

なお、「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2023」によると、ストックオプションを導入している東証上場会社は全体のおよそ30%です。

株式会社メルカリなど、ストックオプションを駆使して成長した企業が含まれています。

【まとめ】ストックオプションとは|メリット・デメリットや仕組みなどをわかりやすく解説

ストックオプションとは、自社株の購入権を意味し、従業員等に付与することでインセンティブを高める効果があります。

優秀な人材の確保や業務に対するモチベーション向上などの効果を期待できます。

資金が潤沢でないスタートアップ企業との親和性が高いとされています。

その一方、複数のデメリットがあるため、導入前に制度設計を慎重に行う必要があります。

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