トレンドフォロー戦略の理論と実践 | FX/CFD上級者向け書籍
トレンドフォロー戦略について
過去800年のトレンドフォロー戦略の歴史から、先物市場の仕組み、トレンドフォローシステムの基本的な戦略、分類といったところから、ポートフォリオの構築方法などが詳しく解説されています。多少難しい部分もありますが、時間をかけてじっくりと読み込むと、理解できる部分が広がると思います。
この書籍は、トレンドフォロー戦略と聞いてまず想像されるトレンドの判断やエントリーのポイント、利益確定のポイントといった取引手法についての解説ではなく、トレンドフォロー戦略を用いた複数のストラテジーやファンドにどのように振り分けて投資すべきかについてを中心に書かれた書籍です。
投資信託やヘッジファンド等で分散投資を考えている方はもちろん、複数の自動売買プログラムを稼働させている方には参考になる面も多いと思います。
同じトレンドフォロー戦略でも異なるロジックのものや保有時間の長さ、異なる銘柄、市場のものに分散投資することでより安定した収益を狙うことができるというのは容易に想像がつくと思います。
トレンドフォロー戦略はレンジ相場が続く局面では伸び悩む手法ではありますが、相場にトレンドが派生するような局面では利益を狙いやすい手法です。市場が安定しているときは株式市場のようなリスク資産は緩やかな上昇基調となる傾向があり、中長期的な利益を狙うことができるのに対し、市場のリスクが高まるような局面ではリスク資産は急落し、安全資産が急上昇する傾向があるため、短期間で大きな利益を狙うことができる相場と考えることができます。
単純に考えても、トレンドの発生時期が異なる市場に分散投資し、市場リスクが高まった際のトレンドもカバーするようなポートフォリオを組んでおけば、トレンドフォロー戦略が金融危機が発生するような場面でも安定した収益を狙うことができることができそうです。
どのようなポートフォリオを組むかは簡単ではありませんが、本書では様々なパターンでのアプローチを紹介しており、参考になる面が多いと思います。
FX市場で通貨ペア同士の相関性をチェック
FX市場内で複数の通貨ペアの取引を行う場合は、通貨ペア同士の相関性に注目することをお勧めします。
例えば、トレンドフォロー戦略の自動売買プログラムを使うとして、相関性の高い通貨ペア同士で稼働させてしまうと、双方で損失を出してしまう可能性があるほか、トレンドのタイミングが同じになってしまい分散効果が薄れてしまいます。
これに対し、相関性の鈍い通貨ペアを取引すると、トレンドが異なるタイミングで発生することが多いため、リスク分散効果を発揮します。
このため、複数の通貨ペアで自動売買プログラムを稼働させる場合は相関性の比較的薄い通貨ペア同士で稼働させることを検討したいところです。
通貨ペア同士の相関性はOANDAの東京サーバMT4用ツール「Oanda Correlation Matrix 」が短期、中長期の相関性を把握するのに便利です。
【「Oanda Correlation Matrix 」の例】
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
■目次
監修者まえがき
まえがき
序文
序論
第1部 歴史的な視野
第1章 過去800年におけるトレンドフォロー戦略 トレンドフォロー物語――歴史の研究
リターンの特性の変化
数世紀に及ぶトレンドフォロー戦略のリスク特性
数世紀に及ぶトレンドフォローポートフォリオのメリット
まとめ
付録――検証に含まれる市場と前提条件
第2部 トレンドフォロー戦略の基本
第2章 先物市場と先物取引のおさらい
先渡し取引と先物取引の基本
マネージドフューチャーズ業界のおさらい
先物化
まとめ
第3章 システム的なトレンドフォロー戦略の基本
トレンドフォローシステムの基本的な構成
戦略の分類と主な違い
トレンドフォローシステムの分類
まとめ
第3部 理論的な基盤
第4章 適応的市場とトレンドフォロー戦略
適応的市場仮説
投機的なリスクテイキングの枠組み
クライシスアルファの詳細
まとめ
第5章 ダイバージェンスとトレンドのトレード可能性
リスクと不確実性
コンバ―ジェンスとダイバージェンス
ポートフォリオのレベルで市場のダイバージェンスを測定する
市場のダイバージェンスの定常性を試す
トレンドのトレード可能性
仕掛けと手仕舞いはどちらが重要か
まとめ 第6章 金利とロールイールドの役割
担保利回り
ロールイールドと現物価格に分解する
まとめ
第4部 代替資産クラスとしてのトレンドフォロー戦略
第7章 トレンドフォロー戦略のリターンの特性
代替資産クラスとしてのトレンドフォロー戦略
クライシスアルファ
クライシスベータ
主な統計的性質
まとめ
付録――一般的なパフォーマンスの基準
第8章 ドローダウンとボラティリティと相関性の特徴
ドローダウンの性質を理解する
トレンドフォローポートフォリオのボラティリティ
ポートフォリオレベルにおける相関性と分散
まとめ
第9章 トレンドフォロー戦略の隠れたリスクと明確なリスク 方向性戦略と非方向性戦略のおさらい
隠れたリスクと明確なリスクの定義
シャープレシオの通説と神話性
動的なレバレッジの隠れたリスクを解明する
まとめ
第10章 さまざまなマクロ経済環境におけるトレンドフォロー戦略 金利環境
規制の力と政府の介入
危機後の回復
まとめ
第5部 ベンチマークとスタイル分析
第11章 リターンのばらつき
戦略の分類とリターンのばらつき
資本配分とポジションサイズを詳しく調べる
投資家から見たリターンのばらつき
相関性のあるリターン系列について実証的・理論的に考える まとめ 第12章 指数とスタイルファクターの構築
ダイバージェントリスクテイキングのおさらい
ダイバージェントなトレンドフォロー戦略を定義する
スタイルファクターの構築
スタイルファクターの特徴
まとめ
第13章 ベンチマークとスタイル分析
リターンに基づいたスタイル分析の枠組み
CTA運用会社ごとのスタイル分析
市場規模ファクターのセクターレベルの分析
スタイル分析の分類
運用会社の選択と配分
まとめ
第6部 投資ポートフォリオにトレンドフォロー戦略を組み込む
第14章 ポートフォリオにおけるトレンドフォロー戦略
クライシスアルファを詳しく見る
時価評価が相関性に与える影響
ボラティリティの周期性を理解する
まとめ
第15章 運用規模と流動性と市場規模の実用性
運用規模は重要か
流動性が低い市場の影響
まとめ
付録――銘柄コードと名称
第16章 分散先を分散する
純粋なトレンドフォロー戦略からマルチ戦略へ
マルチ戦略に移行したポートフォリオの分析
低ボラティリティ戦略でレバレッジをかけた場合の隠れたリスク
まとめ
第17章 トレンドフォロー戦略への動的な配分
動的な配分の枠組み
トレンドフォロー戦略のリターン系列の平均回帰
動的配分戦略への投資
まとめ
付録――トレンドフォロー戦略の平均回帰の理論的な分析 用語集
著者について
■監修者まえがき
本書はアレックス・グレイザーマンとキャスリン・M・カミンスキーが著した“Trend Following with Managed Futures : The Search for Crisis Alpha”の邦訳である。原書のタイトルの「マネージド・フューチャーズ」とは、先物を主な売買対象とした集団投資スキームのことを指しており、主要な代替投資手段としてアメリカにおいて長い歴史を持っている。本文中に紹介されているように、トレンドフォロー戦略は、伝統的な投資資産とは独立したリターン出力系列を持ち、その分布はポジティブスキューを成すこと、さらに金融危機の際に優れたパフォーマンスをもたらすクライシスアルファを内包していることが知られている。このため、投資ポートフォリオの一部をトレンドフォロー戦略に振り分けることで、全体としてのリスク・リワード特性が向上し、さらにドローダウンが抑えられることになる。
このように、トレンドフォロー戦略は常識的に考えれば良いことずくめの投資手段であるが、その価値や歴史の長さに比して日本での存在感は希薄である。その理由はさまざま考えられるが、一般的な解釈(アカデミックな研究による)では、射幸心が強くギャンブル性の高い投機を好むアジア人にとって、トレンドフォロー戦略のような地味な投資はつまらないからであるとされている。だがこの問題の本質は、唯一の正解を常に欲しがる日本人のメンタリティにあると私は考える。私たちは子供のころから学校や家庭や社会で、正解のある問題を解かされ続けてきている。そこでは、答えはいつも教師や親、監督・コーチから与えられるものであり、自分で苦労して見つけだすものではない。一方で、社会的な問題のほとんどには、分かりやすい正解など用意されていない。そこにあるのはゴールを達成する過程で現れた諸課題に次々と柔軟に対処していく連続したプロセスだけであり、したがって、問題の数だけ、また人の数だけ異なった解決法が存在する。
この状況は投資においてもまったく同様であり、だれにとっても最適な投資方法・投資対象などというものは存在しない。リスク調整済リターンの観点で言えば、すべての投資手段は等価であり(裁定が働くから)、人によってとれるリスクが異なるだけである。だが、少なからぬ人が「どの銘柄を買えばよいのか?」「何をすれば良いのか?」と聞きながら彷徨っている。彼らから見れば、受動的にポジションを変化させることで環境に適応しようとするトレンドフォロー戦略は、明示的に分かりやすい正解をいつまでたっても示してはくれず、さぞかしフラストレーションがたまるものに映るだろう。しかし、投資の世界でまず必要なのは、自分が何を望んでいて、どんな不確実性であれば対処することができるのかを見極め行動することである。トレンドフォロー戦略はそのすべてをシステマティックに内包している。
本書は、トレンドフォロー戦略そのものに興味のある方だけではなく、伝統的なポートフォリオでは対処することの難しい時期や局面のリスクを減少させたいと考える投資家にもぜひ読んでもらいたい。そして、トレンドフォロー戦略に関して幅広い情報を得たい方には、『トレンドフォロー大全』(パンローリング)を、そして自らトレンドフォロー戦略を構築し運用してみたい方には、『トレンドフォロー白書』(パンローリング)を読まれることを強くお薦めする。
最後に、翻訳にあたっては以下の方々にお礼を申し上げたい。井田京子氏は正確な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。
2019年8月
長岡半太郎
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■まえがき
学者が教え子の書いた本のまえがきを依頼されるのは、めったいない喜びであり、名誉なことである。この感じは、親が子供の前途を期待しながら大学や仕事に送り出すのと似てなくもない。ただ、私はカミンスキーに親というほどのことをしていない。10年以上前に彼女が初めて私の部屋を訪ねてきたとき、彼女はすでに数学と統計学とオペレーションズリサーチの経験を積み、ファイナンス学を熱心に学んでいた。MIT(マサチューセッツ工科大学)の多くの生徒と同じく、彼女も自ら学び、私も多少の助言はしたが、ほとんどは彼女の邪魔をしないように観客席から声援を送っていた。
ウォール街の経験が豊富で統計学博士でもあるアレックス・グレイザーマンと共同執筆した本書は、長年にわたり金融業界で埋もれていた投資戦略を、興味深く、タイムリーに検証している。これまでトレードフォロー戦略は、いくつかの理由で投資やポートフォリオマネジャーの主流派から不当な非難を受けてきた。もしかしたらその最も分かりやすい理由は、芸術でも科学でも創造的な試みにおいては独自性が好まれるからかもしれない。なぜ独自の行動をとらずに群衆に従うのか、というのだ。
このような、模倣に対する本能的な嫌悪感は、自然界では驚くほど頻繁に見られる模倣戦略と矛盾している。ほとんどの動物には群衆行動が見られるし、カメレオンは体色変化し、DNAは長期間をへても忠実な複製力がある。ホモサピエンスのなかでも、トレンドによって技術が普及した。火、石器、農業、工業化、そしてもちろんスカート丈、低炭水化物ダイエット、アプリなどもそうだ。金融投資という狭い分野のなかでも、ブローカーや金融顧問やそのほかの新商品を売り込む人たちは、トレンドを大いに用いてきた。GTAA(グローバル戦術的資産配分)、130/30ファンド、リスクパリティ戦略などである。特定の投資商品が流行したり、廃れたりすると、資金がそこに流入したり、そこから流出したりして、資産価格のトレンドが生まれるのである。
トレンドが存在し、持続する理由は多々あるが、それでもトレンドフォロー戦略に対して、宗教的とも言えるような嫌悪感を示す投資家たちがいるようだ。私は、この嫌悪感には主に3つの理由があると考えている。1つ目は、効率的市場仮説にある。もしトレンドフォロー戦略が本当に機能するのであれば、みんながこれを使い、その結果機能しなくなると懸念しているのだ。2つ目の理由は、初期のトレンドフォロー戦略は、金融学者が魔術や占星術のたぐいとみなすテクニカル分析、別名「チャート分析」を連想させるものだったことにある。そして、3つ目の理由は、トレンドフォロー戦略が透明性を欠いていることにある。そのため、投資家はこの戦略がいつ、どのように価値を生み出し、なぜ独自の分散が可能になり、どのような条件のときに伝統的な投資戦略のパフォーマンスを下回る可能性が高いのかを理解しにくいのである。
1つ目の理由は、もし価格が入手可能なすべての情報をコストなしに即座に反映しているとしても、資産にプラスのリスクプレミアムがあれば、トレンドは存在するということを観察すれば分かる。結局、リスクプレミアムがあってもそれを上回る期待リターンがあれば、価格は上昇していくということだ。トレンドフォロー戦略は、このリスクプレミアムを利用しているが、伝統的なバイ・アンド・ホールド戦略よりももう一段洗練されている。リスクプレミアムが時間とともに変化し、トレンドがブレイクされると下落リスクを減らすための損切り注文が置かれる。しかし、市場は常にどこでも効率的というわけではなく、そのことは今では多くの学者や業界のプロも分かっている。そして、投資家は経済状況の変化に適合し、そのような市場ではトレンドとその反転はよく起こることなのである。
2つめの理由は、トレンドフォロー戦略が簡単に逃れられない伝統的な見方の残念な側面によるものだが、黙って罪悪感に苦しむのではなく、トレンドフォロー戦略についてより詳しい説明をしていくことで、それまでの手法とは差別化を図ることができる。
そして、3つ目の理由もやはり、この詳しい説明(ベンチマーク、ポートフォリオの構築、スタイル分析、パフォーマンスへの貢献要素など)によって理解を得ることはできる。グレイザーマンとカミンスキーが本書で行っているのはまさにこれである。
トレンドフォロー戦略が、株式のインデックスファンドを使ったパッシブ投資のような人気を博すことはないかもしれないが、それはおそらく良いことだと思う。人気が出たら、今のような優れた分散先ではなくなるかもしれないからだ。そうなる日が来るまで、真剣な投資家はぜひ本書を読むべきだと思う。
2014年3月 マサチューセッツ州ケンブリッジにて
アンドリュー・W・ロー
■序文
私は、旧ソ連で生まれ、12歳のときにアメリカに来た。数学や統計学や工学を学んだあと、25年前に岐路に立った。1年間、退屈なエンジニアの仕事をしたあとコロンビア大学大学院に入り、「金融オペレーションズリサーチ」という選択科目のクラスに出席して、ファイナンスの世界に魅了されたのだ。1989年、私はラリー・ハイトの面接を受けるため、ニュージャージー州ミルバーンに向かった。彼はトレンドフォローシステムのパイオニアの1人で、当時はミントという世界最大のCTA(商品投資顧問業者)で10億ドル近い資産を運用していた。応募要項には、エントリーレベルのプログラミングとデータ分析とあった。面接のとき、私がハイトに運用の秘訣を尋ねると、自分は「何を知らないかを知っている」から勝てるのだと教えてくれた。また、彼は「高等教育に妨げられない」ことが自分の強みだと思うとも言っていた。「高等教育」を受けてきたばかりの私には、彼の言っていることがよく分からなかった。しかし、はっきりしていたことは、彼がそれまでのエンジニアの仕事よりも数千ドル高い年収を提示していたことだった。私はそれに引かれてこの世界に飛び込むことにした。ラリー・ハイトは私がファイナンスの世界に入ったときからずっと私のメンターをしてくれている。そして、正式な数量分野の教育を受けていないことは、本当に彼の主要な資産になっていた。彼は疑問に思ったことを質問し、ほとんどのクオンツよりも優れた独創性で、既成概念を超えてしまうのである。
それから25年以上、私はCTA業界でたくさんの浮き沈みを経験した。この業界は、さまざまな理由で何回か死を宣告されたが、そのたびに生き延び、成長してきた。システム的なトレード戦略を構築するための試行錯誤と試練は厳しい道のりだった。いくつかのモデルは、機能するときとしないときがあった。そして、聖杯は存在しない。賢いリスク管理と生き残ることがすべてだ。市場は最大の人数が最大の損失を被るように動いているとしか思えないことがよくある。しかし、これは、適合と進化のための必要な力なのだろう。ケインズの有名な言葉にあるように、「市場の不合理は、あなたの支払い能力が持ちこたえる期間よりも長く続く」のである。
通常、ファイナンスモデルは複雑にせずに、単純で実践的なものにすることが好まれる。「買い手」は厳密な数式や奇跡的な発見ではなく、分析とファイナンスの知識と合理的なリスク管理と「エッジ」を追求する「謙虚さ」が相まって判断に至っている。私は、過去12年間、コロンビア大学で金融工学を教えてきた。毎学期、私自身の課題は、このクラスに集まった高い知能指数を誇る数学の天才たち(これまでほとんど間違ったことがないであろう連中)に、投資の世界の現実に多少の謙虚さを持って向き合うことをどう教えるかということだった。私は、さまざまな項目や数式を教えつつも、講義の終わりには心理的な話をした。生徒たちに、彼らも間違うことがあることや、それを市場に思い知らされるときもあること、モデルを使って損失が出ても理由が分からないときがあること、投資で成功するための最初のルールは自分の優れた頭脳や絶対確実性に執着しないことなどを理解してほしいからだ。もし学期末に生徒のほんの一部でもよいので投資の過程の一部として失敗に対処することができるようになれば、私の役割は果たせたと思っている。
最後に、家族に最大の感謝を捧げたい。両親は私がアメリカであらゆるチャンスを追求できるよう多大な犠牲を払ってくれた。妻のイレインは、ラリー・ハイトとの面接に行くとき車で送ってくれた。ヨギ・ベラが「分かれ道に来たら、とにかく進め」と言っているが、私たちもファイナンスの世界に歩を進め、妻はそれから25年以上、私を支え、励まし続けている。私の子供たち、ジャッキーとマックスとディーンとリードは、毎日懸命に働く気持ちにさせてくれる(4人を大学に行かせるのは安くない)。
また、このプロジェクトを応援してくれたISAMの長年の素晴らしい同僚で、本書の編集にも手を貸してくれたスタンレー・フィンク、ラリー・ハイト、ロイ・シェール、アレックス・ロウ、ダレン・アプトン、ジャック・ウェイナー、リーバ・ワラーにも感謝している。
アレックス・グレイザーマン
■ ■ ■ ■ ■ ■
11歳のとき、私の初めて行った科学実験は神経伝導と温度に関するものだった。優れたファイナンシャルプランナーの母と臨床神経科医の父の下で育った私が、そのあと数学、電子工学、オペレーションズリサーチを学び、最終的に行動経済学と神経ファイナンス学のひねりを加えた計量ファイナンスにたどり着いたことに不思議はない。私はテネシー州ナッシュビルで育ったが、数学と科学への情熱からMIT(マサチューセッツ工科大学)に進んだ。そして、信号処理とシステム工学に魅了された――MP3プレーヤーを自分で組み立てたり、衛星電話のプログラムを書いたりしたくない人がいるだろうか。それから、フーリエ変換を学び、フランスのエコール・ポリテクニークで工学物理学を、ソシエテ・ジェネラルの計量モデルチームでは劣後債の時間モデルにかかわるなどして数年間を夢中で過ごし、計量金融学に引かれてMITスローン・スクール・オブ・マネジメントで、オペレーションズリサーチの博士課程に進んだ。私は、計量金融学のカリスマの1人であるアンドリュー・ロー博士の下で学べることに興奮していた。彼は、私にストップロス(損切り)ルールがロス(損失)をストップする理由や、投資における単純ルールやヒューリスティクスの価値について私に問いかけた。みんなが使っているルールなのだから、何か理由があるはずだ。
私は、みんなが右と言うと、たいてい左に行く。父から人の認知力について教わっていた私にとって、期待効用理論は明らかに幻想的なナンセンスであり、私はヒューリスティクスや単純ルールを学びたいと思った。ロー博士は数年かけて私にファイナンスに関するあらゆることを教えてくれた。これは素晴らしい経験だった。博士からは疑問を持ち続けることや、アイデアを疑ってみること、難問に新たな角度から取り組むのを恐れないこと、信念を曲げないこと(例えば、効用理論が幻想的なナンセンスだと考えてもよい)などを教えられた。私にとって博士は長年に及ぶアドバイザーで、メンターで、友人で、のちには同僚になった。彼が投資管理のヒューリスティクスとルールを理解する旅に送り出してくれたことに永遠の感謝を捧げたい。トレンドフォロー戦略が投資における一連のヒューリスティクスと単純ルールだと考えれば、この手法が長年機能してきた方法と理由の解明に私がずっと執着してきたのも不思議ではない。
最後に、私の家族――夫と2人の娘、両親、そしてアメリカとスウェーデンの親戚――に最大の感謝を捧げたい。夫のピエールは、このあきれるほど大きなプロジェクトを始めようとしていた私を支え、励まし続けてくれた。愛する娘たち、エリノアとヘイリーは私の人生の光である。両親は、私のためにたくさんの扉を開き、高い成功目標を設定してくれた。男兄弟のマットは、私にとってずっと頼りになる存在だ。そして、謙虚なスーパースターのメンターで、アドバイザーで、友人のアンドリュー・ロー博士にも永遠の感謝を捧げたい。あなたの後見と、支援がなければ、枠にとらわれない考え方を学び、さまざまな成果を上げることはできなかった。ほかにも、仕事仲間の女性たち、ミラ・ゲツマンスキー・シャーマン、ジャスミナ・ハサンホジック、マリア・ストロンクビストにも感謝したい。また、MITの多くの生徒や教授陣も、私のために新たな扉を開き、新たな視点を提供してくれた。そして、世の中の出来事を伝えてくれた友人たち、アン、ベネディクト、エミリー、ジュリアン、ルシール、リン、マーグレット、マリア、ネビブ、スミータ、スーザン、スベトラーナ、タニア、ありがとう。
PRMのかつての同僚たちも、マネージドフューチャーズの探求において大きな部分を担ってくれている。友人のジョン・ショーディンは、いつも私のアイデアを自信を持って広めてくれる。また、スウィーディッシュ・ハウス・オブ・ファイナンスの協力的な同僚たちや、スウェーデンのファイナンス業界の友人たちにも感謝している。上司で、友人で、同僚でもあるペア・ワイゼンも、このプロジェクトを大いに支援してくれた。私は、教えることにも情熱を注いでおり、それはストックホルム商科大学(SSE)や、MITスローン・スクール・オブ・マネジメントや、スウェーデン王立工科大学(KTH)の多くの生徒たちに大いに支えられている。
キャスリン・カミンスキー
■ ■ ■ ■ ■ ■
私たちには、共通の友人がいた。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループのランディ・ワーセガーだ。彼は、業界の素晴らしい擁護者であり、顔も広い。その彼が、同じリサーチに関心を持っている私たちを引き合わせてくれた。私たちは、初めて会ったその日に、トレンドフォロー戦略に関する包括的な学術書を書くべきだということで一致した。私たちは、どちらも信号処理から金融業界に転じたという経歴を持ち、複雑なものを単純化したいという強い思いも共通していた。私たちの挑戦は、おたくの世界とか金融界の伝説などと呼ばれているトレンドフォロー戦略が、実際には真剣かつ客観的な分野だということを示すことにあった。
本書の執筆において、まずはISAMの素晴らしいチームに感謝したい。リアン・ヤンは、このリサーチと本書の制作において中心的な役割を担ってくれた。また、ノエル・シスコは、細かい点まで配慮した手助けをしてくれた。ジャック・ウエイナーは、すべての原稿を読んでコメントしてくれた。そして、プロジェクトに協力してくれた計量アナリストチームのクリス・ブリッジースとパトリック・ラケットにもお礼を言いたい。
また、ファイナンス業界の友人やトレンドフォロー戦略のファンにも感謝している――PRM、エフィシエント・キャピタル、アビー・キャピタル、ライトハウス・パートナース、ヘルメス、ニューエッジ、そしてCMEグループなどだ。私たちがそれぞれ深くかかわっているCMEグループは、ランディ・ワーセガーの熱心な努力もあって、私たちを本書制作に導いてくれた。ニューエッジは、リサーチを信じる仲間として、このプロジェクトに格別の協力をしてくれた。ジェームス・スケッグスには、本書を細かくチェックしてくれたことに感謝している。また、この業界や学術界の多くの賢くて洞察力のある同僚たちにもお礼を言いたい――インゲマー・バーグダール、スバンテ・バーグストロム、ランジャン・バーデューリ、エリック・バンドニス、ガレン・バーグハート、アンドレアス・クレナウ、ジョン・コノリー、アダム・ダンカン、トニー・ギャノン、ジョエル・ハンディ、エリック・ホー、パー・イバソン、アーネスト・ジャファリアン、グラント・ジャファリアン、グレッグ・ジョーンズ、マーティン・カルストロム、ホセイン・カゼミ、ラリー・キスコ、ジョン・ラブゼウスキー、アンドリュー・ロー、マーク・メリン、アレクサンダー・メンデ、ショーン・マクグールド、ロムール・ノアジェリゾ、ペター・オドノフ、ケリー・パーキンス、ブルー・パトナム、エド・ロバーティエロ、タレク・リズク、ジョン・ショーディン、ジェームス・スケッグス、クリス・ソラーズ、ミカエル・ステンボム、そしてブライアン・ウェルズ。そして、最後に、本書を手にとり、フィードバックや洞察を与えてくれた人たちにも大いに感謝したい。
アレックス・グレイザーマン博士
キャスリン・カミンスキー博士
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。