利食いと損切りのテクニック・FX/CFD中級者〜上級者向け書籍
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利食いと損切りのテクニック
トレード心理学とリスク管理を融合した実践的手法
仕掛け、利食いと損切りのポイント
この書籍のタイトルは「利食いと損切りのテクニック」となっており、株式市場や商品市場を中心にトレードの例を挙げて解説しています。
為替相場への応用を多少考える必要もあるため、中級者以上向けの内容となりますが、資金管理や相場心理、トレード記録の付け方など初心者の方にも参考にしていただきたい箇所が多く読み応えのある一冊となっています。
トレード手法に関しては売りの取引に多くのページを割いています。株式市場に関する例が多いですが、株式市場とドル円の相関性は強く、為替相場でも十分に応用できる内容となっています。
リスク管理の重要性
序盤に出てくるリスク管理の部分の2%ルールと6%ルールは初心者の方には是非参考にしていただきたい部分になります。
初心者の方は軽視しがちですが、資金管理は売買のタイミングよりもずっと重要な項目です。
トレードに慣れないうちは投資手法もバラつきがちで成績も不安定になりがちです。そこで重要なのが、取引が上手くいかない場合に資産をどれだけ守れるかになります。
連敗が続いた際に資産を守ることができれば、再チャレンジするする原資を残すことができるようになります。
初心者の方に限らず、スランプは誰でも必ず訪れるものです。リスクを最小限に抑えつつリターンを狙うのが投資の醍醐味です。
トレード記録もつけてみましょう
成功しているトレーダーの多くが推奨していることの一つにトレード記録を付けるというものがあります。トレード記録を付けることで過去のトレードを振り返ることができるだけでなく、自分のトレードの欠点を見つけることができ、改善点を見出すこときっかけになることも多いと思います。
記録が無ければ改善点を見出すことができません。
面倒くさいことですが、簡易的なものでもいいと思います。まずは習慣をつけることが大事です。
確認テストで理解度をチェック
この書籍では部ごとに確認テストが用意されており、理解度をチェックしながら読み進めることができます。解説もしっかりと用意されているため、楽しみながらじっくりと相場について学ぶことができます。
利食いと損切りのテクニック
トレード心理学とリスク管理を融合した実践的手法
■目次
日本語版への序文
はじめに
なぜ売るのか?
確認テストと解答について
三大区分
トレーダーのツールボックス
第2章 トレード心理学とリスク管理 トレードツールとしての心理
リスク管理
第3章 記録をつける
良い記録は良いトレードにつながる
トレーダーの表計算シート――最低限の義務
トレード日誌――成功し続けるための鍵
トレード計画の記録法
マーグレット方式――壁に貼る
成績評価の方法
2種類のトレード
第1部確認テスト
第1部確認テストの解答と解説
売却の3タイプ
第4章 目標価格で売る
移動平均で売る
エンベロープまたはチャネルで売る
飽くなき欲望
上昇がつまずくとき
抵抗水準で売る
第5章 ストップで売る
鉄の三角形
成行注文と指値注文
ハードストップとソフトストップ
ストップを置いてはいけない場所
スリッページを減らす―1セント近づける
ニックのストップ―1日分近づける
ストップを遠くに置く場合
可動ストップ
セーフゾーンストップ
ボラティリティ・ドロップ・ストップ
第6章 「エンジンノイズ」で売る
モメンタムの衰え
「エンジンノイズ」で短期トレードを手仕舞う
裁量で長期トレードを手仕舞う
決算発表前に売る
マーケットの鐘が鳴る
新高値-新安値指数を用いたトレード
売却の意思決定木
第2部確認テスト
第2部確認テストの解答と解説
初めての空売り
天井と大底の非対称
天井での空売り
下降トレンドでの空売り
ファンダメンタルズでの空売り
空売り銘柄を探す
売り残
第8章 株以外の空売り
先物の空売り
オプションの売り
カバード売り
ネイキッド売り
FX
第3部確認テスト
第3部確認テストの解答と解説
暗がりで動き始めていた弱気派
センチメント指標は先行する
上げ相場の天井
2007年天井での弱気乖離
MGMのバブルがはじけた
過熱銘柄を空売りする
下げ相場は価値を破壊する
大勢が下降トレンドにあるときのスイングトレード
下降チャネルでのトレード
サプライズに備える
「上げ相場に抵抗なし、下げ相場に支持なし」
誰がために鐘は鳴る、あるいは2度吠える犬
バフェットの早すぎた買い
その火に少し油を注ごうか?
下がりゆく株を空売りする
第10章 底値を探る
この株式市場はゼロまで下がらない
「二重らせん」は買いシグナル
パーティーにちょうど間に合った
私の好きな大底シグナル
上がってきたところで売る
転ばぬ強気はない
売りを叫ぶ声
さいごに
利益の始末――個人配当
未来へと続く道
参考文献
謝辞
訳者あとがき
ページのトップへ
■日本語版への序文
会社の見通しについていい話を聞いて、株を買うことは誰にでもできる。これであなたも株主の一員だ。しかし、売り時はいつなのだろうか。
人間は、希望という感情が大好きだ。その株を持っているかぎり、人は希望を持ち続ける。株価が上昇すれば、もっと儲かるだろうという希望が芽生え、株価が下落すれば、底入れは目の前であり、すぐに反転するだろうという希望を抱く。
ほとんどの素人は、こうやってトレードをしている。一方プロはというと、冷静にトレードをすることが多い。プロは、店主が野菜を売買するように株を売買する。まだ青いうちに仕入れ、熟したところで売る。そして、やわらかくなって傷み始めたら、投げ捨てるのだ。
プロの利食いと損切りの手法を学ぶのに役立つだろうと思い、この本を著した。数々の上げ相場や下げ相場で私が学んできたことを、本書では紹介する。あなたは、価格の上昇だけでなく、下落からも利益を上げる方法を学ぶだろう。
マーケットは2車線道路だ。上がりもするし、下がりもする。そして、抜け目のないトレーダーは、その両方で利益を上げる。
私は米国在住だが、自分の手法を数々の国で教えてきた。それぞれの国でもトレードをしたが、その手法はしっかりと機能していた。
成功するトレードというのは、3つのM から成り立っている。それは心理(mind)、手法(method)、資金(money)である。それぞれが心理学、分析、リスク管理に対応する。
トレードの感情は万国共通であり、リスク管理ルールも世界中で通用する。そして、私のお気に入りは、テクニカル分析だ。
本書に掲載したチャート例は、ほとんどが米国市場のものだ。しかし、これらの手法やテクニックは、日本市場でもうまく機能している。いくつか例をみてみよう。
図1は、2011 年11 月、日経225 先物が下降トレンドにあったときのものだ。日経225 先物が水面下で力をつけ始めていることを示すテクニカルサインが、ここでは同時に複数表れていた。
まずMACD は、ゾーンAで非常に低いところまで下げた。これは弱気派の力強さを裏付けている(これについては本文で確認していただきたい)。しかし、ゾーンBでMACD はゼロラインを上回った。これは私が「ベア(弱気派)の背骨折り」と呼んでいるものだ。
日経225 先物は11 月に安値を更新したが、MACD がゾーンCで形成した底は、ゾーンA よりもずっと浅いものであった。私たちは、このパターンを弱気乖離と呼んでいる。
【図1】
【図2】
日経225 先物が、チャート上に破線で示した支持帯を割り込みながら、支持帯よりも上に浮上して引けていることに注目してほしい。ダマシの下方ブレイクアウトと強気乖離の連携は、テクニカル分析では非常に強力な買いサインである。そのあと何が起きたのかをみてみよう(図2)。
先のチャートで確認した強気乖離は強力な上昇へとつながり、日経225 先物は4カ月間で約20%も上昇した。
2012 年の春になると、弱気サインが現れた。MACD はゾーンXで極大値を更新し、強気派の力強さを表していた。しかし、ゾーンYではMACD がゼロラインを割り込んでおり、「ブル(強気派)の背骨折り」がみられた。また、日経225 先物が3 月に高値を更新していながらも、MACD の上昇は非常に弱々しく、弱気乖離を形成していた。これは明確な売りサインである。利益を確定し、空売りを検討するようにというメッセージだ。
この序文を書いている2012 年4 月現在、日経225 先物は急落している。そして、チャートの右端ではMACD ヒストグラムが安値を更新し、もっとまずいことになりそうだと告げている。
ここでは2つのチャートを紹介したが、読者は本文でもっと多くのチャートを目にすることになるだろう。私たちが米国市場で用いている手法やシグナルが、日本でも非常によく機能することを、読者自身が確認されることを願う。
読者が聡明なトレーダーとして成功する過程で、本書がその一助となることを願っている。みなさんの成功を祈る。
2012 年4 月 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー(医学博士)
■はじめに
成長のときもあれば、衰退のときもある。種まきのときもあれば、収穫のときもあ る。リビングを跳ね回る愛らしい小犬も、いつの日か老い、衰え、病に苦しみ、獣医 の手で最期を迎える。
買ったときは希望に胸を膨らませ、その成長を見守ってきたあの株も、下落に転じ て資金を増やすどころか食いつぶし始めれば、もはや手仕舞い売りを考えるときだろう。
買いは楽しい。希望、大きな期待、息をのんで膨らんだ胸から喜びが湧き出てくる。
売りはつらい。しかめ面でするような仕事だ。最期の注射のために老犬を獣医のところに連れていくようなものだ。だが、売らずにすますことはできない。
売りについて語り始めたら話は尽きない。売り――それはいかなるトレードであれ、最後には向き合う現実だ。
本書では、手仕舞いとしての売り、さらには仕掛けとしての売り、つまり「空売 り」について論じる。素人は空売りの仕方を知らず、ただその行為を恐れる。一方、プロは相場の下落局面からも利益を出そうと、嬉々として空売りをする。
株価は、上昇時よりも下落時のほうが、ずっと足が速い。そして空売りの方法を 知っているトレーダーは、投資機会を2倍にしているのだ。
しかし、空売りを実践する前に、売りの手順、そしてうまく売る方法について学ぶ 必要がある。現実を直視して、売りの勉強を始めよう。
●なぜ売るのか?
マーケットは呼吸をする。胸いっぱいに息を吸い、そして吐き出す。上昇するし、 下落する。マーケットで良き人生を送るためには、そのリズムにうまく乗る必要がある。
これから株のトレードを始めようという初心者でも“息の吸い方”――つまり株の買い方は知っている。しかし“息を吐くタイミング”――つまり株の売り時を知らな い。これを知ることで、初めて群衆よりも優位に立てるのだ。
買いを仕掛けるのは、楽観的なときや、何かいいものを取り損ねたくないと感じる ときだ。何かの記事で新製品について読んだときかもしれないし、合併の噂を耳にし たときかもしれない。またデータベースでスキャンをしたり、期待のもてるチャートパターンをみつけたりしたときかもしれない。ネット証券にアクセスするなり、証券 会社のブローカーに電話するなりして買い注文を入れる。
売買報告書をもらったら、その株の所有者だ。そしてストレスが始まる。
株価が動かず、上がりも下がりもしなければ、落ち着かなくなる。また、まずい銘 柄を選んだのだろうか。ほかの株は上がっていくのに。手仕舞うべきだろうか。
株価が上がっても、また違った不安をおぼえる。利益を確定すべきか。買い増すべ きか。それとも何もしないほうがいいのか。とはいえ、何もしないのは相当難しい。 特に男性にとっては。男性は、小さいころから「突っ立ってないで、何かしなさい!」 と、いわれながら育っているのだ。
株価が下がるのも苦しい。そしてこう思う。「買った価格まで戻ったらすぐに売ろう」。
心理学的に、大衆にとって最も居心地が良いのは、株価が若干下落しているときである。苦しみをおぼえるほどの下げではない。また、株価は買った価格に近いわけだから、わざわざ売る理由もないように思える。何もしなくてもいいし、何もしなくて もいいと思えるだけの言い分もある。
カエルを熱湯のなかに入れると、すぐに飛び上がって、そこから逃げ出そうとする。しかし、冷たい水のなかに入れて、じわじわと火にかけていくと、カエルは逃げ ることなく、そのまま茹でガエルとなってしまう。同様に、どう売るかという明確な 計画を持たず、じりじりと下げていく株を持ち続けるトレーダーは、最後に大打撃を 被る可能性がある。
ストレスは正しい意思決定の敵だ。自分の“分身”がかかっているときに客観的な 決断は難しい。だからこそ私は「事前にトレード計画を紙に書いておきなさい」と強 く勧めている。 そのトレードを仕掛ける理由、仕掛ける価格、そして保護的ストップの価格と利益 目標を具体的に数字で書いておくのだ。売りの意思決定も買いを仕掛ける前にすませ ておかなければならない。
この単純なルールのおかげで、本能ではなく知性で判断できる。哀れな茹でガエル にならずにすむ。購入する前に売却計画を書き出しておけば、利益は積み上がり、損 失は減少し、投資資金の推移カーブは改善されるはずだ。
なぜ、こうした計画を書き出す人がほとんどいないのだろうか。理由は2つある。
ひとつは、ここで書かれたことを大抵のトレーダーは教わっていないからだ。単に知らないだけである。
そしてもうひとつは「人は夢をみたがるもの」だからだ。金持ちになるという、ぼんやりとした幻想をみるのは、楽しくて気持ちがいい。しかし、計画を書き出す作業 は、甘美な白昼夢を妨げる。背筋を伸ばし、具体的に目的と緊急時の対策を書き出す ことは、幸せな幻想とはほど遠い。
あなたはこの本を手にとったわけだから、甘い白昼夢ではなく現実の利益を選んだ のだと信じたい。ようこそ「売りの世界」へ。これから手仕舞い売りと空売りの話へと進むとしよう。
●確認テストと解答について
魅力的な銘柄をみつけて購入したあと、その銘柄が急騰するのを眺めていると胸が 高鳴る。空売りをした直後に相場が急落するのも同じくらい刺激的だ。しかし、こういう楽しみは、このゲームのほんの一部でしかない。
宿題は得てして大変な時間を要するものだ。大量の銘柄リストに目をとおしても、 特に魅力的な銘柄がみつからないこともある。また、いいなと思う銘柄をみつけても 資金管理ルールにひっかかって買えないこともある。実際のトレードはあっという間 でも、そのトレードを日誌に記録する作業には、30分は費やしてほしい。
真剣なトレーダーは面倒な宿題をするのに多大な時間を費やしている。「成功は 10%のひらめきと、90%の努力である」というのは、ウォール街を生き抜いた人の言 葉に違いない。
本書には、読者の今後の役に立てばと確認テストと解答を入れた。目的は、最良の 投資機会を紹介すること、最も危険なリスクを指摘して注意を喚起すること、そして読者に成績を記録する習慣を身につけてもらうことにある。
私は自分の生徒たちに、よくこう語っている。「しっかりトレード記録をつけてい るかい? それだけで、優れたトレーダーだって分かるよ」。本書を活用し、読者が難題に自力で取り組み、あらゆるアイデアを自分のデータで試し、そしてしっかりと記録をつける習慣を身につけてもらえればと思う。
各セクションの終わりに入れた確認テストの解説には、十分な時間をかけた。「Aは正解、Bは不正解」だけで終わらせたくなかったし、答えの背後にある考え方を説明したかったからだ。
本書の流し読みは避けてほしい。トレードはマラソンのようなものだ。短距離走ではない。
じっくり読み、しっかりテストに取り組む。そして答え合わせをして成績をつけ る。さらに2、3カ月すぎてからもう一度取り組み、成績が良くなっているか確認する。
トレードはほかの真剣な営みと同じで、打ち込めば打ち込むほどそれだけのものが 得られる。ただし、トレード自体は孤独な営みだ。したがって、ほかのトレーダーとつながりをもち、調査や学習を共有することをお勧めする。私の生徒にも良い友人関 係を築いた人たちがいる。
あなたは今、この本を手にとり、この難題に取り組み、現実に正面から向き合うことを選んだ。あなたがトレードで成功することを心から祈っている。
2011年 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー(医学博士)
日本語版への序文
はじめに
なぜ売るのか?
確認テストと解答について
第1部 心理学、リスク管理、記録
第1章 買いについて三大区分
トレーダーのツールボックス
第2章 トレード心理学とリスク管理 トレードツールとしての心理
リスク管理
第3章 記録をつける
良い記録は良いトレードにつながる
トレーダーの表計算シート――最低限の義務
トレード日誌――成功し続けるための鍵
トレード計画の記録法
マーグレット方式――壁に貼る
成績評価の方法
2種類のトレード
第1部確認テスト
第1部確認テストの解答と解説
第2部 どのように売るか
売却の3タイプ
第4章 目標価格で売る
移動平均で売る
エンベロープまたはチャネルで売る
飽くなき欲望
上昇がつまずくとき
抵抗水準で売る
第5章 ストップで売る
鉄の三角形
成行注文と指値注文
ハードストップとソフトストップ
ストップを置いてはいけない場所
スリッページを減らす―1セント近づける
ニックのストップ―1日分近づける
ストップを遠くに置く場合
可動ストップ
セーフゾーンストップ
ボラティリティ・ドロップ・ストップ
第6章 「エンジンノイズ」で売る
モメンタムの衰え
「エンジンノイズ」で短期トレードを手仕舞う
裁量で長期トレードを手仕舞う
決算発表前に売る
マーケットの鐘が鳴る
新高値-新安値指数を用いたトレード
売却の意思決定木
第2部確認テスト
第2部確認テストの解答と解説
第3部 どのように空売りをするか
第7章 株の空売り初めての空売り
天井と大底の非対称
天井での空売り
下降トレンドでの空売り
ファンダメンタルズでの空売り
空売り銘柄を探す
売り残
第8章 株以外の空売り
先物の空売り
オプションの売り
カバード売り
ネイキッド売り
FX
第3部確認テスト
第3部確認テストの解答と解説
第4部 下げ相場の教訓
第9章 弱気派が利益を上げる暗がりで動き始めていた弱気派
センチメント指標は先行する
上げ相場の天井
2007年天井での弱気乖離
MGMのバブルがはじけた
過熱銘柄を空売りする
下げ相場は価値を破壊する
大勢が下降トレンドにあるときのスイングトレード
下降チャネルでのトレード
サプライズに備える
「上げ相場に抵抗なし、下げ相場に支持なし」
誰がために鐘は鳴る、あるいは2度吠える犬
バフェットの早すぎた買い
その火に少し油を注ごうか?
下がりゆく株を空売りする
第10章 底値を探る
この株式市場はゼロまで下がらない
「二重らせん」は買いシグナル
パーティーにちょうど間に合った
私の好きな大底シグナル
上がってきたところで売る
転ばぬ強気はない
売りを叫ぶ声
さいごに
利益の始末――個人配当
未来へと続く道
参考文献
謝辞
訳者あとがき
ページのトップへ
■日本語版への序文
会社の見通しについていい話を聞いて、株を買うことは誰にでもできる。これであなたも株主の一員だ。しかし、売り時はいつなのだろうか。
人間は、希望という感情が大好きだ。その株を持っているかぎり、人は希望を持ち続ける。株価が上昇すれば、もっと儲かるだろうという希望が芽生え、株価が下落すれば、底入れは目の前であり、すぐに反転するだろうという希望を抱く。
ほとんどの素人は、こうやってトレードをしている。一方プロはというと、冷静にトレードをすることが多い。プロは、店主が野菜を売買するように株を売買する。まだ青いうちに仕入れ、熟したところで売る。そして、やわらかくなって傷み始めたら、投げ捨てるのだ。
プロの利食いと損切りの手法を学ぶのに役立つだろうと思い、この本を著した。数々の上げ相場や下げ相場で私が学んできたことを、本書では紹介する。あなたは、価格の上昇だけでなく、下落からも利益を上げる方法を学ぶだろう。
マーケットは2車線道路だ。上がりもするし、下がりもする。そして、抜け目のないトレーダーは、その両方で利益を上げる。
私は米国在住だが、自分の手法を数々の国で教えてきた。それぞれの国でもトレードをしたが、その手法はしっかりと機能していた。
成功するトレードというのは、3つのM から成り立っている。それは心理(mind)、手法(method)、資金(money)である。それぞれが心理学、分析、リスク管理に対応する。
トレードの感情は万国共通であり、リスク管理ルールも世界中で通用する。そして、私のお気に入りは、テクニカル分析だ。
本書に掲載したチャート例は、ほとんどが米国市場のものだ。しかし、これらの手法やテクニックは、日本市場でもうまく機能している。いくつか例をみてみよう。
図1は、2011 年11 月、日経225 先物が下降トレンドにあったときのものだ。日経225 先物が水面下で力をつけ始めていることを示すテクニカルサインが、ここでは同時に複数表れていた。
まずMACD は、ゾーンAで非常に低いところまで下げた。これは弱気派の力強さを裏付けている(これについては本文で確認していただきたい)。しかし、ゾーンBでMACD はゼロラインを上回った。これは私が「ベア(弱気派)の背骨折り」と呼んでいるものだ。
日経225 先物は11 月に安値を更新したが、MACD がゾーンCで形成した底は、ゾーンA よりもずっと浅いものであった。私たちは、このパターンを弱気乖離と呼んでいる。
【図1】
【図2】
日経225 先物が、チャート上に破線で示した支持帯を割り込みながら、支持帯よりも上に浮上して引けていることに注目してほしい。ダマシの下方ブレイクアウトと強気乖離の連携は、テクニカル分析では非常に強力な買いサインである。そのあと何が起きたのかをみてみよう(図2)。
先のチャートで確認した強気乖離は強力な上昇へとつながり、日経225 先物は4カ月間で約20%も上昇した。
2012 年の春になると、弱気サインが現れた。MACD はゾーンXで極大値を更新し、強気派の力強さを表していた。しかし、ゾーンYではMACD がゼロラインを割り込んでおり、「ブル(強気派)の背骨折り」がみられた。また、日経225 先物が3 月に高値を更新していながらも、MACD の上昇は非常に弱々しく、弱気乖離を形成していた。これは明確な売りサインである。利益を確定し、空売りを検討するようにというメッセージだ。
この序文を書いている2012 年4 月現在、日経225 先物は急落している。そして、チャートの右端ではMACD ヒストグラムが安値を更新し、もっとまずいことになりそうだと告げている。
ここでは2つのチャートを紹介したが、読者は本文でもっと多くのチャートを目にすることになるだろう。私たちが米国市場で用いている手法やシグナルが、日本でも非常によく機能することを、読者自身が確認されることを願う。
読者が聡明なトレーダーとして成功する過程で、本書がその一助となることを願っている。みなさんの成功を祈る。
2012 年4 月 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー(医学博士)
■はじめに
成長のときもあれば、衰退のときもある。種まきのときもあれば、収穫のときもあ る。リビングを跳ね回る愛らしい小犬も、いつの日か老い、衰え、病に苦しみ、獣医 の手で最期を迎える。
買ったときは希望に胸を膨らませ、その成長を見守ってきたあの株も、下落に転じ て資金を増やすどころか食いつぶし始めれば、もはや手仕舞い売りを考えるときだろう。
買いは楽しい。希望、大きな期待、息をのんで膨らんだ胸から喜びが湧き出てくる。
売りはつらい。しかめ面でするような仕事だ。最期の注射のために老犬を獣医のところに連れていくようなものだ。だが、売らずにすますことはできない。
売りについて語り始めたら話は尽きない。売り――それはいかなるトレードであれ、最後には向き合う現実だ。
本書では、手仕舞いとしての売り、さらには仕掛けとしての売り、つまり「空売 り」について論じる。素人は空売りの仕方を知らず、ただその行為を恐れる。一方、プロは相場の下落局面からも利益を出そうと、嬉々として空売りをする。
株価は、上昇時よりも下落時のほうが、ずっと足が速い。そして空売りの方法を 知っているトレーダーは、投資機会を2倍にしているのだ。
しかし、空売りを実践する前に、売りの手順、そしてうまく売る方法について学ぶ 必要がある。現実を直視して、売りの勉強を始めよう。
●なぜ売るのか?
マーケットは呼吸をする。胸いっぱいに息を吸い、そして吐き出す。上昇するし、 下落する。マーケットで良き人生を送るためには、そのリズムにうまく乗る必要がある。
これから株のトレードを始めようという初心者でも“息の吸い方”――つまり株の買い方は知っている。しかし“息を吐くタイミング”――つまり株の売り時を知らな い。これを知ることで、初めて群衆よりも優位に立てるのだ。
買いを仕掛けるのは、楽観的なときや、何かいいものを取り損ねたくないと感じる ときだ。何かの記事で新製品について読んだときかもしれないし、合併の噂を耳にし たときかもしれない。またデータベースでスキャンをしたり、期待のもてるチャートパターンをみつけたりしたときかもしれない。ネット証券にアクセスするなり、証券 会社のブローカーに電話するなりして買い注文を入れる。
売買報告書をもらったら、その株の所有者だ。そしてストレスが始まる。
株価が動かず、上がりも下がりもしなければ、落ち着かなくなる。また、まずい銘 柄を選んだのだろうか。ほかの株は上がっていくのに。手仕舞うべきだろうか。
株価が上がっても、また違った不安をおぼえる。利益を確定すべきか。買い増すべ きか。それとも何もしないほうがいいのか。とはいえ、何もしないのは相当難しい。 特に男性にとっては。男性は、小さいころから「突っ立ってないで、何かしなさい!」 と、いわれながら育っているのだ。
株価が下がるのも苦しい。そしてこう思う。「買った価格まで戻ったらすぐに売ろう」。
心理学的に、大衆にとって最も居心地が良いのは、株価が若干下落しているときである。苦しみをおぼえるほどの下げではない。また、株価は買った価格に近いわけだから、わざわざ売る理由もないように思える。何もしなくてもいいし、何もしなくて もいいと思えるだけの言い分もある。
カエルを熱湯のなかに入れると、すぐに飛び上がって、そこから逃げ出そうとする。しかし、冷たい水のなかに入れて、じわじわと火にかけていくと、カエルは逃げ ることなく、そのまま茹でガエルとなってしまう。同様に、どう売るかという明確な 計画を持たず、じりじりと下げていく株を持ち続けるトレーダーは、最後に大打撃を 被る可能性がある。
ストレスは正しい意思決定の敵だ。自分の“分身”がかかっているときに客観的な 決断は難しい。だからこそ私は「事前にトレード計画を紙に書いておきなさい」と強 く勧めている。 そのトレードを仕掛ける理由、仕掛ける価格、そして保護的ストップの価格と利益 目標を具体的に数字で書いておくのだ。売りの意思決定も買いを仕掛ける前にすませ ておかなければならない。
この単純なルールのおかげで、本能ではなく知性で判断できる。哀れな茹でガエル にならずにすむ。購入する前に売却計画を書き出しておけば、利益は積み上がり、損 失は減少し、投資資金の推移カーブは改善されるはずだ。
なぜ、こうした計画を書き出す人がほとんどいないのだろうか。理由は2つある。
ひとつは、ここで書かれたことを大抵のトレーダーは教わっていないからだ。単に知らないだけである。
そしてもうひとつは「人は夢をみたがるもの」だからだ。金持ちになるという、ぼんやりとした幻想をみるのは、楽しくて気持ちがいい。しかし、計画を書き出す作業 は、甘美な白昼夢を妨げる。背筋を伸ばし、具体的に目的と緊急時の対策を書き出す ことは、幸せな幻想とはほど遠い。
あなたはこの本を手にとったわけだから、甘い白昼夢ではなく現実の利益を選んだ のだと信じたい。ようこそ「売りの世界」へ。これから手仕舞い売りと空売りの話へと進むとしよう。
●確認テストと解答について
魅力的な銘柄をみつけて購入したあと、その銘柄が急騰するのを眺めていると胸が 高鳴る。空売りをした直後に相場が急落するのも同じくらい刺激的だ。しかし、こういう楽しみは、このゲームのほんの一部でしかない。
宿題は得てして大変な時間を要するものだ。大量の銘柄リストに目をとおしても、 特に魅力的な銘柄がみつからないこともある。また、いいなと思う銘柄をみつけても 資金管理ルールにひっかかって買えないこともある。実際のトレードはあっという間 でも、そのトレードを日誌に記録する作業には、30分は費やしてほしい。
真剣なトレーダーは面倒な宿題をするのに多大な時間を費やしている。「成功は 10%のひらめきと、90%の努力である」というのは、ウォール街を生き抜いた人の言 葉に違いない。
本書には、読者の今後の役に立てばと確認テストと解答を入れた。目的は、最良の 投資機会を紹介すること、最も危険なリスクを指摘して注意を喚起すること、そして読者に成績を記録する習慣を身につけてもらうことにある。
私は自分の生徒たちに、よくこう語っている。「しっかりトレード記録をつけてい るかい? それだけで、優れたトレーダーだって分かるよ」。本書を活用し、読者が難題に自力で取り組み、あらゆるアイデアを自分のデータで試し、そしてしっかりと記録をつける習慣を身につけてもらえればと思う。
各セクションの終わりに入れた確認テストの解説には、十分な時間をかけた。「Aは正解、Bは不正解」だけで終わらせたくなかったし、答えの背後にある考え方を説明したかったからだ。
本書の流し読みは避けてほしい。トレードはマラソンのようなものだ。短距離走ではない。
じっくり読み、しっかりテストに取り組む。そして答え合わせをして成績をつけ る。さらに2、3カ月すぎてからもう一度取り組み、成績が良くなっているか確認する。
トレードはほかの真剣な営みと同じで、打ち込めば打ち込むほどそれだけのものが 得られる。ただし、トレード自体は孤独な営みだ。したがって、ほかのトレーダーとつながりをもち、調査や学習を共有することをお勧めする。私の生徒にも良い友人関 係を築いた人たちがいる。
あなたは今、この本を手にとり、この難題に取り組み、現実に正面から向き合うことを選んだ。あなたがトレードで成功することを心から祈っている。
2011年 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー(医学博士)