■プログラム
目次
監修者まえがき
記念すべき第一〇版に向けての序文――勝者のゲームを敗者のゲームにしてはならない
第1章 寓話――ゴットロックス家の人々
第2章 根拠ある熱狂――株主の利益は企業の利益と一致しなければならない
第3章 企業に賭けろ――簡潔にして勝て、オッカムのカミソリを頼りにしろ
第4章 どうしてほとんどの投資家は勝者のゲームを敗者のゲームにしてしまうのか――簡単な計算という冷徹なルール
第5章 もっともコストの低いファンドに集中せよ――資産運用会社の取り分が増えれば、それだけ投資家が手にするものは減る
第6章 配当は投資家の最良の友なのか――だが、投資信託はあまりに多くの配当をかすめ取っている
第7章 大いなる幻想――うわぉー、投資信託が公表しているリターンを投資家が手にすることはめったにない第8章 税金もコストである――必要以上に国に支払うことはない
第9章 良き時代はもはや続かない――株式市場も債券市場もリターンが下がるという前提で計画を立てるのが賢明
第10章 長期的な勝者を選択する――針を探すな、枯れ草を買え
第11章 「平均回帰」――昨日の勝者は明日の敗者
第12章 ファンドを選ぶためにアドバイスを求めるのか――転ばぬ先の杖
第13章 簡潔さと倹約の王から利益を得る――株式市場に連動するコストの安い伝統的なインデックスファンドを保有せよ
第14章 債券ファンド――ここでも簡単な計算という冷徹なルールが支配する
第15章 ETF――トレーダーのおもちゃ?
第16章 インデックスファンドが市場に勝つことを保証する――新しいパラダイム
第17章 ベンジャミン・グレアムならインデックス運用をどう考えただろうか――バフェットはインデックスファンドを支持するグレア氏を支持している
第18章 アセットアロケーション その一 株と債券――投資を始めるとき、資産を積み上げるとき、そして引退するとき
第19章 アセットアロケーション その二――引退後の投資とあらかじめアセットアロケーションされているファンド
第20章 時間という試練に耐え得る投資アドバイス――ベンジャミン・フランクリンとのチャネリング
謝辞
■監修者まえがき
本書はバンガード・グループの創業者で元会長であるジョン・C・ボーグルによる“The Little Book of Common Sense Investing : The Only Way to Guarantee Your Fair Share of Stock Market Returns”の一〇周年記念版の邦訳である。ボーグルは、プリンストン大学で書いた論文でインデックス運用のアクティブ運用に対する構造的な優位性について説き、後にバンガードを運用資産額が五兆ドルを超える世界最大の投信会社に成長させることで、自らの主張の正しさを現実の世界で証明して見せた。この本はその分かりやすい解説書である。
実際、パフォーマンスの観点で言えば、アクティブファンドはインデックスファンドに対してまったく勝ち目はない。それゆえ、私の個人的な確定拠出年金(日本版四〇一k)でも、国内株式、海外株式、海外債券の三本のインデックスファンドだけを組み入れており、投資比率を固定してずっと放置してある。私はこれが投資信託を使う場合の最善の投資法だと確信しているし、これからもアクティブファンドに投資するつもりは一切ない。それでも、もし読者の方が本書の内容について半信半疑なら、自分にとって最適な投資手段をAI(人工知能)に判断させてみるとよい。年齢などのプロファイルによっても多少異なるが、間違いなく低コストのインデックスファンド数本からなるポートフォリオが推奨されるはずだ。
もっとも、日本の多くのアクティブファンドが提供している顧客価値の根幹は、そのパフォーマンスにあるのではなく、特殊なテーマに特化することによるストーリーの面白さや、双曲割引の効果を利用した高頻度分配によるエンターテインメント性にある。そして、通常そうしたギミックはパフォーマンスとトレードオフの関係にあるので、アクティブファンドのパフォーマンスがインデックスファンドに及ばないのはまったく当然のことなのである。
さて、米国ではインデックスファンドがアクティブファンドを駆逐する勢いなのに対し、日本では趣向を凝らしたアクティブファンドが量産され続けてきた。一方でパフォーマンスの再現性に対する関心は低く、インデックスファンドの存在が顧みられることはほとんどなかった。だが、若年層を中心としたパフォーマンス重視の投資家の出現によって、今後インデックスファンドは大手運用会社にイノベーションのジレンマをもたらす可能性がある。なぜなら、インデックス運用は彼らの主要顧客にとって価値が低いゆえにリソース投入がためらわれるのに対し、新興の運用会社にとっては容易に参入が可能だからである。このままでは、近未来における日本の投信業界の地図は、現在とはまったく異なったものになっているかもしれない。
2018年4月
長尾慎太郎
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