目次
監修者まえがき
はじめに
私のアルゴブック
第1章 アルゴトレードは以前よりも難しくなっているのか
第2章 フルタイムのアルゴトレード
第3章 アルゴトレードに関する15のヒント
第4章 時間枠に関する研究
第5章 平均回帰に関する研究
第6章 戦略をリスクから守るテクニック
第7章 強気相場や弱気相場でのトレード
第8章 最良の手仕舞い法
第9章 リワード・リスクの研究
第10章 利益や損失の足が何本で手仕舞うのがよいかの研究
結論
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著者について
監修者まえがき
本書は、アルゴリズムトレードの草分けで第一人者でもあるケビン・J・ダービーが著した“ALGO TRADING CHEAT CODES : Techniques For Traders To Quickly And Efficiently Develop Better Algorithmic Trading Systems”の邦訳である。ダービーの著書としては、すでに『アルゴトレードの入門から実践へ――イージーランゲージによるプログラミングガイド』『システムトレード検証と実践――自動売買の再現性と許容リスク』(いずれもパンローリング)があり、好評を博している。
本書は原書のタイトルに“cheat codes”とあるように、正攻法のやり方に対する裏技的なヒント集という位置づけであり、したがって著者はこれを初心者向きではないとしている。しかし、アルゴトレーダーを志す人にとって各章はどれも検証不可避の極めて重要な事項ばかりで、どこをどう読んでもむしろ本書こそ初心者・初級者が最初のころに読むべき内容だと私は感じる。
確かにアルゴリズムトレード自体は、いまやそれほど難しいものではなく、データ取得・整備やコーディング技術習得が簡単ではなかった時代と比較すれば、間違いなく格段に容易になっている。だが、現実にそれを実践する人がそれほど多くないのは、著者が結論に書いているように、そこに至るまでの過程で袋小路がたくさんあり、トレード戦略の開発者たちはほとんどの時間を無益なアイデアの追求に浪費しているからだ。
私自身この分野に30年に以上にわたって携わってきたが、実際それに費やした努力や時間の98%は無駄であった。個人的にはそれらの挑戦がまったく意味がなかったとは思わないが、その道程はシーシュポスが巨石を丘の上に運び上げようとする試みにも似た苦行の日々に等しい。これからアルゴリズムトレードを行おうとする読者は、わざわざそうした遠回りをする必要はないだろう。
本書は先人たちのそうした轍を踏むことなく、一気に目的地まで読者を運んでくれるファストパスのようなものだ。自分が若いころにこの本があったならどんなに良かったことだろうと痛切に思う。
ところで、アルゴリズムトレードに関してなじみがない読者は、本書に示された検証結果のほとんどが損失に終始していることに驚かれたかもしれない。そうした結果が淡々と記載されているのは、著者が知的に極めて誠実であることの証拠でもあるのだが、ここでの検証対象である商品先物のように、リターンが対称的な分布を持つものは手数料とスリッページを考慮すれば、通常は検証結果のパフォーマンスは負になる。逆に本書には示されていないが、株式や債券のように、それ自体が価値を増大させる(あるいはキャッシュフローを生む)資産を対象に検証すれば、たいていの検証結果は正になる。読者の方もご自身の手でぜひ確かめていただきたい。
翻訳にあたっては以下の方々に感謝の意を表したい。まず井田京子氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2022年7月
長岡半太郎
はじめに
もしあなたがアルゴトレードの初心者か、アルゴトレードが何かすら知らない人ならば、ここで読むのをやめるべきだ。本書はあなた向きではない――少なくとも今の時点では。それよりも、『アルゴトレードの入門から実践へ――イージーランゲージによるプログラミングガイド』(パンローリング)のほうが適しているのかもしれない。
もしあなたが経験豊富なアルゴトレードの専門家で、自分のリスク調整後のパフォーマンスに満足しているのならば、本書を読んでも新しい発見はあまりない可能性がある。それよりも、これまでの方法を続けるほうがよいのかもしれない。
しかし、もしあなたがほかの多くの人たちのように、初心者から専門家の間の段階にいるのならば、運が良い。本書は、中途半端なレベルで行き詰まっている多くの人たち、つまりトレードを向上させるためのアイデアやヒントを探しているアルゴトレード経験者に向けたものだからだ。本書はあなたのようなトレーダーのために書いた。
本書では、私がこの1~2年に自分のアルゴトレードを改善する目的で行ってきた研究の多くを紹介している。私の研究結果を参考にして、あなたのトレード戦略を改善してみてほしい。
ちなみに、本書ではポジションサイズ、トレード心理、ポートフォリオ管理などのテーマは扱っていない。もちろん、これらも重要であるのは間違いないが、本書の目的はアルゴトレードシステムの開発を向上させることにあるからだ。トレード心理はとても重要だが、アルゴ戦略自体がひどければ、あまり役には立たない。
私は、トレードの成功はアルゴトレードシステムのエッジ(優位性)から始まると思っている。
このことについては、次の例が分かりやすいかもしれない。
カジノでブラックジャックをプレーするとき、時間が長くなれば、あなたが負けることはほぼ間違いない。これは、ポジションサイズや資金管理や心理や規律によって変わるものではない(頭がぼーっとしないように無料のアルコール類を断ったとしても結果は同じだ)。
しかし、もしあなたがカウンティングという実績あるエッジを身に付けたとしよう。このエッジに、心理コントロールと資金管理を併せてプレーすれば、長期的には勝つことができる。だからこそ、カジノはエッジを持ったプレーヤーを嫌い、いずれあなたを出入り禁止にするだろう。
トレードにも同じことが言える。エッジを生かすためには、トレードのそのほかの部分もすべて重要になる。要するに、まず必要なのは良い戦略であり、だからこそ本書はアルゴ戦略を改善するテクニックに絞って書いている。
本書は4つの部分で構成されている。
全般的なヒントと役に立つアドバイス
第1章アルゴトレードは以前よりも難しくなっているのか
最近のアルゴトレードはどうなっているのか。将来はどうなっていくのか。
第2章フルタイムのアルゴトレード
それは可能なのか。この分野で役立つアドバイス。
第3章アルゴトレードに関する15のヒント
私が長年かけて学んだヒント。あなたのトレードの助けになるだろう。
仕掛けを改善する
第4章時間枠に関する研究
最良の時間枠はどれか。最悪は。その理由は。
第5章平均回帰に関する研究
私は平均回帰を用いた有名無名の手法をいくつか調べた。これらをどのように使えば、良い戦略を構築できるだろうか。
今ある戦略を改善する
第6章戦略をリスクから守るテクニック
今ある戦略のリスクをさらに避けるためにはどうすればよいのか。
第7章強気相場や弱気相場でのトレード
「マクロ環境」フィルターを使ったトレードはうまく機能するのか。もしそうならば、どのようにすればよいのか。
手仕舞い法を改善する
第8章最良の手仕舞い法
手仕舞いに関する詳しい検証結果。
第9章リワード・リスクの研究
最良のリワード・リスク・レシオはあるのか。もしあるのならば、それはどのような比率か。
第10章利益や損失になったあと何本目の足で手仕舞うのがよいかの研究
これは良い手仕舞い法なのか。
各章では、私が「チートコード」と呼んでいる検証時間短縮のためのヒントを紹介する。私の数千時間に及ぶ研究を煮詰めて実行可能にしたアイデアが、本書の神髄と言える。読者が一から研究を行わなくても、私が見つけたことを、トレードや検証に利用できるようにしたのだ。
本書でカバーできなかったテーマもいくつかあるが、それは次のウェブサイトで紹介している。
金額による損切りとATR(真の値幅の平均)による損切り
私は損切りについて、金額による方法とATRによる方法を比較した。どちらが有利なのだろうか。
うまく機能する15の価格パターン
このタイトルどおり、これらを使って独自の検証を行ってほしい。
アルゴトレードではなく、バイ・アンド・ホールドでよいのではないか
2009年以降の株式市場がほぼ上昇し続けていることを考えれば、もっともな質問だ。
私のyoutubeチャンネルで紹介しているそのほかの研究
本書を読み終わるころには、私のウェブサイトに新しい研究が追加されていると思う。とにかく私はアルゴトレードの研究が大好きなのだ。
前置きはこのくらいにして、さっそく始めよう。
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