実践FXトレーディング・勝てる相場パターンの見極め法
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実践FXトレーディング
勝てる相場パターンの見極め法
短期トレードの参考に
本書は短期トレードを考えている方にオススメの一冊です。裁量トレードの方はもちろん、自動売買派の方も売買ロジックを考える上で参考になる情報が多い書籍です。
初心者トレーダーが陥りがちなポイントや、仕掛けのタイミング、決済のタイミング、ドテン売買を行うときの具体的な方法を様々なパターンに分けて紹介しています。できるだけ効率の良い水準でエントリーするためにはどの水準で仕掛ければよいのかを理解することができると思います。
感情をできるだけ排除
本書では感情、心理面がトレードに及ぼす悪影響について言及し、感情をできるだけ排除し、相場を予想しないという方法を紹介しています。
相場を予想するから、外れると「悔しい」という感情が生まれ、この感情がその後の判断を狂わせる要因となるのですが、予想するのではなく、細かく定めた条件に当てはめる検証を行なっていくような作業にしてしまうことで解決を試みています。
確かに、レバレッジを高くせずに検証を行うようなスタンスで挑むと、ストレスも軽減することができ、落ち着いてエントリーポイントを探ることができるようになりそうです。
それに加え、本書ではエントリーを決めてからエントリーするまでに一定の時間を置くことを推奨しています。これを行うことで、損益比率の悪いトレード等、無駄なトレードを排除できる可能性が高まり、効率的なトレードを行うことができるようになると思います。
具体的な取引戦略を学ぶ
本書では終盤に次の例のようなテンプレート化された様々なのトレーディングプランを紹介しています。
相場の状況に応じた具体的戦略が多数紹介されており、ある程度基本を抑えた初心者から初心者を抜け出した中級者トレーダーには読み応えのある一冊となるでしょう。
単純に、これらの手法を試してみるというのもいいと思いますし、自分なりにアレンジしてみるというのも良さそうです。
また、普段使っているトレード戦略をこのようにテンプレート化してみると、これまで見えてこなかった改善点が見えてくるかもしれません。
トレード戦略を考える上で条件を細かく考えておらず、裁量に頼るトレードを行い伸び悩んでいるという方は、このくらい、仕掛けの条件や手仕舞いの条件を細かく考えてみてはいかがでしょうか?
多少面倒な作業だと思いますが、このようにテンプレート化することで、非効率的な仕掛けを排除することができるほか、感情を排除することができるようになり、無駄なトレードを減るなどの効率化が図れるかもしれません。
【平均値幅に基づくテンプレートの一例】
【上記テンプレートのイメージ】
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
実践FXトレーディング
勝てる相場パターンの見極め法
■目次
訳者まえがき
まえがき
パート1 新人トレーダーへのアドバイス
第1章 はじめに
第2章 取引口座を開く
第3章 適切な取引会社を選択する
パート2 取引手法を開発する
第4章 投機取引における心理的課題
第5章 裁量トレードとメカニカルトレー
第6章 テクニカル分析とファンダメンタル分析
パート3 イグロック・メソッド
第7章 イグロック・メソッドの発想の原点
第8章 テクニカル分析を利用して確率を評価する
第9章 基本的なトレード戦略とテクニック
第10章 トレードする通貨ペアを選ぶ
第11章 マネーマネジメントのルールとテクニック
第12章 相場の動きとトレーダーの規律
パート4 イグロック・メソッドによる短期トレードとデイトレードの戦略
第13章 デイトレードプランの原則
第14章 仕掛け
第15章 手仕舞い
第16章 タイミングの重要性
第17章 中央銀行介入時のトレード戦略
パート5 短期トレードとデイトレード用テンプレート
第18章 平均値幅に基づくテンプレート
第19章 テクニカル・フォーメーションに基づくテンプレート
第20章 トレンドライン、サポート、レジスタンスに基づくテンプレート
第21章 サンプルトレード
■訳者まえがき
西遊記は孫悟空が活躍する奇想天外な冒険譚だが、実は、悟りを得るための修行法、いわゆる練丹法の秘伝書だといわれている。相応の修行を積んだ者が読めば奥義を授かることができる。
トレード指南書にも、素直に読ませてくれる本もあれば、読みこなすのに「技」がいる本もある。本書『Beat the Odds in Forex Trading』は、相性の向き不向きを含め、読者が試される秘伝書のような本だ……と言ったら言いすぎだろうか。
「同じチャートを見ても、フォーメーションが見える(見えてしまう)人もいれば、見えない人もいる」というようなことを著者は書いているが、それは本書自体にも当てはまるようだ。
実際、某インターネット書店での評価も見事に分かれている。確かに非ネイティブが書いた英語のような分かりにくさや意図的とも単なる怠慢とも考えられる過不足な箇所という「石」も混じっているが、そこでダメを出してしまえば「玉」はつかめない。
焦点距離を適度にずらしたときに新たな画像が浮かび上がってくる裸眼立体視(ステレオグラム)のように、読み進むうちにあるとき突然「奥義」が鮮明に浮かび上がって見えるかもしれない。
とはいえ、初心者でも、『FXトレーディング』(パンローリング)などでFX市場の基本知識を補い、実際の相場チャートと見比べながら随時読み返すことによって、勝率の高いトレードプランを構築するための強力なアイデアを数々得られるはずだ。
2007年盛夏
古河みつる
■まえがき
本書で私が明らかにした手法を積極的に実践すれば、実際の市場における学習期間を2~3年短縮し、少なくとも2万ドルの投資資金を節約できるだろう。
通貨投機を行ってきた期間、私は幸運なことに、貴重な経験を積む機会を得ただけでなく、多くの個人トレーダーの仕事ぶりを観察する機会を得ることもできた。10年以上にわたり通貨取引の理論と実践方法を個人投資家に教えてもいる。また、私自身も、書籍、各種の出版物、各種の専門的なセミナーやフォーラムでのディスカッションを通じてほかのトレーダーたちの経験を学んでいるし、世界各国のトレーダーや同業者たちとメール交換をしてきた。これらもろもろの経験のおかげで、思慮深いトレーダーがプロとしてのキャリアを通じて遭遇するであろう問題に関して、総合的な調査を自分なりに行うことができた。また、本書の基盤となり、私独自の取引手法を構築するのに使用した、広範な情報を収集することもできた。そもそも世の中に完璧なものなど存在しえないが「裁量的システム的イグロックメソッド(Igrok Discrete-Systematic Method)」が、為替投機を職業として選択する人や副収入を得る手段として考えている人にとって、真剣に検討する価値のあるものだと確信している。
まず最初に申し上げたいことは、為替投機トレーダーとしての私自身の経験、そして実際に会ったり、出版物を通じて知っている私が尊敬する同業者たちの経験からいえることは、すべての個人トレーダーが対処しなければならない問題は基本的に同じだ、ということだ。だがそれらの問題に対する解決策は、トレーダーの数とほぼ同じだけある。時を経て現れる実際の結果には、完全な勝利から完全な敗北までの、幅が生じる可能性がある。それぞれの参加者にとって、このビジネスは、あのシェイクスピアのハムレットの名ゼリフもどきの「トレーダーになるべきか、ならざるべきか」という問いかけから始まる。
未知の分野で成功を追い求めるために、金と時間(場合によってはさらにほかの職業で築いたキャリア)をリスクにさらす価値があるだろうか? この市場に参加するにしても、統計上5~7%といわれている、あこがれの成功者の仲間入りをするにはどうしたらいいのか? このビジネスに投資する資金、時間、エネルギーが正当化されるだけでなく、十分な見返りが得られるようにするにはどうしたらいいのか?
参加者は自らそれらの問いに答えることが必要だ。それに比べれば、私ができることははるかに些細なものだ。すでに「トレーダーになる」ことを選択した人たちに、マーケットというゲームに屈せず、勝ち抜くための私なりの秘訣をお教えすることだ。新人トレーダーは、本書によって、過ちから学んで必要な経験を積んでいくという従来の試行錯誤的な学習方法をとっていれば失ったであろう時間と資金をかなり省くことができる、と私は確信している(本書では、基本的なトレード用語、テクニカル分析用語、チャート、一般的に知られている記号、通貨取引に関連する略語などについては特に詳しい説明なしに使用しているので注意してほしい。それらの事項に関する説明が必要な場合は、さまざまな書籍や、私のウエブサイト(http://www.igrokforex.com/)を含む、多数のインターネットサイトで容易に見つけることができるはずだ)。
パート1 新人トレーダーへのアドバイス
新人トレーダーは、実際のFX市場でトレードを始める前に、このビジネスに関する知識を深め、実際のトレードに備えて心の準備をするためにある程度の時間を費やすべきだ。最初の段階は次の5つのステップに分けることができる。
理論的な準備と学習
チャート分析用のソフトウエアの入手と相場情報の入手先の選択
実際の相場環境に連動したバーチャルアカウントを使用して、実践的なトレーディングテクニックやスキルを身につけ、トレード戦略やシステムを開発する
取引業者または取次業者を選択する
投資資金の額を決定し、取引口座を開く
準備段階で私のアドバイスを受け入れてくれれば、効果的で楽しい学習ができるようになるはずだ。このアドバイスは学習効果を高めるためにあなたが行うべき準備事項だ。ということで、新人トレーダー向けの一般的なアドバイスから始めよう。
第1章 はじめに
FX市場に関する理論的な情報の最も大きな部分、つまりファンダメンタル分析とテクニカル分析の両理論の主要部分と一般的な情報については、本書ではふれない。通貨の投機取引に関する理論は既存の専門書を読めば勉強することができる。イグロックメソッドの勉強に入る前に、これから参加しようとしている、あるいはすでに参加しているこのビジネスに関する基本的な事項を学ぶ必要がある。イグロックメソッドは既存のいわゆる「伝統的」な手法とはまったく異なるため、理論的な準備にもそれなりの独自性が求められる。トレード理論の準備としては、以下の4つの事項を勉強することをお勧めする。
FX市場の歴史と発展
FX市場の参加者、その役割、トレードのプロセスにおける相互関係
通貨投機取引の技術と用語
ファンダメンタル分析とテクニカル分析の一般原則
重点はテクニカル分析の主要事項に置くべきだ。なかでも重要なのは、サポート/レジスタンスの理論とリトレースメント理論(ダウとフィボナッチ)という2つのテーマだ。私の取引手法では、テクニカル分析の一般理論のなかの比較的小さな部分しか使用せず、ファンダメンタル分析については基本的にまったく使用しない。だが、使用する可能性がいくら低くても、ある程度の知識を持っていることは邪魔にはならないだろう。逆に、その知識によって、イグロックメソッドをよりよく理解できるだけでなく、相場の内部的な傾向を把握するのにも役立つはずだ。 情報、データ、テクニカルサポート
コンピュータソフト、チャートプログラム、相場データ(リアルタイムとバッチ)の情報源について、特別な条件といったものはない。なにより、イグロックメソッドはごく最低限のデータしか必要としない。だから相場情報をリアルタイムで提供しているサービスならどこでも(いちばん安価なところでも)構わない。チャートを作成でき、主なテクニカル指標が使えて、トレンド線、サポート(支持線)、レジスタンス(抵抗線)を描ける最小限のグラフィックツールがあれば十分だ。インターネットを探せば無料で使えるサイトもあるはずだ。長期分析にはもっと高度なソフトウエアが必要になるが、昨今では品質的に申し分ないレベルのものを比較的安価に手に入れることができる。
これらの事項については特にリサーチをしていないので、情報サービスやチャートプログラムの比較評価をここでご紹介することはできない。ちなみに、日足・週足・月足のチャートを含む長期的なチャート分析に、私はオメガリサーチ(Omega Research)のスーパーチャート(SuperCharts)とBridge/CRBのデータサービスを使っている。このソフトウエアはリアルタイムモードに対応しておらず、データは取引が終わるグリニッジ標準時午後11時に毎日Bridge/CRBからロードされる。私はこのサービスで完全に満足している。イグロックメソッドの必要条件を満たしているし、これぐらいのもので十分だと思う。
バーチャルトレード
FX市場で実際のトレードに参加することを最終的に決断する前に、大多数の初心者がバーチャルトレード(つもり売買)と呼ばれる学習段階を経験している。それはリスクにさらす資金がバーチャルであるところだけが異なるトレードゲームだ。この段階は主として新人が実際のトレードに参加するか否かを最終的に決断する時に当たる。最終的な決断はこのようなバーチャルトレードの結果に基づくことが一般的だ。このようなトレード方法は初心者にとって必要だとは思うが、バーチャルトレードの結果は、同じトレーダーが実際のマーケットで本物の資金を使ってやった場合の結果とは異なることを強調しておきたい。結果の違いは常に本物のトレードのほうが分が悪い。最大の原因は心理的要素にある。本物の資金を失うというリスクがトレーダーにネガティブな影響を強く与え、バーチャルトレードでは避けることができたようなエラーが誘発されるためだ。だからバーチャルトレードでの結果がそのまま実際のマーケットでも得られるなどとはゆめゆめ思わないことだ。トレーダーの心理に組み込まれたネガティブな要素がいや応なしに姿を現すからだ。本物のトレードでポジティブな結果を収めるには、実際のトレードというストレスのかかった状況で心理的負荷を軽減する方法を身につける必要がある。そうすることで精神力が鍛えられ、強くなることができる。
現在では、大多数のFX取引業者や取次業者がオンライン取引サービスを提供している。大多数の個人トレーダーにとって最適なソリューションであり、大きな優位性が得られる。それら会社のほとんどは、バーチャル・トレード・サービスも提供している。その観点から私が提示できるアドバイスはひとつしかない。本物のトレードを始めるときに使う取引業者または取次業者は、バーチャル・トレード・サービスのあるところのほうがいいというだ。そうすれば、おそらくサービスのレベルを評価できるであろうし、注文の手順に慣れることができるし、その会社のオンライン・トレード・ソフトの仕様に慣れることができる。バーチャル口座の資金額を自分で決められる場合は、実際の投資で予定している金額と同じにすることが望ましい。そうすれば、すぐに対処することになる実際の状況に少しでも近づけることができるからだ。
第4章 投機取引における心理的課題
成功トレーダーのキャリアは、トレードの過程で生じることの多いストレスの高い状況で、いかに心理的な安定性を保てるかに大きく依存する。理論的な知識は専門書を読めば得られるが、実践的なスキルと経験は実際のトレードでしか得られない。最も難しいところが心理的ストレスのコントロールだ。なぜなら、現実の世界では人間の行動に影響を与えるストレス要素を完全に排除することは不可能だからだ。ストレスという要素を過小評価していると、手痛いしっぺ返しを食らったり、トレードを合理的に判断する能力が完全に妨げられてしまうこともある。FX市場を始めとするあらゆる市場におけるトレードでは、心理的ストレスがきわめて大きい。トレーダーは恒常的に心理的プレッシャーを受けながら、予測の難しい不確実な相場で判断を下さなければならない。
トレーダーはそれぞれの方法、それぞれの性格や気質に従って、過ち、失敗、損失を経験していく。その失敗を、自分の完璧な予測に反し、自分の考え抜かれた投機計画を台無しにした「相場の間違った動き」のせいにするトレーダーもいる。あとから考えれば簡単なことなのに、その場で正しい判断を下せなかった自分自身と自分の能力を責めるトレーダーもいる。その肝心な場面でどう判断すべきであったか、あとで考えてみれば合理的に見極められることが多いのは興味深い事実だ。なぜあとになるとそれほど容易かつ迅速に正しい判断が分かるのだろうか? なぜ肝心な場面でできなかったのだろうか? 今日の視点から昨日の状況を見れば、ということでは十分に説明できないと思う。古典的なテクニカル分析ではほんとどの相場状況に関して複数の説明が成立する、ということでも説明できるとは思わない。事後であれば、どんな相場変動についても適切な説明を見つけることができる。だが、頭に血が上っているときは、ストレスによる影響を受け、間違いが生まれる。このことは、ほとんどの新人トレーダーがバーチャルトレードでは並はずれた(ときには驚異的な)結果を出すのに、本物のお金でトレードするとその足元にも及ばない結果しか出せないという事実からも明からだ。
恒常的にストレスを受けていると、十分に考えず、衝動的に間違った判断を下し、損失を出したり、まだ儲けられるのに早めに仕切ってしまうトレーダーは多い。何回か連続負けを喫すると相場が怖くなってしまうトレーダーもいる。ぼうぜん自失の状態になり、何でもない相場でもパニックを引き起こすようになる。感情を抑えたり、状況を冷静に評価することができないため、合理的であるなしにかかわらず、決断ができなくなる。多くの場合、相場が保有ポジションにとって不利な方向へ動いても、損失が膨らんでいくのを指をくわえて見ていることしかできない。なぜなら、決断というものがまったくできないからだ。ところが、相場が鎮静化すると相場の動きを落ち着いて分析できるようになり、失敗の主な原因が知識や訓練の不足ではなく、自分自身の感情の問題であることに気づく。だが状況を元に戻すことはできない。時は過ぎ去り、お金は失われ、すべてを一からやり直さなければならない。
深刻かつ破滅的な結果をもたらすもうひとつの問題が願望的思考だ。つまり、自分の相場予測だけが正しいと確信しているのだ。相場にサプライズはないし、あってはならないと考えている。役に立つ可能性のあるほかの選択肢を考慮しなかったり、ほかの選択肢をあいまいで不確実な形でしか考えない。自分のポジションにとって不利な相場変動は短期的かつ一時的であると考え、ナンピンを始める。相場が戻ってくると願いながら安値で買い増し、ポジション全体での収益性を高めようとする。その後、状況がさらに悪化しても、大きな損失なしに手仕舞いすることが可能になると考える。自分が正しいことを確信し、相場、ひいては自分のポジションを客観的に評価する能力を失ってしまう。自分の願望的思考を裏づけるテクニカルパターンだけに目を向け、都合の悪いシグナルは無視してしまう。そのような願望的思考はかなり高くつき、心理的な挫折をもたらすことがある。「相場の間違った動き」はトレーダーから資金を少々奪うだけにとどまらず、取引口座を根こそぎ奪い去ってしまうことが多いが、トレードという戦いで勝者になるという自信と望みも踏みにじってしまう。
そのような損失を被ると、トレーダーは自分自身を責め、失敗したトレードを何度も細かく振り返る。「相場の間違った動き」や、その時点では完全に明白だった状況における自分自身の失敗を責める。ときには、トレーダーと市場が敵同士のようになってしまうことがある。トレーダーは市場を敵のように考え、嫌悪感をあらわにし、常に復讐することを考えている。天気が晴れから雨に変わったことに関して自然を責めているのと変わらないことに気がつかない。変化に対しては、事前に備えておくことがきわめて重要だ。先見性によって好機や利益がもたらされるように、状況や天気の急変に備え、常にいくつかの選択肢を用意しておかなければならない。
3つめの心理的問題は、特にトレーダーの経験、能力、スキルが不足している場合の不確実性、つまり保有している各ポジションに対する確信のなさだ。ポジションを建てた途端、トレーダーは自分の選択に疑問を感じ始める。それは、仕掛け値の近辺で変動しているようなおとなしい相場で最も顕著に現れる。自分のポジションに対して不利な動きが少しでもあると、相場が仕掛け値から大きく離れて手遅れになってしまう前に、損失を限定するために建てたばかりのポジションを手仕舞いたくていたたまれなくなる。一方、相場が少しでも有利な方向に動くと、利益が(たとえ少しでも)乗っている間に、その利益が損失に変わってしまう前に、ポジションを清算したいという衝動に駆られる。
恐れと不安でいっぱいのトレーダーは、焦り、動き回る。仕掛けと仕切りを頻繁に繰り返し、無数の小さな損失と利益を積み上げる。気持ちが強気と弱気でせわしなく切り替わる。その結果、相場に格別な動きがなく、単なる「ノイズ」による変動しかない状態では、取引業者が課すスプレッドとコミッションによって損失を被ることになる。資金の少ない、経験が乏しい、心理的な準備が不十分な初心者や個人トレーダーに典型的な損失だ。
事前に相場を真剣に分析して計画を立てることもなく、直感的に判断を下しているトレーダーもけっして珍しくない。衝動的に根拠もなしに、感情的に反応してポジションを建てる。その行為の多くは、相場が提供している絶好の機会を逃してはならないという恐怖心のなせるわざだと説明できる。発車する電車の最後の車両に飛び乗ろうとして破滅したトレーダーを私はたくさん見てきた。どんな種類の相場変動でもおちついて見ることができないトレーダーも多い。私の生徒のなかにもそういうトレーダーがいた。相場が大きく動いたときにポジションを持っていなかったら、稼ぐ機会を逸したと考え、それだけで大きなショックを受けしまうのだ。
ポジションを持っていなければ、相場を両方向で考え、簡単に反転する可能性もあることを認識できるかといえば、そうではないようだ。統計的に見れば、相場変動によって損失を被る確率は利益を得る確率よりもはるかに高い。ふだんは銀行窓口の職員が他人のお札を勘定するのを冷静に見ていることができるような理性的な人たちが、相場変動が自分の懐に対する脅威とどうして感じてしまうのだろうか? 銀行員が手にしている他人のお金が失われた自分の利益であるとは考えないのに、市場における資金移動に対応する相場の変動のせいでネガティブな感情が生まれるのはなぜだろうか? その答えは、市場では大金を簡単に儲けられるという幻想があるからだと私は考えている。同様な幻想は新人FXトレーダーの間にも広く見られる。そういう幻想を早く捨てることができれば、それだけ早く一人前のトレーダーになることができる。
経験を問わず、すべてのトレーダーにとって最も難しい問題は、このビジネスでは避けることのできない損失から早く立ち直る方法をできるだけ早く学ぶことだ。同時に、損失のショックや心理的打撃に対処する方法も学ばなければならない。放置しておくと将来の行動にマイナスの影響を与える可能性があるからだ。
損失そのものと損失を被ることへの恐怖は、複雑な状況において合理的な判断を下す能力にマイナスの影響を与える。どちらもトレーダーの心を痛め続け、トレード戦略やトレードシステムのルールに従う能力を弱める。
私は何百人ものトレーダーと個人的に知り合い、その人たちのすることを見てきた。たくさんの教え子がいるし、私自身もFX市場でさまざまな段階での経験を持っている。そのことから、為替投機取引における失敗の主な原因には心理的トラウマ――自分の感情をコントロールし、ストレスに対処する適切な方法を見つける能力の欠如――が間違いなく関係していると確信している。
ストレスの大きい状況への抵抗力を高め、トレードの有効性を向上させることを中心に、私はFX市場における取引から生じる心理的な問題を解決する方法を探求してきた。その結果、ショックに耐え、感情をコントロールしておくことにも役立つ取引手法を開発することができた。ストレスの問題を解決するには、問題をいくつかの部分に分け、ひとつひとつ解決していくことが必要だった。
まず、相場に対する姿勢に関して「哲学的コンセプト」を構築する必要があった。それは、本書の後半で説明する取引手法だけでなく、相場や、私自身を含むほとんどのトレーダーが日々克服する必要がある心理的問題に関するコンセプトも含めてだ。私のコンセプトにとって「意見を持たなければ間違うことはない」という基本原則はきわめて重要だ。
この基本原則はトレードにまつわる無用なストレスと感情を回避する方法を考えていたときに思いついた。相場の見通しに対する自分の意見ではなく、相場のシグナルに基づいて合理的な判断を下す方法を見つければ、心理的プレッシャーとストレスを軽減し、ほぼ完全に排除するという目的は達成される。その場合の主な問題は、相場トレンド――人間のコントロールや予測を超えた自然現象――に対する哲学的なスタンスだ。
秘けつは、こうした自然現象を有利に活用する、安全かつ効果的なトレード戦略の開発だった。この基本原則は論理的であり、トレード戦略のコンセプトを開発するための基礎になると思われた。だが現実には、この作業にはかなりの時間を要した。とはいえ、この基本原則は、私が「裁量的システム的」と呼ぶシステムトレード手法の開発の基礎として使用された。
基礎となる基本原則とコンセプトから中間的な結論を経て、私は取引手法の開発にたどりついた。この手法は、感情を排除したトレードを可能にし、為替投機で稼ぐためのきわめて効果的かつ収益性の高いツールになった。
私の論拠の論理的な連鎖と中間的な道筋を以下に示そう。
アイデア1 ネガティブな感情とストレスの主な要因は、将来の相場動向に関するトレーダーの見方に基づく予測が当たらなかったことにある。
アイデア2 不要な感情や心理的プレッシャーを避けるには、将来の相場トレンドに関するすべての考えを完全に捨てたほうがよい。なぜなら、その考えが予測を形成し、その予測が間違う可能性があるからだ。
アイデア3 「意見を持たなければ間違うことはない」という原則の基本的なアイデアは、トレード結果の道義上の責任をトレーダーからマーケットへ移すことにある。そうすれば、相場の変動をいわゆる「神の意志」や「自然界の力」の現れと見なすことができるため、トレーダーの責任ではなくなる。
アイデア4 予測をせずに利益を得ることは、相場を予測するのではなく、トレンドをフォローすることによってのみ可能になる。
アイデア5 相場変動をフォローすることは、システムトレードの手法だけを使用し、それらの変動を効果的にモニターするトレード戦略を開発することによって可能になる。
アイデア6 このアプローチの最高の手法のひとつとして考えられるのは、相場が両方向へ動く可能性を客観的に評価することだ。
この単純な思考パターンに従うことによって、私は次に示す最終的な結論に到達することができた。
結論
心理的問題の最も簡単な解決方法は、自分の見方や予測に基づくトレードをやめることだ。事前の計画に従って自動的に判断を下すシステムトレードだけがその機会を提供する。システムトレードへ変更することによって心理的プレッシャーが軽減され、心理的ストレスに関連するたくさんの過ちが避けられるため、問題の解決に役立つ。システムトレードそのものは、メカニカル(機械的)な判断によって利益を増やすことに役立つだけでなく、トレーダーにとってきわめて大切な心理的な快適さも提供する。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
訳者まえがき
まえがき
パート1 新人トレーダーへのアドバイス
第1章 はじめに
第2章 取引口座を開く
第3章 適切な取引会社を選択する
パート2 取引手法を開発する
第4章 投機取引における心理的課題
第5章 裁量トレードとメカニカルトレー
第6章 テクニカル分析とファンダメンタル分析
パート3 イグロック・メソッド
第7章 イグロック・メソッドの発想の原点
第8章 テクニカル分析を利用して確率を評価する
第9章 基本的なトレード戦略とテクニック
第10章 トレードする通貨ペアを選ぶ
第11章 マネーマネジメントのルールとテクニック
第12章 相場の動きとトレーダーの規律
パート4 イグロック・メソッドによる短期トレードとデイトレードの戦略
第13章 デイトレードプランの原則
第14章 仕掛け
第15章 手仕舞い
第16章 タイミングの重要性
第17章 中央銀行介入時のトレード戦略
パート5 短期トレードとデイトレード用テンプレート
第18章 平均値幅に基づくテンプレート
第19章 テクニカル・フォーメーションに基づくテンプレート
第20章 トレンドライン、サポート、レジスタンスに基づくテンプレート
第21章 サンプルトレード
■訳者まえがき
西遊記は孫悟空が活躍する奇想天外な冒険譚だが、実は、悟りを得るための修行法、いわゆる練丹法の秘伝書だといわれている。相応の修行を積んだ者が読めば奥義を授かることができる。
トレード指南書にも、素直に読ませてくれる本もあれば、読みこなすのに「技」がいる本もある。本書『Beat the Odds in Forex Trading』は、相性の向き不向きを含め、読者が試される秘伝書のような本だ……と言ったら言いすぎだろうか。
「同じチャートを見ても、フォーメーションが見える(見えてしまう)人もいれば、見えない人もいる」というようなことを著者は書いているが、それは本書自体にも当てはまるようだ。
実際、某インターネット書店での評価も見事に分かれている。確かに非ネイティブが書いた英語のような分かりにくさや意図的とも単なる怠慢とも考えられる過不足な箇所という「石」も混じっているが、そこでダメを出してしまえば「玉」はつかめない。
焦点距離を適度にずらしたときに新たな画像が浮かび上がってくる裸眼立体視(ステレオグラム)のように、読み進むうちにあるとき突然「奥義」が鮮明に浮かび上がって見えるかもしれない。
とはいえ、初心者でも、『FXトレーディング』(パンローリング)などでFX市場の基本知識を補い、実際の相場チャートと見比べながら随時読み返すことによって、勝率の高いトレードプランを構築するための強力なアイデアを数々得られるはずだ。
2007年盛夏
古河みつる
■まえがき
本書で私が明らかにした手法を積極的に実践すれば、実際の市場における学習期間を2~3年短縮し、少なくとも2万ドルの投資資金を節約できるだろう。
通貨投機を行ってきた期間、私は幸運なことに、貴重な経験を積む機会を得ただけでなく、多くの個人トレーダーの仕事ぶりを観察する機会を得ることもできた。10年以上にわたり通貨取引の理論と実践方法を個人投資家に教えてもいる。また、私自身も、書籍、各種の出版物、各種の専門的なセミナーやフォーラムでのディスカッションを通じてほかのトレーダーたちの経験を学んでいるし、世界各国のトレーダーや同業者たちとメール交換をしてきた。これらもろもろの経験のおかげで、思慮深いトレーダーがプロとしてのキャリアを通じて遭遇するであろう問題に関して、総合的な調査を自分なりに行うことができた。また、本書の基盤となり、私独自の取引手法を構築するのに使用した、広範な情報を収集することもできた。そもそも世の中に完璧なものなど存在しえないが「裁量的システム的イグロックメソッド(Igrok Discrete-Systematic Method)」が、為替投機を職業として選択する人や副収入を得る手段として考えている人にとって、真剣に検討する価値のあるものだと確信している。
まず最初に申し上げたいことは、為替投機トレーダーとしての私自身の経験、そして実際に会ったり、出版物を通じて知っている私が尊敬する同業者たちの経験からいえることは、すべての個人トレーダーが対処しなければならない問題は基本的に同じだ、ということだ。だがそれらの問題に対する解決策は、トレーダーの数とほぼ同じだけある。時を経て現れる実際の結果には、完全な勝利から完全な敗北までの、幅が生じる可能性がある。それぞれの参加者にとって、このビジネスは、あのシェイクスピアのハムレットの名ゼリフもどきの「トレーダーになるべきか、ならざるべきか」という問いかけから始まる。
未知の分野で成功を追い求めるために、金と時間(場合によってはさらにほかの職業で築いたキャリア)をリスクにさらす価値があるだろうか? この市場に参加するにしても、統計上5~7%といわれている、あこがれの成功者の仲間入りをするにはどうしたらいいのか? このビジネスに投資する資金、時間、エネルギーが正当化されるだけでなく、十分な見返りが得られるようにするにはどうしたらいいのか?
参加者は自らそれらの問いに答えることが必要だ。それに比べれば、私ができることははるかに些細なものだ。すでに「トレーダーになる」ことを選択した人たちに、マーケットというゲームに屈せず、勝ち抜くための私なりの秘訣をお教えすることだ。新人トレーダーは、本書によって、過ちから学んで必要な経験を積んでいくという従来の試行錯誤的な学習方法をとっていれば失ったであろう時間と資金をかなり省くことができる、と私は確信している(本書では、基本的なトレード用語、テクニカル分析用語、チャート、一般的に知られている記号、通貨取引に関連する略語などについては特に詳しい説明なしに使用しているので注意してほしい。それらの事項に関する説明が必要な場合は、さまざまな書籍や、私のウエブサイト(http://www.igrokforex.com/)を含む、多数のインターネットサイトで容易に見つけることができるはずだ)。
パート1 新人トレーダーへのアドバイス
新人トレーダーは、実際のFX市場でトレードを始める前に、このビジネスに関する知識を深め、実際のトレードに備えて心の準備をするためにある程度の時間を費やすべきだ。最初の段階は次の5つのステップに分けることができる。
理論的な準備と学習
チャート分析用のソフトウエアの入手と相場情報の入手先の選択
実際の相場環境に連動したバーチャルアカウントを使用して、実践的なトレーディングテクニックやスキルを身につけ、トレード戦略やシステムを開発する
取引業者または取次業者を選択する
投資資金の額を決定し、取引口座を開く
準備段階で私のアドバイスを受け入れてくれれば、効果的で楽しい学習ができるようになるはずだ。このアドバイスは学習効果を高めるためにあなたが行うべき準備事項だ。ということで、新人トレーダー向けの一般的なアドバイスから始めよう。
第1章 はじめに
FX市場に関する理論的な情報の最も大きな部分、つまりファンダメンタル分析とテクニカル分析の両理論の主要部分と一般的な情報については、本書ではふれない。通貨の投機取引に関する理論は既存の専門書を読めば勉強することができる。イグロックメソッドの勉強に入る前に、これから参加しようとしている、あるいはすでに参加しているこのビジネスに関する基本的な事項を学ぶ必要がある。イグロックメソッドは既存のいわゆる「伝統的」な手法とはまったく異なるため、理論的な準備にもそれなりの独自性が求められる。トレード理論の準備としては、以下の4つの事項を勉強することをお勧めする。
FX市場の歴史と発展
FX市場の参加者、その役割、トレードのプロセスにおける相互関係
通貨投機取引の技術と用語
ファンダメンタル分析とテクニカル分析の一般原則
重点はテクニカル分析の主要事項に置くべきだ。なかでも重要なのは、サポート/レジスタンスの理論とリトレースメント理論(ダウとフィボナッチ)という2つのテーマだ。私の取引手法では、テクニカル分析の一般理論のなかの比較的小さな部分しか使用せず、ファンダメンタル分析については基本的にまったく使用しない。だが、使用する可能性がいくら低くても、ある程度の知識を持っていることは邪魔にはならないだろう。逆に、その知識によって、イグロックメソッドをよりよく理解できるだけでなく、相場の内部的な傾向を把握するのにも役立つはずだ。 情報、データ、テクニカルサポート
コンピュータソフト、チャートプログラム、相場データ(リアルタイムとバッチ)の情報源について、特別な条件といったものはない。なにより、イグロックメソッドはごく最低限のデータしか必要としない。だから相場情報をリアルタイムで提供しているサービスならどこでも(いちばん安価なところでも)構わない。チャートを作成でき、主なテクニカル指標が使えて、トレンド線、サポート(支持線)、レジスタンス(抵抗線)を描ける最小限のグラフィックツールがあれば十分だ。インターネットを探せば無料で使えるサイトもあるはずだ。長期分析にはもっと高度なソフトウエアが必要になるが、昨今では品質的に申し分ないレベルのものを比較的安価に手に入れることができる。
これらの事項については特にリサーチをしていないので、情報サービスやチャートプログラムの比較評価をここでご紹介することはできない。ちなみに、日足・週足・月足のチャートを含む長期的なチャート分析に、私はオメガリサーチ(Omega Research)のスーパーチャート(SuperCharts)とBridge/CRBのデータサービスを使っている。このソフトウエアはリアルタイムモードに対応しておらず、データは取引が終わるグリニッジ標準時午後11時に毎日Bridge/CRBからロードされる。私はこのサービスで完全に満足している。イグロックメソッドの必要条件を満たしているし、これぐらいのもので十分だと思う。
バーチャルトレード
FX市場で実際のトレードに参加することを最終的に決断する前に、大多数の初心者がバーチャルトレード(つもり売買)と呼ばれる学習段階を経験している。それはリスクにさらす資金がバーチャルであるところだけが異なるトレードゲームだ。この段階は主として新人が実際のトレードに参加するか否かを最終的に決断する時に当たる。最終的な決断はこのようなバーチャルトレードの結果に基づくことが一般的だ。このようなトレード方法は初心者にとって必要だとは思うが、バーチャルトレードの結果は、同じトレーダーが実際のマーケットで本物の資金を使ってやった場合の結果とは異なることを強調しておきたい。結果の違いは常に本物のトレードのほうが分が悪い。最大の原因は心理的要素にある。本物の資金を失うというリスクがトレーダーにネガティブな影響を強く与え、バーチャルトレードでは避けることができたようなエラーが誘発されるためだ。だからバーチャルトレードでの結果がそのまま実際のマーケットでも得られるなどとはゆめゆめ思わないことだ。トレーダーの心理に組み込まれたネガティブな要素がいや応なしに姿を現すからだ。本物のトレードでポジティブな結果を収めるには、実際のトレードというストレスのかかった状況で心理的負荷を軽減する方法を身につける必要がある。そうすることで精神力が鍛えられ、強くなることができる。
現在では、大多数のFX取引業者や取次業者がオンライン取引サービスを提供している。大多数の個人トレーダーにとって最適なソリューションであり、大きな優位性が得られる。それら会社のほとんどは、バーチャル・トレード・サービスも提供している。その観点から私が提示できるアドバイスはひとつしかない。本物のトレードを始めるときに使う取引業者または取次業者は、バーチャル・トレード・サービスのあるところのほうがいいというだ。そうすれば、おそらくサービスのレベルを評価できるであろうし、注文の手順に慣れることができるし、その会社のオンライン・トレード・ソフトの仕様に慣れることができる。バーチャル口座の資金額を自分で決められる場合は、実際の投資で予定している金額と同じにすることが望ましい。そうすれば、すぐに対処することになる実際の状況に少しでも近づけることができるからだ。
第4章 投機取引における心理的課題
成功トレーダーのキャリアは、トレードの過程で生じることの多いストレスの高い状況で、いかに心理的な安定性を保てるかに大きく依存する。理論的な知識は専門書を読めば得られるが、実践的なスキルと経験は実際のトレードでしか得られない。最も難しいところが心理的ストレスのコントロールだ。なぜなら、現実の世界では人間の行動に影響を与えるストレス要素を完全に排除することは不可能だからだ。ストレスという要素を過小評価していると、手痛いしっぺ返しを食らったり、トレードを合理的に判断する能力が完全に妨げられてしまうこともある。FX市場を始めとするあらゆる市場におけるトレードでは、心理的ストレスがきわめて大きい。トレーダーは恒常的に心理的プレッシャーを受けながら、予測の難しい不確実な相場で判断を下さなければならない。
トレーダーはそれぞれの方法、それぞれの性格や気質に従って、過ち、失敗、損失を経験していく。その失敗を、自分の完璧な予測に反し、自分の考え抜かれた投機計画を台無しにした「相場の間違った動き」のせいにするトレーダーもいる。あとから考えれば簡単なことなのに、その場で正しい判断を下せなかった自分自身と自分の能力を責めるトレーダーもいる。その肝心な場面でどう判断すべきであったか、あとで考えてみれば合理的に見極められることが多いのは興味深い事実だ。なぜあとになるとそれほど容易かつ迅速に正しい判断が分かるのだろうか? なぜ肝心な場面でできなかったのだろうか? 今日の視点から昨日の状況を見れば、ということでは十分に説明できないと思う。古典的なテクニカル分析ではほんとどの相場状況に関して複数の説明が成立する、ということでも説明できるとは思わない。事後であれば、どんな相場変動についても適切な説明を見つけることができる。だが、頭に血が上っているときは、ストレスによる影響を受け、間違いが生まれる。このことは、ほとんどの新人トレーダーがバーチャルトレードでは並はずれた(ときには驚異的な)結果を出すのに、本物のお金でトレードするとその足元にも及ばない結果しか出せないという事実からも明からだ。
恒常的にストレスを受けていると、十分に考えず、衝動的に間違った判断を下し、損失を出したり、まだ儲けられるのに早めに仕切ってしまうトレーダーは多い。何回か連続負けを喫すると相場が怖くなってしまうトレーダーもいる。ぼうぜん自失の状態になり、何でもない相場でもパニックを引き起こすようになる。感情を抑えたり、状況を冷静に評価することができないため、合理的であるなしにかかわらず、決断ができなくなる。多くの場合、相場が保有ポジションにとって不利な方向へ動いても、損失が膨らんでいくのを指をくわえて見ていることしかできない。なぜなら、決断というものがまったくできないからだ。ところが、相場が鎮静化すると相場の動きを落ち着いて分析できるようになり、失敗の主な原因が知識や訓練の不足ではなく、自分自身の感情の問題であることに気づく。だが状況を元に戻すことはできない。時は過ぎ去り、お金は失われ、すべてを一からやり直さなければならない。
深刻かつ破滅的な結果をもたらすもうひとつの問題が願望的思考だ。つまり、自分の相場予測だけが正しいと確信しているのだ。相場にサプライズはないし、あってはならないと考えている。役に立つ可能性のあるほかの選択肢を考慮しなかったり、ほかの選択肢をあいまいで不確実な形でしか考えない。自分のポジションにとって不利な相場変動は短期的かつ一時的であると考え、ナンピンを始める。相場が戻ってくると願いながら安値で買い増し、ポジション全体での収益性を高めようとする。その後、状況がさらに悪化しても、大きな損失なしに手仕舞いすることが可能になると考える。自分が正しいことを確信し、相場、ひいては自分のポジションを客観的に評価する能力を失ってしまう。自分の願望的思考を裏づけるテクニカルパターンだけに目を向け、都合の悪いシグナルは無視してしまう。そのような願望的思考はかなり高くつき、心理的な挫折をもたらすことがある。「相場の間違った動き」はトレーダーから資金を少々奪うだけにとどまらず、取引口座を根こそぎ奪い去ってしまうことが多いが、トレードという戦いで勝者になるという自信と望みも踏みにじってしまう。
そのような損失を被ると、トレーダーは自分自身を責め、失敗したトレードを何度も細かく振り返る。「相場の間違った動き」や、その時点では完全に明白だった状況における自分自身の失敗を責める。ときには、トレーダーと市場が敵同士のようになってしまうことがある。トレーダーは市場を敵のように考え、嫌悪感をあらわにし、常に復讐することを考えている。天気が晴れから雨に変わったことに関して自然を責めているのと変わらないことに気がつかない。変化に対しては、事前に備えておくことがきわめて重要だ。先見性によって好機や利益がもたらされるように、状況や天気の急変に備え、常にいくつかの選択肢を用意しておかなければならない。
3つめの心理的問題は、特にトレーダーの経験、能力、スキルが不足している場合の不確実性、つまり保有している各ポジションに対する確信のなさだ。ポジションを建てた途端、トレーダーは自分の選択に疑問を感じ始める。それは、仕掛け値の近辺で変動しているようなおとなしい相場で最も顕著に現れる。自分のポジションに対して不利な動きが少しでもあると、相場が仕掛け値から大きく離れて手遅れになってしまう前に、損失を限定するために建てたばかりのポジションを手仕舞いたくていたたまれなくなる。一方、相場が少しでも有利な方向に動くと、利益が(たとえ少しでも)乗っている間に、その利益が損失に変わってしまう前に、ポジションを清算したいという衝動に駆られる。
恐れと不安でいっぱいのトレーダーは、焦り、動き回る。仕掛けと仕切りを頻繁に繰り返し、無数の小さな損失と利益を積み上げる。気持ちが強気と弱気でせわしなく切り替わる。その結果、相場に格別な動きがなく、単なる「ノイズ」による変動しかない状態では、取引業者が課すスプレッドとコミッションによって損失を被ることになる。資金の少ない、経験が乏しい、心理的な準備が不十分な初心者や個人トレーダーに典型的な損失だ。
事前に相場を真剣に分析して計画を立てることもなく、直感的に判断を下しているトレーダーもけっして珍しくない。衝動的に根拠もなしに、感情的に反応してポジションを建てる。その行為の多くは、相場が提供している絶好の機会を逃してはならないという恐怖心のなせるわざだと説明できる。発車する電車の最後の車両に飛び乗ろうとして破滅したトレーダーを私はたくさん見てきた。どんな種類の相場変動でもおちついて見ることができないトレーダーも多い。私の生徒のなかにもそういうトレーダーがいた。相場が大きく動いたときにポジションを持っていなかったら、稼ぐ機会を逸したと考え、それだけで大きなショックを受けしまうのだ。
ポジションを持っていなければ、相場を両方向で考え、簡単に反転する可能性もあることを認識できるかといえば、そうではないようだ。統計的に見れば、相場変動によって損失を被る確率は利益を得る確率よりもはるかに高い。ふだんは銀行窓口の職員が他人のお札を勘定するのを冷静に見ていることができるような理性的な人たちが、相場変動が自分の懐に対する脅威とどうして感じてしまうのだろうか? 銀行員が手にしている他人のお金が失われた自分の利益であるとは考えないのに、市場における資金移動に対応する相場の変動のせいでネガティブな感情が生まれるのはなぜだろうか? その答えは、市場では大金を簡単に儲けられるという幻想があるからだと私は考えている。同様な幻想は新人FXトレーダーの間にも広く見られる。そういう幻想を早く捨てることができれば、それだけ早く一人前のトレーダーになることができる。
経験を問わず、すべてのトレーダーにとって最も難しい問題は、このビジネスでは避けることのできない損失から早く立ち直る方法をできるだけ早く学ぶことだ。同時に、損失のショックや心理的打撃に対処する方法も学ばなければならない。放置しておくと将来の行動にマイナスの影響を与える可能性があるからだ。
損失そのものと損失を被ることへの恐怖は、複雑な状況において合理的な判断を下す能力にマイナスの影響を与える。どちらもトレーダーの心を痛め続け、トレード戦略やトレードシステムのルールに従う能力を弱める。
私は何百人ものトレーダーと個人的に知り合い、その人たちのすることを見てきた。たくさんの教え子がいるし、私自身もFX市場でさまざまな段階での経験を持っている。そのことから、為替投機取引における失敗の主な原因には心理的トラウマ――自分の感情をコントロールし、ストレスに対処する適切な方法を見つける能力の欠如――が間違いなく関係していると確信している。
ストレスの大きい状況への抵抗力を高め、トレードの有効性を向上させることを中心に、私はFX市場における取引から生じる心理的な問題を解決する方法を探求してきた。その結果、ショックに耐え、感情をコントロールしておくことにも役立つ取引手法を開発することができた。ストレスの問題を解決するには、問題をいくつかの部分に分け、ひとつひとつ解決していくことが必要だった。
まず、相場に対する姿勢に関して「哲学的コンセプト」を構築する必要があった。それは、本書の後半で説明する取引手法だけでなく、相場や、私自身を含むほとんどのトレーダーが日々克服する必要がある心理的問題に関するコンセプトも含めてだ。私のコンセプトにとって「意見を持たなければ間違うことはない」という基本原則はきわめて重要だ。
この基本原則はトレードにまつわる無用なストレスと感情を回避する方法を考えていたときに思いついた。相場の見通しに対する自分の意見ではなく、相場のシグナルに基づいて合理的な判断を下す方法を見つければ、心理的プレッシャーとストレスを軽減し、ほぼ完全に排除するという目的は達成される。その場合の主な問題は、相場トレンド――人間のコントロールや予測を超えた自然現象――に対する哲学的なスタンスだ。
秘けつは、こうした自然現象を有利に活用する、安全かつ効果的なトレード戦略の開発だった。この基本原則は論理的であり、トレード戦略のコンセプトを開発するための基礎になると思われた。だが現実には、この作業にはかなりの時間を要した。とはいえ、この基本原則は、私が「裁量的システム的」と呼ぶシステムトレード手法の開発の基礎として使用された。
基礎となる基本原則とコンセプトから中間的な結論を経て、私は取引手法の開発にたどりついた。この手法は、感情を排除したトレードを可能にし、為替投機で稼ぐためのきわめて効果的かつ収益性の高いツールになった。
私の論拠の論理的な連鎖と中間的な道筋を以下に示そう。
アイデア1 ネガティブな感情とストレスの主な要因は、将来の相場動向に関するトレーダーの見方に基づく予測が当たらなかったことにある。
アイデア2 不要な感情や心理的プレッシャーを避けるには、将来の相場トレンドに関するすべての考えを完全に捨てたほうがよい。なぜなら、その考えが予測を形成し、その予測が間違う可能性があるからだ。
アイデア3 「意見を持たなければ間違うことはない」という原則の基本的なアイデアは、トレード結果の道義上の責任をトレーダーからマーケットへ移すことにある。そうすれば、相場の変動をいわゆる「神の意志」や「自然界の力」の現れと見なすことができるため、トレーダーの責任ではなくなる。
アイデア4 予測をせずに利益を得ることは、相場を予測するのではなく、トレンドをフォローすることによってのみ可能になる。
アイデア5 相場変動をフォローすることは、システムトレードの手法だけを使用し、それらの変動を効果的にモニターするトレード戦略を開発することによって可能になる。
アイデア6 このアプローチの最高の手法のひとつとして考えられるのは、相場が両方向へ動く可能性を客観的に評価することだ。
この単純な思考パターンに従うことによって、私は次に示す最終的な結論に到達することができた。
結論
心理的問題の最も簡単な解決方法は、自分の見方や予測に基づくトレードをやめることだ。事前の計画に従って自動的に判断を下すシステムトレードだけがその機会を提供する。システムトレードへ変更することによって心理的プレッシャーが軽減され、心理的ストレスに関連するたくさんの過ちが避けられるため、問題の解決に役立つ。システムトレードそのものは、メカニカル(機械的)な判断によって利益を増やすことに役立つだけでなく、トレーダーにとってきわめて大切な心理的な快適さも提供する。
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