ボリンジャーバンド入門・相対性原理が解き明かすマーケットの仕組み
ボリンジャー・バンド開発者による書籍
「ボリンジャー・バンド」は有名なテクニカル指標であるため、FXをはじめとする相場の分析を行なったことがある方であれば、ご存知の方が多いと思います。
ボリンジャー・バンドはチャート上の移動平均線を中心に上下に標準偏差に基づき算出されたラインを描画するテクニカル指標です。
「今さらボリンジャー・バンド?」と感じる方も多いと思いますが、この書籍はボリンジャー・バンドの開発者でもあるジョン・A・ボリンジャー氏による書籍で、開発者が何を意図してこのテクニカル指標を作ったかを知ることができる貴重な書籍です。
現在はインターネットが普及し、「ボリンジャー・バンド」と検索すると、ボリンジャー・バンドに関して多くの情報を得ることができるますが、開発者が意図した内容と異なる情報も多く、誤った理解をしている方も少なくないと思います。
特に多いのは、ボリンジャーバンドが逆張り用の指標として紹介されているケースです。
この使い方自体を否定するというわけではありませんが、開発者のボリンジャー氏は順張りの際に用いる使い方を中心に紹介しています。
開発者の使い方を用いれば必ず勝てるというわけではありませんが、ツールの内容を理解するという面では、開発者がどのような意図で作ったかを理解するということは重要であると思います。
ボリンジャー・バンドの分析をするならTradingviewまたはfxTrade(Web版)がおすすめ
OANDAのfxTrade(Web版)のチャートやTradingviewのチャートを使うと、通常のボリンジャー・バンドはもちろん、ボリンジャーバンド%B、ボリンジャーバンド幅のインジケーターもデフォルトで装備されています。
ボリンジャーバンド%Bやボリンジャーバンド幅のインジケーターで表示される内容は通常のボリンジャーバンドから得られるものではありますが、視覚的にわかりやすく、分析を容易に行うことができます。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
■目次
日本語への序文……1
監修者まえがき……3
序文……5
第1部 序論……23
第1章 はじめに……25
第2章 原材料……33
第3章 時間枠……49
第4章 継続的アドバイス……59
第5章 自主判断……63
第2部 基礎理論……67
第6章 歴史……69
第7章 構造……95
第8章 ボリンジャー・バンドの指標……109
第9章 統計……121
第3部 ボリンジャー・バンドの独自の働き……129
第10章 パターンの識別……131
第11章 ファイブ・ポイント・パターン……141
第12章 W型ボトム……161
第13章 M型トップ……177
第14章 バンド・ウォーク……187
第15章 スクイーズ……197
第16章 メソッド:ボラティリティー・ブレイクアウト……207
第4部 ボリンジャー・バンドに用いる指標……221
第17章 ボリンジャー・バンドと指標……223
第18章 出来高指標……239
第19章 メソッド:トレンドのフォロー……253
第20章 メソッド:反転……263
第5部 応用課題……269
第21章 指標の標準化……271
第22章 デイトレーディング……285
第6部 要約……293
基本原則15条……295
まとめ……297
用語集……301
脚注……337
参考文献……347
公式集・テクニカルパターン……351
日本語版への序文
日本的な思考方法とテクニックは私の人生と研究に非常に深甚な衝撃を及ぼしたので、東洋的な影響抜きでの人生を考えることは難しい。子供のころ、私はある隣人の家の書棚で一冊の禅に関する本を見つけた。それから間もなく、母が日本に旅行し、多くの関心をそそられるものを持って戻ってきた。こうしてお膳立てが整った。
後に、私はテクニカル分析に興味を持つようになり、チャートの作成方法を探究し始めたとき、ローソク型チャートが価格の動きを描写するうえで非常に優れた方法であることは容易に理解できた。そこでできるかぎりの資料を集めたが、幸いにも清水正紀氏の『チャートの王者、日本式チャート(”The Japanese Chart of Charts”)』の英語版に接して貪り読んだ。
1980年代に東洋と西洋の分析手法を融合しようという動きが始まった。それ以来、ローソク型チャートはほとんどの西洋式分析手法の基盤として採用されるようになり、西洋人の手になる東洋式分析テクニックに関する著作が若干出版された。多くの分野で日本と西洋のテクニカル分析の融合が行われた。興味深い例としては、ローソクの長さを出来高の変数として用いるというものがあった。これは1930年代のE.S.クィンの研究とローソク型の組み合わせである。今後ともさらに両者の統合が行われる可能性は大きい。2001年秋、日本テクニカルアナリスト協会の主催で東京で開催される国際テクニカルアナリスト連盟の総会で論文を発表するのは、私の名誉であり喜びとするところである。この論文の主題は、ボリンジャー・バンドのフレームワークにおけるローソク型パターンの識別であるが、これも東西のテクニックの融合である。
本書における中心的な概念は相対性である。ボリンジャー・バンドは、出来高指標のような西洋式テクニックとローソク型によるパターン分析のような日本式テクニックが極めて効果的に調和した、相対的なフレームワークを造りだすために考案したものである。日本の読者にとって、相対論的な概念は直感的に受け入れやすいかもしれない。西洋人はとかく白と黒の見地から物事を考えがちだが、東洋人には灰色の影の方がより気が休まるのである。これが、日本人がファジー論理(これは私たちのwww.EquityTrader.comで行っているストックレイティング・サービスの根底にある概念である)を容易に理解し、もともとは西洋人の作りだした概念であるにもかかわらず、この道の研究で長足の進歩を遂げた理由かもしれない。
大いに日本的な考え方の恩恵に浴したので、本書の日本語版の出版は、何がしかのお返しの機会が与えられたものと考えている。日本のマーケット・テクニシャンが、どのようにボリンジャー・バンドを利用するのかを、また東西のテクニックを組み合わせて、それぞれの分野単独では達成できない可能性の高みにまで昇華させることを、見せていただくのを心待ちにしている。
2001年12月
ボリンジャー・キャピタルマネジメント社、社長
チャータード・ファイナンシャル・アナリスト(CFA)
チャータード・マーケット・テクニシャン(CMT)
ジョン・ボリンジャー
www.BollingerBands.com
序文
1984年6月、私は初めてカリフォルニア州サンタモニカ市オーシャンパーク・ブルバード2525番地のドアを通りぬけた。そこはファイナンシャルニューズ・ネットワークの本拠で、同社は経済、マーケット、ビジネスに関するニュース報道専門の全国初のテレビ・ネットワークであった。FNNの本社はひどい場所で、今にも壊れそうな2階建ての箱型の建物であった。それは著しく印象に欠ける建物であった。真四角で、少し傾いて、狭苦しい建物の中には、多数のスタッフがいて、毎日12時間のビジネスニュースを放送する責任を負っていた。それも僅かな報酬で、しかも実際に見る人もいないのにである。これがちょうど17年前、私の出くわした光景であった。
私がFNNで得たのは見習いの仕事であった。それはスピルバーグ氏もルーカス氏も私の映画製作者として芽生えかけている才能に気づいてくれなかったからである。私の存在を知らなかったというより、私自身は自分が世界的に通用する独創的な映画監督としての潜在能力をもっていると確信していたのだが、ほかにはだれも私が映画学校を卒業することに気づいていなかったようだ。わずかに高校時代からの旧友が有給の職を提供してくれたのだが、それはメディアと言っても私にとってはまったく未知の分野であった。FNNは当座の骨休めの場所で、いつか私をすぐにも有名に、また金持ちにしてくれる本流のテレビショーや長編映画の台本を売りにまわって、好機をつかむ地歩を築く間の生計を立てる手段であった。
そこで腰掛け仕事のつもりでFNNで働き始めた。ここで学ぶ経験は私のメディア向けの技能を磨くのに役立つかもしれないと思ったのだが、仕事の内容は驚くほど単調であった。少なくとも当時はそう感じた。夥しい数字があり(私には数字の才能がなかった)、専門用語が多く、今までに聞いたこともないような言葉が多かった。今でも羊毛の先物とかパームオイル市場とかの言葉がすぐに思い浮かぶ。しかし,FNNのニュースルームにいる連中は、こうした言葉のすべてに興味をもっていたので、私は非常に好奇心をそそられた。部屋にいる全員が熱心に従事している一見無意味なことは、一体何に関係があるのだろう。どうしてあの人たちはチャートやグラフを眺めているのだろう。一体あの連中が明けても暮れても話をしているのは何だろう。私は不思議に思い始めた。
私が好奇心をつのらせた話をする前に、フィナンシャルニューズ・ネットワークの職場環境を説明させてもらいたい。箱型の建物の1階には、主な部屋が3つあった。ニュースルームは、質素なものであったが、縦10メートル×横15メートルの長方形で、内部には机が車座に並んでいた。その上には必需品のIBMのセレクトリックス・タイプライターとニュースを打ちこむタイプ用紙の入った箱が置かれ、その下には中味が溢れでた紙屑箱があった。記者とプロデューサーは皆非常に若くて20代か30代の前半であった。シニア・プロデューサーたちは、ほとんどがもう少し年齢が上でニュース業界で長年働いてきた人たちだった。硬派の出版、放送ジャーナリストの寄せ集めであった。彼らは、今まで試みられたことがないこの新興のニュース報道を、何とかまとまった形にしようと何度も試みては失敗していた。
ニュースルームの隣には、2つの小部屋があって、そのひとつにはプロデューサー助手とセグメント・プロデューサーがいて、その日のニュース放送用にテープを継ぎあわせていた。もうひとつの部屋は、FNNの生放送に出演する何人かの専門家用でその中にジョン・ボリンジャーがいた。ジョンは、故エド・ハートと一緒に、その日のマーケットの出来事に関するFNNの解説番組を担当していた。エド・ハートは、白髪のビジネス・ニュースのベテラン・キャスターだった。FNNで働くかたわら、エドはロスアンジェルス地域のニュース専門ラジオ局KFWBでも、毎日のニュース番組を担当していたが、この局はライバルでもある――規模がやや大きいローカル局の――KNXと競争をしていた。
エドは気むずかし屋のなかでも、もっとも気むずかし屋の部類に入る人であった。エドは、きわどいジョークが好きで、辛辣な性格であったが、私が今まで一緒に働いたうちで最高のビジネス・ジャーナリストであった。彼は経済やマーケットの歴史については百科辞典的な知識の持主であった。彼は写真のような驚くべき記憶力と鋭いウィットを持っていた。彼は馬鹿者は容赦しなかったし、人の知識不足を指摘するのにも遠慮がなかった。しかし彼は心の広い人で、ヨット遊びとダンスを除けば、ビジネスニュースほど好きなものはなかった。
特に忙しいある日、スタッフ全員が締め切りに追われているとき、当時の編集長が頭をひねって取り組んでいた言葉遊びの助けを求めてニュースルームに入ってきた。ほかのだれもが放送に間に合わせようと必死になっていたが、我らが編集長はそれに気がつかず、「ジャンブル」だったか、何かそれに近い遊びを完成するという重要な仕事に心を奪われていた。彼は大声で「ジジューン(”jejune” -つまらない)」の定義を知っている者はいるかと尋ねた。答えたのはエド・ハートだけだった。「それはジュジュライ(Ju-July)の前の月ですよ」と言ってエドは指をパチンと鳴らして出ていった。エドは大抵もっと重要なこと、正確で、時宜を得て、洞察力に富む判断が必要なことを考えていた。エドはこう した判断がすべてできる人物であった。彼のマーケット予測は素早く、常に正しく、彼の説明はだれもその表現を繰り返して言えそうもないくらい難解であった。
FNNのもう一人の専門家が、ニュースルームのかたわらの部屋で事実上孤立して座っていた。それがジョン・ボリンジャーであった。彼はFNNの常勤のマーケット・テクニシャンであった。チャートやグラフを前にしてマーケットの動きの反復パターンを探しだしながらとうとうとまくしたてて、FNNの視聴者に過去のパターンを識別することによって、将来のマーケットで頭脳的な投資ができると説明するのが彼の役目であった。彼は株価表示機、旧式なコンピューターと大量の紙に取りかこまれていた。当時の私には何の本か見当もつかないタイトルのテクニカル分析に関するあらゆる本に埋もれていたことは言わずもがなである。ボリンジャー――私たちは彼をこう呼んでいたのだが――は、つむじ曲がりに属する人間で、マーケットのことになると自説を曲げず腹蔵なくものを言った。彼は非常に面白い経歴の持主だった。彼のその部分に私は引きつけられた。彼は長年カメラマンを勤め、CBSのニュースマガジンである「60ミニュッツ」の仕事をしたこともあった。私たちは映画が好きで、優れた台本を書くことに興味がある点で共通性があり、いくらか波長の合うところがあった。しかし、私にとっては、テレビの本流で立派な仕事に就いていた人間が、ある種の人には何らかの意味があるのだろうが、紙の上ののたくった線を眺めるために、その職を断念したことが腑に落ちなかった。理解はできなかったのだが、先にも言ったように私は好奇心を抱くようになったのであるが……。
FNNに入社したとき,私は経済もマーケットもビジネスもまったく理解していなかった。脚本の大当たりを待ちながら,何ヶ月かの間だらだら過ごしているうちに、私はそこで働く人たちと、FNNを特徴づけている放送内容にだんだん興味を引かれるようになった。後になって知ったことだが、ビル・グリフィスとスー・ヘレラ(当時はマクマホン)が新しいビジネス番組を作ろうとしていた。エド・ハート、ジョン・ボリンジャーそれにシニア・プロデューサーのタグ・クライトンがいれば、それだけで時事問題、ビジネス、マーケット、経済について素晴らしい会話ができたことだろう。私はそのような話題について理解しているふりをしたことはなかった。しかし、彼らは私をそのなかに引きずり込んだ。私はビジネスニュースの中毒になり、その症状は今日に至るまで続いている。
私を実際にFNNにつなぎ止めた人物のひとりがジョン・ボリンジャーだった。彼の取り組み課題に対する熱中ぶりは感染性のものであった。彼のマーケットとその歴史について次から次へと学ぼうとする情熱には、人を奮起させるものがあった。そして、私たちは彼の飽くことを知らない知識欲に追いつこうといつも奮闘していたが、彼の細部にわたる注意力のおかげで私たちが越すべき仕事上のバーの高さが持ち上げられていった。ボリンジャーのマーケットに対する知識が増えるにつれて、彼の洞察力が彼を取りまく人間たちにもだんだんと役に立つようになってきた。彼がマーケットからのメッセージを吸収して、その意味を視聴者に説明するスピードの早さは印象的であった。
ジョンと一緒に働いていた仲間たちにとって、彼がいつかテクニカル分析の分野で重要な貢献をするだろうということがだんだん明らかになってきた。かつては、ウオールストリートのなかで発展の遅れていた分野が、マーケット分析において非常に尊敬されるような形に成長していった。ジョー・グランビル、ロバート・ファレル、エドソン・グールド、ロバート・プレクター、それにもちろんチャールズ・ダウのような偉大なテクニシャンが今日に残るマーケット分析の形態を考案した。現実に、ウオールストリートのすべてのブローカー業、マネー・マネジメント業、大手のヘッジファンドがテクニカル・アナリストを雇っている。すべての投資家が常にエッジ(優位性)を探し求めるようになった。テクニカル分析が“利益と損失の差異を意味する”エッジを判断するためのツールのひとつになったのだ。
前にも言ったように、同僚たちの多くはジョンが重要なアナリストの列に加わって、テクニカル分析の手法や概念を変えるようになるのは時間の問題だと考えていた。そして実際にそのとおりになった。
本書は、マーケットを学ぶ人たちすべての必読の書である。本書は、ファイナンシャルニューズ・ネットワークで私たちが一緒に働いていたときに、ジョンが行ったテクニカル分析に対する重要な貢献の結果を詳細に説明したものである。ジョンがボリンジャー・バンドを発明したとき、私はその重要性に気づかなかった。前にも言ったように、私は自分が担当していた問題を十分理解するまでに多くの年月を費やしたし、ジョンの研究は、私が当時経験したほかのものと同じように不可解なものであった(読者の中には、私が今でもテクニカル分析が不得手であると思っている人がいるといけないので言っておくが、嬉しいことには今はもはやそうではない)。
しかし、多くの偉大な発見と同様にボリンジャー・バンドも簡単ですっきりしている。バンドはマーケットの変動にともなってパラメータを明確に定める。バンドは期待の限界を定め、トレーダーにマーケットの動きの程度とそのスピ-ドを悟らせる。ボリンジャー・バンドは曲線を描くが、破られるようにできている。投資家の欲しがるも最も重要な情報のうちのいくつかは、バンドが破られたときに得られるのである。バンドの構成は数学的であるが、投資家にとって非常に貴重な多くの情報を図上に描き出してくれる。
端的に言えば、ボリンジャー・バンドはすべての投資家、トレーダー、マネー・マネジャーが理解して活用すべきテクニカル・ツールである。これは、バンドと同じ名をもった人がマーケット分析に対して行ったいくつかの貢献のうちのひとつにすぎず、これによって彼の名前は長い間記憶されるであろう。
ロン・インサナ
2001年6月 CNBC
第1部 序論
IN THE BEDINNING
第1部では、ボリンジャー・バンドを用いたテクニカル分析の原資料を紹介する。取引における3種類の異なったタイムフレームの定義とその重要性を説明し、あわせて私たちの市場に対する活動とアプローチの方法についての哲学的な考え方に触れる。
第1章 始めに
Introduction
80年以上も前に、物理学者アルバート・アインシュタインは相対性理論を発表した。その理論の骨子は、すべての事物はほかの事物との関係によってのみ存在するということで、その必然的な結論は、何事も単独では存在しない、つまり絶対的なものは存在しないというものであった。例えば、黒があるためには白の存在が必要で、早いというのは遅いとの関係で存在し、高いというのは低いという比較対象がなければ成り立たない。アインシュタインはこの理論を物理学に応用し、実際にはこの理論に関心を持って当然な支持者の多くを失った。しかし、哲学者のバートランド・ラッセルのような人たちが同様な理論を物理学以外の分野に広めた。
1925年ネーション紙に連載された「相対性のABC」のなかでラッセルは、人々が相対性の概念に慣れれば考え方が変わるだろう、つまり抽象的な思考方法を広げたり、古くからの絶対的な法則を相対的な概念に置き換えることができるだろうと述べている。確かに科学の世界では考え方は変わったが、相対性理論が一般文化の中に浸透しても人々の考え方はほとんど変わらなかった。これはこの理論に慣れ親しんだり、いくらかでも理解している人が極めて限られていたからだ。
アインシュタインが研究を始めた頃、米国最高裁判所判事オリバー・ウェンデル・ホームズ2世が、米国の司法制度を相対的な方向に転換しようとしていた。判事は、裁判所が絶対的真実を決めることはできないと主張した。裁判官ができるのは、立場の違う申し立てに対して相対的な価値判断を行うことだけであって、それは社会的な枠組みのなかの判断で、絶対的なフレームワークでの判断は不可能だというものである。裁判官になって間もないころ、ホームズ判事は次のように語っている。
「法律は何世紀にもわたる一国の発展の歴史を具体化したものであり、数学の本に書かれた公理や命題と同じように扱うことはできない。現在を知るためには、過去を知り、また未来の方向を知らねばならない」
アインシュタイン博士やホームズ判事の研究は、決して隔絶したものではない。両者とも社会のなかで生まれつつある(趨勢)にいち早く気づいたのだ。19世紀も終わりに近づくと、世界はだんだんと複雑さを増してきたので、人々の生活を支配してきた絶対的真実がもはや役に立たなくなり、「進歩を続けるには相対的な思考の枠組みが必要だ」ということが広く理解されるようになった。その事情は市場でも同じであった。
こうした考えの根底にあるものは謙虚さである。人々は人間の限界に気がついた。これは西洋的発想というよりむしろ東洋哲学の反映である。投資をする際に、どんなに完全なアプローチ方法を採ったところで、目標はあくまで目標である。近づくことはあっても、目標は最後にはいつも手からすり抜ける。実際には完全なシステムなぞあり得ない。潜在的な力を駆り立てて、能力の限界まで努力するほかないのである。
バーナード・マンデルブロットは、カオス理論の研究の初期に、綿花価格の非線型習性を発見した。彼に続いて、「金融システムは実際には極めて複雑で、複雑なことでよく知られているシステム、つまり天候と同じくらい錯綜し予測困難な動きをするものだ」と説く学者たちが現れた。システムが複雑になるにつれて、昔ながらの線形分析手法が使えなくなり、システムの理解がより困難になってきている。この複雑なシステムの理解に役立つ唯一の手段は、相対的手段である。
これについて賛否の議論を掘り下げるのは、本書の目的ではない。しかし、価格は正規分布しないし、市場は人が考えるほど単純なシステムではないという論証の重要性を認識すべきである。私たちの基本的な想定は、市場のシステムは日増しに複雑になるので、熟知するのが次第に難しくなってきているということである。
昔からの格言によると、市場で儲けるには、安く買って高く売るか、逆に高く売っておいて安く買い戻すかだという。しかし市場は、以前にもまして価格変動が激しくなり、パターンも複雑になっているのでこれを実行するのがだんだんと難しくなっている。世界中で最も先物取引が活発な(シカゴ取引所)の立ち会い場で生まれた寓話がある。それは、立ち会い場を治める神がいて、その神の定める規則はただ2つというものだ。ひとつは底値で買えるのは生涯で一度だけ、2つめは天井で売れるのも生涯で一度だけというものだ。もちろん、この寓話の意味するところは、逆に天井で買ったり底値で売ったりすることが如何に多いかということにある。
本書の目的は、株式を買った後でまだ値下がりが続く安値買いの罠や、売った後でどんどん値上がりが続く高値売りの罠など、投資家が陥りやすい数々の罠を避けるための手助けをすることにある。ここでは、昔ながらの感情に基づいた市場攻略法を相対的なフレームワークに置きかえることによって、綿密な価格評価を可能にし、絶対的な真実をあてにすることなく、一連の理性的な投資の意思決定を導きだすことを目的とする。安く買い高く売るのだが、それは“相対的な意味”で安い、あるいは高いからそうするのである。絶対的なものに頼ることは最小限にとどめたい。「高い」の定義はトレーディング・バンドの上部を指すものとし、「低い」の定義はその下部を指すものとする。さらにここでは、このフレームワークをあなたの好みとあなたの個人的なリスクー報酬特性の基準に合わせるため、多くの提案を行っている。
第1部は、この第1章「はじめに」から始まり、第2章はアナリストにとって入手可能な原資料について説明する。第3章では、分析のための適切なタイムフレームおよびボリンジャー・バンドを作成するための正しい期間と幅の選定の仕方を学ぶ。第4章では多少哲学的になるが、継続的アドバイスおよび“リスクー報酬特性に優れたチャンスを生むセットアップを発見する”プロセスという2つの対照的なアプローチについて述べる。第5章では、本書で学んだ発想を活用して成功する方法を述べ、第1部の結びとする。
第2部は、ボリンジャー・バンドのテクニカルな側面を詳しく説明する。まず第6章ではトレーディング・バンドの歴史(第4部第20章でもトレーディング・バンドに基づいて私たちの知る限り最古の取引システムを再現する)を、第7章ではボリンジャー・バンドの構造を学ぶ。第8章ではボリンジャー・バンドから導かれた指標である%b、すなわち価格の高低を数学的に判断する方法およびボラティリティーの尺度となるバンドウィズを研究する。第2部の最後となる第9章では、ボラティリティーのサイクルを説明し、ボリンジャー・バンドの発想の基になった学説をいくつか紹介した後、統計に関連する問題を概観する。
ボリンジャー・バンドの背景の詳細に興味がなければ、第2部は飛ばしてボリンジャー・バンドの使用方法を説明する第3部に直接進んでもよい。第3部と第4部は、第1部と第2部で説明したことを基礎にして書かれているが、独立して読んでも差し支えはない。
第3部では、ボリンジャー・バンドの基本的な使用方法を説明する。第10章と第11章ではパターンの読み取り方を説明し、アーサー・メリルのM型とW型パターンの分類を紹介する。次いで第12章と第13章ではボリンジャー・バンドを駆使して最も典型的な取引パターンを解明するが、第12章でW型ボトムを、第13章でM型トップをそれぞれ取りあげる。「バンドを歩く」という最も微妙な局面については第14章で説明する。最後にボラティリティーに関連する2つの章を設けている。第15章ではスクイーズについて説明し、株式および債券市場におけるその例をいくつか検討する。第16章は、ボリンジャー・バンドを使った緻密な分析法である3種類の簡単なメソッドの第1番目、すなわちスクイーズに基づく発生するボラティリティー・ブレイクアウト・システムについて述べる。
第4部では、分析手段として指標を追加する。バンドと指標を組み合わせて理性的な意思決定のフレームワークを(作る)のである。第17章は指標とバンドの組み合わせに関する総論である。第18章では、出来高指標について説明するが、このなかにはボリンジャー・バンドに使用するのに最適な指標がある。第19章と第20章では、価格の動きと指標を組み合わせて、つまり%bと出来高オシレーターを使って、2つの理性的な意思決定システム、すなわちトレンドをフォローするシステムおよび高値と安値を探し出すシステムに焦点を当てる。
第5部では、ボリンジャー・バンドとともに使用する標準化指標(第21章)とボリンジャー・バンドの使用頻度が高くなってきているデイトレーダーのためのテクニック(第22章)などの高度な問題を取り上げる。
第6部は、基本原則15条を掲げてボリンジャー・バンドに関する主な論点を要約し、さらに結びの言葉を述べる。
第6部の次に脚注を掲載した。重要ではあるが各章の流れを妨げるおそれがあり、本題をやや離れる考え方をこの脚注に加えた。この注は非常に価値があるものなので、必ず参照してほしい。また各章で引用した資料に関する参考事項もこの脚注に記してある。
第3部と第4部で紹介した3種の取引メソッドは、事実上予測取引である。メソッドⅠは、低いボラティリティーを利用して高いボラティリティーを予測するものである。メソッドⅡは、既に確認された強勢を利用して上昇トレンドの始まりを予測し、あるいは確認された弱勢を利用して下降トレンドを予測するものである。メソッドⅢは、相場の反転を予測する2種類の方法で、これは一連の上部バンドのタグと勢いの衰えつつある指標示度の組み合わせから、または一連の下部バンドのタグと勢いを増しつつある指標示度の組み合わせから反転を読み取る方法である。さらにドラマティックなのは、メソッドⅢによって、未確認のボリンジャー・バンドのタグ、つまりポジティブな出来高指標をともなう下部バンド・タグ、あるいはネガティブな出来高指標をともなう上部バンド・タグを見つけだす方法である。
さて、ここで専門用語に目を向けて見よう。専門用語だけに頼るわけにはいかないが、頼らないわけにもいかない。何年か前に、フィナンシャルニューズ・ネットワークに、ラジオ部門出身で金融関係には素人だが、いかにもやり手の経営者タイプの男がやってきて、「キャスターが専門用語を使った場合、その都度流れを止めて用語の定義をしなければならない」と命じた。これには一理ある。本書では使用する専門用語を折りにふれて定義するが、全体の流れを妨げる場合にはこの限りではない。そこで、便宜上専門用語を用語集として1ヶ所にまとめた。専門用語の使用を最小限にとどめ、使用する必要があればそれを用語集に入れるように最大の努力をした。したがって、本文では定義されていないがなじみのない用語が、あるいは思いがけない用法で引っかかったとき、用語集を見れば大抵の場合定義が見つかるはずである。用語集にはもう一つの目的がある。それは、投資用語の定義は不適切である場合が多い。用語が複数の意味を持つ場合もあり、混同されやすい。本文で使用した用語の意味は、用語集で説明している。
巻末には参考書籍を掲載したが、ここに挙げた書籍は本書の主題に密接に関係したもので、その多くは手近に入手できるものである。学術的な文献の相互参照が目的ではなく、容易に手に入る参考書の手引きを意図したものである。ほとんどの書籍は、図書館あるいは近くの金融関係の書店で入手可能である。
読者の便宜のために、最終ページに使いやすい参考カードを綴じこんだ。カードの表には、ボリンジャー・バンドの基本原則が書かれている。内側にはM型とW型のパターンが、裏側には最も重要な公式が記載されている。これを切りとって、本書を読むときにしおりとして利用して欲しい。読後はコンピューターの側に置けば、分析をするときに重宝するだろう。
最後につけ加えると、本書をサポートするウェブサイト、http://www.BollingeronBolingerBands.comを開設した。このウェブサイトには、ここに紹介した3種類のメソッドそれぞれの要件を充たした株式のデイリーリストと、本書の基準に基づいて多数の株式を選りわけるスクリーニング・エリアを提示している。また、大図表やボリンジャー・バンドに関する問題を議論したり、意見交換できるコミュニティールーム、それにボリンジャー・キャピタルマネジメント社のほかのサイトにつながるリンクも用意してある。本書を読めば、ここに掲げたツールやテクニックを自由に駆使して、現在または将来の投資や取引を緻密に評価できるだろう。これは、投資・取引のプロセスにまつわる感情的要素の多くを排除し、投資家・トレーダーとして真に潜在能力を発揮できるアプローチである。
用語集
アクセラレーション
価格の変化率の変化率またはあるいは価格の2次導関数を測定する指標。これはトレンドの変化の
早期警告手段として最も有益である。ベロシティーおよび変化率の項参照。
アキュムレーション・ディストリビューション
各期間の始値と終値の関係に基づいた出来高指標。ラリー・ウィリアムズによって考案され、日ーソク足チャートとの関連が密接であることから「ジャパニーズ・ボリューム」と呼ばれることもある。公式は(終値一始値)/(高値一安値)×出来高である。マネーフロー・インデックス(MFI)および出来高指標の項参照。
アームズ・インデックス
リチャード・アームズの考案したアームズ・インデックスは株式市場における売り・買いの勢いのバランスを表す尺度である。構成要素は、値上り株と値下り株および増加出来高と減少出来高である。この指数が1.0の場合両者の勢いは均衡している。1.0以上になれば売りの勢いが強い。1.0以下は買い手の責任である。市場は長期的に数字が高めに偏向する習性があるので、この指数の平均示度は0.85付近である。この指標から、市場のタイミングを計る非常に興味深いツールであるオープン型アームズ・インデックスを作ることができる。またこの指標はTRINとも呼ばれている。公式は(値上り株÷値下り株)÷(増加出来高÷減少出来高)である。オープン型アームズ・インデックスの項参照(『相場心理を読み解く出来高分析入門』[パンローリング]参照)。アルファ値
市場による影響が取りのぞかれた後の証券の独自な収益性を表す数学的尺度。エクイティートレーダー・ドット・コムでは、上昇相場と下落相場で別々のアルファ値を計算している。
移動平均
直近のn期間の平均価値(平均値)の計算法で、直近のデータを使って連続する期間の平均値の計算を繰り返す。
移動平均収斂・乖離法
ジェラルド・アペルの開発した短期の平均線と長期の平均線の乖離を対比する指標。出来高加重MACDの項参照。
一服(中段の保ち合い)
大きな動きの後でリフレッシュするための休止期間。この期間中に上昇基調の株のリラテイブ・ストレングス線が平らになるか、あるいは少し下向きになることから、ピボットと呼ばれることがある。
イントラデイ・インテンシティー
ある証券に対する資金の流れを表す出来高指標で、その値動きのレンジのなかのどのポイントで取引が完了したかに基づいて作成される。デイビッド・ボステイアンが開発したもの。公式は(2×終値一高値一安値)/(高値一安値)×出来高。
インフレーション
購買力が時間の経過とともに減少する傾向。通貨単位に対して言われるのが一般的。年率2%のインフレーション率は、今日1ドルで買えた物が一年後には1.02ドルとなっていることを意味する。
ウェッジ
ボトムの上昇またはトップの下落を典型的な特徴とする一服のパターン。
ウオッシュアウト
投資家の興味を完全に無くさせるか、あるいは希望を失わせるような大量の売りによる相場の急落。反発の先駆けとなる底固めのプロセスの第1段階であることが多い。
売られすぎ
買われすぎの反対語。
売りぬけ
抜け目のない投資家や「強力な投資家筋」が、機敏さに欠ける投資家や微力な投資家に売るプロセス。相場が天井で下落が予想されるときに起きるといわれる。
出来高対応チャート
Ⅹ軸に価格の代わりに出来高をとるチャート作成法。インベストグラフスのエドウィン・S・クインが開発した方法だが、現在はアームズ・インデックスで有名なリチャード・アームズが首唱している。伝統的なチャート手法に対するこの新しい角度からのアプローチによって有意義な考察の可能性がでてきた。この方法を主要なツールとしては勧めないが、ほかの方法では判然としないパターンを明らかにするのに役立つ。
エリオット波動
R.N.エリオットが説いた、すべての相場の動きは主要な5つの波動と3つの修正波からなる秩序正しい展開を見せるという理論。このパターンは入れ子式になっていると考えられる。すなわち、ひとつの大きな波は、上昇5波修正3波という同じパターンの小さな波に分解できるというのである。この自己対称性は、相場のフラクタル性を示唆したものだが、この性質は後に研究者によって確認されている。エリオットの波動論とW・D・ギャンの著作は相場の内部構造に目を向けた研究方法の代表例である。こうしたアプローチはマーケット構造が巨富を得る鍵になると考えている。しかし実際には、彼らはすでに起きた事柄については極めて雄弁に説明したが、将来起きるであろうことにはほとんど言及しなかった。
エンベロープ
価格構造のまわりに構成される線であるが、相対的な意味で価格が高値か、あるいは安値かを識別する移動平均のような中心的傾向値に基づいた測定法との関連性はない。
オシレ一夕ー
ある一定の数値(通常はゼロ)の上下、あるいは2つの数値の中間を振り子のように揺れる指標。ブランコのように揺れることをオシレートということからこの名がつけられた。上下の限界がないオープン型の指標の反対語。指標はオシレ一夕ー型、オープン型のいずれでも表せるものが多い。
落とし穴(ダマシ)
人に誤った立場を取らせる一連の状況や価格動向。ブルのダマシの例は、価格が上部にブレイクアウトした場合、さらに上昇するものと確信させるが、実際は急に下落するような場合である。ベアの落とし穴はこの逆で、新安値へ下がったかと思うと力強く上昇するような場合である。
オプション
定められた期限内に、一定の証券あるいは指数を買い、あるいは売る権利を与える金融上の契約。これは権利であって義務ではない。コールは買う権利を、プットは売る権利を与える。
オープン・エンド・ファンド
その純資産価値でファンド運用会社との間で売買ができるミューチュアルファンド。
オープン型アームズ・インデックス
これはアームズ・インデックスの変形である。アームズ・インデックス自体の平均ではなく、インデックスの構成要素である価格や出来高の平均によって作られる。10日間のオープン型アームズ・インデックスは、1.10から1.20の辺りで買いのシグナルを出す便利な市場参入タイミングのツールである。1日のアームズ・インデックス示度の対数の平均値を求めて、その真数を得ることによっても同じ結果が得られる。アームズ・インデックスの項参照。
折れ線チャート
データポイントが1本の線でつながれているチャート。多数のデータが提示されていたり、あるいはデータをひとつの点として表すことができる場合には便利である。終値一定期間の最後の価格。最新価格の項参照。
オン・バランス・ボリューム
ジョー・グランビルによって一般に広められた出来高指標。この指標の作成は毎日の価格変化がプラス・マイナスのいずれかに注目し、出来高を、この価格変化のプラス・マイナスに分けて累計する。
買戻し
空売りの手仕舞いのこと。よく急速に価格を押し上げる作用をするといわれているが、これは空(から)売りをした人がポジションを手仕舞いしようと必死になって、そのためにはどんな価格でも執行しようとするからである。
乖離(かいり)
トレンドラインが将来にわたって合流する見込みのない状態。ダイバージェンスとも言う。例えば価格の動きのトレンドラインは上昇し、指標の動きのトレンドラインが下降する場合、この2つのラインはどんなに将来の方向に延長してみても交差することはないだろう。この場合、2つのラインは乖離するという。もし2つのラインが互いに意味のある関係を持っていれば、この乖離の結果は今後の見通しが弱気であることを示している。収斂の項参照。
確認(コンフアメーシヨン)
価格と指標が一致していて、そのために互いに確かめ合っていると言われるマーケットの状態。多重共線性の項参照。
下降傾向(ダウントレード)
価格が着実に下落しつつある状態で、通常チャネルを描けば一目瞭然になる。下降傾向は、それが大勢になるとベア・マーケットと呼ばれる。
加重移動平均
計算に使用する各日数に与えられた比重が異なる移動平均。代表的なものは、フロントウェイテッド移動平均で、計算上直近期間の数値がそれ以前の数値に比べて高い比重で扱われる。
株式
証券取引所で取引ができる会社の所有持分。立会場の皮肉屋は、株式を会社そのものと混同するなと注意している。
空(から)売り総額
株式の空売り(ShortSales)残高の総額。
買われすぎ
現在では価格が高すぎるところまで、早すぎる速度で上った状態をいう。以前は、価格がもっと絶頂期にあるという意味であった。
頑固(愚鈍)
売るのは利が乗っているときだけという考え方。損を出した取引からは抜け出すが、もっと儲かる機会を求めてできるかぎりの資本を蓄えておくという賢明なやり方と対照的である。
ギャップ
価格の急激な変化によって生じる価格構造上の不連続性。通常市場が閉鎖中に新しい情報が発表されたときに生じる。テクニカル・アナリストは、ギャップを重要な情報を持った価格構造の有意義な構成要素と見なしている。
ギヤン,W・D
投資においてマーケットの内部秩序を観察する方法を提唱した主要人物。ギャンの信奉者はマーケットに秘密の鍵があり、それが探し出せれば自分たちは金持ちになると信じている。エリオット波動の項参照
業種
類似の業務上の性格を持つ株式の集合。ラショナルグループの項参照。
業種分析
株式が類似の業務上の性格を持つグループのメンバーだと考えるマーヶットへのアプローチ法。業種やマーケット・セクターがポートフォリオの収益性の重要なファクターだということは、多くの学問的研究で指摘されている。グループ・パワーの項参照。
玉(ぎょく)集め(アキュミュレーション)
「投機筋」あるいは「情報通」が高値を期待して株式を取得するプロセス。これはテクニカル・アナリストにとって中心的概念となるものである。多くの指標、特に出来高指標はこのプロセスに注目している。その発想は、株価が大きく動く前に抜け目のない投資家が値上りを期待して株を集めようとする目に見える期間があるというものである。売りぬけの項参照。
均衡(バランス)型投資信託
一般的には、債券と株式の双方のポシションを持つ投資手段。マーケツトの状況変化に応じて双方のバランスを変えるものもある。ごく最近では、ロングとショートのポシションを取る投資信託を指す。
グループ
類似の業務上の性格をもった企業群に関する価格指標。ラショナル・グループというのは、類似の事業を行う企業のなかで株式が類似のパターンで取引される企業群を指す。
グループ・パワー
WWW・BollingerBands.comのウェブ上で、あるいはeメールで送信される分析情報のデイリー・サービスで、ラショナルグループの株式のトレンドに関する分析を行っている。
グロース株
企業の現状ではなく、企業の将来性が主たる価格決定要素となる株式。とくに継続的に高率の成長が期待される株式をいう。グロース株の発行会社は低配当または無配当であるため、伝統的な分析手法での分析が困難である。計数では評価できない企業が出現することがあるが、こうした企業はインターネット・マニアの格好の話題である。
クローズドエンド・ファンド
取引所で取引されるミューチュアルファンド。その純資産の価値に応じてプレミアムあるいはディスカウントで取引される。
グロース・ファンド
グロース株に特化したミューチュアル・ファンド。
下落リスク
価格の下落が予想される最大限度。通常リスク・リワード特性の評価の検討に使われる。上昇リスクの項参照。
交差シグナル
価格が境界線、代表的なものは移動平均線を横切るときにできるシグナル。
コポック曲線
クラシックな投資ニュースレター『トレンデックス』の発行者であるE・S・C・コポックが開発したフロントウェイテッド(直近加重)平均法。もともとのコポック曲線は月間データを使用した。コポックは投資ニュースレターを「これはあなたのような人にはもったいない材料ですよ」というような書き方をする解説者として有名である。
コール・オプション
ある証券を一定期間内に、一定価格で買う権利をその持主に与えるオプション。これは権利であるが義務ではない。プット・オプションの項参照。
サイクル
定期的に発生する出来事。4年ごとの大統領任期のサイクルは、株式市場におけるサイクルの最も適切な例である。ボラティリティーにもサイクルがあり、例えば財務省証券には19日のボラティリティー・サイクルがある。
サイコロジカル、またはセンチメント指標
市場参加者の姿勢や感情に関するデータ。強気あるいは弱気センチメントの調査あるいはオプション市場での強気ベットや弱気ベットの集計が代表例である。最も有名なものは、『インベスターズ・インテリジェンス』誌による投資アドバイザーたちの意見調査やプット・コール・レシオである。この指標は極端な場合、逆張り投資家の手法とみなされる。
サイドライン・バー・アンド・クリル
人の活動を、それに巻きこまれずに観察することができる快適な場所。例えば、過渡期や乱高下の時期に現金を抱えていること。立会い場の皮肉屋が絶えず出入りする場所。
最頻値
一連のデータのなかで最も頻繁に現れる値。
先物取引
契約者がある商品を一定日時に一定価格で買うか、あるいは引き渡す義務を負う契約。通常先物を契約するときには、履行を保証するために証拠金を積まなければならない。
算術目盛り
チャートに目盛りをつける方法で、価格の水準にかかわらず、2点間の一定の距離はチャート上のどこの地点でも等しいもの。対数目盛りの項参照。
時価総額
企業の市場価値で、発行株式に最新価格を乗じたもの。
時間枠
実際に取引をする場合の時間的視野を中期の時間枠というが、これを中心に考えるのが時間枠である。この中期は私たちにとっては約20日である。中期時間枠は、短期と長期という他の2つの時間枠に挟まれている。短期は取引を実行する時間枠である。長期時間枠は私たちのマーケット活動の背景となるものである。古風なテクニカル・アナリストは短期というと日足チャートの活動を、中期はウイークリーチャートの活動を、長期はマンスリーチャートの活動を思い浮かべる。現在では、5分単位のバーチャートを使うトレーダーであれば、半時間を中期と考えるかもしれない。時間枠の基準はまったくあなた次第である。その基準がどんなものであろうと、あなたの中期的なプランに前後する時間枠にも常に注意を払うべきである。
ジグザグ
上昇と下落が交互に生じるパターン。一般的にはある最小限度の価格幅に限定している。
支持(サポート)
価格の下落が止まり反転する領域。支持は、しばしば知覚価値と関連する。レジスタンスの反対語。
指数
ある一定の基準日または参照日の数値を基準値(一般には100)として調整された一連のデータ。株式実績、インフレーション、通貨価値を測るのに使われる。
指数移動平均
幾何曲線に従って、各先行期間の影響度を低めて直近値が与える影響を高めたフロントウェイテッド移動平均。EMAの公式は非常に複雑だが、すっきりした簡単な計算方法に単純化されたので、平滑法として非常に普及してきている。
修正
トレンドを変えるものではなく、トレンドの状況のなかでの反対運動。
収赦(コンバージェンス)
トレンドラインが現時点で、あるいは将来合流するか、あるいは交差する状況。乖離の項参照。
証券
例えば企業の株式あるいは債券のように、全体の小部分を売買できる投資手段。
上昇リスク
ある期間内に価格の上昇が予想される最大限度。通常リスク・リワード特性の評価で検討される。下落リスクの項参照。
上昇トレンド
着実に価格が上がる時期。
ショート
証券を空売りしている状態。買う前に売っているのは、価格が下がるという見込みによる賭けである。立会い場の皮肉屋の言葉に「自分のものでないものを売るのだから、買い戻さなければならない。さもなくば刑務所行きだ」というのがある。
スクイーズ
ボラティリティーが収縮した時期で、ボラティリティーの増大時期の先駆となる。ボラティリティーが6カ月間で最低になると、それはスクイーズの警報である。
ストキャスティックス
現在の価格が直近のn日の取引値幅のどこに位置するかをパーセンテージで示すもの。10日間のストキヤステイクが70といえば、価格が直近10日間の最安値から最高値に至る間の70%のところにあるということである。
スパイクトップ
孤高のトップで、鋭い上昇と警告なしの急激で鋭い下落を特徴とする。
スリッページ
買いたいと思った価格と実際に買った価格の差。目標達成上の大きな障害となる。取引コストの項参照。
正規化時価総額
ある企業の市場価値を他の企業と対比するためにパーセンテージ化してランクづけを行ったもの。ランキングの100が時価総額が最大の企業で、0は最小企業である。
正規化指標
ストキヤステイクスや%bのように数学的変換法を使って標準化された形に調整されたり、あるいは共通のファクターによって調整された指標。
正規分布
釣鐘型の曲線で表される事像の分布傾向。
セクター
共通の経済課題を持つ業種の集合体。基礎物資やテクノロジーは、セクターの好例である。
セットアップ
取引を成功に導く確率の高い要因の組み合わせ。例えば、指標による確認のないバンド・タグあるいはW型ボトム。
セットバック
好材料の後によく見られる下落のような、一時的な値下がり。
対数目盛り
チャートのy軸上の一定の距離がポイントの変化ではなく、パーセンテージの変化を示す目盛り。とくに長期のチャート用として便利である。算術目盛りの項参照。
高値
一定期間内に記録された最高の価格。
多重共線性
いくつかの指標が互いに確認しあっているように見えるが、実際には同じメッセージを互いにくり返しているだけで、確認していない一種の落とし穴。この代表的な例は、いくつかの異なったモメンタム指標を使った場合である。
立会場の皮肉屋
マーケットにおける事実関係、虚構、秘密情報、伝承、うわさ話の伝達役をつとめる博学だがかなり皮肉ぼい人の例え。
ダブル・トップ
最初の高値が引き戻しに出合い、ふたたび高値に挑戦して失敗するという特徴を持つトップのフォーメーション。
ダブル・ボトム
1度目の安値が2度目の安値に成功裡にリテストされて完成する特徴を持つボトムのフォーメーション。
短期
中期的な動きの範囲内での価格変動によって決められるタイムフレーム。中期的な上昇トレンドを修正するのは短期的な下降トレンドである。私たちの目的では1日から10日の間を指す。税務目的では12ヶ月以内である。
単純移動平均
移動平均の最も一般的なタイプ。どの期間も対等の重みをもつ。トレンドラインと並ぶ最も基本的なテクニカル分析のツール。
チャートクラフト
エイブ・コーエンが設定した有名なポイント・アンド・フィギュアの情報サービス企業。
チャネル
ある期間の取引価格がチャート上の平行なトレンド線に囲まれている領域。この領域は広がるか、平坦か、縮まるかである。チャネルの多くはまず2つ以上の重要な高値または安値を結んだ線を描き、次にその反対側に平行線を引くことによって作られる。チャネルは、線型回帰分析線のような中心線のまわりに描かれることもある。
中央値
一連のデータのなかの中間の値。
中期
重要性が中程度のマーケットの動きを伝える時間枠。大きなベアマーケットやブルマーケットの間の修正、あるいはベアやブルマーケットの中での個別の局面がその好例である。投資家の時間枠に応じて調節が可能である。
長期
マーケットの主要なトレンドで、通常は複数年。私たちの目的では6カ月ないしそれ以上の期間。キャピタルゲインの目的では1年ないしそれ以上。投資家の好みに応じて調整すればよい。
直近価格
一定期間の最新の価格で、期間が終了したか否かには関係がない。終値の項参照。
通貨指標
通貨の状況を知る手がかりとなるフェデラルファンドレート、あるいは通貨供給の成長率などの一連の指標。
強気市場
持続的な価格の上昇期間。
抵抗(レジスタンス)領域
現行価格の上にあって、以前にある取引が成立したことが識別できるチャート上の領域。このときに高値で買った投資家は、もう一度この価格まで戻れば売ろうと考えていると思われるので、値上がりの動きが停止する。
ディスインフレーション
インフレーションの後で価格が安定に向かう動き。
ティックボリューム
一日または一定期間の価格変化の数または価格掲示の数。
ティピカルプライス
一定期間に記録された価格の平均値を求める方法。終値よりは価格動向の性格づけが鮮明になることが多い。公式は(高値+安値+終値)÷3または(始値+高値+安値+終値)÷4である。
出来高
一定期間内に取引された銘柄の取引数量あるいは取引のあった銘柄数。
出来高・価格トレンド
ディビッド・マークスタインの開発したオンバランス・ボリュームの変形で、計算にパーセントの変化を用いる。
出来高加重MACD
バフ・ドーメイア一によって開発されたMACDの変形。指数移動平均の代わりに出来高加重平均を使用する。
出来高指標
出来高を総合して需給均衡の核心に迫るように工夫されたテクニカル分析用の指標。
テクニカル指標
通常、意志決定を助ける価格、出来高その他のファクターの数学的な構成概念。一般的に需要と供給のバランスに着目する。
テクニカル分析
いついかなる時も、価格はその証券について知り得るすべてのことを反映しているとする信念に基づく分析方法。価格構造そのものが将来の価格を予測するデータとして最善の情報源であると考える。
手数料
そのサービスに対する報酬としてブローカーに支払わなければならない取引実行のコスト。
デパーチャー・クラブ
一方は長く、一方は短い2つの移動平均線の差異を表したグラフ。デパーチャー・グラフはMACDの先駆的存在で、モメンタムの測定に使用される。
デフレーション
価格の下がる期間。デフレーションがさらに厳しい状況になると、購買力の縮小という性格を持つようになる。
騰落株線
毎日の値上がり銘柄の数から値下がり銘柄の数を差し引いた数値の累積合計の指標を線型で描いたもの。市場平均株価と比べると、長期的な指標として使用するには不都合が生じるので、無用だという人も多い。しかしバンドと一緒に21日合計を使うと、マーケット参入のタイミングを計るツールとしてなかなか興味深い。
トップ
重要な下降へと導く価格チャート上の領域。通常は最近達成された最高点。
トライアングル
探み合いのパターンで、この間にボラティリティーが着実に減少する。
取引コスト
取引を行うためのコスト。主として「ずれ」と手数料。
トレンド
ある株式が検討を受けている全般的な方向。
トレーディング・バンド
価格構造を取り巻いて形成された間隔で、価格分析や指標の解釈のための相対的な枠組みを提供する。
トレーディング・レンジ
長期間取引がそのなかに閉じこめられたような姿を見せる価格の範囲。一般的にトレンドの脇道であるが、時間が経つとレンジが上下することがある。一般的にトレーディング・レンジは中段の保ち合いのパターンで、その後に直前の動きを再現する。またこのレンジは反転の領域でもあるが、その場合底や天井の形で識別できる。トレーディング・レンジのなかで、専門家が採用するテクニックは、トレンドが続くマーケットで採用するものとはまったく異なる。例えば、トレーディング・レンジ内における底や天井での反転の識別はRSIのようなオシレ一夕が有効だが、トレンドが続いている相場では役に立たない。トレンドが続く相場では、移動平均あるいは回帰チャネルのようなトレンドをフォローする方法のほうがもっと役に立つ。
トレンドライン
チャートに描かれた株式のトレンドの観察を容易にするためにチャート上に引かれた線。一般的には重要な高値あるいは安値を線で結ぶ。
日本式出来高
アキュムレーション・ディストリビューションの項参照。
ニュースで売れ
良いニュースが、とくに非常に期待されていたニュースが発表されると、利食いが起こるはずなので、売るのが最善の策であるという発想。同じような発想に、ニュースが発表されたら、株はもうあまり上がらないというのがある。立会場の皮肉屋の言葉に「うわさで買って、ニュースで売れ」というのがある。
ネガティブ・ボリューム・インデックス
出来高が減少する日に価格に重要な動きが生じるという理論に基づく指標。この指標とポジティブ・ボリューム・インデックス(PVI)の両者ではなく、どちらか一方を選ばなければならないのだが、PVIが望ましい。ポジティブ・ボリューム・インデックスの項参照。
ネットブル
『インベスター・インテリジェンス』誌による投資アドバイザーの意見調査に由来するサイコロジカル指標。調査では、ブルのパーセンテージからベアのパーセンテージを差し引くが、中立の意見は考慮していない。マーケットのセンチメントを評価する最善の方法のひとつである。
パーシスタンス
直近のn期間において指数がプラスであった日数をパーセントで示したもの。イントラディティ・インテンシティーで使われるのが代表的である。この場合、過去6カ月のうちに、マネー・フローの測定値がプラスになった日数がパーセントで表される。バー・チャート
価格をy軸に、時間をⅩ軸にとり、一定期間の取引を表した垂直のバーを用いたチャート。バーの頂点はその期間の高値、バーの底点は安値、左側の目印は始値、右側の目印は終値を示す。
ハート・エド
ファイナンシャル・ニューズ・ネットワークの著名なコメンテーターで、故人。辛辣な論評と「コンプレション」「テープ上の緊張」のような隠語や、米ドルを「寡婦と孤児の空売り商品」と評したことで知られる。
始値
一定期間内の最初の取引価格。
%b
最新のデータボントのボリンジャー・バンド上における位置関係を示すべく導入された指標。%bは上部バンドで1.0、中央バンドで0.5、下部バンドで0となる。公式は(最新価格一下部ボリンジャー・バンド)÷(上部ボリンジャー・バンドー下部ボリンジャー・バンド)である。
バックアップ
リトレースメントの項参照。
パワーシフト
トレンドを破るに十分な勢いや弱さが見られるときに、売られすぎあるいは買われすぎの状態から生じるテクニカルなシグナル(www.EquityTrader.comのウェブで参照のこと)。
反対意見
ハンフリー・ネイルが唱えはじめた理論で、群衆に逆らって進むべきだと説く。すなわち、もし全員が強気なら慎重に弱気のケースを検討すべきであり、その逆も成り立つというものである。相場が極端に達した場合に、最も効果を発揮する非常に強力な投資手法である。
バンド
価格構造のまわりに中心傾向値の計測基準に基づいて描かれた線。チャネルとエンベロープ参照。
バンド幅
ボリンジャー・バンドから導きだされた指標。公式は(上部バンドー下部バンド)÷中央バンドである。スクイーズの項参照。
引き戻し(押しと売り)
主要なトレンドと反対の価格の動き。ただしトレンドを妨げるほどの動きではない。
ヒストグラム
基線-通常はゼロ-からそれぞれのポイントまで縦線を引いてデータポイントを示すチャート。指標を表すのによく使われる手法。
ピボット
上昇株の一服状態で、そのリラテイブ・ストレングスは平坦になり、その後トレンドの回復が始まる。さらに、パワーシフトの後に修正シグナルが現れる。
標準偏差
平均値からの偏差を測定するボラティリティーの数学的尺度。ボリンジャー・バンドの根本原理。
ピラミッド
4つの層からなる株式市場の階層的構造。最下層には株式があり、次に業種の層、その上にセクター層があり、市場が頂点にある。現在、グループパワーは、3700の株式を150の業種に分類し、それを13のセクターに大分類しており、ピラミッドの頂点はひとつのマーケットである。
ファイブ・ポイント・パターン
数学的フィルターを使って価格パターンを分類する方法。理論上可能なファイブ・ポイント・パターンの数は、M型で16、W型で16の合計32である。
ファンダメンタル指標
キャシュフロー、純資産額、売上高、収益などの数字に基づいた企業や経済の評価。伝統的には会計上の数字を使用するが、今日ではもっと包括的なデータを使用する。
ファンダメンタル分析
証券の将来の価格を予想するために基調となる事実に焦点を合わせる分析方法。例えば、ある企業の成長性を分析した結果、期待が持てるとなると、アナリストはその企業発行の証券が安すぎるので買うべきだと考える。ファンダメンタル・アナリストは自分の分析が正しいと信じており、相場が自分の考え方と違えば、相場が間違っているので好機が到来していると考える。テクニカル・アナリストはマーケットが正しいと考える。
ファンド
一般的には、何人かの投資家が共通の目標を達成するために資金を出し合う単一の組織。
フイボナッチ
自然界のいたるところで見られる1.618対1という比率を発見したことで知られるイタリアの数学者。これは、連続する2つの数の和は、その次の上位の数になるという数列から導き出した比率である。1をスタートとすれば、次のようになる。 1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144……。例えば、144/89=1.618で89/144=0.618である。多くの人が、この比率は相場の内部秩序のひとつの様相を表していると考えている。
フィルター
分析を容易にするために原データを平滑にする数学的なツール。私がよく使うのはパーセンテージのフィルターで、これは一定の大きさ以下の変動を消去してくれる。アーサー・メリルの『フィルターをかけた波動(FilteredWaves)』(文献参照)を参照のこと。
プット・オプション
一定期間に一定価格で証券を売る権利を与えるオプション。これは義務ではない。コール・オプションの項参照。
プット・コール・レシオ
オプション取引から発生したセンチメント指標で、マーティ一・ツバイクが考案した。
プライスフィルター
短期的なノイズ(変則的で小刻みな動き)を減少させて、パターンをはっきりさせることを目的とした数学的なツール。
ブラック・ショールズ・モデル
最も有名なオプションの評価モデル。評価額やインプライド・ボラティリティーを含むあらゆるオプションの変数を計算するために使われる。非常に有益なツールなので、たいていのテクニカル分析のソフトウェアに組みこまれている。ローレンス・マクミラン著の『戦略的投資としてのオプション(“Option as a StrategicInvestment”Lawrence McMi11an,New York:New YorkInstitute ofFinance,1986)』などのオプションに関する良書を参照のこと。
ブレイクアウト
レジスタンス領域の上に価格を持ち上げる価格の動き。特にトレーディング・レンジの終わりとなる動き(ブレイクダウンも同じ意味だが、価格を持ち上げるのではなく押し下げる動き)。
プレドス
ある取引所の市場活動に参加している株式銘柄の数。その数の比率が高ければプレドスが良好で、活動が活発だと言われる。参加銘柄数が少なければ、マーケットは閑散で、存続が危ぶまれる。
ペア
反対の性格をもった証券の組み合わせ。ヘッジファンドがよく使う戦略である。
平均値
一連のデータのなかの平均の値。
平方根ルール(SRR)
フレッド・マコーリーの発明したこの/レールをマーケットの動きに当てはめると、ある個々の株式の価格はその株価の平方根が等量に変化する分だけ動くというものになる。これは値段の安い株式が高い株式に比べてより変動幅が大きいことを示唆している。
ベース
価格下落の後の比較的狭いレンジで証券が取引される時期で、通常は反騰の前ぶれである。なお一服(保ち合い)を「ベーシス」と呼ぶのが最近の流行である。
ヘッジ
2種以上の証券を、ひとつが他の特性(リスク)を相殺するような形で組み合わせること。その目的は、2種の証券を組み合わせてひとつの取引戦略を決めるか、あるいはポシションを取ることにある。
ヘッジファンド
同時に、ロングとショートのポジションを取ったり、またレバレッジを採用したりする特別なタイプのミューチュアル・ファンド。ヘッジファンドは国際的な性格をもつことが多い。
ベータ値
マーケットに対する証券の反応を表す数学的尺度。ベータが1.0の場合は中立の状態。2.0はその証券が市場の2倍の動きを、0・5は半分の動きをすることを示す。エクイティートレーダーは上昇相場と下降相場の別にベータ値を計算している。アルファ値の項参照。
ヘッド・アンド・ショルダーズ
ネックラインをもった3部分からなるテクニカルチャートのフォーメーションで、その出来高のパターンにも関連する特徴がある。天井のパターンとして最もよく見かけるものだが、逆さの形で底のパターンにもなる。
ベロシティ
価格変動率。反転フォーメーションが生まれる以前にトレンドの変化を読み取るときに最もよく使われる。変化率の項参照。
変化率
一定期間の価格変化で通常パーセントで表現される。例えばニューヨーク証券取引所総合指数の12日間の変化率は、同市場の買われすぎ、売られすぎの適切な指標と考えられている。これは私たちのマーケットモデルの構成要素でもある。モメンタムの項参照。
ホイップソー
売った直後にすぐ買いを行う、あるいはその反対の行為。取引コストが嵩むので経済的でないことが多い。
ポイント・アンド・フィギュア
時間とは無関係にただ価格の動きだけを記録するタイプのチャート。ボリンジャー・ボックスの項参照。
ポイント・アンド・フィギュア・スイング
ポイント・アンド・フィギュアのルールによって表された現在の価格動向の方向。最新のポイント・アンド・フィギュアの反転で生じた方向。
ポジティブ・ボリューム・インデックス
出来高が増えた日は重要な意味をもつという理論に基づいた指標。前日比で出来高が増えた日の価格変化の累積値である。ネガティブ・ボリューム・インデックスの項参照。
ホットライン
最新のマーケットの状況に基づいてアップトゥーデートな投資アドバイスを行うサービス。もともとは電話を使っていたが、最近ではファックス、さらにeメールを使ったものも多い。
ボトム
相当期間安値を続ける価格のテクニカル・フォーメーション。V型とW型のボトムが一般的である。Vフォーメーションはよくスパイクボトムともよばれる。W型には2回の押し目があり、2回目は第1回目でつけた安値のリテスト(再挑戦)と呼ばれる。
ボマー・バンド
ボブ・ブローガンとマーク・チャイキンによって考案されたトレーディング・バンドで、過去1年のデータの85%がそのバンド内に入るように平均線を上下させたもの。
ボラティリティー
価格が変わろうとする性質。ボラティリティーには多くの測定方法がある。最も普及しているのは標準偏差である。
ボラティリティー・ブレイクアウト・システム
ボラティリティーがある水準を超えると作動するように設計された取引システム。このシステムで最も興味深いのは、まずスタートでボラティリティーが低くなければならないことである。
ボリンジャー・バー
バーチャート上のバーの始値と終値の間が、終値が始値より低い場合は赤に、終値の方が高い場合は緑に塗られているもの。バーの残りの部分は青色である。日本のローソク足と西洋のバーのエッセンスを組み合わせている。
ボリンジャー・バンド
ボリンジャー・バンドは移動平均線のまわりに作られたバンドで、相対的に高値と安値を識別する。バンドの幅は、価格の標準偏差の倍数である。ボリンジャー・バンドの初期設定は、20日間の移動平均線と標準偏差の2倍のバンド幅である。
ボリンジャー・ボックス
ポイント・アンド・フィギュア・チャートのボックスの適切な単位を連続的に定める方法。これは現在RTRソフトウェア社のテクニフィルター・プラスで採用されている。
マクレラン・オシレ一夕ー
値上がり、値下がり銘柄数を公表していれば、どのマーケットでも計算できるプレドス・オシレ一夕一。通常、ニューヨーク証券取引所用に計算されている。プレドスの項参照。
マネーフロー
マネーフローは、非常に濫用されている言葉である。物事を簡単にするために3種類の定義を掲げる。マネーフローⅠ、マネーフローⅡ、マネーフローⅢの項参照。
マネーフローⅠ
価格の動きを出来高と関連づけることによって、証券取引高の増減を計測する目的で作られた指標群。アキュムレーション・ディストリビューション、イントラデイ・インテンシティー、マネーフロー、オン・バランス・ボリューム、ポジティブ・ボリューム・インデックスの項参照。
マネーフローⅡ
ウェルズ・ワイルダーのレラティブ・ストレングスの指数の出来高加重バージョン。非常に有益である。
マネーフローⅢ
これは、もともとドン・ワーデンによって開発されたもので、ティツクボリュームとも呼ばれるが、ひとつひとつの取引についてその価格と出来高の動きを数学的に査定する方法である。現在では、サム・へイルやラズロ・ビリニがこの方法の首唱者である。
未確認
価格の動きが指標の動きには反映していない状態。トレンドの反転が差し迫っているとの警告であることが非常に多い。
ミューチュアルファンド
共通の目標を目ざして多数の人が資金を出し合う投資手段。
揉み合い状態
相場の上昇、あるいは下落の後に、取引が狭い値幅で行われる局面。トレンドが現れない時期。ピボットの項参照。
モメンタム
一定期間内の価格変化で、通常ポイント数またはパーセントで表示される。例えば、最も有名で便利なモメンタムの尺度は、当日のニューヨーク証券取引所の株価指数から12目前の同指数を差し引いた値である。物理学でいえば、これは一次導関数である0変化率の項参照。
安値
一定期間内に記録された最低の価格。
弱気市場
価格の下落が長期にわたって続く期間。
ラショナルグループ
共通のビジネス特性をもち、市場での取引パターンが類似している株式の集合。グループパワーの基礎となるもの。
ラショナル分析
テクニカル分析とファンダメンタル分析の各手法の接合。
リアクション
修正の項参照。
リスク調整後リターン
ネガティブなベータ指数が1より大きいときに、ネガティブ・ベータ指数で割った証券の年間収益。本質的にはボラティリティーの下落限度で割り引いた年間収益である。
リトレースメント
主なトレンドに対抗して、もとの動きへ一部リトレースする小さな動き。主要な動向に対する部分的な押しや戻りのこと。リトレースメントの主な水準はもとの動きの1/3、1/2、2/3であると考えられている。リトレースメントの目標値を計算するのにフイボナッチの級数を使う人が多い。
利回り曲線(イールド・カーブ)
短期金利を左側に、長期金利を右側にとったグラフの上に、満期とそれに対応する金利水準を描いたもの。一般的には、米国財務省債券が対象である。通常の時期には、短期金利は長期金利より低い。したがって、曲線は左から右へ向って上昇し、これがポジティブ・スロープとよばれる。
流動性
本質的には、取引の可能性。流動性が高ければ高いほど、取引が容易になる。例えば不動産は流動性が低く、取引が完了するには6カ月以上を要する。一方、出来高の大きい株式は比較的流動性が高く、通常、取引は瞬時のうちに完了する。流動性が低いほど取引コストが高くなる。
レラテイブ・ストレングス
これはある銘柄がある指数または一定の株式の集合に対して、どういう関係にあるかを示すものである。最も簡単なレラテイブ・ストレングス線は、ある銘柄の株価をS&P500の価格で割ったものである。もう少し複雑なものはレラテイブ・ストレングス・ランキングであり、これは一定期間のある銘柄の価格動向を同時期の母集団となる株式群の価格動向と対比したものである。
レラテイブ・ストレンクス・インデックス
ウェルズ・ワイルダーが考案した指標。値上がりした日の証券の価格の動きと、値下がりした目のその証券の価格の動きを対比した指標。実質的には、証券の強さと弱さの比率である。マネーフローⅡの項参照。
ローソク足チャート
日本のチャート作成法で、チャート上に価格の動きを描くのにローソクを用い、始値と終値の関係をそのローソクの実体の色で示す。このチャートは、特に伝統的な西洋式の方法では状況がよく分からない場合でも、非常に状況の理解に役立つ。エクイティー・トレード・ドット・コムでは、ローソクの形を使って、バーの始値と終値の間の部分に、終値のほうが高ければ緑色を、終値のほうが低ければ赤色を塗っている。ポリンジャー・バーの項参照。
ロング
債券を保有している状態。ショートの反対。
ワイコフ、リチャードD
20世紀の初頭に活動したテクニカル・アナリストで、彼の研究は現在になっても傑出している(『板情報トレード』『スイング売買の心得』『相場勝者の考え方』[パンローリング]参照)。
ワラント
本質的には長期のオプション。
LEAPS
長期のオプション(訳注:LEAPSはLong-term EquityAnticipationSecuritiesの略)。オプションの対象となっている資産の価格に比べて、想定されるボラティリティーの感度がより高いものが多い。このため、どのように価格設定が行われているかを理解せずにLEAPSを買った客から不満の出ることがある。
M型トップ
Mの大文字によく似た2つの頂点を特徴とするクラシックなチャートフォメーション。しばしば頂点が3つになることがある。トップにおける反転のパターンとして圧倒的に一般的なものである。
MACD
移動平均収赦・乖離法の項参照。
TRIN
アームズ・インデックスの項参照。
VIX
シカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数。狼狽売りでできる安値を見つけるのに便利である。
W型ボトム
最も典型的なボトムのフォーメーション。最初の安値に続いて反発が起こり、そして安値のリテストが生じる。一般的に大文字のWの形をしている。
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