デイトレードの基本と原則 | FX/CFD中級者向け書籍
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デイトレードの基本と原則
戦略、資金管理、規律、心理を学ぶための総合ガイドブック
デイトレードで利益を上げたい方
本書はデイトレードをこれから始める方や、デイトレードを行なっているけれど安定した収益を上手く上げることができていないという方にオススメの一冊です。
株式市場でのデイトレードに関する内容が中心となりますが、デイトレードをはじめるのに必要なことが一通り網羅されており、FXのデイトレードでも参考になる内容が多く含まれています。
一攫千金を狙うようなトレードスタイルを狙うのではなく、継続して収益を上げるための心構え、どのような準備をして市場に挑むかをしっかりと学ぶことができる書籍です。
本書を読むと、デイトレードが華やかな仕事ではなく、地道な作業の積み重ねであるということを理解することができます。
FXトレード初心者のころは、トレードのタイミング、つまり、どこでエントリーすれば利益を上げることができるのかということばかり考え、最高のインジケーター、パラメーター、複数のインジケーターの組み合わせなどを探すことに時間を費やしてしまいますが、継続して利益を上げているトレーダーに限って使っている方法はそれほど複雑なものではなく、シンプルな手法を使い続けており、エントリーのタイミングよりもむしろ、リスクリワードレシオやポジションサイズなどの資金管理に力を入れている傾向があります。
これらに関しては本書でも詳しく説明されているので、今後、ご自身でどのような資金管理を行うかの参考になると思います。
様々な手法も参考に
本書では筆者が実践している様々な手法が紹介されています。
シンプルなローソク足を使った分析方法やVWAP(出来高加重移動平均線)などを使用した分析が中心となりますが、それほど複雑なものでもなく、理解しやすいものばかりです。 エントリーやエグジットといったトレードのタイミングのほかにも、ポジションサイズの調整、買い増し、売り増しのタイミングなども参考になると思います。
次のチャートは本書でも紹介されているリバーサルトレードのパターンがGBPUSDの5分足チャートで出現した例です。
ここで買った場合の最初のターゲット候補は少し前にもみ合い、レジスタンスとなった1.276付近がまず考えられるほか、VWAP付近もターゲットの候補として考えられます。
【リバーサルトレードの例】
次のチャートは移動平均線(EMA)を用いたトレードの例です。EURUSDの5分足チャートで9期間のEMAがレジスタンスとなり、下落していくような動きとなったところで売り、EMAを上抜けたところで利益確定するといったトレードです。
【移動平均線を用いたトレードの例】
このような比較的シンプルな手法が多数紹介されていますが、市場が異なることもあり、そのまま真似するというよりはこれらをどのような局面で使い、どこでエントリーしどの水準にストップ注文を置くのが効率的なのかといったテクニック面に注目するというのもいいと思います。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
デイトレードの基本と原則
戦略、資金管理、規律、心理を学ぶための総合ガイドブック
目次
監修者まえがき
第1章 はじめに
第2章 デイトレードの仕組み
デイトレードとスイングトレードの違い
買いと空売り
小口トレーダーと機関トレーダーの違い
高頻度トレード(HFT)
最高のトレードだけを執行し、あとは見送る
第3章 リスクと口座管理
3ステップのリスク管理
トレード心理
第4章 トレードに適した銘柄の見つけ方
インプレー銘柄
浮動株と時価総額
プレマーケットの窓
日中のリアルタイムのスキャニング
スキャニングに基づいてトレード計画を立てる
第5章 ツールとプラットフォーム
どの証券会社を使うか
トレード用プラットフォーム
リアルタイムのマーケットデータ
ナスダックのレベル2とビッド・アスク
私がチャートに表示している指標
買い注文と売り注文
ホットキー
ウオッチリストとスキャナー
トレーダーのコミュニティー
第6章 ローソク足
プライスアクションと群衆心理
強気のローソク足
弱気のローソク足
様子見のローソク足
ローソク足パターン
第7章 最も重要なデイトレード戦略
トレード管理とポジションサイズ
戦略1――ABCDパターン
戦略2――ブルフラッグモメンタム
戦略3と戦略4――リバーサルトレード
戦略5――移動平均線のトレンド戦略
戦略6――VWAP戦略
戦略7――支持線・抵抗線戦略
戦略8――レッド・トゥ・グリーン戦略
戦略9――オープンレンジブレイクアウト戦略
そのほかのトレード戦略
自分に合った戦略を立てる
特定の時間帯のトレード
第8章 トレードで成功するための手順
ウオッチリストの作成
トレード計画(仕掛け、手仕舞い、損切り)
執行
トレードの過程
第9章 新人トレーダーの次のステップ
デイトレードの7つの必須事項
勉強とシミュレーションを使ったトレード
私のブログとユーチューブのまとめビデオ 最後に
用語解説
■監修者まえがき
本書は専業のデイトレーダーであるアンドリュー・アジズの著した“How to Day Trade for a Living : Tools, Tactics, Money Management, Discipline and Trading Psychology”の邦訳で、デイトレードを仕事として行い、生活していくための入門書である。デイトレードそのものの歴史はインターネットの出現以降(特に、ディスカウントブローカーの登場やナスダックレベル2へのアクセス解放以降)であり、まだ20年ほどと浅いが、すでに人口に膾炙しておりこれまで多くの成功者を生んできた。
さて、著者は本文中で、稼げるデイトレーダーになるには半年~1年のトレーニング期間が必要であることを何度も述べて、デイトレードが必ずしも簡単ではないことを強調しているが、むしろ逆に、わずか1年の修行で食べていけるプロのレベルに達することができる職種はそれほど多くはないだろう。デイトレードは性別や年齢、出自や居住地と言った属性を問わず、すべての人に可能性が開かれており、やってみる価値のある挑戦だと言える。
本書を読まれる人は、デイトレード戦略にまず目が行くかもしれない。実際、黎明期のデイトレード本の多くはさまざまな技法の紹介を売りにしてきた。しかし、デイトレードは、特定の銘柄に複雑で高度な戦略を適用するゲームではなくて、分かりやすいコンセプトの戦略に適合する銘柄を素早く検索して行動するゲームである。銘柄を固定して戦略を選択するよりも、戦略を固定して銘柄を選択したほうが、より簡単で優位に事を運べるからである。だから、戦略自体は本書にある枯れたもので十分なのだ。むしろ職業としてのデイトレーダーを目指す人には、プロセスの大切さやトレード仲間のコミュニティーを持つことの意味、さらにはメンターの存在の重要性に関する記述を熟読玩味することを強く推奨したい。
金融市場は自分一人の力で攻略するにはあまりにも手強く、ゆえに先達の力を借りる必要があるが、トレードの世界はスポーツやビジネスと違って、コーチングは原理的に不可能である。なぜなら、支援される側の人間は知識や経験に乏しいゆえにコーチングに必要なゴールやスコープを自分で正しく設定することができないし、そもそもトレードスタイルは人によって千差万別だからだ。したがって、初心者ができる最善の策は、実践コミュニティーに所属して知識や技術の向上を進めること、および理想的なメンターを得て共に課題解決を図っていくことになる。本書は、デイトレードの学び方を良心的かつ網羅的に記述したきわめて稀有な教科書である。書かれた手順を踏んで練習すれば上達が進むことが期待できるだろう。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず井田京子氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2018年9月
長尾慎太郎
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■第1章 はじめに
これから、デイトレードの基本と、デイトレードがそれ以外のトレードや投資と違う点を説明していく。また、その過程で、多くのトレーダーが日々使っている重要なトレード戦略も紹介していく。本書は意図を持ってページを少なくしている。そうすれば、途中で投げ出さずに最後まで読み終えることができると思ったからだ。私たちは常にインターネットや電子メール、フェイスブックやインスタグラムなどの通知や、スマートフォンやタブレットに入れているたくさんのアプリによって集中を乱されている。そこで、本書は簡潔で実践的なものにしたのだ。
もしあなたがトレードの初心者ならば、トレードを、いつ、どのように始めるか、デイトレードで何が期待できるか、独自の戦略をどう構築すればよいかなどといったことを、本書を読むことで理解できる。ただ、この本を読むだけで、儲かるようになるわけではない。トレードは、本を1冊や2冊読んだだけで、安定的に利益が上げられるようになるものではない。それでも、練習と、正しいツールやソフトウェアと、適切な学習を継続することで利益を上げられるようにはなる。詳しくは後述する。
本書では、この第4版から巻末にデイトレードでよく使われている言葉を集めた便利な用語集を加えた。本書を読んでいて分からない言葉があれば活用してほしい。デイトレードの専門用語を分かりやすい言葉で説明してある。
もしあなたが中級程度のトレーダーならば、多くの個人トレーダーが効果的に使っている典型的な戦略のいくつかをまとめた情報が役に立つだろう。中級者以上の人であれば、最も重要なデイトレード戦略をまとめた第7章から読み始めてもよい。ただ、できればそれ以前の部分にもざっと目を通しておくことを勧める。複雑な新しい戦略を毎日マスターしなくても、継続的に利益を上げていくことはできる。第7章で紹介した戦略は、多くのトレーダーが何十年にもわたって使ってきたものだ。これらの戦略はこれまでうまくいってきたものなので、しっかりと会得する必要がある。ただ、よく知られた単純な戦略を使いこなせるようになったあとは、それを時間をかけて自分の性格やマーケットの状況に合わせて調整していく必要がある。トレードで成功するために必要なのは、革命ではなく、進化なのである。
デイトレードですぐにお金持ちになるということはできない。このことは、本書の最も重要な教えだと思っている。デイトレードは、ギャンブルや宝くじとはまったく違う。これについて多くの人が誤解しているが、本書を読み終わったときにその違いを理解してくれていればうれしい。デイトレードは一見簡単に見える。しかし、こんなデータもある。通常、証券会社は顧客のトレードに関する統計を公表していないが、過去にマサチューセッツ州立裁判所が金融ブローカーに公開を命じた記録によれば、デイトレードを始めて6カ月後に利益を上げていたトレーダーはわずか16%しかいなかった。つまり、あなたも損失を出していた残り84%の1人に簡単になり得るということだ。
そこで、私のデイトレードの最初のルールを紹介しよう。
ルール1――デイトレードですぐにお金持ちになることはできない。
多くの人が、デイトレードは簡単だと誤解している。「安く買って、高く売る」「押し目で買い、戻りで売る」だけだと思っているのだ。繰り返しになるが、デイトレードは一見簡単そうだが、実際はそんなに甘いものではない。 もしそんなに簡単ならば、みんなが成功しているはずだ。つまり、デイトレードは簡単ではないし、すぐに大儲けできるものではないということを、肝に銘じておく必要がある。株式市場で簡単に大儲けできると誤解している人は、本書を読むのをやめて、デイトレード用に貯めたお金で家族旅行でもしたほうがよい。そのほうが、株式市場でなくすよりもはるかに満足のいくお金の使い方になるだろう。
いろいろ書いてきたが、それでもデイトレードは儲かる仕事になり得るのだ。ただし、これは非常に厳しい専門職であり、初心者が気楽にできるようなことではない。安定的に利益を上げることができるトレーダーになるには時間がかかる。そして、長い学習過程のなかでは、多くの人が失敗したり、致命的な損失を被ったりすることになる。
第9章で、デイトレードをうまく始めるための実践的なステップを紹介していくが、成功するためには厳しい学習過程をたどる必要があるということを繰り返し記しておきたい。この学習過程のスピードを上げるためにできることはいくつもあるが、なくしてしまうことはできない。シミュレーション口座でトレードすると、学びは飛躍的にはかどる。シミュレーターで1日トレードすれば、実際に口座やオフラインで1週間練習するのと同じくらいの価値がある。
私はよく、トレーダーになってどれくらいで儲かるようになるのかと聞かれる。もしかしたら、1年くらいという話を聞いたことがあるかもしれない。プロのトレーダーのなかには、2年間は儲からないという人もいる。私の周りの優秀なトレーダーを見ると、6カ月になるころから利益が出始める人が多いように思える。しかし、それ以外は1年かかる人もいる。平均すれば6~8カ月といったところだろう。本やオンライン講座などで、簡単な戦略を教えて「1日目から」とか1週間とか1カ月で利益が出るなどとうたっているのを見るとおかしくなる。そして、こんな本や講座にお金を出すのはどのような人だろうかと興味がわく。常に動いている画面を見ながら素早く売買注文を出していくためには、高いレベルの集中力と規律が必要となる。ちなみに、このような活動に引かれるのは、逆説的ではあるが、衝動的でギャンブラータイプの人たちでもある。
デイトレードをするということは、世界で最も鋭い知性の持ち主と競っていくことでもある。マーケットには膨大な数のトレーダーがいる。デイトレードの主な目的は、ほかのトレーダーの資金を奪うことであり、相手もあなたの資金を狙っている。だからこれは知的に厳しい仕事なのである。お金は株式市場から生まれるのではない。マーケットにお金があるのは、ほかのトレーダーがつぎこんでいるからなのである。あなたが望むお金は、ほかのトレーダーのもので、彼らはそれをあなたに差し出すつもりはない。だからこそ、トレードは難しい仕事なのである。
そこで、デイトレードのルール2となる。
ルール2――デイトレードは簡単ではない。これは真剣な仕事なので、そのつもりで取り組め。
デイトレードは、知的な仕事として真剣に取り組まなければ成功することはできない。感情的にトレードすることは失敗の一番の原因である。成功するためには、規律と防御的な資金管理を実践する必要がある。優れたトレーダーは、スキューバダイバーがタンク内の空気の残量を常に注意しているのと同じくらい注意深く自分のトレードと資金量を確認している。
デイトレードで勝つためには、単に平均以上というだけでは十分ではなく、みんなをはるかに上回っていなければならない。残念ながら、デイトレードは衝動的な人やギャンブラーや訳もなく勝てると思っている人たちを引きつける。しかし、あなたは彼らの1人になったり、彼らのような行動をとったりしてはならない。そうではなく、勝者の規律を身に付けるのだ。勝者の考え方や感じ方や行動の仕方は敗者のそれとは違う。自分自身を見て、幻想を捨て去り、それまでのやり方や考え方や行動を変える必要がある。自分を変えるのは難しいことだが、トレーダーとして成功したければ、自分の性格を変え、発展させていかなければならない。成功するためには、動機と知識と規律が必要なのである。
それではデイトレードとは何なのだろうか。実際には、デイトレードは仕事であり、医療や法律や工学とよく似ている。デイトレードにも正しいツールとソフトウェア、教育、忍耐、練習が必要なのである。実際のお金でトレードする前に、相当な時間をかけてトレードスタイルに関する本を読み、経験豊富なトレーダーのやり方を観察し、本当のお金でトレードする前に、シミュレーション口座で練習しなければならないのだ。成功しているデイトレードは、毎日平均500~1000ドルの利益を上げている。これは1カ月で1万~2万ドル(月に20日トレードするとして)、1年で12万~24万ドルになる。このような高給な仕事が簡単であるはずがない。医者も弁護士もエンジニアもそのほかの専門家も、何年にも及ぶ学校教育を受け、訓練と努力を積み、試験を経て、これぐらいの収入を得られるようになる。デイトレードだって同じことだ。
もしこれが簡単でなく、すぐにお金持ちになることができないとしたら、なぜデイトレードをしたいのだろうか。
デイトレードの魅力はライフスタイルにある。家で1日何時間か働き、好きなときに休みをとることができる。家族や友人と好きなだけ過ごすことができるし、上司に休暇のお伺いを立てる必要もない。あなた自身がボスなのだ。デイトレードは一種の自営業で、あなたはCEO(最高経営責任者)として仕事の重要な判断を下していくのである。
デイトレードは、魅力的なライフスタイルを手に入れられるうえに、きちんと会得すれば毎日何千ドルもの利益を上げることだって可能になる。これは多くの仕事よりも高収入で、1日平均2000ドル以上稼いでいる人も個人的に何人か知っている。もちろん利益が低い日もあれば高い日もあるが、長期的に見れば、1日2000ドル以上稼いでいるのだ。どこにどのような形で住んだとしても、1日2000ドルの収入があれば、非常に満足のいくライフスタイルが維持できる。デイトレードの仕方を適切に学べば、トレーダーを引退するまで、どの場所からでも、好きなマーケットで利益を上げることができるようになる。これは実質的に好きなだけ紙幣を発行できるようなことだ。しかし、この新しい仕事のスキルを身に付けるためには、時間と経験が必要となる。
もし自分の会社を持ちたいならば、デイトレードは、それを簡単に始める方法の1つでもある。デイトレーダーになることと、ピザ店やレストランを始めることを比較してみよう。レストランを開くためには、店舗を借り、器機をそろえ、店員を雇い、訓練し、保険に入り、営業許可を取得するなどたくさんの資金がいるが、それでも儲けが出るという保証はない。ほかの多くのビジネスも似たようなものだ。一方、デイトレードは、簡単な設備で始めることができる。トレード口座はすぐに無料で開設できるので、明日からでもトレードを始められる。もちろん、しっかり学ぶまでトレードをすべきではないが、始めるための準備は、ほかの仕事と比べると極めて簡単に整えることができる。
また、デイトレードはキャッシュフローの管理が容易なビジネスでもある。株を買ってもうまくいかなければ、すぐに損切りすることができるからだ。例えば、輸入業と比べてみよう。自国で売るための商品を買い付けるときには、さまざまな困難が起こり得る。取引先、輸送、税関、流通、販売、品質、顧客満足などで問題が起こり得るだけでなく、この間、資金を動かすことができない。すべてがうまくいかないかぎり、どうにもならないのだ。わずかな損失が出ただけで、会社を継続できなくなることもある。しかし、デイトレードの場合、もしうまくいかなければ、クリック1つで手仕舞うことができる(もちろん多少の損失は出る)。デイトレードは簡単にやり直すことができ、それはこの仕事の非常に望ましい特徴と言える。
また、デイトレードは簡単に廃業できる。もし自分に合わないとか、利益を上げることができないときは、すぐにトレードをやめ、トレード口座を解約し、資金を引き揚げればよい。それまでに使った時間とお金以外に、コストも違約金のたぐいもかからない。しかし、ほかの専門職や会社をやめるのは、これほど簡単ではない。店舗や事務所やレストランを閉鎖し、社員を解雇し、リースを解約したり機器を売却したりする必要があるからだ。
それでは、なぜほとんどの人がデイトレードで失敗するのだろうか。
この最大の疑問に関する理由は第8章と第9章で詳しく述べるが、一番の理由は多くの人がデイトレードを真剣な仕事として見ていないことだと思う。彼らは、デイトレードにすぐ簡単に大金持ちになれるギャンブルの一種として取り組んでいるのである。
それ以外にも、トレードを娯楽や面白い趣味のような感覚で始める人や、自分の評価を上げたり、自分を魅力的に見せたりする「クール」なことだと思って始めたがる人もいる。
素人は、マーケットでのトレードに短期的なギャンブルのスリルを求めて失敗する。彼らはマーケットを利用して遊びでトレードするだけで、デイトレードについて適切に学んだり深い知識を得たりする努力はしない。しかし、それでは何回か運良く利益が出たとしても、いずれマーケットの報い受けることになる。
実は、これは私のことだ。私がトレードを始めたころ、アクイノックス・ファアーマスーティカル・インク(AQXP)という会社の薬に関する良い研究結果が発表され、株価が2日間で1ドルから55ドル以上に急騰した。初心者だった私は、この株を4ドルで1000株買い、10ドル以上で売却した。これは素晴らしい出来事に見えるが、実はそうではなかった。私は初めてトレードして、ほんの何分かで6000ドル以上を稼いだため、マーケットで儲けるのは簡単だという印象を持ってしまったのだ。この非常に間違った意識を払拭するのには、長い時間と数回のひどい損失を被る必要があった。
最初のトレードは単なる幸運によるものだった。何も理解しないでやったことだ。それから2~3週間のトレードで、私はこの6000ドルをすべて失った。ただ、私の場合、最初にラッキーなトレードに当たったのは幸運だった。多くの人にとって、最初のバカなトレードが最後のトレードになる。初めてのトレードで資金をすべて失い、トレード口座を解約して、デイトレードをやめざるを得なくなる人が多くいるのである。
新人デイトレーダーは、自分がウォール街のプロのトレーダーや世界中の経験豊富なトレーダーと競っているという事実をけっして忘れてはならない。彼らは高度な設備と知識とツールを持っているだけでなく、最も重要なことは、彼らが利益を上げることに専念して真剣に取り組んでいるということである。
つまり、ルール2をけっして忘れてはならない。デイトレードは仕事であり、それも極めて真剣なものだ。毎日、早起きしてトレードするつもりの株についてマーケットが開くまでに完全な準備をしておかなければならない。レストランを始めたら、開店時間に準備ができていないなどということが考えられるだろうか。昼休みの時間に、具合が悪いとか、気分が乗らないとか、材料が足りなくて調理ができないなどといった理由で店を閉めることはできないだろう。常に準備を整えておかなければならないのだ。デイトレードという仕事もそれと変わらない。
デイトレードをするためには、適切なツールと、ソフトウェアと、教育が欠かせない。どんな仕事でもそうだが、成功するためには正しいツールが必要となる。そこで、デイトレードに必要となる基本的なツールを見ていこう。
1.事業計画
どのような仕事にも言えることだが、デイトレードにもしっかりとした事業計画が必要だ。このなかには、どのような戦略を使うか、自分への教育にどれくらい投資するかといったことや、パソコン、複数の画面、スキャニングソフト、プラットフォームやそれ以外のツールなどが含まれている。私は、1年目の教育費として最低でも1500ドルは見ておくよう助言している。1500ドルというのは1週間あるいは1カ月の教育費としては高く感じるかもしれないが、人生全体として考えれば、たとえ金銭的に恵まれた人でなくても、本気でトレードを始めるつもりならば工面できる投資だと思う。
2.教育
私は、適切な教育や訓練を受けずに新しい仕事を始める人がいることにいつも驚かされる。デイトレードは真剣な学びと継続的な練習が不可欠な仕事である。本の知識だけで手術をする人がいるだろうか。本を1冊読んでユーチューブの動画を何本か見ただけで、弁護士やエンジニアの仕事ができるだろうか。無理だ。デイトレードという仕事もそれと変わらない。本当のお金でトレードする前に、きちんとした教育を受け、少なくとも3カ月はシミュレーターで練習する必要がある。多くの人が、トレードの手法は2~3のルールに集約でき、いつもそれさえ実行していればよいと思っている。しかし、現実のトレードに「いつも」はまったくない。トレードは状況ごと、1回1回のトレードごとにそれぞれ違うのである。
3.開業資金(現金)
どのような仕事にも言えることだが、トレードを始めるにもお金がいる。高性能のパソコンと3台のディスプレイの購入費と、トレードを始めるための十分な資金だ。デイトレードを含め、起業しても適切な開業資金がなかったために諸経費を厳しく管理できなくて失敗するケースが多くある。デイトレードで生活できるようになるまでには時間がかかる。最初はトントンの状況を維持していくために、十分な開業資金が必要なのである。新人トレーダーが、資金を温存するために必須の経費を削減してしまうこともよくある(正しい教育のための費用やツールやプラットフォームなど)。備えは足りないのに多くを望もうとしているのだ。しかし、それは苦悩と感情的なトレードの悪循環を生み出す。適切な開業資金があれば、初心者によくある間違いを犯しても、トレードをやめざるを得なくなる前に、早期に自分の弱点に気づくことができる。また、トレード用の資金量は、日々の目標の重要な要素であり、デイトレードで生計を立てるつもりならばなおさらだ。十分な資金がないのにデイトレードで生活していこうと思っている人の多くが、望むリターンを得るために高いリスクをとる。しかし、残念ながらそれをすればトレード口座を失うことになる可能性が高い。
4.正しいツールとサービス
A.高速のインターネット回線
B.可能ななかで最高の証券会社
C.注文を素早く処理できるプラットフォームでホットキーがあるもの
D.トレードすべき銘柄を探すためのスキャニングソフト
E.トレード仲間の助け
このなかには、毎月お金がかかるものもある。ほかの仕事でも、毎月の電気代、ソフトウェア代、ライセンス料やリース料がかかるように、デイトレードでもインターネットの使用料、証券会社の手数料、スキャニングソフトやプラットフォームの使用料などがかかる。また、有料のチャットルームやトレーダーコミュニティーに入っていれば、その会費も必要になる。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
監修者まえがき
第1章 はじめに
第2章 デイトレードの仕組み
デイトレードとスイングトレードの違い
買いと空売り
小口トレーダーと機関トレーダーの違い
高頻度トレード(HFT)
最高のトレードだけを執行し、あとは見送る
第3章 リスクと口座管理
3ステップのリスク管理
トレード心理
第4章 トレードに適した銘柄の見つけ方
インプレー銘柄
浮動株と時価総額
プレマーケットの窓
日中のリアルタイムのスキャニング
スキャニングに基づいてトレード計画を立てる
第5章 ツールとプラットフォーム
どの証券会社を使うか
トレード用プラットフォーム
リアルタイムのマーケットデータ
ナスダックのレベル2とビッド・アスク
私がチャートに表示している指標
買い注文と売り注文
ホットキー
ウオッチリストとスキャナー
トレーダーのコミュニティー
第6章 ローソク足
プライスアクションと群衆心理
強気のローソク足
弱気のローソク足
様子見のローソク足
ローソク足パターン
第7章 最も重要なデイトレード戦略
トレード管理とポジションサイズ
戦略1――ABCDパターン
戦略2――ブルフラッグモメンタム
戦略3と戦略4――リバーサルトレード
戦略5――移動平均線のトレンド戦略
戦略6――VWAP戦略
戦略7――支持線・抵抗線戦略
戦略8――レッド・トゥ・グリーン戦略
戦略9――オープンレンジブレイクアウト戦略
そのほかのトレード戦略
自分に合った戦略を立てる
特定の時間帯のトレード
第8章 トレードで成功するための手順
ウオッチリストの作成
トレード計画(仕掛け、手仕舞い、損切り)
執行
トレードの過程
第9章 新人トレーダーの次のステップ
デイトレードの7つの必須事項
勉強とシミュレーションを使ったトレード
私のブログとユーチューブのまとめビデオ 最後に
用語解説
■監修者まえがき
本書は専業のデイトレーダーであるアンドリュー・アジズの著した“How to Day Trade for a Living : Tools, Tactics, Money Management, Discipline and Trading Psychology”の邦訳で、デイトレードを仕事として行い、生活していくための入門書である。デイトレードそのものの歴史はインターネットの出現以降(特に、ディスカウントブローカーの登場やナスダックレベル2へのアクセス解放以降)であり、まだ20年ほどと浅いが、すでに人口に膾炙しておりこれまで多くの成功者を生んできた。
さて、著者は本文中で、稼げるデイトレーダーになるには半年~1年のトレーニング期間が必要であることを何度も述べて、デイトレードが必ずしも簡単ではないことを強調しているが、むしろ逆に、わずか1年の修行で食べていけるプロのレベルに達することができる職種はそれほど多くはないだろう。デイトレードは性別や年齢、出自や居住地と言った属性を問わず、すべての人に可能性が開かれており、やってみる価値のある挑戦だと言える。
本書を読まれる人は、デイトレード戦略にまず目が行くかもしれない。実際、黎明期のデイトレード本の多くはさまざまな技法の紹介を売りにしてきた。しかし、デイトレードは、特定の銘柄に複雑で高度な戦略を適用するゲームではなくて、分かりやすいコンセプトの戦略に適合する銘柄を素早く検索して行動するゲームである。銘柄を固定して戦略を選択するよりも、戦略を固定して銘柄を選択したほうが、より簡単で優位に事を運べるからである。だから、戦略自体は本書にある枯れたもので十分なのだ。むしろ職業としてのデイトレーダーを目指す人には、プロセスの大切さやトレード仲間のコミュニティーを持つことの意味、さらにはメンターの存在の重要性に関する記述を熟読玩味することを強く推奨したい。
金融市場は自分一人の力で攻略するにはあまりにも手強く、ゆえに先達の力を借りる必要があるが、トレードの世界はスポーツやビジネスと違って、コーチングは原理的に不可能である。なぜなら、支援される側の人間は知識や経験に乏しいゆえにコーチングに必要なゴールやスコープを自分で正しく設定することができないし、そもそもトレードスタイルは人によって千差万別だからだ。したがって、初心者ができる最善の策は、実践コミュニティーに所属して知識や技術の向上を進めること、および理想的なメンターを得て共に課題解決を図っていくことになる。本書は、デイトレードの学び方を良心的かつ網羅的に記述したきわめて稀有な教科書である。書かれた手順を踏んで練習すれば上達が進むことが期待できるだろう。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず井田京子氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2018年9月
長尾慎太郎
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■第1章 はじめに
これから、デイトレードの基本と、デイトレードがそれ以外のトレードや投資と違う点を説明していく。また、その過程で、多くのトレーダーが日々使っている重要なトレード戦略も紹介していく。本書は意図を持ってページを少なくしている。そうすれば、途中で投げ出さずに最後まで読み終えることができると思ったからだ。私たちは常にインターネットや電子メール、フェイスブックやインスタグラムなどの通知や、スマートフォンやタブレットに入れているたくさんのアプリによって集中を乱されている。そこで、本書は簡潔で実践的なものにしたのだ。
もしあなたがトレードの初心者ならば、トレードを、いつ、どのように始めるか、デイトレードで何が期待できるか、独自の戦略をどう構築すればよいかなどといったことを、本書を読むことで理解できる。ただ、この本を読むだけで、儲かるようになるわけではない。トレードは、本を1冊や2冊読んだだけで、安定的に利益が上げられるようになるものではない。それでも、練習と、正しいツールやソフトウェアと、適切な学習を継続することで利益を上げられるようにはなる。詳しくは後述する。
本書では、この第4版から巻末にデイトレードでよく使われている言葉を集めた便利な用語集を加えた。本書を読んでいて分からない言葉があれば活用してほしい。デイトレードの専門用語を分かりやすい言葉で説明してある。
もしあなたが中級程度のトレーダーならば、多くの個人トレーダーが効果的に使っている典型的な戦略のいくつかをまとめた情報が役に立つだろう。中級者以上の人であれば、最も重要なデイトレード戦略をまとめた第7章から読み始めてもよい。ただ、できればそれ以前の部分にもざっと目を通しておくことを勧める。複雑な新しい戦略を毎日マスターしなくても、継続的に利益を上げていくことはできる。第7章で紹介した戦略は、多くのトレーダーが何十年にもわたって使ってきたものだ。これらの戦略はこれまでうまくいってきたものなので、しっかりと会得する必要がある。ただ、よく知られた単純な戦略を使いこなせるようになったあとは、それを時間をかけて自分の性格やマーケットの状況に合わせて調整していく必要がある。トレードで成功するために必要なのは、革命ではなく、進化なのである。
デイトレードですぐにお金持ちになるということはできない。このことは、本書の最も重要な教えだと思っている。デイトレードは、ギャンブルや宝くじとはまったく違う。これについて多くの人が誤解しているが、本書を読み終わったときにその違いを理解してくれていればうれしい。デイトレードは一見簡単に見える。しかし、こんなデータもある。通常、証券会社は顧客のトレードに関する統計を公表していないが、過去にマサチューセッツ州立裁判所が金融ブローカーに公開を命じた記録によれば、デイトレードを始めて6カ月後に利益を上げていたトレーダーはわずか16%しかいなかった。つまり、あなたも損失を出していた残り84%の1人に簡単になり得るということだ。
そこで、私のデイトレードの最初のルールを紹介しよう。
ルール1――デイトレードですぐにお金持ちになることはできない。
多くの人が、デイトレードは簡単だと誤解している。「安く買って、高く売る」「押し目で買い、戻りで売る」だけだと思っているのだ。繰り返しになるが、デイトレードは一見簡単そうだが、実際はそんなに甘いものではない。 もしそんなに簡単ならば、みんなが成功しているはずだ。つまり、デイトレードは簡単ではないし、すぐに大儲けできるものではないということを、肝に銘じておく必要がある。株式市場で簡単に大儲けできると誤解している人は、本書を読むのをやめて、デイトレード用に貯めたお金で家族旅行でもしたほうがよい。そのほうが、株式市場でなくすよりもはるかに満足のいくお金の使い方になるだろう。
いろいろ書いてきたが、それでもデイトレードは儲かる仕事になり得るのだ。ただし、これは非常に厳しい専門職であり、初心者が気楽にできるようなことではない。安定的に利益を上げることができるトレーダーになるには時間がかかる。そして、長い学習過程のなかでは、多くの人が失敗したり、致命的な損失を被ったりすることになる。
第9章で、デイトレードをうまく始めるための実践的なステップを紹介していくが、成功するためには厳しい学習過程をたどる必要があるということを繰り返し記しておきたい。この学習過程のスピードを上げるためにできることはいくつもあるが、なくしてしまうことはできない。シミュレーション口座でトレードすると、学びは飛躍的にはかどる。シミュレーターで1日トレードすれば、実際に口座やオフラインで1週間練習するのと同じくらいの価値がある。
私はよく、トレーダーになってどれくらいで儲かるようになるのかと聞かれる。もしかしたら、1年くらいという話を聞いたことがあるかもしれない。プロのトレーダーのなかには、2年間は儲からないという人もいる。私の周りの優秀なトレーダーを見ると、6カ月になるころから利益が出始める人が多いように思える。しかし、それ以外は1年かかる人もいる。平均すれば6~8カ月といったところだろう。本やオンライン講座などで、簡単な戦略を教えて「1日目から」とか1週間とか1カ月で利益が出るなどとうたっているのを見るとおかしくなる。そして、こんな本や講座にお金を出すのはどのような人だろうかと興味がわく。常に動いている画面を見ながら素早く売買注文を出していくためには、高いレベルの集中力と規律が必要となる。ちなみに、このような活動に引かれるのは、逆説的ではあるが、衝動的でギャンブラータイプの人たちでもある。
デイトレードをするということは、世界で最も鋭い知性の持ち主と競っていくことでもある。マーケットには膨大な数のトレーダーがいる。デイトレードの主な目的は、ほかのトレーダーの資金を奪うことであり、相手もあなたの資金を狙っている。だからこれは知的に厳しい仕事なのである。お金は株式市場から生まれるのではない。マーケットにお金があるのは、ほかのトレーダーがつぎこんでいるからなのである。あなたが望むお金は、ほかのトレーダーのもので、彼らはそれをあなたに差し出すつもりはない。だからこそ、トレードは難しい仕事なのである。
そこで、デイトレードのルール2となる。
ルール2――デイトレードは簡単ではない。これは真剣な仕事なので、そのつもりで取り組め。
デイトレードは、知的な仕事として真剣に取り組まなければ成功することはできない。感情的にトレードすることは失敗の一番の原因である。成功するためには、規律と防御的な資金管理を実践する必要がある。優れたトレーダーは、スキューバダイバーがタンク内の空気の残量を常に注意しているのと同じくらい注意深く自分のトレードと資金量を確認している。
デイトレードで勝つためには、単に平均以上というだけでは十分ではなく、みんなをはるかに上回っていなければならない。残念ながら、デイトレードは衝動的な人やギャンブラーや訳もなく勝てると思っている人たちを引きつける。しかし、あなたは彼らの1人になったり、彼らのような行動をとったりしてはならない。そうではなく、勝者の規律を身に付けるのだ。勝者の考え方や感じ方や行動の仕方は敗者のそれとは違う。自分自身を見て、幻想を捨て去り、それまでのやり方や考え方や行動を変える必要がある。自分を変えるのは難しいことだが、トレーダーとして成功したければ、自分の性格を変え、発展させていかなければならない。成功するためには、動機と知識と規律が必要なのである。
それではデイトレードとは何なのだろうか。実際には、デイトレードは仕事であり、医療や法律や工学とよく似ている。デイトレードにも正しいツールとソフトウェア、教育、忍耐、練習が必要なのである。実際のお金でトレードする前に、相当な時間をかけてトレードスタイルに関する本を読み、経験豊富なトレーダーのやり方を観察し、本当のお金でトレードする前に、シミュレーション口座で練習しなければならないのだ。成功しているデイトレードは、毎日平均500~1000ドルの利益を上げている。これは1カ月で1万~2万ドル(月に20日トレードするとして)、1年で12万~24万ドルになる。このような高給な仕事が簡単であるはずがない。医者も弁護士もエンジニアもそのほかの専門家も、何年にも及ぶ学校教育を受け、訓練と努力を積み、試験を経て、これぐらいの収入を得られるようになる。デイトレードだって同じことだ。
もしこれが簡単でなく、すぐにお金持ちになることができないとしたら、なぜデイトレードをしたいのだろうか。
デイトレードの魅力はライフスタイルにある。家で1日何時間か働き、好きなときに休みをとることができる。家族や友人と好きなだけ過ごすことができるし、上司に休暇のお伺いを立てる必要もない。あなた自身がボスなのだ。デイトレードは一種の自営業で、あなたはCEO(最高経営責任者)として仕事の重要な判断を下していくのである。
デイトレードは、魅力的なライフスタイルを手に入れられるうえに、きちんと会得すれば毎日何千ドルもの利益を上げることだって可能になる。これは多くの仕事よりも高収入で、1日平均2000ドル以上稼いでいる人も個人的に何人か知っている。もちろん利益が低い日もあれば高い日もあるが、長期的に見れば、1日2000ドル以上稼いでいるのだ。どこにどのような形で住んだとしても、1日2000ドルの収入があれば、非常に満足のいくライフスタイルが維持できる。デイトレードの仕方を適切に学べば、トレーダーを引退するまで、どの場所からでも、好きなマーケットで利益を上げることができるようになる。これは実質的に好きなだけ紙幣を発行できるようなことだ。しかし、この新しい仕事のスキルを身に付けるためには、時間と経験が必要となる。
もし自分の会社を持ちたいならば、デイトレードは、それを簡単に始める方法の1つでもある。デイトレーダーになることと、ピザ店やレストランを始めることを比較してみよう。レストランを開くためには、店舗を借り、器機をそろえ、店員を雇い、訓練し、保険に入り、営業許可を取得するなどたくさんの資金がいるが、それでも儲けが出るという保証はない。ほかの多くのビジネスも似たようなものだ。一方、デイトレードは、簡単な設備で始めることができる。トレード口座はすぐに無料で開設できるので、明日からでもトレードを始められる。もちろん、しっかり学ぶまでトレードをすべきではないが、始めるための準備は、ほかの仕事と比べると極めて簡単に整えることができる。
また、デイトレードはキャッシュフローの管理が容易なビジネスでもある。株を買ってもうまくいかなければ、すぐに損切りすることができるからだ。例えば、輸入業と比べてみよう。自国で売るための商品を買い付けるときには、さまざまな困難が起こり得る。取引先、輸送、税関、流通、販売、品質、顧客満足などで問題が起こり得るだけでなく、この間、資金を動かすことができない。すべてがうまくいかないかぎり、どうにもならないのだ。わずかな損失が出ただけで、会社を継続できなくなることもある。しかし、デイトレードの場合、もしうまくいかなければ、クリック1つで手仕舞うことができる(もちろん多少の損失は出る)。デイトレードは簡単にやり直すことができ、それはこの仕事の非常に望ましい特徴と言える。
また、デイトレードは簡単に廃業できる。もし自分に合わないとか、利益を上げることができないときは、すぐにトレードをやめ、トレード口座を解約し、資金を引き揚げればよい。それまでに使った時間とお金以外に、コストも違約金のたぐいもかからない。しかし、ほかの専門職や会社をやめるのは、これほど簡単ではない。店舗や事務所やレストランを閉鎖し、社員を解雇し、リースを解約したり機器を売却したりする必要があるからだ。
それでは、なぜほとんどの人がデイトレードで失敗するのだろうか。
この最大の疑問に関する理由は第8章と第9章で詳しく述べるが、一番の理由は多くの人がデイトレードを真剣な仕事として見ていないことだと思う。彼らは、デイトレードにすぐ簡単に大金持ちになれるギャンブルの一種として取り組んでいるのである。
それ以外にも、トレードを娯楽や面白い趣味のような感覚で始める人や、自分の評価を上げたり、自分を魅力的に見せたりする「クール」なことだと思って始めたがる人もいる。
素人は、マーケットでのトレードに短期的なギャンブルのスリルを求めて失敗する。彼らはマーケットを利用して遊びでトレードするだけで、デイトレードについて適切に学んだり深い知識を得たりする努力はしない。しかし、それでは何回か運良く利益が出たとしても、いずれマーケットの報い受けることになる。
実は、これは私のことだ。私がトレードを始めたころ、アクイノックス・ファアーマスーティカル・インク(AQXP)という会社の薬に関する良い研究結果が発表され、株価が2日間で1ドルから55ドル以上に急騰した。初心者だった私は、この株を4ドルで1000株買い、10ドル以上で売却した。これは素晴らしい出来事に見えるが、実はそうではなかった。私は初めてトレードして、ほんの何分かで6000ドル以上を稼いだため、マーケットで儲けるのは簡単だという印象を持ってしまったのだ。この非常に間違った意識を払拭するのには、長い時間と数回のひどい損失を被る必要があった。
最初のトレードは単なる幸運によるものだった。何も理解しないでやったことだ。それから2~3週間のトレードで、私はこの6000ドルをすべて失った。ただ、私の場合、最初にラッキーなトレードに当たったのは幸運だった。多くの人にとって、最初のバカなトレードが最後のトレードになる。初めてのトレードで資金をすべて失い、トレード口座を解約して、デイトレードをやめざるを得なくなる人が多くいるのである。
新人デイトレーダーは、自分がウォール街のプロのトレーダーや世界中の経験豊富なトレーダーと競っているという事実をけっして忘れてはならない。彼らは高度な設備と知識とツールを持っているだけでなく、最も重要なことは、彼らが利益を上げることに専念して真剣に取り組んでいるということである。
つまり、ルール2をけっして忘れてはならない。デイトレードは仕事であり、それも極めて真剣なものだ。毎日、早起きしてトレードするつもりの株についてマーケットが開くまでに完全な準備をしておかなければならない。レストランを始めたら、開店時間に準備ができていないなどということが考えられるだろうか。昼休みの時間に、具合が悪いとか、気分が乗らないとか、材料が足りなくて調理ができないなどといった理由で店を閉めることはできないだろう。常に準備を整えておかなければならないのだ。デイトレードという仕事もそれと変わらない。
デイトレードをするためには、適切なツールと、ソフトウェアと、教育が欠かせない。どんな仕事でもそうだが、成功するためには正しいツールが必要となる。そこで、デイトレードに必要となる基本的なツールを見ていこう。
1.事業計画
どのような仕事にも言えることだが、デイトレードにもしっかりとした事業計画が必要だ。このなかには、どのような戦略を使うか、自分への教育にどれくらい投資するかといったことや、パソコン、複数の画面、スキャニングソフト、プラットフォームやそれ以外のツールなどが含まれている。私は、1年目の教育費として最低でも1500ドルは見ておくよう助言している。1500ドルというのは1週間あるいは1カ月の教育費としては高く感じるかもしれないが、人生全体として考えれば、たとえ金銭的に恵まれた人でなくても、本気でトレードを始めるつもりならば工面できる投資だと思う。
2.教育
私は、適切な教育や訓練を受けずに新しい仕事を始める人がいることにいつも驚かされる。デイトレードは真剣な学びと継続的な練習が不可欠な仕事である。本の知識だけで手術をする人がいるだろうか。本を1冊読んでユーチューブの動画を何本か見ただけで、弁護士やエンジニアの仕事ができるだろうか。無理だ。デイトレードという仕事もそれと変わらない。本当のお金でトレードする前に、きちんとした教育を受け、少なくとも3カ月はシミュレーターで練習する必要がある。多くの人が、トレードの手法は2~3のルールに集約でき、いつもそれさえ実行していればよいと思っている。しかし、現実のトレードに「いつも」はまったくない。トレードは状況ごと、1回1回のトレードごとにそれぞれ違うのである。
3.開業資金(現金)
どのような仕事にも言えることだが、トレードを始めるにもお金がいる。高性能のパソコンと3台のディスプレイの購入費と、トレードを始めるための十分な資金だ。デイトレードを含め、起業しても適切な開業資金がなかったために諸経費を厳しく管理できなくて失敗するケースが多くある。デイトレードで生活できるようになるまでには時間がかかる。最初はトントンの状況を維持していくために、十分な開業資金が必要なのである。新人トレーダーが、資金を温存するために必須の経費を削減してしまうこともよくある(正しい教育のための費用やツールやプラットフォームなど)。備えは足りないのに多くを望もうとしているのだ。しかし、それは苦悩と感情的なトレードの悪循環を生み出す。適切な開業資金があれば、初心者によくある間違いを犯しても、トレードをやめざるを得なくなる前に、早期に自分の弱点に気づくことができる。また、トレード用の資金量は、日々の目標の重要な要素であり、デイトレードで生計を立てるつもりならばなおさらだ。十分な資金がないのにデイトレードで生活していこうと思っている人の多くが、望むリターンを得るために高いリスクをとる。しかし、残念ながらそれをすればトレード口座を失うことになる可能性が高い。
4.正しいツールとサービス
A.高速のインターネット回線
B.可能ななかで最高の証券会社
C.注文を素早く処理できるプラットフォームでホットキーがあるもの
D.トレードすべき銘柄を探すためのスキャニングソフト
E.トレード仲間の助け
このなかには、毎月お金がかかるものもある。ほかの仕事でも、毎月の電気代、ソフトウェア代、ライセンス料やリース料がかかるように、デイトレードでもインターネットの使用料、証券会社の手数料、スキャニングソフトやプラットフォームの使用料などがかかる。また、有料のチャットルームやトレーダーコミュニティーに入っていれば、その会費も必要になる。
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