原油・石油の基礎

原油・石油動向の見通し|相場を見るうえで注視すべき6つのポイント


1.EIAとIEA


今後の石油動向の見通しは、多くの機関がさまざまな角度から長期、中期、短期で予測を行っています。その代表格がEIAおよびIEAです。両者のレポート発表後にその見通しの解説や、それを受けた予測等が公的機関・金融機関からも発表されるため、参考になります。


米国エネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)


米国エネルギー省の、エネルギーに関する情報収集と分析を専門に行う組織です。例年、米国内の短期的なエネルギー見通し「Short-Term Energy Outlook(STEO)」(年複数回発表)、米国内の長期的なエネルギー見通し「Annual Energy Outlook(AEO)」(年1回)、世界のエネルギー見通し「International Energy Outlook(IEO)」(年1回)を発表しています。


国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)


OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に、エネルギー安全保障を確立することを目的として、第一次オイルショック後の1974年に設立された組織です。例年、世界のエネルギー見通し「World Energy Outlook (WEO)」(年1回)を発表しています。経済・人口の見通し、国際エネルギー動向(石油、天然ガス、石炭、電力、再生可能エネルギー、気候変動)、エネルギー効率などについて分析が行われています。なお、資料は有料(概要版は無料)です。


2.今後の相場をみる上でのポイント


原油相場に影響を与える要因として、特に下記の項目について注視する必要があります。

  • ①米シェールオイルの生産状況(稼働リグ数)
  • ②OPEC(石油輸出国機構)や非OPEC産油国の減産遵守状況
  • ③地政学的リスク
  • ④在庫変動とそれに影響を与える自然災害等の特殊要因(米国南部ハリケーンの動向等)
  • ⑤金融要因(米利上げ、為替、投機資金の動向)
  • ⑥環境規制[2020年からのIMO(国際海事機関)規制強化など]

このうち⑥環境規制については、中長期的には地球温暖化対策の影響にも注視が必要です。2015年にパリで開催された「第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP 21)」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることが世界共通の長期目標として採択されました。

この目標の達成するためには、今後、新規の火力発電所の建設が一切認められないことを示唆しているため、金融業界にも「ダイベストメント」と呼ばれる、石油やガス、石炭などの化石燃料関連の事業から資金を引き揚げる動きが活発化しています。特に、欧米の主要民間銀行において、この動きが活発化しており、次々と炭素集約度の高い化石燃料産業への投資や貸出を段階的に減少させる方針を発表しています。

ダイベストメントの動きは日本の商社等にも波及しており、燃料炭の鉱山権益を売却する方針を決めた社もあります。こうした動きが、長期的には世界のエネルギー需給に影響を与えるものとみられます。


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石油・天然ガス採掘装置(リグ)の稼働数の推移


石油・天然ガス採掘装置(リグ)の稼働数の推移

Baker Hughes社が公開している、毎月の世界の石油・天然ガス採掘装置(リグ)の稼働数の推移をグラフで表示しています。稼働リグ数は将来の供給量を占う上でも重要なデータであり、エネルギー市場で注目されるデータの一つです。原油取引をするのであれば、参考にしたいツールです。

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週間原油在庫と天然ガス貯蔵量(EIA)


週間原油在庫と天然ガス貯蔵量(EIA)

米国エネルギー情報局(US Energy Information Administration、EIA)が公表している、週間の原油の在庫統計と天然ガスの貯蔵量の年間の推移をグラフで表示しています。在庫・貯蔵量の過去5年のレンジ、平均値を表示できるため、季節による傾向、平均に対しての現在の在庫、貯蔵量の状況を把握することも可能です。

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本記事の監修者・佐藤りゅうじ


1968年生まれ。1993年米大卒業後、1995年2月株式会社ゼネックス入社。アナリストとしてマクロ経済分析をはじめ、原油、天然ゴム、小麦などの商品市場、また為替市場、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年1月エイチスクエア株式会社を設立。

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