本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):ナンピンのドルロング切れず、想定為替レート接近でドル円は重いか(2024年8月7日)

マーケットレポート

August 7, 2024

【前日の為替概況】ドル円、6日ぶり小反発 過度なリスク回避姿勢が和らぐ

6日のニューヨーク外国為替市場でドル円は6営業日ぶりに小反発。
終値は144.34円と前営業日NY終値(144.18円)と比べて16銭程度のドル高水準だった。
本日の東京株式市場では前日5日に過去最大の下落幅となった日経平均が大幅に反発し過去最大の上げ幅を記録。
投資家の過度なリスク回避姿勢が和らぎ、円売り・ドル買いが出た。
東京市場では一時146.36円まで上昇する場面があった。

ただ、NY市場では戻りの鈍さが目立った。
ナイト・セッションの日経平均先物が大証終値比1410円安の3万2830円まで下落したことなどが相場の重しになると、一時144.05円付近まで下押しした。
米長期金利の指標となる米10年債利回りが3.90%台まで上昇すると、2時前に145.42円付近まで持ち直す場面もあったが、戻りは限定的。
引けにかけては144.17円付近まで押し戻された。

ユーロドルは3日ぶりに反落。
終値は1.0931ドルと前営業日NY終値(1.0952ドル)と比べて0.0021ドル程度のユーロ安水準だった。
米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いが出たほか、6月ユーロ圏小売売上高が予想を下回ったことが相場の重しとなり、20時30分前に一時1.0904ドルと日通し安値を付けた。

ただ、前日の安値1.0893ドルが目先サポートとして働くと下げ渋った。
24時前には1.0935ドル付近まで下値を切り上げた。

ユーロ円は小幅ながら8日続落。
終値は157.79円と前営業日NY終値(157.90円)と比べて11銭程度のユーロ安水準。
ドル円と同様に東京市場では160.22円まで買われたが、NY市場では日経平均先物の大幅下落を受けて一時157.30円と日通し安値を付けた。
米国株相場が上昇すると買い戻しが優勢となり、2時前に158.91円付近まで持ち直したものの、買い戻しの勢いは長続きしなかった。
取引終了間際には157.58円付近まで押し戻された。

【本日の東京為替見通し】ナンピンのドルロング切れず、想定為替レート接近でドル円は重いか

本日の東京市場でも引き続き荒い値動きが予想されるが、ドル安・円高の中期的なトレンドは変わらないか

今回のドル円の売りトレンドを決定づけたのが、7月31日の日銀政策決定会合での政策金利引き上げと国債買い入れの減額、及び植田日銀総裁のタカ派発言がきっかけだった。
そして、その後は米雇用統計の悪化、株式市場の暴落などもあり、更にドル売り圧力が高まった。
クロス円の値動きを見ても分かるようにドル売りトレンドだけではなく、円買いトレンドが強い。
この流れが変わらないとする要因は複数あるが、市場がドルロングを切れていない点、本邦の想定為替レートに近づいている点、日米中央銀行の方向性の違いなどの3点があげられる。

ドルの上値を抑える1つ目の要因は、先月31日の日銀の結果発表前から緩やかながらドル円が弱含む中で、市場参加者はドル買い・円売りトレンドを信じ、ドルのロングポジションを抱えたままでいたことが挙げられる。
31日の決定会合直後は151.64円まで下落すると「オーバーシュート」「売られすぎ」の声が出始め、ドルが下がるたびに根拠のない「売られすぎ」の声が増え、5日には141.70円まで下げ幅を拡大した。

そもそも、「オーバーシュート」や「売られすぎ」の声が多く出るのは、31日の日銀政策決定会合や米雇用統計後のドル売り相場への反転についていけなかった市場参加者の声を代弁している。
大幅なドル安の反動は、昨日6日には、上述の151.64円と141.70円の半値に当たる146.67円に迫る146.36円まで戻したことで、買い戻し水準的にある程度達成したとも言えるかもしれない。
依然として短期的なポジションを持っている市場参加者はナンピンを繰り返していることで、売り逃げきれていないこともあり、ドル円は当面は上値が重くなると予想される。

ドル円の上値を抑える2つ目の要因として、本邦実需勢の想定為替レートに近づき、ドル売り圧力が高まることだ。
7月1日に日銀短観で発表された全規模・全産業が想定する2024年度の為替レートはドル円が144.77円、ユーロ円が155.40円だった。
また、大規模・製造業はドル円が142.68円、ユーロ円が153.73円となっている。
それぞれ3月時点の調査よりも大幅に円安に設定レートを変更し、僅か1カ月超ですでに想定為替レートに近い水準まで円高が進んでしまっている。
今回の円高相場で多くの企業の為替予約が後手となってしまったこともあり、想定為替レートに近いことで手堅く円買いに動くことになりそうだ。

3点目としては、日銀がタカ派に傾いたのとは逆に、米国の利下げ圧力が高まっていること。
一部では度重なる政府与党からの圧力に屈したことによる7月の利上げとの声もあるが、植田日銀総裁は株価の乱高下について閉会中審査の出席も求められている。
しかし、今更方針を戻すことは考えにくく、日銀のタカ派姿勢が崩れるのは考えづらい。

一方で米国の利下げ期待は高まっている。
CMEのフェドウォッチによれば、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%利下げ織り込み度は昨日の85%から71.5%まで低下したとはいえ、1週間前の1割台からの大幅上昇は変わらず。
今後の米経済指標の結果次第では、0.50%の利下げ圧力は強まりそうだ。
このような日米の金融政策の方向性の違いが、ドルの頭を抑えることになるだろう。

また、昨晩の日経平均先物が下落していることや、中東情勢がさらに悪化していることなど、様々なドル円の売り要因もあることも見落とすことはできないだろう。

なお、本日は本邦の7月外貨準備高が発表され、先月の為替介入の実績を把握することが出来る。
午後には6月の景気一致及び先行指数・速報値も発表される。
しかしながら、円安相場からすでに転換しているため、介入実績に対しての市場の反応は限られるだろう。
6月の景気指数については、今回の株の乱高下などが組み入れられておらず、市場の反応は限定されるか。

ほか、早朝発表されたニュージーランドの雇用指数以外には中国の貿易収支が発表されるが、市場の焦点は引き続き株式市場などの動向が中心となりそうだ。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◇ 7月外貨準備高
○10:30 ◎ 内田日銀副総裁、金融経済懇談会で会見
○14:00 ◇ 6月景気動向指数速報値(予想:先行108.8/一致113.8)

<海外>
○07:45 ◎ 4-6月期ニュージーランド(NZ)失業率(予想:4.7%)
     ◎     就業者数増減(予想:前期比▲0.2%/前年比横ばい)
○未定 ◎ 7月中国貿易収支(予想:990.0億ドルの黒字)
○15:00 ◎ 6月独鉱工業生産(予想:前月比1.0%/前年同月比▲4.2%)
○15:00 ◇ 6月独貿易収支(予想:235億ユーロの黒字)
○15:45 ◇ 6月仏貿易収支
○15:45 ◇ 6月仏経常収支
○20:00 ◇ MBA住宅ローン申請指数
○23:00 ◇ 7月カナダIvey購買部協会景気指数
○23:30 ◇ EIA週間在庫統計
○8日02:00 ◎ 米財務省、10年債入札
○8日04:00 ◇ 6月米消費者信用残高(予想:100.0億ドル)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

6日06:16 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「労働市場は比較的堅調」
「経済はここ数カ月減速している」

6日10:18 鈴木財務相
「日銀の政策転換が金利・財政・経済に与える影響、注意深く見てゆく必要がある」
「実質賃金のプラス転換は『着実に改善している姿』」
「賃金・投資面で日本経済に明るい兆し、前向きな動きを後押しし力強い成長につなげる」
「現状を冷静に判断するとともに日銀とも連携しつつ、経済財政運営に万全を期す」

6日11:02 岸田首相
「日銀と連携して経済財政運営を進める」

6日11:18 林官房長官
「為替市場の動向をしっかり注視」
「(実質賃金27カ月ぶりプラスで)賃上げの明るい動きが明確になってきた」

6日13:33 オーストラリア準備銀行(RBA)声明
「基調的インフレ率は依然として過度に高水準にある」
「インフレ率が持続的にターゲットレンジ内に収まるまでには今暫く時間を要する見通し」
「データはインフレ率の上振れリスクに対する警戒の必要性を裏付けており、理事会はいかなる選択肢も排除せず」
「インフレ率が持続可能な形でターゲットレンジに向かって収束していると確信できるまで、金融政策は十分に引き締め的である必要」
「経済見通しは不透明」
「最近のデータはインフレを目標に戻すプロセスが遅く、困難を極めていることを示している」
「サービス部門におけるインフレの持続は、インフレに上振れリスクがあることを示唆」
「中国経済の見通しは軟化しており、商品価格に反映」

6日14:40 ブロックRBA総裁
「理事会では利上げを検討した」
「政策金利の水準は、CPIと雇用のバランスという意味で適切」
「インフレの進展はここ1年遅い」
「インフレの軌道修正が必要」
「金利はより長く高止まりする必要があるかもしれない」
「利下げは当面の議題ではない」
「今後6カ月で利下げとの市場の見方、理事会と一致せず」
「市場の期待は少し先走りすぎている」

6日15:42 三村財務官
「(三者会合)経済金融市場の動向を緊張感持って見極めていくことで一致」
「政府と日銀との間で緊密に連携を確認」
「日本経済は緩やかに回復していく見通しに変わりはない」
「為替相場の動向、しっかり注視していくことに尽きる」

7日03:59 ホワイトハウス
「経済チームは現在の状況を継続的に監視していく」
「経済にはある程度の変動が見られたが、経済全体としては回復力がある」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=低下中の5日線付近に重さ感じられる>

ドル円0807

パラメータ0807

上影小陽線引け。
5日に長めの下ひげを形成する格好で下げ渋った後を受け、突っ込み気味に売られたことによる反動の戻りが入った。

一時146.36円と、5日高値146.66円も位置する146円台まで反発したものの、5日の下落幅をおおむね回復した同水準から押し返されている。
下向きリスクは依然としてくすぶったまま。
低下中の5日移動平均線付近に重さも感じられ、下落リスクをケアする状態がまだ続きそうだ。

レジスタンス1 145.75(5日移動平均線)
前日終値 144.34
サポート1 143.63(8/6安値)
サポート2 141.70(8/5安値)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=下値に転換線が控えるなか1.09ドル割れ回避>

ユーロドル0807

パラメータ0807

下影陰線引け。
5日に抵抗を示す長い上ひげをともなう足型を形成した後を受けて一時1.0904ドルと、1.09ドル割れをうかがう場面もあった。
しかし一目均衡表・転換線1.0893ドルが下値に控えるなか同大台割れは回避。

上昇中の一目・基準線1.0872ドルが明日にも転換線と重なりさらにサポートがしっかりしてくる公算。
底堅さを維持して推移することが予想される。

レジスタンス1 1.1008(8/5高値)
前日終値 1.0931
サポート1 1.0872(日足一目均衡表・基準線)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=ここからは5日線を超えた辺りも重そう>

ユーロ円0807

パラメータ0807

上影小陰線引け。
5日に154.42円と、5日移動平均線からかい離する水準まで下振れて以降の反動が続き、昨日は一時160.22円まで上昇した。
5日の大幅下落の値幅をちょうど全戻ししたところから押し返された。
ここからは5日移動平均線を超えた水準辺りでも重そう。
重く推移しつつ下げ渋りのポイントを探るか。

レジスタンス1 158.92(5日移動平均線)
前日終値 157.79
サポート1 156.65(ピボット・サポート1)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=5日線付近が重そう、転換線も下方向を示唆>

豪ドル円0807

パラメータ0807

上影小陽線引け。
5日に昨年5月15日以来の安値90.15円まで想定を超える急落後の反発が95.51円まで進んだ。
だが、5日移動平均線95.68円を前に失速。
本日94.89円前後へ低下している同線付近の重さが続きそう。低下が進む見込みの一目均衡表・転換線95.97円の動向も下向きの流れ継続を示唆している。

レジスタンス1 94.89(5日移動平均線)
前日終値 94.10
サポート1 92.26(ピボット・サポート2)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

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DZH Finacial Research

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