本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):退官控えた意地の円安阻止か?米当局者の反応に要警戒(2024年7月12日)

マーケットレポート

July 12, 2024

【前日の為替概況】ドル円、4日ぶり反落 米CPI下振れ、日銀介入との一部報道も

11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4営業日ぶりに大幅反落。
終値は158.84円と前営業日NY終値(161.69円)と比べて2円85銭程度のドル安水準だった。
6月米消費者物価指数(CPI)が予想比で下振れると、米金利の急低下とともに急ピッチで円高・ドル安が進行した。
政府関係者の話として「政府・日銀が為替介入を実施した」との一部報道も伝わるなか、22時過ぎには一時157.44円まで下押し。
ただ、欧州時間につけた高値から4円超の急落となったため、その後は反動から158.97円付近まで下値を切り上げる場面も見られた。
米10年債利回りが4.16%台まで急低下した後、4.21%台まで低下幅を縮小したことも相場を下支えした。

なお、神田財務官は「介入の有無についてコメントする立場ではない」「ファンダメンタルズに沿った合理的な動きとは言えない」などの見解を示した。

ユーロ円は3営業日ぶりに大幅反落。
終値は172.62円と前営業日NY終値(175.11円)と比べて2円49銭程度のユーロ安水準だった。
21時過ぎに175.43円までユーロ導入来高値を更新するなど堅調な推移を続けていたものの、米CPIの発表後は円相場が急伸した流れに沿って171.58円まで値を下げた。
売りが一巡するとドル円と同様に172.90円台まで買い戻しが入ったが、日経先物などが大幅安となった影響もあって戻りは鈍かった。

ユーロドルは続伸。
終値は1.0868ドルと前営業日NY終値(1.0830ドル)と比べて0.0038ドル程度のユーロ高水準だった。
CPIの伸び鈍化を受けて米利下げ観測が高まるなか、22時前には一時1.0900ドルまで上昇した。
もっとも、1.09ドル台の定着とはならず、その後は米金利の低下幅縮小などを手掛かりに1.0860ドル台まで押し戻された。

【本日の東京為替見通し】退官控えた意地の円安阻止か?米当局者の反応に要警戒

本日の東京市場では中長期的な円安地合いは変わらないだろうが、昨日の介入と思われる動きの影響で積極的に円を売る動きにはなりにくいだろう。
前回(4月29日・5月1日)の介入後に、イエレン米財務長官が本邦の介入について幾度も「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」と繰り返すなど、米国当局者がドル売り介入への拒否反応を示した。

また、本邦為替当局者も「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」との原則についても発言していた。
現時点では、昨日の動きが介入だったと断定することはできないが、米国の不快感や原則を無視したと思われる介入を行ったのであれば、本日や週末などにイエレン氏を中心に米国当局者の反応が注目される。
一部では今月末で神田財務官が退官することで、退官前に円安の流れを止められなかったという不名誉な記録とならないように、意地になってでもある程度の円安を修正しようとしているとの声も聞こえる。

もっとも、為替介入は短期的な特効薬として円安を止めることはできても、中長期的に効果がないことは前回の介入で証明されている。
ドル円は、前回は4月29日に160.17円まで上昇後に為替介入が行われたが、2カ月弱後の6月26日に同水準を回復した。
ユーロ円も同様に2カ月弱後の6月24日に介入前の水準まで戻り、現状の水準は4月29日の介入水準よりも円安が進んでいる。

中長期的な円安の流れを変えるのは、岸田政権が円安対策を講じない限りは難しいだろう。
昨日、神田財務官が「投機が支配しているマーケットになっていると言われている」と発言したが、新NISA(少額投資非課税制度)の導入による海外株投資への円売りなどは政権が促した政策でもあることで、今後も円売りが引くこともないだろう。

また、昨日の6月の米CPIの結果を受けて、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」での9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始確率は前日の73%台から93%弱まで上昇した。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げが徐々に為替相場に織り込まれている状況でもあり、さらにドルを押し下げるのにも限界があるだろう。

また、バイデン米大統領の大統領選出馬がますます怪しくなっていることもあり、トランプ前大統領の返り咲きが濃厚になっている。
トランプ氏が大統領に就任した場合は、中国を中心に関税引き上げが予想され、米国が再びインフレになるとの声が高まっていることも、ドルの下値を支えることになる。

本日は本邦からは5月の鉱工業生産・確報値と同月設備稼働率が発表されるが、両指標ともに市場を動意づけるのは難しい。
アジア時間に限っては本邦当局者の動きを確認しながら、円相場中心の値動きになりそうだ。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○13:30 ◇ 5月鉱工業生産確報
○13:30 ◇ 5月設備稼働率

<海外>
○09:00 ◎ 4-6月期シンガポール国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比年率0.4%)
○未定 ◎ 6月中国貿易収支(予想:853億ドルの黒字)
○15:00 ◇ 6月独卸売物価指数(WPI)
○15:00 ◎ 6月スウェーデン消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.1%/前年比2.8%)
     ◎    コア指数(予想:前月比0.2%/前年比1.6%)
○15:45 ◇ 6月仏CPI改定値(予想:前月比0.1%/前年比2.1%)
○16:00 ◇ 5月トルコ経常収支(予想:15.0億ドルの赤字)
○21:00 ◎ 6月インドCPI(予想:前年比4.80%)
○21:00 ◎ 5月インド鉱工業生産(予想:前年同月比4.9%)
○21:00 ◇ 5月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比0.4%)
○21:30 ◇ 5月カナダ住宅建設許可件数(予想:前月比▲5.9%)
○21:30 ◎ 6月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比0.1%/前年比2.3%)
    ◎  食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比0.2%/前年比2.5%)
○23:00 ◎ 7月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:68.5)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

11日08:32 クック米連邦準備理事会(FRB)理事
「経済指標はソフトランディングを示している」
「失業率の大幅な上昇はないと見込んでいる」
「失業率の状況が急変すれば対応策を取る」
「失業率の動向に非常に注意を払っている」
「政策は2%のインフレ目標に向けて良い位置にある」

11日17:37 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「仏の政治的膠着状態、予算案採決の9月までに解消望む」
「インフレ率の低下など経済状況全体には明るい面がある一方、先行きは依然として不透明」
「仏経済の全体像を要約すれば、よく持ちこたえてはいるが、依然として脆弱」

11日23:02 神田財務官
「介入の有無についてコメントする立場ではない」
「(為替は)2022年を除くと最大の変動」
「ファンダメンタルズに沿った合理的な動きとは言えない」
「投機が支配しているマーケットになっていると言われている」

12日01:27 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「何らかの政策調整が正当化されるだろう」
「経済は今年1-2回の利下げが適切な軌道に乗っているようだ」

12日02:29 ムサレム米セントルイス連銀総裁
「米労働市場は力強い」
「金融政策は制限的だが、過剰に制限的というわけではない」

12日05:53 グールズビー米シカゴ連銀総裁
「本日のインフレ統計は素晴らしいものだった」
「データ次第では1回、もしくは一連の利下げにオープン」
「FRBがいつ利下げすべきかについてはコメントを控える」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=基準線前後の底堅さを維持できるか見定めたい>

ドル円0712

パラメータ0712

下影大陰線引け。
想定外といえる下振れで一時157.44円と6月17日以来の水準まで下落が進んだ。

ただ、一目均衡表・基準線158.54円を上回って引けた点は好感したいところ。
上昇傾向を維持する同線前後の底堅さを維持できるか見定めたい。
一方で159.70円へ低下した一目・転換線付近では反発が抑えられそうだ。

レジスタンス2 160.26(7/8安値)
レジスタンス1 159.70(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 158.84
サポート1 158.54(日足一目均衡表・基準線)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=いったん頭打ち、雲に沿った調整にも留意>

ユーロドル0712

パラメータ0712

上影陽線引け。
1.0900ドルまで上昇が進んだ。
しかし6月初めに伸び悩んだ同節目前後は重く頭打ちとなり、推し戻されて1.0868ドルでNYを引けている。

底堅いものの、調整も相応に入る状態。
気掛かりなのは下押し局面で支えとなる一目均衡表・雲の上限が本日の1.0836ドルでピークアウトすること。
雲の上限の切り下がりにともないレンジを切り下げる展開も想定しておきたい。

レジスタンス1 1.0916(6/4高値)
前日終値 1.0868
サポート1 1.0805(日足一目均衡表・転換線)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ユーロ円=転換線付近では動き重いか>

ユーロ円0712

パラメータ0712

下影大陰線引け。
171.58円まで下落幅を広げた。
しかし一目均衡表・基準線171.48円を前に下げ渋り、172.62円でNYの取引を終えている。

横ばいから先々の切り上がりの可能性を残す基準線や172.16円前後で上昇中の21日移動平均線付近の底堅さを背景とした戻りを期待したいところ。
ただ、173.51円で推移する一目・転換線付近では動きが重くなるか。

レジスタンス1 173.51(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 172.62
サポート1 172.16(21日移動平均線)

>ユーロ円のリアルタイムチャートはこちら

<豪ドル円=転換線は下支えから抵抗に転じた可能性>

豪ドル円0712

パラメータ0712

大陰線引け。
下支えが期待された一目均衡表・転換線を下抜け、一時107.01円と、6月28日以来の107円割れ目前ま急落した。

再び下押しても昨日安値や106.95円前後で上昇中の21日移動平均線付近では底堅さを示すとみる。
しかし支えが期待された転換線が抵抗へ転じた可能性があり、反発を抑制することが考えられる。

レジスタンス1 108.19(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 107.38
サポート1 106.95(21日移動平均線)

>豪ドル円のリアルタイムチャートはこちら

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