本日の東京為替見通し(為替/FXニュース):円安トレンド強い、米金利低下・円金利高止まりも円の買い戻し進まず(2024年7月11日)

マーケットレポート

July 11, 2024

【前日の為替概況】ドル円、3日続伸 欧米株上昇で投資家のリスク志向改善を意識した買い先行

10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。
終値は161.69円と前営業日NY終値(161.33円)と比べて36銭程度のドル高水準だった。
欧米株価指数の上昇などを背景に投資家のリスク志向改善を意識した買いが先行した。
ダウ平均が440ドル超高まで上昇幅を拡大するなか、米10年債利回りがNY勢の参入後に低下幅を縮小したことも支えとなり、一時161.81円と日通し高値をつけた。

なお、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は米下院金融サービス委員会で議会証言を行ったが、「インフレに関してさらなる確信が欲しい」など、前日とほぼ同様の見解を示したため、相場への影響は限定的だった。

ポンドは堅調。
ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員やマン英MPC委員からインフレ懸念が相次いで示されたことを受け、全般にポンド買いが強まった。
ポンドドルは一時1.2849ドルまで上昇。
ポンド円は円売りの流れに沿った面もあり、2008年以来の高値となる207.82円まで上値を伸ばした。
短期金融市場では8月の英利下げ確率が50%未満まで低下する場面もあり、英金利先安観の後退がポンドを下支えしたようだ。

ユーロ円は続伸。
終値は175.11円と前営業日NY終値(174.45円)と比べて66銭程度のユーロ高水準だった。
欧米株高を手掛かりにした円売り・ユーロ買いが進み、一時175.16円までユーロ導入来の高値を更新した。

ユーロドルは3営業日ぶりに反発。
終値は1.0830ドルと前営業日NY終値(1.0813ドル)と比べて0.0017ドル程度のユーロ高水準だった。
取引時間終盤には株高を受けたリスクオンの流れに沿って1.0831ドルまで上昇する場面があったものの、総じて1.0820ドル台を中心とする狭いレンジ内推移に終始。
本日の値幅はわずか0.0020ドル程度と限られた。

【本日の東京為替見通し】円安トレンド強い、米金利低下・円金利高止まりも円の買い戻し進まず

本日の東京市場では円安地合いは変わらないか。
昨日はアジア時間でNZ準備銀行(RBNZ)がインフレ目標の前倒しを表明したことでNZドルが対ドルで弱含んだが、米金利が小幅ながら低下したこともあり、欧州通貨や他の主だった通貨でドル安がやや優勢だった。
しかしながら、対円でドルは堅調に推移し、改めて円安トレンドの強さを物語っていると言える。
また、本邦の長期金利が高水準を維持しているにもかかわらず円高に動かないことで、7月の日銀政策決定会合で仮に国債買い入れの大幅減額を決定したとしても、円が買い戻されない可能性も高まっている。

国債買い入れ額に関しては、昨日まで行われた日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行った「債券市場参加者会合」では、メガバンクを中心に国債買い入れの大幅減額を要望したと伝わっている。
日銀の買い入れ減少は、本邦金融機関が減少分を引き取るとの見方になっているが、メガバンクにとっては保有国債の含み損を抱える地銀とは違い、含み損よりも金利上昇の収益増加効果が絶大であることで、このような要望の声が強い。

ここ最近はインフレ傾向の強い本邦経済指標が出ているが、実質賃金は過去最長のマイナスになり、消費支出も弱く、GDPは大幅に下方修正されるなど、内容は非常に悪いことで日銀の中では大幅減額には及び腰の声が出ている。
しかしながら、今回の臨時に行われた債券市場参加者会合での減額要望が強いことを口実に、政府の圧力もあり7月の会合での変更が見込まれそうだ。

また、円安の流れが継続しそうな理由として、岸田政権が円安対策を講じないこともあげられている。
今月発表された税収が過去最大になったことや、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も最大の黒字になるなど、政権は円安のメリット部分を享受している。
口先では円安を懸念しているが、円安対策は無策なことでスピード調整を図ったとしても、円安を止める手段は限られていると市場関係者も理解している。

本日は本邦からは5月機械受注と前週分の対外対内証券投資が発表される。
ここ3週にわたって海外投資家は国債などの国内中長期債を売り越している。
前週も海外勢の国債売り越しが大きくなれば、債券市場では7月の日銀政策決定会合での国債買い入れ減額をほぼ織り込んだと言えるか。

また、本日は米国から6月の消費者物価指数(CPI)が公表されるが、市場では前年比では5月の3.3%から3.1%へ低下すると予想。
また、コア指数は3.4%で前月から横ばい予想となっている。
市場はすでに米連邦準備理事会(FRB)の9月の利下げを7割以上織り込んでいることで、予想通りのCPI低下となった場合のドル売りは限られるか。
逆にここ最近の弱いインフレ指数で市場の利下げ予想が高まっていることで、インフレが高止まりした場合のサプライズの方が市場へ与える影響は大きそうだ。
仮に予想を上回った場合は、ドル円は3日高値161.95円を超えて円安になることが濃厚だろう。

【本日の重要指標】 ※時刻表示は日本時間

<国内>
○08:50 ◎ 5月機械受注(予想:船舶・電力除く民需 前月比0.8%/前年比7.2%)
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

<海外>
○08:30 ◎ クック米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○15:00 ◎ 6月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.1%/前年比2.2%)
○15:00 ☆ 5月英国内総生産(GDP、予想:前月比0.2%)
○15:00 ◎ 5月英鉱工業生産(予想:前月比0.2%/前年比0.6%)
○15:00 ◎ 5月英製造業生産高(予想:前月比0.4%)
○15:00 ◇ 5月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:168.00億ポンドの赤字/28.50億ポンドの赤字)
○21:00 ◎ 5月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比4.0%)
○21:30 ☆ 6月米CPI(予想:前月比0.1%/前年比3.1%)
     ☆ エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比0.2%/前年比3.4%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.6万件/186.0万人)
○12日00:15 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、質疑応答
○12日02:00 ◎ ムサレム米セントルイス連銀総裁、質疑応答
○12日02:00 ◎ 米財務省、30年債入札
○12日03:00 ◎ 6月米月次財政収支(予想:830億ドルの赤字)
○北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(ワシントン、最終日)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

>本日発表予定のその他の経済指標についてはこちら

【前日までの要人発言】

10日07:02 バイデン米大統領
「米国と同盟国はウクライナに防空システムを提供へ」

10日11:04 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)声明
「金融政策が制限的であり続ける必要があることに合意」
「国内主導のインフレが短期的に持続するリスク」
「ヘッドライン・インフレ率は今年後半に1-3%の目標範囲内に戻ると予想」
「国内で発生する物価上昇圧力は依然として強い」
「生産能力への圧力と企業の価格設定の低下に伴い、インフレの持続性が緩和される兆しがある」
「減税が個人消費に与えるプラスの影響は、確実性が低い」
「金融政策の適切なスタンスについて議論された」

10日22:37 ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト
「MPCはインフレの持続性を注視」
「インフレの上振れリスクを示すいくつかの指標がある」
「利下げするかどうかではなく、いつ利下げするかが問題」

10日23:34 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「完全雇用の実現には物価の安定が不可欠」
「政策は制限的だと考えている」
「中立金利は少なくとも短期的には上昇したに違いない」
「今年後半に中立金利の見直しを検討する予定」

11日01:54 マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員
「英労働市場は依然として引き締まっている」
「英インフレ率は年末まで2%を超える可能性が高い」

※時間は日本時間

>本日の要人発言をリアルタイムで確認するならこちら

〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=高値つけて転換線の一時的低下を回避したい>

ドル円0711

パラメータ0711

陽線引け。
161.81円までじり高と、3日につけた約37年半ぶりの高値161.95円をめぐる攻防となってきた。
底堅いが、少なくとも3日高値に並ぶ水準まで上昇できないと、レンジ低下により一目均衡表・転換線はいったん切り下がることになる。
現状からすれば、転換線は現水準161.11円から、来週16日にも161.04円へ低下する見込み。

その後に持ち直す公算だが、目先の支えが期待される転換線が一時的にせよ低下すれば、高値圏の相場が不安定になるリスクがある。
転換線の低下前に高値更新できるか引き続き注視したい。

レジスタンス2 162.75(1986/12/22高値)
レジスタンス1 162.14(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 161.69
サポート1 160.73(7/9安値)

>ドル円のリアルタイムチャートはこちら

<ユーロドル=まずは雲の動きに沿ったじり高想定>

ユーロドル0711

パラメータ0711

小陽線引け。
一目均衡表・雲上限前後の攻防だったが、雲の中1.08ドルちょうど付近でじり高の200日移動平均線を割り込むような下押しは回避できた。

本日、雲上限は1.0824ドル、200日線は1.0803ドル前後に位置している。
雲の上限の上昇に沿ったじり高を想定。
雲の上限は明日1.0836ドルでピークアウトするため、その流れに沿った相場の頭打ちも懸念されるが、雲の上限付近へ切り上がってくる一目・転換線が支えとなり、底堅さを維持することが期待できる。

レジスタンス1 1.0902(6/6・7高値)
前日終値 1.0830
サポート1 1.0778(日足一目均衡表・転換線)

>ユーロドルのリアルタイムチャートはこちら

<ポンド円=上方向へかい離し調整警戒も底堅さ維持へ>

ポンド円0711

パラメータ0711

大陽線引け。
2008年以来の高値を207.82円まで更新する堅調な推移が続いた。
206.75円前後で上昇中の5日移動平均線からかい離した感もあり、高値圏の調整相場も想定しておきたい。

だが、下押しが5日線前後にとどまれば堅調維持、押し目が深くなっても一目均衡表・転換線205.54円が支えになるとみる。

レジスタンス1 208.33(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 207.75
サポート1 206.75(5日移動平均線)

>ポンド円のリアルタイムチャートはこちら

<NZドル円=上昇傾向の転換線前後でしばらく底堅さ維持か>

NZドル円0711

パラメータ0711

下影陰線引け。
昨日98.28円に位置していた一目均衡表・転換線をわずかながら上回る98.29円でNYを引けている。

本日98.39円へ切り上がる転換線付近の攻防が続くか。
同線は来週にもさらに98.51円へ小幅に上昇する見込み。
目先的に上昇傾向が続く同線前後でしばらく底堅さを維持すると予想する。

レジスタンス1 99.02(7/10高値)
前日終値 98.29
サポート1 97.83(21日移動平均線)

>NZドル円のリアルタイムチャートはこちら

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