FX自動売買基礎と応用

EA(自動売買)運用の注意点|ユーザー側とFX会社側の環境について


インターネットを介した取引の注意点


EAを運用する際には、さまざまなポイントに注意する必要があります。「EAはMT4(MT5)で稼働する自動売買である」「自動売買はインターネットを介して行われる」という性質上、パソコン、MT4、インターネット回線、FX会社など、自動売買に関わるさまざまな要素において注意すべき事柄があるのです。

そのポイントとしては大まかに「ユーザー側の環境」と「FX会社側の環境」に分けられます。前者は自分のパソコンやインターネット環境のこと、後者は約定やサーバーなどの環境のことです。


ユーザー側の環境


まずユーザー側の環境について、以下の三つがポイントです。


MT4の継続稼働


EAを設置したMT4は、稼働していなければトレードを行いません。言い換えると、MT4やパソコンを閉じてしまうと、EAは動かないということです。そのため、EA運用をするにあたっては、パソコンが常に動き続ける環境を整備する必要があります。自宅のパソコンを用いる場合、OSやMT4の強制終了、パソコンの電源やブレーカーが落ちる可能性もあります。そうしたリスクを回避するためには、後述するVPSを利用する方法もあります。

参考記事:MT4(メタトレーダー4)自動売買の導入方法①(自動売買の準備)


インターネット接続


EAに限らずFXでは、インターネット回線を経由して取引注文の発注、約定が行われます。自分が発注するパソコンがどんな回線を利用しているかについて、しっかりと把握しておくべきです。またその回線が、取り得る選択肢の中で最善なのかという点も、検討する必要があります。インターネット回線が不安定だったり障害があったりすると、EAによる発注が正しく行われない可能性もあります。


VPSの環境


VPSとはVirtual Private Serverの略称で、レンタルサーバー上の仮想デスクトップを利用できるサービスです。EA運用で利用する場合、仮想デスクトップにMT4をインストールして稼働させます。自宅でパソコンを動かすのとは異なり、仮想デスクトップ上でMT4が稼働し続けるため、VPSに障害が起こらない限りEAは稼働し続けるというのがメリットです。とはいえ、VPSに障害が起こる可能性があり、EAの稼働を100%保証するものではないということに注意が必要です。


FX会社側の環境


インターネットを介した取引の注意点として、インターネット回線やサーバーなどの環境が重要であると紹介し「ユーザー側の環境」について前述しました。以下では「FX会社側の環境」について見ていきます。


スリッページ


スリッページとは、EAが発注したレートと、実際にFX会社側が約定するレートに乖離が生じること(またはその価格差)です。EAの発した注文がインターネットを通じてFX会社のサーバーに届き約定するまでに、最速でも0.1秒は要するといわれています。マーケットは常に変動しているため、その数ミリ秒の間にレートが変わる可能性があり、その場合は発注したレートと約定したレートがわずかにズレてしまいます。

このスリッページは、ユーザーに有利な方向へズレる場合もあれば、不利な方向へズレる場合もあります。しかし、必ず対称性があるとは限らないので、データを収集してそのFX会社の約定環境を評価する必要があります。

参考記事:スリッページとは?許容スリッページの設定方法も紹介


サーバー


FX会社によって、サーバーの所在地が異なります。ユーザーがEAを動かすパソコン(あるいはVPSのサーバー)の場所と、FX会社のサーバーの場所の物理的な距離が遠いほど、上記のスリッページが発生する可能性が高まり、距離が近いほどスリッページの可能性が低くなります。つまり、FX会社のサーバーがニューヨークにあるか東京にあるかでは、後者の方がスリッページの可能性を低減できるのです。

OANDAではTY3(データセンター大手のエクイニクス社の施設。東京都江東区に立地)にサーバーを設置しており、データ転送の時間差はニューヨークサーバーの15倍改善されているそうです。なお、この東京サーバーのインフラデータは、ホームページで測定値が公開されています。

OANDA 東京サーバー インフラデータ


レイテンシー


レイテンシーとは、約定速度のことです。これはスリッページに影響し、速度が速いほどEA運用にとっては好環境となります。


ティック量


配信される一つずつのレートをティックと呼びます。このティックの量(つまり出来高)が多い場合はマーケットでの取引が活発なことを、少ない場合はマーケットが閑散としていることを意味します。ティック量が極端に少ないと、レートは非連続的になる(数pips飛ぶ動きになる)可能性もあります。そうなった場合は、EAが本来のパフォーマンスを発揮できないので、そのような環境になる傾向があるFX会社には注意が必要です。そもそもEAは、連続的なレート配信のデータを基にして開発されているので、非連続的な状況は想定していません。EAを運用するにはティック量が多いFX会社を選ぶことが重要です。


本記事の監修者・Trader Kaibe(@K_FLASHES


FXトレード歴は15年(2021年現在)。世界でも有名なFXトレード大会『ロビンスカップ』で、FXトレードの経験と本職の研究開発ノウハウを生かして作った自作自動売買だけで準優勝。

投資雑誌掲載、ラジオ日経出演、投資戦略EXPO登壇など、各種メディアでFX自動売買の良さを発信中。


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