基軸通貨とは|意味・歴史・よくある質問を解説
基軸通貨とは、国際通貨の中で中心的な役割を担う通貨を指し、現在は米ドルが基軸通貨として位置付けられています。
本記事では、基軸通貨の意味や歴史、よくある質問について詳しく解説していきます。
基軸通貨とは
基軸通貨の意味や歴史について解説します。
- ・意味
- ・歴史
意味
基軸通貨とは、国際通貨の中で中心的な役割を担う通貨のことで、現在は米ドルが基軸通貨として位置付けられています。
為替取引では、異なる二国間の通貨が取引され、この二国間の通貨を組み合わせたものを通貨ペアと呼びます。
基本的に為替取引は、基軸通貨の米ドルを介して行われます(米ドルとの組み合わせで行われます)。
米ドルと組み合わせた通貨ペアを「ストレート通貨(ドルストレート)」、米ドルを含まない通貨ペアを「クロス通貨」と呼びます。
上図に示した、日本円と米ドルのように矢印でつながっているのがストレート通貨、日本円と英ポンドのように矢印でつながっていない(米ドルを介してつながっている)のがクロス通貨です。
「ドルストレート・クロスレート」については、こちらで詳しく解説しています。歴史
第二次世界大戦前後まで、国際通貨制度において基軸通貨の役割を担っていたのは英国のポンドでした。
しかし、戦争を機に英国経済が衰退していくと、ポンドに取って代わる形で米国のドルが基軸通貨としての地位を確立しました。
戦後の国際通貨制度は、1944年7月にブレトン・ウッズ協定が締結されたところから始まります。
これによって成立したブレトン・ウッズ体制下では「金1オンス=35ドル」と定められ、各国通貨の価値は米ドルによって規定される固定相場制となりました(日本の場合は1ドル=360円)。
ブレトン・ウッズ体制は、米ドルの金兌換(きんだかん)を前提とした通貨制度で(※兌換とは「引き換える」こと)、金ドル本位制とも呼ばれます。
この固定相場制は、米国の圧倒的な経済力と金の保有量を背景に誕生したものでした。
しかし、1960年代になると、日独等の経済発展やベトナム戦争などの影響により米国の経常収支が悪化し、米ドルと金の兌換可能性についての疑問が生じるようになります。
米ドルに対する強い信頼が揺らぎ始め、1971年8月に当時のニクソン米大統領は米ドルの金兌換停止を宣言しました。
これをニクソン・ショックと呼び、金兌換停止を受けて固定相場制を維持することができなくなりました。
その後、1973年2月に日本は変動相場制に切り替えることになりました。
「固定相場制」「変動相場制」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
基軸通貨の特徴
基軸通貨の主な特徴は以下の通りです。- ・通貨価値が安定している
- ・他の通貨より信認・利便性が高い
- ・金融取引や貿易など幅広く決済で使用されている
通貨価値が安定している
基軸通貨は、通貨価値が安定しています。
外国為替相場の中でも、米ドルやユーロ、日本円などは取引量の多い通貨であり、中でも最も多く取引されるのが基軸通貨である米ドルです。
米ドルは、各国で外貨準備として多く保有されています。
他の通貨より信認・利便性が高い
基軸通貨は国際通貨の中で中心的な位置にあり、他の通貨よりも信認や利便性が高いという特徴があります。
米ドルが基軸通貨である主な理由は、「高い流動性・流通量」「米国経済の大きさ」などです。
2022年の外国為替市場の通貨別取引高は、米ドルが44.2%、日本円が8.3%となっており、日本円と比べても米ドルの取引高が圧倒的に多いことがわかります。
※調査元:BIS(世界の為替取引量調査)
世界各国の貿易や金融取引で使われる通貨であるため、売買したいときに常に取引相手が見つかり、利便性が良いといえます。
金融取引や貿易など幅広く決済で使用されている
基軸通貨である米ドルは信認や利便性が高いため、世界各国が保有しています。
また、金融取引や貿易などの決済で広く使用されています。
米ドルの取引量は全体の約44%、通貨ペアだと対米ドルの取引は全体の約88%です(※2022年4月時点)。
※調査元:BIS(世界の為替取引量調査)
基軸通貨が世界経済に与える影響
多くの国の中央銀行が、基軸通貨の米ドルで外貨準備を保持しており、米ドルは国際貿易や金融取引などで基盤の役割を担っています。
そのため、基軸通貨の価値が大きく変動した場合には、世界経済(金融市場全体)に大きな影響を与えることがあります。
例えば、2008年9月に米国で起きた米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻(リーマンショック)により、国際金融市場における米ドルの流動性が逼迫しました。
米ドルの流動性制約が強まったことにより、各国中央銀行はFRBとのドル・スワップ協定を通じて資金供給を行う必要に迫られました。
このように、基軸通貨である米ドルは安定性を保つ一方で、流動性リスクに直面すると国際金融市場に深刻な影響を与えます。
基軸通貨に関するQ&A
基軸通貨に関して、よく見られる疑問点は以下のようなものです。
- ・FX取引は全て基軸通貨を介しているのは本当ですか?
- ・米ドルの前の基軸通貨はどの通貨ですか?
- ・基軸通貨は変わることはありますか?
- ・ドルストレート・クロスレートとは何ですか?
FX取引は全て基軸通貨を介しているのは本当ですか?
為替取引で英ポンド/円のように米ドルを含まない通貨ペアの取引が行われる際、「英ポンド/米ドル」と「米ドル/円」という基軸通貨を介した2つの取引を行っています。
例えば、英ポンド/円の買い取引の場合、英ポンド/米ドルの買いと、米ドル/円の買いを行っています。
米ドルの前の基軸通貨はどの通貨ですか?
米ドルの前の基軸通貨は英ポンドです。
英国は18世紀後半の産業革命で、世界に先駆けて工業化を達成しました。
英国は世界に工業製品を積極的に輸出し、金本位制を確立したことで、英ポンドが基軸通貨となりました。
基軸通貨は変わることはありますか?
基軸通貨が英ポンドから米ドルへ変更されたように、今後基軸通貨が変わる可能性はあります。
ただし、基軸通貨は通貨の価値や国の経済力、政治の安定性など様々な条件が求められます。
ドルストレート・クロスレートとは何ですか?
「ドルストレート(ストレート通貨)」とは米ドルと組み合わせた通貨ペアのことです。
銀行間の為替取引が行われるインターバンク市場では、取引の大半が基軸通貨である米ドルを介して行われます。
そのため米ドルは取引量が多く、価格の変動は安定的な傾向があります。
また、一般的に取引量が多い通貨ペアほど、スプレッドは狭くなります。
そして、米ドルを含まない通貨ペアの為替レートを「クロスレート」と呼びます。
例えば、ユーロ/円のレートは「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」という2つの対ドルレートから算出されます。
【まとめ】基軸通貨とは|意味・歴史・よくある質問を解説
基軸通貨は、国際通貨の中でも中心的な役割を担う通貨のことで、現在は米ドルが基軸通貨として位置付けられています。
基軸通貨は通貨価値が安定しており、他の通貨より信認・利便性が高いことが特徴です。
現代の変動相場制における為替取引は、基本的に基軸通貨の米ドルを介して行われます。
外国為替市場では、米ドルの取引量が全体の約44%と半数近くを占めています。
また、米ドルと組み合わせた通貨ペアを「ストレート通貨(ドルストレート)」、米ドルを含まない通貨ペアを「クロス通貨」と呼びます。
OANDA証券では米ドルを含む豊富な通貨ペアを取り扱っています。
OANDA証券に興味がある方は、以下のボタンから口座開設をご検討ください。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。