経常収支とは|日本の推移や今後の見通しなどをわかりやすく解説
経常収支とは、一定期間における財やサービスなどの対外経済取引の記録のことです。
「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」の3項目で構成されます。
本記事では、経常収支の意味や推移、よくある質問を詳しく解説していきます。
目次
- 1.経常収支とは
- 2.経常収支の内訳
- 3.日本の経常収支の概要
- 4.日本の経常収支の推移
- 5.日本の経常収支の見通し
- 6.経常収支に関するQ&A
- 7.【まとめ】経常収支とは|日本の推移や今後の見通しなどをわかりやすく解説
経常収支とは
経常収支の意味や求め方、貿易収支との違いについて説明します。
- ・意味
- ・貿易収支との違い
- ・経常収支の求め方
意味
経常収支は、国際収支統計の構成項目の1つです。
財やサービスなどについて、一国の外国とのやり取りを記録しています。
国際収支統計には「3本柱」があります。
- ・経常収支
- ・資本移転等収支
- ・金融収支
3本柱の1つである経常収支は、以下の3つの収支の合計です。
- ・貿易・サービス収支
- ・第一次所得収支
- ・第二次所得収支
国際収支の項目の中でも、経常収支は特に重要な項目として注目されます。
貿易収支との違い
貿易収支は、経常収支の一部です。
経常収支は「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」から成り、貿易収支は「貿易・サービス収支」に含まれます。
貿易収支については、以下の記事で詳しく解説しています。
> 貿易収支(ぼうえきしゅうし)とは|意味・推移やよくある質問を解説
経常収支の求め方
経常収支の求め方(計算式)は以下の通りです。
「第一次所得収支」は「所得収支」、「第二次所得収支」は「経常移転収支」と表記されることもあります。
経常収支の内訳
経常収支の内訳について解説します。
- ・貿易収支・サービス収支
- ・第一次所得収支
- ・第二次所得収支
貿易収支・サービス収支
貿易収支とは、財貨(物)の輸出入の収支を示し、居住者と非居住者の間での取引のことを指します。
サービス収支とは、サービス取引の収支を表します。
輸送(国際貨物、旅客運賃の受け取り・支払いなど)や旅行(旅行者の宿泊費や飲食等の受け取り・支払いなど)、知的財産権などの使用料、その他手数料などを指します。
貿易収支は有形財(モノ)の取引、サービス収支は無形財(サービス)の取引にあたります。
第一次所得収支
第一次所得とは、雇用者報酬(労働の対価としての報酬)と、投資収益のことです。
投資収益には「直接投資収益」「証券投資収益」「その他投資収益」があり、それぞれの内容は以下の通りです。
- ・「直接投資収益」=親会社・子会社間の配当金や利子の受け取り・支払い
- ・「証券投資収益」=株式配当金や債券利子の受け取り・支払い
- ・「その他投資収益」=貸付・借入・預金などに係る利子の受け取り・支払い
第二次所得収支
第二次所得とは、無償で提供された経済価値のことです。
例えば、官民の無償資金協力、寄付や贈与の受け払いの計上にあたります。
日本の経常収支の概要
経常収支の概要は、毎月財務省によって発表されています。
下の表は、2024年中(令和6年中)の経常収支の概要です(2025年2月発表)。
出典:財務省
経常収支は、第一次所得収支が黒字幅を拡大したことなどにより、黒字幅を拡大しています。
貿易・サービス収支は、貿易収支が赤字幅を縮小したことなどにより、赤字幅を縮小しています。
日本の経常収支の推移
日本の経常収支の推移は、下のグラフの通りです。
2007年(平成19年)をピークに、2014年まで減少傾向にありましたが、2015年以降は回復し、概ね同水準で推移しています。
日本の経常収支の見通し
ここでは、以下2つの資料を参考に、2025年の日本の経常収支の見通しを解説します。
作成機関 | 資料タイトル | 公表日 |
---|---|---|
一般社団法人・日本貿易会 | 2025年度わが国貿易収支、経常収支の見通し | 2024年12月6日 |
日本銀行 | 経済・物価情勢の展望 2025年1月 | 2025年1月27日 |
サマリーは以下の通りです。
- ・経常収支:3年連続で過去最高を更新する見通し
- ・貿易収支:5年ぶりの黒字転換となる見通し
- ・サービス収支:4兆930億円の赤字の見通し
- ・第一次所得収支:36兆2,330億円の黒字の見通し
経常収支:3年連続で過去最高を更新する見通し
2025年の経常収支は「29兆9,610億円の黒字」となり、3年連続で過去最高を更新する見通しです。
出典:一般社団法人・日本貿易会
名目経常収支については、緩やかな改善傾向をたどると予想されています。
この理由は「第一次所得収支が緩やかに黒字幅を拡大していく中で、貿易収支の赤字幅が緩やかに縮小していく」と見込まれているためです。
貿易収支:5年ぶりの黒字転換となる見通し
貿易収支は「1兆8,850億円の黒字」となり、2020年以来5年ぶりの黒字転換となる見通しです。
見通しの内訳は以下の通りです。
項目 | 見通し金額 | 対前年度比増減(伸び率) |
---|---|---|
輸出 | 106兆9,840億円 | (-0.2%) |
輸入 | 105兆990億円 | (-3.5%) |
貿易収支全体 | 1兆8,850億円 | +3兆5,940億円 |
日本銀行による見通しでも、貿易収支の赤字幅は「在輸出の増加などにより、緩やかに縮小していく」と見込まれています。
サービス収支:4兆930億円の赤字の見通し
サービス収支は「4兆930億円の赤字」となる見通しです。
インバウンド需要の増加が一巡する一方、デジタル赤字が拡大することで、赤字幅が2024年度より約3,500億円拡大すると見込まれています。
一方、日本銀行による見通しでは「概ね現状程度の小幅な赤字で推移する」と予測されています。
この背景としては「インバウンド需要の増加が改善方向に作用する一方、デジタル関連支払いの増加が悪化方向に作用する」可能性が指摘されています。
第一次所得収支:36兆2,330億円の黒字の見通し
第一次所得収支は「36兆2,330億円の黒字」となる見通しです。
前年から約2.4兆円の減少となるものの、円高シフトの影響によって高水準を維持できると予想されています。
日本銀行による見通しも、第一次所得収支は「緩やかに黒字幅を拡大していく」と予想されています。経常収支に関するQ&A
経常収支に関してよく見られる疑問点は、以下の通りです。
- ・経常収支が赤字だとどうなりますか?
- ・国際収支統計とは何ですか?
- ・日本の経常収支は黒字ですか?
経常収支が赤字だとどうなりますか?
経常収支の黒字(赤字)は、有形財・無形財の取引による収支の結果です。
日本の場合、一般的に需給の面から、経常黒字=円高、経常赤字=円安になりやすいと言われています。
経常収支が黒字ということは、取引の結果が支払いよりも受け取りが多いということになり、手元には外貨が残ります。
外貨を国内に持ち帰る際に円に換えるため、「円買い・外貨売り」が起きやすくなります。
赤字の場合は逆に、支払いのための外貨を準備するため、「円売り・外貨買い」が起きやすくなります。
ただし、実際には全ての収益を国内に持ち帰る(国内から支払う)わけではないため、経常黒字=円高(赤字=円安)と決定づけることはできません。
国際収支統計とは何ですか?
国際収支統計とは、IMF(国際通貨基金)が2008年に公表した「国際収支マニュアル第6版」に準拠する形で、一定期間の対外経済取引(日本と諸外国の経済取引)の全てを記録したものです。
外国為替及び外国貿易法に基づく各種報告を基礎資料とし、財務大臣から委任を受けて日本銀行が作成しています。
その国際収支統計の一部に、経常収支が含まれます。
日本の経常収支は黒字ですか?
2024年度の日本の経常収支は、29兆2,615億円の黒字で、過去最高を記録しています。
また、2025年度の経常収支も黒字が予想されており、3年連続で過去最高を更新する見通しです。
日本の経常収支は以下のグラフの通り、1996年以降一度も赤字になったことがありません(線グラフ)。
しかし、今後は原油価格や円安などの様々な不安定要素による影響で、経常赤字国になる可能性が指摘されています。
【まとめ】経常収支とは|日本の推移や今後の見通しなどをわかりやすく解説
経常収支は、国際収支を構成する指標の1つで、財やサービスなどについて、一国の外国とのやり取りを記録しています。
日本は長期間にわたって経常収支の黒字が継続しています。
2025年にも黒字が予想されていますが、今後は経常赤字国となる可能性も指摘されています。
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