用語解説

市場介入(為替介入)とは|目的やパターン・過去の事例について解説


市場介入とは、為替相場の急激な変動があった場合に、通貨価値の安定化を図るため、中央銀行などの通貨当局が外国為替の売買を行うことです。

1つの国が単独で行う単独介入と、複数の国が協力して行う協調介入の2種類があります。

本記事では、市場介入の目的や、過去の事例などについて詳しく解説します。

市場介入(為替介入)とは

ここでは、市場介入について正式名称と目的について詳しく解説します。

  • ・正式名称
  • ・目的

正式名称

市場介入(為替介入)の正式名称は「外国為替平衡操作」です。

通貨当局が、為替相場に影響を与えるために、外国為替市場で通貨の売買を行うことを意味します。

市場介入は英語では「Currency intervention」と呼ばれます。

目的

市場介入の目的は、為替相場の急激な変動があった場合に、通貨価値の安定化を図ることです。

各国において、通貨当局と中央銀行の関係は異なりますが、政府と中央銀行が介入の決定および為替市場での売買を行います。

日本では、財務大臣の指示により、中央銀行である日本銀行が市場介入を実施します。

市場介入に使われる資金は、外国為替資金特別会計から捻出されます。

主要各国の為替介入の決定・執行機関は以下の通りです。

日本 米国 ユーロ圏 英国
介入の決定 財務大臣 財務省及び
連邦準備制度理事会(FRB)
欧州中央銀行(ECB) 財務省及び
イングランド銀行(BOE)
執行機関 日本銀行 ニューヨーク連邦準備銀行 ECB、各国中央銀行 BOE

市場介入(為替介入)のパターン

市場介入(為替介入)には、単独介入と協調介入の2つのパターンがあります。

それぞれ詳しく解説していきます。

  • ・単独介入
  • ・協調介入

単独介入

単独介入とは1つの国の政府・中央銀行により行われる市場介入で、自国通貨の安定を目的として行われます。

単独介入は1国のみが行う介入であるため、協調介入と比較して効果は限定的ですが、一定の効果があります。

代表的な単独介入として、2011年からスイス国立銀行(スイスの中央銀行)によって行われた為替介入が挙げられます。

スイスフラン高対策として、対ユーロで1.2フランを上限として、スイスフラン売りの無制限介入が行われました(2015年まで継続)。

協調介入

協調介入は2か国以上の国の政府・中央銀行が合意して行う市場介入です。

急激な為替変動により世界経済が混乱するのを阻止する目的で、多国間で協力して介入を行います。

単独介入と比べて、トレンド反転など相場への長期的な影響を与えやすい傾向があります。

代表的な協調介入としては、1985年のプラザ合意を受けて行われた介入が挙げられます。

また、近年では2011年の東日本大震災後に円高を阻止する目的で、G7(先進国首脳会議)で合意されて協調介入が行われました。

市場介入(為替介入)の事例

日本における、代表的な市場介入(為替介入)の事例について解説していきます。

  • ・2024年7月(円買い介入)
  • ・2022年9月~10月(円買い介入)
  • ・2011年10月(円売り介入)

2024年7月(円買い介入)

2024年7月、円安の進行により1ドル160円台という円安水準に到達したことを受け、政府・日銀により2回の単独介入が行われました。

2024年7月(円買い介入)
出典:TradingView

チャート中央の「1」の通り、11日の夜(21時半頃~22時頃)には、30分ほどの間に4円強ものドル安・円高が進行しました。

その後の「2」の12日夜(22時過ぎ)には、1.4円程度ドル安・円高に振れる場面が見られました。

財務省発表の「外国為替平衡操作の実施状況」によると、11日の介入額は3兆1,678億円、12日は2兆3,670億円であり、合計の介入額は5兆5,348億円でした。

2022年9月~10月(円買い介入)

2022年9月、急激な円安が進行し1ドル=145円後半の円安水準となったため、円相場の安定を目的として日本政府・日銀により合計3回にわたって単独介入が行われました。

大幅なドル売り・円買いが実施され、介入額は9月22日が2兆8,382億円、10月21日が5兆6,202億円、10月24日が7,296億円という規模でした。

その結果、9月22日は5.5円、10月21日は5.7円、10月24日は4.2円の下落幅(日足の高値と安値の差)となっています。

2022年9月~10月(円買い介入)
出典:TradingView

2011年10月(円売り介入)

2011年3月11日の東日本大震災の後、米ドル/円は10月31日に史上最安値の75.32円をつけました。

世界経済に及ぼす悪影響への懸念によりG7で合意され、2011年10月〜11月に協調介入が行われました。

協調介入には、日本の他に米国、英国、カナダの通貨当局と欧州中央銀行が参加しました。

10月31日の介入額は8兆722億円で、これを受けて1ドル75円台前半で推移していた米ドル/円相場は、反転上昇し79円台半ばまで約4円ほど急騰しました。

2011年10月(円売り介入)
出典:TradingView

市場介入(為替介入)に関するQ&A

市場介入(為替介入)に関してよくある質問は、以下の通りです。

  • ・市場介入(為替介入)はどのように決定されますか?
  • ・市場介入(為替介入)の資金はどこから調達されますか?
  • ・市場介入(為替介入)の実施日や金額は確認できますか?

市場介入(為替介入)はどのように決定されますか?

日本の場合は、市場介入の決定権限を財務大臣が有し、財務省内での実務は財務官が担当します。

日本銀行は毎日、為替市場の情報を財務省に報告しています。

財務大臣が介入を決めると、日銀が詳細な市場情報を提供し、財務大臣の指示に従って日銀が介入を実行します。

実行するのは日銀ですが、市場介入は財務大臣の権限であることが定められています

そのため、日銀が介入を実行する際は「財務大臣の代理人」として行います。

市場介入(為替介入)の資金はどこから調達されますか?

日本が行う市場介入は外国為替資金特別会計(外為特会)の資金が用いられます。

資金は財務省が管理しています。

外為特会の資産と負債の中身は、以下の通りです。

資産 外貨 円売り、外貨買い介入によって取得したもの
負債 政府短期証券 円調達のために発行したもの

外為特会の歳入と歳出は毎年公開されています。

市場介入(為替介入)の実施日や金額は確認できますか?

日本の市場介入の実施日や金額については、以下の財務省ホームページ内で確認できます。

>外国為替平衡操作の実施状況

月次ベースのデータが月に1回、日次ベースのデータが四半期に1回のペースで公開されています。

【まとめ】市場介入(為替介入)とは|目的やパターン・過去の事例について解説

市場介入とは、正式名称で「外国為替平衡操作」と言います。

為替相場の急激な変動があった場合に、通貨価値の安定を図る目的で、政府や中央銀行等が外国為替の売買を行うことを意味します。

1つの国が単独で行う単独介入と、複数の国が協力して行う協調介入の2つのパターンがあり、単独介入に比べて協調介入の方が相場に大きな影響を与える傾向があります。

市場介入も含め、各国の中央銀行や政府の動きは、FX取引に大きな影響を与えます。

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