GDP Now – FX初心者向け用語解説
GDPNow(GDPナウ)とは
GDPNow(GDPナウ)とは、アトランタ連銀が算出している米国の実質GDP成長率のリアルタイム推計値です。
2015年の景気減速を予測したり、今年(2023年)第3四半期(7-9月期)GDPが5%前後という驚異の成長率になったこともピタリと当てました。
このため、非常に信頼できる推計値と世界中から注目されます。
アトランタ連銀は、全米に12ある地区連銀の一つです。
アトランタ連銀のホームページには次のように書かれています。
実質国内総生産(GDP)の成長率は経済活動の重要な指標ですが、公式推計値は遅れて発表されます。
当行のGDPNow予測モデルは、米国経済分析局が使用する手法と同様の手法を用いてGDP成長率を推計することで、発表前の公式推計値の「ナウキャスト」を提供します。
GDPNowはアトランタ連銀の公式予測ではありません。
GDPNowはアトランタ連銀の公式予測ではなく、入手可能な当四半期の経済データに基づく実質GDP成長率の予測値として見るのが最も適切です。
GDPNowには主観的な調整はなく、推計はモデルの数学的結果のみに基づいています。
GDPNowをチェックするには、アトランタ連銀のホームページか、もしくは連銀がリリースしているアプリ(EconomyNowアプリ)でも見られます。
アトランタ連銀GDPNowサイト
https://www.atlantafed.org/cqer/research/gdpnow#Tab1
EconomyNowアプリ
https://www.atlantafed.org/apps/economynow
以下の表は、過去のGDPNowの確度を検証したものです。
実際に外れた差は、右の誤差で表しています。
年 | 四半期 | GDPNow推計値(%) | 実際のGDP速報値(%) | 誤差(%ポイント) |
---|---|---|---|---|
2011 | Q1 | 1.9 | 1.8 | 0.1 |
Q2 | 3.2 | 1.3 | 1.9 | |
Q3 | 2.5 | 2.5 | 0 | |
Q4 | 3.2 | 2.8 | 0.4 | |
2012 | Q1 | 2.7 | 2.2 | 0.5 |
Q2 | 1.8 | 1.5 | 0.3 | |
Q3 | 1.8 | 2 | -0.2 | |
Q4 | 1.5 | 0.1 | 1.4 | |
2013 | Q1 | 3.2 | 2.5 | 0.7 |
Q2 | 0.6 | 1.1 | -0.5 | |
Q3 | 2 | 4.1 | -2.1 | |
Q4 | 2.7 | 3.4 | -0.7 | |
2014 | Q1 | 1.2 | -2.1 | 3.3 |
Q2 | 2.7 | 4.6 | -1.9 | |
Q3 | 3 | 5 | -2 | |
Q4 | 2.6 | 2.2 | 0.4 | |
2015 | Q1 | 0.1 | 0.6 | -0.5 |
Q2 | 1.9 | 3.9 | -2 | |
Q3 | 1 | 2 | -1 | |
Q4 | 1.3 | 0.9 | 0.4 | |
2016 | Q1 | 0.6 | 0.8 | -0.2 |
Q2 | 2.3 | 1.2 | 1.1 | |
Q3 | 2.1 | 2.9 | -0.8 | |
Q4 | 2.9 | 1.9 | 1 | |
2017 | Q1 | 0.5 | 0.7 | -0.2 |
Q2 | 2.8 | 3.1 | -0.3 | |
Q3 | 2.7 | 3 | -0.3 | |
Q4 | 3.3 | 2.6 | 0.7 | |
2018 | Q1 | 2.3 | 2.2 | 0.1 |
Q2 | 4.5 | 4.2 | 0.3 | |
Q3 | 3.6 | 3.4 | 0.2 | |
Q4 | 2.7 | 2.2 | 0.5 | |
2019 | Q1 | 2.3 | 3.1 | -0.8 |
Q2 | 1.3 | 2 | -0.7 | |
Q3 | 1.8 | 2.1 | -0.3 | |
Q4 | 1.9 | 2.1 | -0.2 | |
2020 | Q1 | -3.4 | -4.8 | 1.4 |
Q2 | -35.5 | -31.4 | -4.1 | |
Q3 | 35.3 | 33.1 | 2.2 | |
Q4 | 8.4 | 4 | 4.4 | |
2021 | Q1 | 6.2 | 6.4 | -0.2 |
Q2 | 7.9 | 6.5 | 1.4 | |
Q3 | 0.5 | 2.0 | -1.5 |
平均するとGDPNowは実際のGDP速報値よりも0.2%大きい数字を予測しています。
しかし、これは過去11年ほどの平均であり、個々のケースでは1%以上推計を間違えていることは頻発しています(ただし、2020年と2021年はコロナの影響があり、正しく推計をすることはほぼ不可能です)。
初期の頃は少し高めに出る傾向がありましたが、最近ではそうでもありません。
パラメーター等を常にアップデートして、精度が上がっているのでしょう。
GDPNowはどのように推計しているのか
GDPNowの推計方法ですが、かつては、ISM製造業景況指数や国際収支、小売売上高等を見て予測していると言われていました。
アトランタ連銀の公表によると、かなり数多くの経済統計から推計しています。
現時点(2023年12月22日)で、米2023年第4四半期のGDPを2.3%と予想していますが、これは以下のような変遷を経て、2.3%という予想になっています。
GDPNow推計値変更の理由 | 推計値 | |
---|---|---|
10月27日 | 第4四半期GDP モデル初期予測(理由は不明) | 2.3% |
11月1日 | ISM製造業景況指数、建設支出 | 1.2% |
11月2日 | 製造業新規受注 | 1.4% |
11月3日 | 米雇用統計、ISM非製造業景況指数 | 2.2% |
11月7日 | 米貿易収支 | 2.1% |
11月8日 | 貿易収支 | 2.1% |
11月14日 | 米消費者物価指数 | 2.1% |
11月15日 | 小売売上高、生産者物価指数 | 2.2% |
11月16日 | 鉱工業生産、輸入物価指数、輸出物価指数 | 1.8% |
11月17日 | 住宅着工件数 | 2.0% |
11月21日 | 中古住宅販売件数 | 1.9% |
11月22日 | 製造業出荷・在庫・受注 | 2.1% |
11月27日 | 新規住宅販売件数 | 1.9% |
11月29日 | 米GDP、新規住宅建設 | 1.8% |
11月30日 | 個人所得 | 1.8% |
12月1日 | ISM製造業景況指数 | 1.8% |
~ | ~ | ~ |
12月19日 | 住宅着工件数 | 2.7% |
あくまで参考ですが、GDPNowの計測は、ほとんど全ての経済指標を対象にしています。
米GDPではどのようにトレードすればよいか
前回の内容にも関係ありますが、GDPは雇用統計や消費者物価指数と違い、大きくマーケットが動く経済指標ではありません。
しかし、市場予想と発表される数字が大きく違う時、マーケットは大きく反応します。
それは改定値、確報値でも同様のことがいえます。
事前に市場予想をしっかりと頭に入れておく必要があるでしょう。
市場の反応はわりと素直です。
予想以上の数字が出れば、ドル円は上昇します。
また、予想以下の数字であれば、ドル円は軟化します。
米GDP発表の際にトレードを考えている場合は上記を参考に挑むと良いでしょう。
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志摩力男(しまりきお)
慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。
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