用語解説

エンベロープとは|FXにおける意味や設定方法などを詳しく解説


エンベロープ(移動平均乖離率バンド)とは、移動平均線から一定の乖離率で上下に2本の線(バンド)を描画するテクニカル指標です。

一般的に、為替レートが上下どちらかの線に到達すると、トレンド反転のサインとみなされます。

本記事では、エンベロープの使い方や注意点、ボリンジャーバンドとの違いなどについて詳しく解説します。

エンベロープとは

エンベロープの意味や、計算式について詳しく解説します。

  • ・意味
  • ・一般的な計算式

意味

エンベロープとは、移動平均線の上下に一定の幅で乖離させた2本の線を描写し、バンド幅として表示するテクニカル指標です。

中心の移動平均線と上下の線は同じ形状となり、乖離率は一定であることが特徴です。

エンベロープ
出典:TradingView

多くの相場はこのバンド幅の範囲内に収まり、上限や下限に近づくと反転する傾向があります。

「上限に近づいたら売り」「下限に近づいたら買い」の逆張りで活用できます。

逆に、移動平均線や上下の線を「上に抜けたら買い」「下に抜けたら売り」の順張りでも活用できます。

手法 売りのシグナル 買いのシグナル
逆張り バンド上限に近づく バンド下限に近づく
順張り 移動平均線やバンドを下に抜ける 移動平均線やバンドを上に抜ける

移動平均からの乖離はやがて修正されるという性質があり(グランビルの法則)、その乖離の度合いを確認するのに適しています。

一般的な計算式

エンベロープで移動平均線の上下に描写する線は、アッパーバンド(上限のバンド)とロワーバンド(下限のバンド)の2本です。

それぞれの計算式は以下の通りです。

計算式

n%は「移動平均線との乖離率」で、数値は任意に決めます。

移動平均線は、単純移動平均線(SMA)を用いるのが一般的です。

仮に移動平均線の価格が160円で、乖離率が10%の場合の計算式は、以下の通りです。

アッパーバンド 160+160✕10%=176
ロワーバンド 160-160✕10%=144

エンベロープの種類

エンベロープの種類は「用いる移動平均線の種類」によって変わります。

ここではMT4やMT5で採用されている移動平均線の種類を紹介します。

  • ・エンベロープ(SMA=単純移動平均線)
  • ・エンベロープ(EMA=指数平滑移動平均線)
  • ・エンベロープ(SMMA=平滑移動平均線)
  • ・エンベロープ(WMA=加重移動平均線)

エンベロープ(SMA=単純移動平均線)

エンベロープ(SMA=単純移動平均線)
出典:MT4

SMA(単純移動平均線)を用いるエンベロープは、最も基本的かつ広く用いられる種類です。

MT4で設定する場合は、プロパティの画面で下図のように「Simple」を選択することで表示されます。

エンベロープ(SMA=単純移動平均線)の設定方法
出典:MT4

単純移動平均線(SMA)」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

エンベロープ(EMA=指数平滑移動平均線)

エンベロープ(EMA=指数平滑移動平均線)
出典:MT4

EMA(指数平滑移動平均線)とは、過去の全てのデータを対象としながら、直近のデータに比重をおく移動平均線です。

MT4で設定する場合は、プロパティの画面で下図のように「Exponential」を選びます。

エンベロープ(EMA=指数平滑移動平均線)
出典:MT4

指数平滑移動平均線(EMA)」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

エンベロープ(SMMA=平滑移動平均線)

エンベロープ(SMMA=平滑移動平均線)
出典:MT4

SMMA(平滑移動平均線=Smoothed Moving Average)を用いるエンベロープは、SMA・EMAと比較して線の動きが大きく変わり、より起伏が小さくなります。

MT4で設定する場合は、プロパティの画面で下図のように「Smoothed」を選びます。

エンベロープ(SMMA=平滑移動平均線)
出典:MT4

SMMA(平滑移動平均線)とは、対象の全期間の数値を用いて計算する移動平均線です。

SMA(単純移動平均線)と似ていますが、異なる点は「古い数値を除外しない」ことです。

SMAは新しい数値が追加されると、最も古い数値が除外されます。

一方、SMMAは新しい数値が追加されても古い数値が残り続けるため、古い数値が常に平均に影響を与えます。

SMAよりも長期の平均となるため、SMMAの動きはSMAよりも緩やかになります。

エンベロープ(WMA=加重移動平均線)

エンベロープ(WMA=加重移動平均線)
出典:MT4

WMA(加重移動平均線=Weighted Moving Average)を用いるエンベロープは、SMA・EMAと似た形状になります。

MT4で設定する場合は、プロパティの画面で下図のように「Linear Weighted」を選びます。

エンベロープ(WMA=加重移動平均線)
出典:MT4

WMA(加重移動平均線)とは、対象の一定期間のデータの中で、直近の値動きを重視して算出される移動平均線です。

全期間一律ではなく直近の値動きに比重をかけています。

EMAとの違いは、対象のデータが一定期間に絞られていることです。

EMAでは期間を絞らず全期間のデータを参照します。

加重移動平均線(WMA)」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

エンベロープの活用方法

ここでは、エンベロープの基本的な活用方法を解説します。

  • ・上限のバンドに到達したら売りシグナル
  • ・下限のバンドに到達したら買いシグナル

上限のバンドに到達したら売りシグナル

価格が上限のバンドに到達すると買われ過ぎと判断され、売りシグナルを意味します。

売りポジション保有後、移動平均線まで戻ってきたポイントが利益確定の目安です。

上限のバンドに到達したら売りシグナル
出典:TradingView

上チャートの通り、エンベロープでは上限のバンドがレジスタンスライン(抵抗線)として働く傾向があります。

下限のバンドに到達したら買いシグナル

価格が下限のバンドに到達すると売られ過ぎと判断され、買いシグナルを意味します。

買いポジション保有後、移動平均線まで戻ってきたポイントが利益確定の目安です。

下限のバンドに到達したら買いシグナル
出典:TradingView

上チャートの通り、エンベロープでは下限のバンドがサポートライン(支持線)として働く傾向があります。

エンベロープを設定する方法

以下の3つの取引ツールで、エンベロープを設定する方法を解説します。

  • ・TradingView
  • ・MT4
  • ・MT5

TradingView

TradingViewの画面
出典:TradingView

画面上部のメニューから「インジケーター」を選択します。

TradingViewの画面
出典:TradingView

ポップアップ画面の検索窓に「エンベロープ」と入力します。

TradingViewの画面
出典:TradingView

候補にEnvelope(エンベロープ)と表示されるので、この文字を押します。

TradingViewの画面
出典:TradingView

エンベロープが表示されます。

TradingViewの画面
出典:TradingView

パラメーター変更や、表示をカスタマイズしたい場合は、左上にある「Env〜」という文字列にカーソルを合わせます。

TradingViewの画面
出典:TradingView

文字列にカーソルを合わせると、アイコンでメニューが表示されます。

歯車のアイコンを押します。

TradingViewの画面
出典:TradingView

このようなカスタマイズの画面になります。

上部の「パラメーター・スタイル・可視性」のメニューを切り替えながら、カスタマイズしたい項目を操作します。

より詳しい設定方法は、「TradingViewでエンベロープを設定する方法」で解説しています。

MT4

TradingViewの画面
出典:MT4

MT4(メタトレーダー4)を開き、左側の「ナビゲーター」の画面を見ます。

TradingViewの画面
出典:MT4

「インディケータ」を選択します。

TradingViewの画面
出典:MT4

「トレンド」を選択します。

TradingViewの画面
出典:MT4

「Envelopes」をダブルクリックします。

TradingViewの画面
出典:MT4

ポップアップ画面が表示されるので、「OK」を押します。

TradingViewの画面
出典:MT4

エンベロープが表示されます。

パラメーター変更や、表示をカスタマイズしたい場合は、チャート上で「Ctrl+I」を押してください。

TradingViewの画面
出典:MT4

「表示中のインディケータ」というポップアップ画面が出るので「Envelopes」を選んで「編集」を押します。

MT4の画面
出典:MT4

このようなカスタマイズ画面がポップアップで表示されます。

上部にある「パラメーター・色の設定・レベル表示・表示選択」のメニューから、カスタマイズしたい項目を選んで設定を行います。

より詳しいやり方は「MT4でエンベロープを設定する方法」で解説しています。

MT5

MT5での設定画面
出典:MT5

MT5(メタトレーダー5)の画面を開き、左側にある「ナビゲータ」の画面を見ます。

MT5での設定画面
出典:MT5

「指標」を選択します。

MT5での設定画面
出典:MT5

「トレンド系」を選択します。

MT5での設定画面
出典:MT5

「Envelopes」をダブルクリックします。

MT5での設定画面
出典:MT5

ポップアップ画面が出るので「OK」を押します。

MT5での設定画面
出典:MT5

これでエンベロープが表示されます。

パラメーター変更や、表示をカスタマイズしたい場合は、チャート上で「Ctrl+I」を押してください。

MT5での設定画面
出典:MT5

「表示中のインディケータ」という画面がポップアップで表示されます。

左側で「Envelopes」を選んで、右側で「プロパティ」を押してください。

MT5での設定画面
出典:MT5

このようなポップアップ画面が出ます。

上部の「パラメータ・レベル・表示選択」から、カスタマイズしたいメニューを選び、必要な設定を行ってください。

エンベロープに関するQ&A

エンベロープに関するよくある質問は以下の3つです。

  • ・ボリンジャーバンドとの違いは何ですか?
  • ・エンベロープの注意点は何ですか?
  • ・エンベロープの目安はありますか?

ボリンジャーバンドとの違いは何ですか?

エンベロープとボリンジャーバンドは、いずれも移動平均線の上下にバンドを表示したものですが、バンドの算出ルールが異なります。

ボリンジャーバンドは標準偏差を用いた線を引くため、価格変動に合わせてバンドの幅が狭くなったり、広がったりします。

MT5での設定画面
出典:TradingView

一方で、エンベロープは移動平均線に対して一定の幅(%)で線を引くため、バンドの幅はほぼ変わりません。

MT5での設定画面
出典:TradingView

見た目は似ている両者ですが、バンドの性質が大きく異なります。

エンベロープの注意点は何ですか?

エンベロープは、トレンド相場で値動きに勢いがある場合には、価格がバンドで反発せずに突き抜けてしまうことがあります。

エンベロープの注意点
出典:TradingView

いわゆるダマシとなる可能性があります。

対策としては、以下の案が考えられます。

  • ・バンドに触れた後にローソク足が数本確定するのを待つ
  • ・取引開始時に損切り注文を出し、過大な損失を回避する
  • ・他のテクニカル指標と組み合わせて判断する

エンベロープの目安はありますか?

エンベロープの乖離率の目安は、使用する移動平均線や取引する通貨ペア、表示する時間足などの諸条件で異なります。

そのため、実際に表示して確認する方法が有効です。

確認する一つの手としては、大きく異なる数値で数回試すとおおよその目安がつくため、その数値から微調整をしていくという方法が挙げられます。

【まとめ】エンベロープとは|FXにおける意味や設定方法などを詳しく解説

エンベロープはテクニカル指標の一種で、移動平均線から一定の乖離率で上下に描画した2本の線(バンド)のことです。

上下のバンドをトレンド反転の目安として用います。

ボリンジャーバンドは価格変動に伴ってバンド幅が大きく変動する一方、エンベロープはバンド幅がほぼ一定です。

エンベロープはトレンド相場で価格に勢いがある場合には、価格がバンドを突き抜けてしまうこともあるため注意が必要です。

また、他のテクニカル分析を併用して総合的に判断することで、効果的な利用を期待できます。

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