CPI(消費者物価指数)とは|PPIとの違いや計算方法などをわかりやすく解説
CPI(消費者物価指数)とは物価の動きを表す経済指標です。
CPIは中央銀行が金融政策を決定する主要な判断材料であり、マーケットへ与える影響が大きいことが特徴です。
本記事では、CPIとはどういった経済指標なのかや、算出方法、為替相場に与える影響、過去の推移などを詳しく解説します。
目次
- 1.CPI(消費者物価指数)とは
- 2.CPI(消費者物価指数)の推移
- 3.CPI(消費者物価指数)を算出する計算方法
- 4.日本のCPI(消費者物価指数)と他国CPIの比較
- 5.CPI(消費者物価指数)が為替相場に及ぼす影響
- 6.CPI(消費者物価指数)発表前後の注意点
- 7.CPI(消費者物価指数)に関するQ&A
- 8.【まとめ】CPI(消費者物価指数)とは|PPIとの違いや計算方法などをわかりやすく解説
CPI(消費者物価指数)とは
まずはCPIやコアCPIの意味、PPIやPCEデフレーターとの違いについて解説します。
- ・CPI(消費者物価指数)とは
- ・コア指数・コアCPI(消費者物価指数)とは
- ・CPIとPPI(生産者物価指数)の違い
- ・CPIとPCEデフレーターの違い
CPI(消費者物価指数)とは
CPIとは「Consumer Price Index」を略した言葉で、日本語で「消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう)」と呼びます。
消費者が購入する商品やサービスの価格を調査し、過去と比較してその変動を指数で表しています。
ある時点を基準(基準年)、物価を「100」とし、同等の商品やサービスを購入した場合の変動率を数値化して表します。
測定精度の維持や、指数の有用性を確保する観点から、基準年は一定の周期で更新され、その際には指数に採用する品目や比重などが見直されます。
日本の場合、基準年は西暦の末尾が0と5の年で5年ごとに基準改訂されます(直近の基準改定は2020年)。
ちなみに、米国の場合は、1982年〜1984年の平均がCPIの基準です。
コア指数・コアCPI(消費者物価指数)とは
総合CPIは対象品目すべてを組み入れて集計しますが、価格変動の激しい食料品とエネルギーを除いて集計した「コア指数・コアCPI」というものがあります。
生鮮食品は、天候の良し悪しで大きく価格が変動するので、状況によっては正確な物価の変動を分析できない場合があります。
また、エネルギーも海外要因によって変動する原油価格の影響を受けるので、これも除外することによって、物価変動を測定しやすくなります。
これら変動の激しい項目を除外したデータを確認することで、全体的な物価変動の基調を正確に把握しやすくしています。
そのため、金融政策の決定に際してコア指数・コアCPIが重要視される傾向にあります。
CPIとPPI(生産者物価指数)の違い
インフレ(モノの価値が上昇する)動向を把握する手段として、CPIとは別にPPI(生産者物価指数)があります。PPIは「Producer Price Index」の略で、日本語で「生産者物価指数」と呼びます。
生産者が出荷した製品や原材料を対象とし、その販売価格の変動を算出した経済指標です。
CPIは「買い手」側の価格変動を表すのに対して、PPIは「売り手」側の価格変動を表します。
米国のPPIは、日本の卸売物価指数や企業物価指数に相当します。
CPI(Consumer Price Index) 消費者物価指数 |
消費者が購入をする価格、つまり最終価格の動向を示した指数 |
PPI(Producer Price Index) 生産者物価指数 |
製造業者の出荷時点の価格の動向を示した指数 (日本では「企業物価指数」に相当) |
CPIとPPIの関係は、下図のように整理できます。
基本的に、PPIの基調の変化は、最終的にCPIに反映されていくので、PPIはCPIの先行指標の1つと見ることができます。
「CPIとPPIの違い」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
CPIとPCEデフレーターの違い
「PCEデフレーター」は、米国の個人消費の動向を示す指標の1つで米商務省が毎月末に発表しています。
PCEは「Personal Consumption Expenditures」の略で、日本語では「個人消費支出」と呼びます。
CPIは家計調査ですが、PCEは企業調査であり、より広い範囲をカバーします。
PCEデフレーターは、名目PCE(時価で表示した価額)を実質PCE(物価変動の影響を取り除いた値)で割った数値です。
PCEデフレーターは、FRBが物価見通しの対象として最も重要視している物価指標と言われています。
CPI(Consumer Price Index) 消費者物価指数 |
消費者が購入をする価格、つまり最終価格の動向を示した指数 |
PCE(Personal Consumption Expenditures) 個人消費支出 |
個人の消費支出の変動を指数化したもの |
CPI(消費者物価指数)の推移
以下は、日本のCPIの推移チャートです。
> 国別経済指標
日本のCPIは0%を挟んで推移した後、2023年1月にかけて上昇しました。
その後の上昇率は緩やかな低下傾向を示したものの、2025年1月にかけて再び上昇しつつある様子がわかります。
この状況を受けて、日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、2025年2月時点で政策金利は0.5%まで引き上げられています。
続いて、米国のCPIの推移チャートです。
米国のCPIは2022年6月の9.1%をピークに下落しており、連邦公開市場委員会(FOMC)は2024年に政策金利を3回引き下げました。
しかし、2025年2月のCPIは総合指数が2.8%、コア指数は3.1%を記録しており、CPIの下落ペースの鈍化が示されています。
2025年3月18日から19日にかけて開催されたFOMCでは、政策金利を据え置くとともに政策金利引き下げペースの鈍化見通しが公表されました。
CPIの推移を反映した可能性があります。
※FRBは金融政策の決定を行うにあたり、CPIよりもPCEデフレーターを注視していますが、市場ではPCEデフレーターに先行するCPIに、大きく反応する傾向があります。
CPI(消費者物価指数)を算出する計算方法
CPIは、一般的に物価指数の計算式「ラスパイレス算式」から算出します。
「(比較時の価格×基準時の数量÷基準時の価格×基準時の数量)×100」で消費者物価指数の比率を求められます。
例えば、基準時のおにぎりが1つ100円で100個売れていて、比較時ではおにぎりが1つ110円で90個売れたとします。
上記計算式に当てはめると、「(110×100)÷(100×100)×100=110」となります。
基準となる物価は「100」とするので、過去から現在では物価が10%上昇したとわかります。
※ラスパイレス式では基準時の数量をウェイトとして加重平均するので、比較時の「90個」は考慮されません。
CPIは基準年(過去)の物価から、今の物価がどの程度変化したのかを表します。
日本のCPI(消費者物価指数)と他国CPIの比較
ここでは、米国・英国・豪州のCPIの違いを比較していきます。
CPIは各国が発表していますが、国によって違いがあります。
日本と他国のCPIの違いを一覧にすると、以下の通りです。
比較項目 | 日本 | 米国 | 英国 | 豪州 |
---|---|---|---|---|
発表元 | 総務省統計局 | 米労働省 労働統計局 |
英国国家統計局 | 豪州連邦統計局 |
発表時期 | 毎月19日を含む 週の金曜日 |
毎月15日前後 | 毎月15日前後 | 四半期ごとで翌四半期 最初の月の下旬 |
総合CPI | 全対象品目 | 全対象品目 | 全対象品目 | 全対象品目 |
コアCPI | 生鮮食品を除く | 生鮮食品及び エネルギー除く |
生鮮食品及び エネルギー除く |
生鮮食品及び エネルギー除く |
コアコアCPI | 生鮮食品及び エネルギー除く |
ー | ー | ー |
日本のコアCPIでは生鮮食品を除いていますが、米国・英国・豪州のコアCPIでは生鮮食品及びエネルギーを除いています。
日本もコアコアCPIでは生鮮食品及びエネルギーを除いており、日本のコアコアCPIは、3カ国のコアCPIに該当します。
CPI(消費者物価指数)が為替相場に及ぼす影響
中央銀行が決定する金融政策は、マーケットへ大きな影響を与えます。金融政策を検討する上で、CPIは主要な判断材料となるため注目が集まっており、結果発表後にはマーケットが大きく反応することがあります。
この章では下記について解説します。
- ・インフレ率と中央銀行
- ・CPIと金融政策
- ・金利と為替相場の関係
- ・金利上昇の原因に注目
「CPIがマーケットに及ぼす影響」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
インフレ率と中央銀行
中央銀行は、過度なインフレやデフレを警戒し、緩やかなインフレが続くようにインフレ率の目標値を設定して、その目標に向けて金融政策を実施します。適度なインフレ状態のときは、企業の販売価格が上昇し、売上が増加するので、設備投資が増えるほか、従業員の給料が増加します。
給料が増えた従業員の消費活動は活発になり、さらに企業の売上が増加して消費者の需要が増えます。
販売価格を上げても売れるようになるため、物価が上昇するという好循環を生み出すことができます。
先進国の主な中央銀行は、この「緩やかなインフレ」を前年比2%程度の物価上昇率と考えています。
CPIと金融政策
中央銀行はインフレ率を目標値に誘導するため、金融政策を行います。一般的に、金融引き締め(政策金利の引き上げ、量的緩和の縮小)を行うと、お金を借りる人が減るので、市中に出回るお金の量が減り、モノやサービスの需要が抑制されます。
これにより、モノやサービスの価格が低下し、物価上昇を抑えることができます。
反対に、インフレ率が低いときは、金融緩和(政策金利の引き下げ、量的緩和等)を行うと、お金を借りやすくなり、市中に出回るお金の量が増えるので、モノやサービスの需要が増え、価格が上昇しやすい環境を作ることができます。
中央銀行はこのように金融引き締めと金融緩和を行い、インフレ率をコントロールしようとします。
ただし、物価変動要因により、金融政策の効果に差が生じる場合があります。
物価変動要因は、主に次の4つのタイプに分けることができます。
- ①需要の増減に起因
- ②コストの増減に起因
- ③貨幣供給量に起因
- ④為替レートに起因
①需要の増減に起因
需要が増加したことにより価格が上昇、または需要が減少したことにより価格が下落するケースです。
2020年4月には、新型コロナウイルス感染拡大を受けたリセッション(景気後退)下で、需要が減少したことから米国のCPIは大幅低下となりました。
②コストの増減に起因
資源価格の騰落や、人件費等のコストの増減により価格が変動するケースです。
米国ではコロナ禍からの回復において、急激に消費が拡大したことで人手不足が問題となり、高い給料を払わないと人材を確保できない状況となりました。
そのため、人件費コストが増加して、商品やサービス価格が上昇しました。
③貨幣供給量に起因
貨幣(現金、硬貨、残高、預金が含まれる)の流通量が増えることで貨幣の価値が下がり、流通量が減ることで貨幣の価値が上がります。
これにより価格が変動するケースです。
中央銀行による公開市場操作によって貨幣が大量に供給されると、貨幣の量が商品の量よりも多くなりすぎて価格が上昇します。④為替レートに起因
その国の通貨の対外価値が下がると輸入品が高くなり価格が上昇、または通貨の対外価値が上がると輸入品が安くなり価格が下落するケースです。
金利と為替相場の関係
CPIは、中央銀行の金融政策の検討材料になっていますが、この金融政策の中で最も重要なのが政策金利です。
政策金利は短期金利や銀行の貸出金利などに影響します。
一般的に、経済が安定している状態のときは、金利の高い国に投資資金が流入しやすい傾向にあります。
この理由は、金利の高い国の方が、投資資金に対してより大きなリターンを狙うことができるためです。
これに対し、景気が減速したり、市場が不安定になったときは、この投資資金の逆流が起こるケースがあります。
金利を狙って投資していた資金を引き上げる行為が、活発化するということです。
よく市場で耳にする「リスク回避の円買い」などが該当します。
金利上昇の原因に注目
金利上昇には、良い上昇と悪い上昇があり、金利の高い国の通貨が売られる例外もあります。
良い金利上昇とは「好景気で需要の増加により物価が上昇し、景気が過熱した状態」を抑える目的の利上げです。
景気は良好であるため、利上げをしても景気の減速は限定的であり、その通貨の価格も高い水準で維持される傾向があります。
反対に、悪い金利上昇とは「自国通貨安や資源価格の上昇が原因の物価上昇」を抑える目的の利上げです。
景気が良好でない状態で利上げを行うと、景気が後退するリスクが高く、景気後退によって通貨安が進み、負のスパイラルに陥ることもあります。
上記の通り、金利が上昇してもその国の通貨が買われるとは限らないため、金利上昇の原因を見極めることが重要です。
CPI(消費者物価指数)発表前後の注意点
CPI発表前後の注意点は、以下のようなものです。
- ・相場が急変動する可能性がある
- ・発表直後にスプレッドが急拡大する可能性がある
- ・価格の提示が困難になる可能性がある
- ・約定しない可能性がある
相場が急変動する可能性がある
前述の通り、各国のCPIは中央銀行の金融政策判断に大きな影響を与えます。
そのため、市場の注目度も高く、発表前後に関連市場が大きく変動することがあります。
発表直後にスプレッドが急拡大する可能性がある
CPIの発表前後はスプレッドが拡大する傾向にあります。
スプレッドが拡大することで売買の利益が小さくなる、損失が大きくなるなどのデメリットがあります。
価格の提示が困難になる可能性がある
市場予想に対してCPIの結果が大きく乖離した場合は、売買のバランスが偏り、レートが固まってしまうなど、価格の提示が困難になる可能性があります。
約定しない可能性がある
CPIの発表前後は「予期しない価格で約定する」「約定しない」などの可能性もあります。
指値注文・逆指値注文などの予約注文を入れていても、予約した価格と乖離した価格で約定する「スリッページ」が起こることがあります。このため、CPIの発表前後にはポジションを無理に持たないなど、十分に注意を払うことが必要です。
経済指標の発表日は「経済指標 予測カレンダー」で確認できます。
CPI(消費者物価指数)に関するQ&A
CPIに関して、よく見られる疑問点は下記のようなものがあります。
- ・CPIはいつ発表されますか?
- ・CPIはなぜ重要なのでしょうか?
- ・CPIはいつから始まりましたか?
- ・日本のCPIの作成方法は主要国と同じですか?
CPIはいつ発表されますか?
米国のCPIは、毎月15日前後の午前8時半(米国東部時間)に発表されます。
日本時間では、米国のサマータイム時は21時半、サマータイム時以外は22時半です。
CPIはなぜ重要なのでしょうか?
中央銀行の金融政策は、金融市場に大きな影響を与えるためです。CPI等の物価指標は、金融政策の意思決定に重要な判断材料となることから重要視されます。
CPIはいつから始まりましたか?
CPIが初めて作られたのは、第二次世界大戦直後の昭和21年(1946年)まで遡ります。
その後の昭和27年(1952年)には、小売物価統計調査による小売価格から、指数が作成されるようになりました。
日本のCPIの作成方法は主要国と同じですか?
日本のCPIは、他の主要国と同じように作成されています。
理由としては、国際労働機関(International Labour Organization:ILO)が国際基準を作成しているためです。
現行の国際基準は、平成15年(2003年)12月にスイスのジュネーヴで開催された第17回国際労働統計家会議で採択されました。
【まとめ】CPI(消費者物価指数)とは|PPIとの違いや計算方法などをわかりやすく解説
CPIとは「Consumer Price Index」を略した言葉で、日本語では「消費者物価指数」と呼ばれます。
物価動向を確認する指標で、各国の中央銀行が金融政策を決定する判断材料として注目しています。
金融政策はマーケットに与える影響が大きく、CPI発表前後には相場が大きく変動することもあります。
そのため、FX取引をする際にはマーケットの注目度が高く影響の大きいCPIに一定の注意を払う必要があります。
CPIは日本では毎月19日を含む週の金曜日に発表され、米国や英国では毎月15日前後に発表されます。
CPIの発表も含め、ファンダメンタルズ分析で役立つ市場の最新情報は「マーケットニュース」で配信しています。
また、CPIを含めたFX取引の基礎的な用語や、FX初心者の方が取引を行う上で役立つポイントを、以下のコンテンツでわかりやすく解説しています。
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