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地政学リスクとは|意味・市場との関係や過去の事例について解説


地政学リスクとは、地理的な位置関係や諸要素が、政治的、軍事的、社会的な緊張を高め、世界経済に影響を及ぼすリスクのことです。

本記事では、地政学リスクの意味などについて解説します。

地政学リスクとは

地政学リスクとは、特定の地域における紛争やテロなどによる政治的、軍事的緊張が、関係国や世界の経済に及ぼす不確実性(リスク)のことです。

地政学的リスクと呼ぶこともあります。

FX市場を始めとする金融市場では、地政学リスクによる影響は短期的なものとなるケースが多いです。

主要国経済に大きく影響する事態になると長期化するケースもあるため、最新情報を把握する必要があります。

地政学リスクは、以下の2つに分けられます。

  • ・地理的リスクとは
  • ・政治的リスクとは

地理的リスクとは

国境紛争などのリスクは、地理的リスクの1つです。

国の地理的な位置は、他国との関係に大きな影響を与えます。

隣接国との国境線や地理的特性が、緊張や紛争の発生をもたらす側面は否定できません。

さらに、「地震」「洪水」「台風」などの自然災害は、特定の地域で頻繁に発生する傾向があり、地理的条件に密接に関連します。

国境紛争などのリスクに加えて、自然災害のリスクも地理的リスクと考えられます。

政治的リスクとは

政府の安定性が低い国では、政策変更にとどまらず治安の悪化や社会的混乱が発生しやすく、政治的な混乱の発生は、投資やビジネスに大きく影響します。

紛争やテロも政治的リスクに含まれます。

政治的リスクは、政府の政策変更から紛争やテロまで、幅広く捉えられます。

地政学リスクと市場の関係性

地政学リスクとマーケットの関係性について、以下の5つの観点から解説します。

※いずれも一般的な捉え方と動きの解説です。

実際の動きとは異なる場合もありますが、地政学リスク顕在化の際の参考にできるでしょう。

  • ・地政学(的)リスクと金
  • ・地政学(的)リスクと原油
  • ・地政学(的)リスクと債券
  • ・地政学(的)リスクと株価
  • ・地政学(的)リスクと為替

地政学(的)リスクと金

は、戦争など地政学リスクが顕在化すると、価格が上昇する傾向があります。

装飾品などとして古くから高い価値が認められてきた金属で、かつては金本位制が採用されていたこともあり、金融商品に近い存在です。

平常時は、金を保有しても利息や配当などは得られないため、投資家は金への投資意欲はそれほど高くありません。

地政学(的)リスクと原油

原油は、地政学リスク(産油国および産油国周辺で戦争など)が顕在化すると、原油生産能力の低下が懸念され、価格が上昇する傾向にあります。

原油は、金と同じく金融商品としての一面がありますが、戦略物資の側面が強いです。

地政学(的)リスクと債券

債権は、地政学リスクが顕在化すると、それらの国や地域の債券が、投資家のリスク回避の行動から売られる傾向があり、価格が下落して、金利は上昇します。

一方で、地政学リスクとは関係ない国の債券は、買われる傾向があります。

地政学リスクが顕在化した国の債券を売って、地政学リスクの影響の少ない国の債券を買う、という投資行動が生じるためです。

地政学(的)リスクと株価

株価は、戦争などの地政学リスクが顕在化すると、世界の経済や金融市場に悪影響を及ぼす可能性があります。

直接的な影響を受けずとも、原油価格上昇などは多くの国の経済に影響を与えます。

特に、戦争などの深刻な地政学リスクが顕在化した際は、世界的に株価は下落する傾向にあります。

地政学(的)リスクと為替

為替市場は、地政学リスクが顕在化した場合、安全資産とされる通貨が買われる傾向にあります。

一般的に、安全資産とされるのは米ドル、日本円そしてスイスフランの3通貨です。

ただし、3通貨は地政学リスクに応じて一様に反応するのではなく、状況に応じてさまざまな動きを示します。

円に関しては、地政学リスク発生時の円買いの度合いが従来よりも弱まっているといわれることがあります。

地政学リスクが市場に影響を与えた事例

地政学リスクがマーケットに影響を与えた事例として、以下の3つの例を取り上げて解説します。

  • ・ロシアのウクライナ侵攻
  • ・新型コロナウイルス感染拡大
  • ・Brexit(ブレグジット)

ロシアのウクライナ侵攻

2022年2月にロシアはウクライナへ軍事侵攻を開始し、2024年10月時点でも戦争状態にあります。

ロシアのウクライナ侵攻で特に大きな影響を受けたのは、原油を始めとする商品市場です。

原油価格(USOIL)は大きく上昇し、侵攻前の2月には90ドル台にありましたが、3月には一時130ドル台まで上昇しました(下の原油チャート参照)。

また、世界屈指の小麦輸出国のウクライナでの小麦生産低下が懸念され、小麦価格も急上昇しました。

原油と小麦いずれも、約半年後にはロシアの侵攻前の水準まで値を戻しました。

しかし、ウクライナ侵攻は商品価格の高騰と、世界的インフレを呼び込む結果となりました。

ロシアのウクライナ侵攻による影響

出典:TradingView

新型コロナウイルス感染拡大

2020年初頭、新型コロナウイルスへの感染者が世界的に拡大を始めると、多くの国でロックダウンが実施されました。

これにより、各国および世界経済の急減速が確実視され、企業収益の悪影響を織り込む形で株式市場は急落し、コロナショックと呼ばれる状態となりました。

各国中央銀行は経済崩壊を防ぐための急速な金融緩和を行い、その効果により各国の株式市場は3月半ば頃には底打ちすることになりました(下チャートはNYダウ)。

以後は、経済の回復とともに、金融緩和を背景とする世界的な株高が進む結果となりました。

新型コロナウイルス感染拡大による影響

出典:TradingView

Brexit(ブレグジット)

英国は、2016年6月23日の国民投票で、EU(欧州連合)からの離脱(Brexit)を決定しました。

事前予想はEU残留がほとんどであり、英国のEU離脱決定は金融市場に大きな驚きをもって受け止められました。

英国のEU離脱決定を受けて、急速にポンドが売られる結果になりました。

ポンド/ドルは、前日まで1ポンド1.4ドル台後半で取引されていたところから、Brexit決定が報じられると1.32ドル台まで急落しました(下チャート参照)。

当日は一時1.5ドル台まで上昇していたこともあり、1日の変動幅は約1800pipsにもなりました。

その後、約3か月続くポンド下落のスタート地点ともなりました。

Brexitによる影響

出典:TradingView

地政学リスクに関するQ&A

地政学リスクに関するよくある質問は、主に以下の通りです。

  • ・地政学リスクと地政学的リスクの違いは何ですか?
  • ・カントリーリスクとの違いは何ですか?
  • ・為替リスクとは何ですか?

地政学リスクと地政学的リスクの違いは何ですか?

地政学リスクと地政学的リスクは、表現の違いのみで意味は同じです。

どちらも、一般的には特定の地域における紛争やテロなどによる政治的、軍事的緊張が、関係国や世界の経済に及ぼす不確実性(リスク)のことを指します。

カントリーリスクとの違いは何ですか?

カントリーリスクとは、海外投融資や貿易の対象となる相手国の政治、社会、経済などの環境に基づいたリスクのことを指します。

一般的にインフレや、テロ、政権交代などがカントリーリスクとされています。

為替リスクとは何ですか?

為替リスクは、以下の3種類に大別されます。

  • ・為替取引リスク
  • ・為替換算リスク
  • ・為替経済性リスク
為替取引リスクは、取引時の通貨の為替レートが変動することで損失が発生するリスクを指します。

為替換算リスクは、外貨建ての資産や負債の金額が為替レート変動によって変化し、会計上の損失が生じるリスクを指します。

為替経済性リスクは、為替レートの変動が企業の収益や競争力に影響を与え、企業の構造に変化をもたらすリスクを指します。

【まとめ】地政学的リスクとは|意味・市場との関係や過去の事例について解説

地政学リスクといっても、内容やその影響は幅広いものがあります。

地政学リスクを把握する際には、どのような事態が発生しているのか状態を確認するだけでなく、どのような金融商品が影響を受けているのか、という視点も重要です。

地政学リスク顕在化の際は、状況の把握に努めるとともに、金融市場を幅広く概観し、影響を受けている金融商品も把握する必要があります。

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