用語解説

インサイダー取引とは|事例や規制に違反した場合の罰則などをわかりやすく解説


インサイダー取引とは、上場企業の関係者などがその職務や地位を通じて得た、投資家の投資判断に大きな影響を与える未公開の会社情報を利用し、株式などを売買する行為です。

金融商品取引法で禁止されており、違反した場合には刑事罰・課徴金納付命令の対象になります。

本記事では、インサイダー取引の意味や例、4つの取引規制要素などについて詳しく解説していきます。

インサイダー取引とは

インサイダー取引とは、「上場企業関係者が、関係者しか知らない情報を利用して、株取引などをする」ことです。

こういった行動は、金融商品取引法によって禁止されています。

内部者取引と呼ばれることもあります。

2024年には、東京証券取引所職員や、金融庁職員によるインサイダー取引の報道もあり、コンプライアンスの取り組みが課題となっています。

インサイダー取引が規制されている理由

インサイダー取引が規制される主な理由は、公平で透明な市場を維持するためです。

未公開の重要情報を基に株取引などが行われると、それを知らされていない一般投資家は不利な状況で取引することになり、金融商品市場の信頼が損なわれます。

これらを防ぐため、規制を通じて市場の公正な取引環境を維持し、全ての投資家に平等な投資機会の保障が図られています。

ちなみに、FX取引においては「特定の銘柄について関係者しか知らない情報」はないため、インサイダー取引は存在しません。

インサイダー取引で重要な4つの要素

インサイダー取引に関する重要な4つのキーワードについて、詳しく解説します。

  • ・会社関係者・情報受領者
  • ・重要事実
  • ・重要事実の公表
  • ・株券等の売買等

会社関係者・情報受領者

会社関係者は、主に以下の通りです。

  • ・上場会社とその親会社と子会社の役員・従業員(パートタイマーやアルバイトを含みます)
  • ・上場会社の取引先、顧問先など
  • ・会計帳簿閲覧請求権を有する株主(3%以上の議決権を持つ株主)と、それが法人の場合はその役員、従業員
  • ・法令に基づく権限を有する者(許認可をする公務員など)
  • ・​​元会社関係者(会社関係者でなくなった後1年以内の者など)

情報受領者は、上場会社で働いているかどうかは関係なく、会社関係者から直接重要事実の伝達を受けた者を意味します。

よって情報受領者には家族や友人、知人などが含まれます。

重要事実

重要事実とは、会社の株価に影響を与える情報を意味します。

上場会社に関する事実だけでなく、上場会社の子会社の情報も重要事実に含まれることがあります。

主な重要事実は以下の通りです。

  • ・株式の発行、交換、移転
  • ・資本金の額の減少
  • ・合併や提携、提携の解消
  • ・会社の分割
  • ・災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
  • ・行政処分
  • ・主要取引先との取引の停止
  • ・売上高・配当予想の大幅修正など

重要事実の公表

重要事実の公表とは、重要事実が証券取引所のホームページや適時開示情報閲覧サービスに掲載されるなどの措置がとられたことを指します。

事前に重要事実を知っている場合でも、公表されたあとならインサイダー取引にはあたりません。

株券等の売買等

関係者は、株券などの売買に限らず、情報を伝達したり取引を推奨するケースも違法となります。

  • ・公表前の取引によって相手に利益を得させたり、損失を回避させることを目的とする
  • ・相手が実際に公表前の取引を行った場合

インサイダー取引が発覚する理由

インサイダー取引が発覚する主な理由は、以下の2つです。

  • ・調査機関による調査
  • ・内部告発による密告

調査機関による調査

インサイダー取引は、「日本取引所自主規制法人」と「証券取引等監視委員会」によって、監視や調査などが日々行われています

日本取引所自主規制法人は、東京証券取引所(現物市場)や大阪取引所(デリバティブ市場)の売買動向などを日々監視しています。

不審な取引があった場合、証券取引等監視委員会へ報告され、この一連の流れを「売買審査」といいます。

証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣により任命された委員長1名と委員2名の合計3名で構成されています。

厳密な調査や検査を行い、法令違反が確認された場合には、告発や課徴金の支払い命令などの処分が実施されます。

内部告発による密告

企業内部からの密告(内部告発)も大きな要因です。

内部告発は多くの場合、匿名で行われ、企業の不正行為や不透明な取引が明るみに出るきっかけとなります。

ただし、内部告発の後に会社や関係者などとトラブルになるリスクや事例が存在しているので、インサイダー取引の疑いがある場合は事前に専門家や証券取引等監視委員会の窓口へ相談することが推奨されます。

インサイダー取引の事例

ここでは、インサイダー取引の主な事例を紹介します。

    日新汽船株式(1990年):金融会社の社長が、日新汽船の第三者割当増資の情報を利用して株を売買した事件で警視庁により摘発。インサイダー規制の初めての事件となりました。
    マクロス株式(1991年): 株式会社マクロス(旧谷藤機械工業)の専務がインサイダー取引を行った事件で、大蔵省による初の告発事例となりました。

典型的な例は、上場会社の関係者から「会社の株価に影響を与える未公開の情報」を聞き、それをもとに株式を売買することです。

例えば、上場会社の役員から「会社の決算予想値に大幅な上方修正が生じた」「他の会社と業務提携する」などの情報を得た知人が、その情報が開示される前に、株式を買いつけた場合には、インサイダー取引に該当します。

インサイダー取引に関するQ&A

インサイダー取引に関するよくある質問に回答します。

  • ・インサイダー取引の規制に違反した場合の罰則はありますか?
  • ・インサイダー取引を未然に防ぐにはどうしたらいいですか?
  • ・インサイダー取引は株式のみですか?
  • ・インサイダー取引の規制は家族も対象ですか?

インサイダー取引の規制に違反した場合の罰則はありますか?

インサイダー取引の規制に違反した場合には、刑事罰・課徴金納付命令の対象になります。

違反した場合、個人の場合は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または両方が科せられ(金商法第197条の2第13号)、法人の場合は5億円以下の罰金が科せられます(207条第1項第2号)。

また、インサイダー取引によって得た財産は全て没収されます(198条の2第1項第1号)。

他には、社内処分(懲戒処分)などが行われることもあります。

インサイダー取引を未然に防ぐにはどうしたらいいですか?

企業の目線では、インサイダー取引を未然に防ぐには、コンプライアンスや情報管理の徹底、重要事実の取り扱いが大切です。

上場会社においては、情報を適時、適切に開示すること、インサイダー取引規制について役職員等に正しい理解を促すことなどが対策として挙げられます。

投資家目線では、インサイダー取引が金融商品取引法で禁止されており、刑罰の対象となることを正しく理解する必要があります。

インサイダー取引は株式のみですか?

株式以外でも、次のものはインサイダー取引に該当する主な例です。

  • ・新株予約権証券
  • ・社債
  • ・優先出資証券
  • J-REIT(リート)
  • ・上場インフラファンド等

ETFや一般に販売されている大部分の投資信託(※)は、インサイダー取引規制の対象ではありません。

※自社株投信のような個別の上場会社の株式等のみを投資対象とする株式投資信託は除きます。

またFX(外国為替証拠金取引)が該当することもありません。

「FX(外国為替証拠金取引)」については、以下の記事で詳しく解説しています。

FXとは|はじめてのFX・初心者向けの基礎知識をわかりやすく解説

インサイダー取引の規制は家族も対象ですか?

インサイダー取引の規制は本人だけでなく、配偶者や親族などの家族も対象となります。

家族が内部情報を利用して株式などを取引することも不正行為とみなされ、法律で禁止されています。

これにより市場の公正性と信頼性が維持されます。

【まとめ】インサイダー取引とは|事例や規制に違反した場合の罰則などをわかりやすく解説

インサイダー取引とは、上場会社の関係者などが非公開の内部情報を知り、それを利用して株式市場で取引することです。

一般の投資家が不利な立場に置かれ、金融商品市場の信頼が損なわれるため金融商品取引法で禁止されています。

違反した場合には刑事罰、課徴金納付命令の対象になります。

インサイダー取引の取引規制要素として「会社関係者・情報受領者」「重要事実」「重要事実の公表」「株券等の売買等」が挙げられ、これらの意味を正しく理解しておくことでインサイダー取引を未然に防ぐ効果が期待できます。

インサイダー取引を含めたFX取引の基礎的な用語や、FX初心者の方が取引を行う上で役立つポイントは、以下のコンテンツでわかりやすく解説しています。

OANDA証券での取引に興味をお持ちいただけた方は、以下のボタンから口座開設をご検討ください。

OANDA証券の口座開設

FX初心者にオススメのコンテンツ

CCI

これからFXを始める初心者の方向けに、豊富なコンテンツを提供しています。コンテンツを読み進めていくことで、初心者の方でもFXをスムーズに始めることが可能です。またOANDAの口座保有者だけが使えるOANDAオリジナルインジケーターも提供しています。是非OANDAの口座開設をご検討ください。


本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

この記事をシェアする

ホーム » 用語解説登録 » インサイダー取引