用語解説

スプレッドとは|FX取引に与える影響・計算方法を紹介


FX取引で利益を上げるためには、手数料(取引コスト)を抑えることも重要です。

FX取引の場合、実質的な手数料に相当するのが「スプレッド」です。

スプレッドは売値(Bid)と買値(Ask)の価格差を表し、その値が大きい(広い)とコストが大きくなるため、投資家にとっては不利な環境になります。

取引コストに関わる要素のため、スプレッドの幅は、FX会社を選ぶ判断基準になります。

本記事では、スプレッドの概要や計算方法、各社で数値が異なる理由などを解説していきます。

スプレッドとは

スプレッドとは、売値(Bid)買値(Ask)の価格差のことです。

FXでは、買うときと売るときの価格が異なります。

買値は売値よりも高く、売値は買値よりも安く提示されます。

これを2wayプライスと呼びます。

FXの取引ツールでは、売値が左側、買値が右側、スプレッドが中央に表示されるのが一般的です。

スプレッドは、投資家にとって取引コストとなります。

日本のFX会社の多くは、取引手数料を無料にしていますが、スプレッドが実質的な手数料として取引毎にかかります。

上図のように、米ドル/円の売値が133.141円、買値が133.144円だった場合、その価格差の「0.003円(0.3銭)」がスプレッドです。

スプレッドの値が小さければ「狭い」、大きければ「広い」と表現されます。

コスト負担という面だけで考えると、スプレッドが狭い方が投資家にとって有利、広い方が投資家にとっては不利だといえます。

そのため、スプレッドが投資家によるFX会社選びの1つの基準となり、FX会社による差別化要素となっています。

スプレッドの単位

スプレッドの単位は「銭」と「pips」の2種類で表されます。

日本円を含む通貨ペアは「銭」、外貨同士の通貨ペアは「pips」で表すのが一般的です。

銭(せん)とは、日本円の1円未満の金額を表す単位であり、1円=100銭(0.01円=1銭)です。

円絡みの通貨ペアである、米ドル/円、ユーロ/円などのスプレッドを表す際に用いられます。

pips

pips(ピップス)とは、FXで使用される共通単位のことです。

外貨同士の通貨ペアである、ユーロ/米ドル、ポンド/米ドルなどのスプレッドを表す際に用いられます。

pips(ピップス)については、こちらの記事で詳しく解説しています。

なお、円絡みの通貨ペアの場合、1pips=1銭(0.01円)を表すのが一般的です(ただし、FX会社によっては異なる場合もあるので注意が必要です)。

  • ・1pips=1銭(0.01円)
  • ・10pips=10銭(0.1円)
  • ・100pips=100銭(1円)

スプレッドの計算方法

実際の取引で計上される取引コスト(未実現損失として計上される金額)は、以下の計算方法で算出できます。

  • 取引コスト=スプレッド×取引数量

例えば、スプレッドが0.1銭(0.001円)のときに、1,000通貨の取引数量の場合、両者を掛け算した1円が取引コストになります(同様の計算で、10,000通貨の場合は10円)。

その金額は、未実現損失として計上されます。

このようにスプレッドと取引数量を掛け合わせるだけの単純な計算方法のため、簡単に取引コストを算出できます。

スプレッドと通貨ペアの関係

ここでは、スプレッドと通貨ペアの関係や決済方法について解説します。

  • ・ドルストレートとクロス通貨のスプレッド
  • ・FXのスプレッドは狭い方が低コストになる

ドルストレートとクロス通貨のスプレッド

FX取引の通貨ペアは、以下の2種類に分かれます。

種類 意味 通貨ペアの例
ドルストレート 米ドルを含む通貨ペア 米ドル/円・ユーロ/米ドル・ポンド/米ドルなど
クロス通貨 米ドルを含まない通貨ペア ユーロ/円・ポンド/円・豪ドル/円 など

ドルストレートとは、米ドルを含む通貨ペアのことです。

下図のように基軸通貨となる米ドルを含む場合を、ドルストレートと呼びます。

ドルストレート

一方、「ユーロ/円」などの通貨ペアは、「ユーロ/米ドルと米ドル/円の価格を掛け合わせる」形で価格を算出します(下図参照)。

上図の通り、「米ドル/円のレート」と「ユーロ/米ドルのレート」を掛け算しています。

ドルストレートとクロス通貨のスプレッドを比較すると、ドルストレートの方が狭く、クロス通貨の方が広くなる傾向があります。

この理由は「ドルストレートの方がメジャーな通貨ペアであり、流動性が高い傾向」にあるためです。

スプレッドは流動性が高い通貨ペアほど狭くなり、流動性の低いマイナーな通貨ペアほど広くなる傾向にあります。

FXのスプレッドは狭い方が低コストになる

スプレッドは、FX会社や通貨ペアによって狭さが異なります。

スプレッドだけで考えた場合、スプレッドが狭いFX会社で取引をした方が、投資家にとって低コストの取引が可能です。

例えば、以下の条件で比較してみます。

売値(Bid) 買値(Ask) スプレッド
A社 100.000円 100.001円 0.1銭
B社 100.000円 100.030円 3銭

仮に、10万通貨の取引をする場合、A社の取引コストは100円、一方のB社のコストは3000円となります。

このように、スプレッドだけの数値を見た場合には気づきにくくなりますが、実際の取引コストを算出するとその影響が大きいことが分かります。

スプレッドがFX会社によって違う理由

スプレッドがFX会社によって異なる理由は、以下のようなものです。

  • ・FX会社ごとの手数料設定
  • ・注文までの速度が影響
  • ・リクイディティ・プロバイダーごとに配信レートが違う

FX会社ごとの手数料設定

FX会社は、投資家の取引コストが主な収益源です。

投資家の取引コストには、スプレッド、スワップポイントなどがあり、それぞれをどのように設定するかは、FX会社の経営方針によって違います。

「米ドル/円のスプレッドが狭い」「マイナー通貨のスプレッドが狭い」「特定通貨ペアのスワップポイントが高い」など、FX会社は独自性を打ち出してユーザーの多様なニーズに応えています。

FX会社によって注力するポイントが異なるため、それがスプレッドの差に現れるのです。

注文までの速度が影響

取引ツールから発注した注文は、FX会社のサーバで処理されます。

その注文がサーバに届くまでに、わずかな時間を要します。

0.001秒単位という極めて短い時間ですが、それでもタイムラグがあることは確かです。

FXの相場はリアルタイムで変動しているため、このタイムラグによって買値・売値の双方が変化する可能性があります。

スプレッドとは、売値と買値の差額であるため、2つの数値が変動すればスプレッドも変動します。

そのタイムラグは、FX会社によって異なるため、スプレッドも各社で異なります。

リクイディティ・プロバイダーごとに配信レートが違う

リクイディティ・プロバイダー(LP)とは、FX会社に流動性を提供する金融機関です。

「FX会社に売買注文を供給する金融機関」とイメージすると分かりやすいでしょう。

各リクイディティ・プロバイダーが提供する価格にもスプレッドがあり、調達元のスプレッドの狭さによってFX会社のスプレッドも格差が生じます。

なお、ここではリクイディティ・プロバイダーのスプレッドと表現しましたが、調達の時点で目に見えるのは「1ドル150.48円」などの配信レートであり、これはスプレッドと実質的に同じ意味です。

原則固定について

スプレッドの原則固定とは、相場変動に関わらず一定のスプレッドが提供されるという意味です。

スプレッドを原則固定としているFX会社は多く存在します。

ただし、「原則的に固定」なだけで、相場に異変が起きた場合などには、例外的にスプレッドが広がる場合もあるので注意が必要です。

FXのスプレッドが変動する3つの要因

原則固定のスプレッドを提供しながらも、特定の状況下ではスプレッドが変動します。

その主な3つの要因は、以下のようなものです。

  • ・市場の流動性が低い時間帯
  • ・重要な経済指標が発表される前後の時間帯
  • ・突発的なリスクが発生した場合

【変動要因1】市場の流動性が低い時間帯

以下のような市場の流動性(取引量)が低い時間帯および日にちは、スプレッドが拡大する傾向にあります。

  • ・日本時間の早朝(5時~8時の時間帯)
  • ・クリスマス
  • ・年末年始

また市場の流動性が低いと、急な価格変動が発生するリスクもあるので、無理に取引を行わないのが賢明でしょう。

流動性については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【変動要因2】重要な経済指標が発表される前後の時間帯

重要な経済指標が発表される前後の時間帯は、スプレッドが拡大する傾向にあります。

FXの重要な経済指標はいくつかありますが、特に世界経済の中心である米国の雇用統計、CPIなどには注意が必要です。

また重要指標の発表後は、大きな値動きが発生する可能性もあります。

その値動きを狙って取引するときは、乱高下する場合もあることを認識しておく必要があります。

重要な経済指標がいつ発表されるのかは、OANDA証券が提供している「経済指標 予測カレンダー」で確認できます。

【変動要因3】突発的なリスクが発生した場合

金融危機や災害・テロなど、世界経済に影響を与える突発的なリスクが発生した場合は、スプレッドが拡大する傾向にあります。

例えば、2020年の「コロナショック」では多くの金融市場が乱高下し、FX市場にも動揺が見られ、スプレッドが広がるケースも多く見受けられました。

FX会社を選ぶ際のスプレッド以外のポイント

FX会社を選ぶ際のポイントは、以下のようなものです。

  • ・約定力
  • ・スリッページ
  • ・通貨ペアの数

約定力

約定とは、FX取引が成立することを意味します。

つまり約定力とは、「注文通りに約定するか」の度合いを表します。

為替レートは、0.001秒単位のスピードで目まぐるしく変動しており、投資家の注文がFX会社のサーバに届いて初めて約定します。

約定力が弱いFX会社の場合、約定までに時間がかかってしまい、スリッページが発生する恐れがあります。

約定スピードの重要性については、こちらの記事で解説しています。

スリッページ

スリッページ

スリッページとは、注文発注から約定するまでに生じる価格のズレです。

例えば、米ドル/円の価格が110.100円のときに買い注文を発注しても、FX会社のサーバに到達するまでの一瞬で110.110円に変わってしまい、約定時の注文金額が違う場合もあります。

この1銭(0.01円)の価格のズレが、スリッページです。

スリッページの発生状況は、約定力に大きく影響されます。

つまり取引コストを抑えるなら、スプレッドだけではなく、約定力の強いFX会社を選ぶ必要があります。

通貨ペアの数

取引できる通貨ペアの数(種類)が多いFX会社ほど、トレードの選択肢が増え、チャンスを掴みやすくなります。

特定の通貨ペアで売買のチャンスがないときに、他の通貨ペアでチャンスが発生しているというケースは、少なくありません。

また、通貨ペア数が多いほど、スワップポイントで利益を上げやすいペアも見つかりやすくなります。

スワップポイントは、高金利通貨を含むペアほど大きくなる傾向があります。

OANDA証券のスプレッド

FX会社のスプレッドは「利用サーバ・プラン・通貨ペア」などの諸条件によって変動します。

OANDA証券の場合「サーバ別・プラン別・通貨ペア別」のスプレッドは、以下のようになっています。

(データは2024年8月27日時点のもの)

通貨ペア

東京サーバ

NYサーバ

裁量プラン
(MT5)

裁量プラン
(MT4)

スタンダード
プラン(MT5)

スタンダード
プラン(MT4)

ベーシック
コース

プロ
コース

USD/JPY

0.3銭

0.3銭

0.3〜1銭

0.3〜1銭

0.4~0.6銭

0.8~1銭

EUR/USD

0.5〜0.7pips

0.5〜0.7pips

0.5〜0.6pips

0.5〜0.6pips

0.5pips

0.8pips

EUR/JPY

0.4〜1.3銭

0.4〜1.3銭

0.4〜1.2銭

0.4〜1.2銭

0.7銭

1.3~1.7銭

AUD/JPY

0.6〜1.3銭

0.6〜1.3銭

0.6〜1.3銭

0.6〜1.3銭

1銭

1.6銭

GBP/USD

0.8〜1.1pips

0.8〜1.1pips

0.8〜1.1pips

0.8〜1.1pips

1.1pips

1.3pips

GBP/JPY

0.9〜2.2銭

0.9〜2.2銭

0.9〜2.2銭

0.9〜2.2銭

1.4銭

2.8~3.5銭

AUD/USD

0.9pips

0.9pips

0.9pips

0.9pips

1.1pips

1.4pips

ZAR/JPY

1銭

1銭

1銭

1銭

1.3銭

1.3銭

東京サーバはNYサーバよりもスプレッドが狭くなっています。

その一方で、NYサーバは取引できる通貨ペア数が多いことがメリットです。

(東京サーバは37〜40ペア、NYサーバは68ペア)

スプレッドは日々変動するため、最新の数値は「スプレッド比較」のページでご確認ください。

また、OANDA証券の取引環境については、以下でご確認いただけます。

FXのスプレッドに関するQ&A

FXのスプレッドに関するよくある質問は、以下の通りです。

  • ・スプレッドがコストとして計上されるタイミングはいつですか?
  • ・スプレッド負けとは何ですか?
  • ・スプレッドと手数料の違いは何ですか?
  • ・スプレッドは決済時にも引かれるのですか?

スプレッドがコストとして計上されるタイミングはいつですか?

スプレッドが未実現損失として計上されるタイミングは、注文を発注して約定した後です。

以下の画像で、新規注文時の流れを解説しています。

GIF動画

出典:MT4

新規の成行注文が約定後、スプレッドが未実現損失として計上されていることが分かります。

約定した直後はマイナス収支からスタートするため、スプレッド分を上回る値幅を取得しなければ、利益を得ることはできません。

スプレッド負けとは何ですか?

取引で得た利益よりも、スプレッドによって発生する取引コストの方が多いことを「スプレッド負け(手数料負け)」と呼びます。

スプレッドが0.5銭の場合、0.5銭を上回る値幅を稼がなければプラス収益にならず、0.4銭の稼ぎではマイナス収支になってしまいます。

何度も取引を繰り返すスキャルピングでは、スプレッド負けに陥りやすい傾向があります。

スプレッドと手数料の違いは何ですか?

スプレッドとは、売値と買値の価格差です。

一方、手数料という場合は、株式の取引手数料のように、取引に対してかかるコストを指します。

日本のFX会社では、後者の手数料を無料とするのが主流です。

FX取引の手数料」に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

スプレッドは決済時にも引かれるのですか?

スプレッドは新規注文が約定した後に、未実現損失として計上され、決済時に引かれることはありません。

1回の取引につき1回しかスプレッドは計上されません。

【まとめ】スプレッドとは|FX取引に与える影響・計算方法を紹介

スプレッドとは、売値と買値の価格差であり、実質的な取引コストです。

FX会社によってスプレッドの狭さは異なり、基本的に狭い方が投資家に有利と考えられます。

ただし、約定力も加味すると、表面上のスプレッドだけで有利不利を判断してしまうのは問題があります。

FXの取引コストを抑えたい場合は、スプレッド、約定力、スリッページに注目する必要があります。

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