暗号資産(仮想通貨)の基礎

分散型台帳とは?ブロックチェーン(ビットコイン)における「送金」の考え方を解説


14:ビットコインはお札に名前を書いて送るような仕掛け

中央の管理者を置かないブロックチェーン方式は「分散型台帳」とも呼ばれます。
中央のデータセンタですべての情報を処理する集中管理方式のトランザクションシステムでは、管理者が厳格に管理するデータベースを集中型台帳として使います。
ブロックチェーンはこれとの比較で分散型と呼ばれているのですが、仮想通貨というお金を記録する方法に「集中」と「分散」という違いがあるだけではありません。
仮想通貨の送金動作に関するコンセプトがまったく異なっているのです。

集中管理方式のトランザクションシステムにおける「送金」の考え方

集中管理方式では中央の管理者が責任を持って管理するデータベースをデータセンタに設置します。
銀行のトランザクション処理システムが持っているデータベースには口座番号とその口座の預金残高が記録されています。

従来の銀行の送金トランザクション

この銀行に預金口座を持っているAさんが同じく預金口座を持っているBさんに送金することを考えてみましょう。
Aさんが銀行のATMを使って「Bさんに1万円を送金する」というトランザクションを作って送ると、銀行のトランザクション処理システムはAさんの預金口座から1万円を引き算してBさんの預金口座に1万円を足し算する処理を実行します。

つまり、集中管理方式における「送金」とは預金口座の残高の更新を意味しており、口座残高の金額は誰から送られてきたお金であるかという「色」はついていないのです。
もちろん送金記録は別途保管してあるので後から調べることはできますが、預金口座の残高は単純にいくらお金が残っているかを示す数値しか記録してありません。
ブロックチェーンではこの考え方が大きく異なります。

ブロックチェーン(ビットコイン)における「送金」の考え方

ブロックチェーンでは口座番号ごとの残高を記録するという考え方がありません。
「XさんからYさんにNビットコイン送金した」という内容のトランザクションがブロックの中に残っているだけです。
したがって、Xさんが誰かに送金するときにはまず自分(X)の口座にいくらビットコインが残っているかを調べなければなりません。
そのためにはXさんはブロックチェーンの中に記録されているトランザクションをすべて調べて、Xさんあての送金トランザクションのうちまだほかの人に転送していないトランザクション(UTXO:Unspent Transaction Output)を合計しなければなりません。

AさんからBさんに1ビットコインを送金する処理について考えてみましょう。
Aさんは自分あての送金トランザクションのうち未使用のものを集めます。
例えば0.4ビットコインと0.6ビットコインの送金トランザクションがあれば、二つを合わせて1ビットコインになるので「二つのトランザクションを合わせてBさんに送る」という送金トランザクションを作ればBさんに1ビットコインを送金したことになります。
送金に使われた二つのトランザクションはブロックチェーン上に「転送されて送金済み」の記録が残るので二度と使えなくなるのです。

Aさんあての送金トランザクションはブロックチェーン上の過去のどこかのブロックの中に格納されています。
それを探しだして「Bさんに送る」というトランザクションを作り、そのトランザクションを新たに有効なトランザクションとしてブロックチェーンに格納すればBさんへの送金が成功したことになるのです。

ブロックチェーンの送金トランザクション

では送金コンセプトの違いをまとめてみましょう。

  • 【集中型管理台帳】 残高の足し算、引き算で送金が完了
  • 【ブロックチェーン】 未使用のトランザクションをすべて探し、送金に使うトランザクションを選んだ後、新たなトランザクションを作成することにより送金が完了

つまり、集中型は銀行口座で単に数字としてお金を管理していますが、ブロックチェーンでは自分の財布に入っているいろいろなお札(100円玉、1000円札、1万円札のように異なる額面のお札)から適切な組み合わせを選び、さらにお札に「送り先の名前」を書いて送金するというイメージになっているのです。

Provided by
上野 仁(Hitoshi Ueno)

1984年山梨大学大学院修士課程(計算機科学専攻)修了後、株式会社日立製作所入社。
システム開発研究所、エンタープライズサーバ事業部などで主としてコンピュータアーキテクチャおよび基本ソフトウェアの研究開発に従事。
2015年より第一工科大学東京上野キャンパス情報電子システム工学科教授に就任。
2023年より東京情報デザイン専門職大学教授。
生体信号処理に関するプログラム開発や種々の先端ソフトウェアついての調査研究に興味を持つ。
技術士(情報工学)。
博士(工学)。

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