ストキャスティクスとは|計算式や設定方法・見方・使い方などを詳しく紹介
ストキャスティクスとは、相場の過熱感を分析するオシレーター系のインジケーターです。
本記事ではストキャスティクスの計算式や設定方法、見方や使い方などを詳しく解説します。
目次
- 1.ストキャスティクスとは
- 2.ストキャスティクスの種類と計算式
- 3.ストキャスティクスの見方・使い方
- 4.ストキャスティクスの注意点
- 5.ストキャスティクスと他のインジケーターを組み合わせた取引手法
- 6.ファーストよりもスローストキャスティクスのほうがダマシは少ない
- 7.ストキャスティクスの設定方法
- 8.ストキャスティクスに関するQ&A
- 9.【まとめ】ストキャスティクスとは|計算式や設定方法・見方・使い方などを詳しく紹介
ストキャスティクスとは
ここでは、ストキャスティクスの概要を以下の内容に分けて解説します。
- ・意味
- ・考案者
意味
ストキャスティクス(stochastics)は、相場の過熱感を判断するオシレーター系のテクニカル指標、もしくは分析手法です。
相場の「買われ過ぎ・売られ過ぎ」を判断でき、反転のタイミングを狙う場面で利用できます。
ストキャスティクスは、日本語で「推計統計学」と呼びます。
過去一定期間の最高値と最安値の「統計」から、終値の水準を「推計」するという意味を持ちます。
ストキャスティクスには、以下の2種類があります。
- ・ファーストストキャスティクス
- ・スローストキャスティクス
どちらも下チャートの通り、2本の線で描画されます。
出典:TradingView
2種類の違いについては、後ほど詳しく解説します。
ストキャスティクスは「0〜100%」の数値で表されます。
この数値によって、以下のように相場の過熱感を判断します。
出典:TradingView
上のチャートの内容を表にまとめると、以下の通りです。
80〜100% | 買われ過ぎ |
0〜20% | 売られ過ぎ |
ストキャスティクスの見方については、後ほど詳しく解説します。
考案者
ストキャスティクスの考案者は、米国のチャート分析家である、George Lane(ジョージ・レイン)氏です。
同氏は、インベストメント・エデュケーターズ社などで活動し、1950年代後半にストキャスティクスを考案しました。
ストキャスティクスの種類と計算式
前述の通り、ストキャスティクスには以下の2種類があります。
- ・ファーストストキャスティクス
- ・スローストキャスティクス
それぞれの違いをまとめると、以下の通りです。
種類 | 用いる線 | 相場への反応 |
---|---|---|
ファーストストキャスティクス | %Kライン、%Dライン | 敏感 |
スローストキャスティクス | %Dライン、SDライン | 穏やか |
それぞれの特徴と、3種類のラインの意味や計算式を説明していきます。
ファーストストキャスティクス
ファーストストキャスティクスは、下チャートの通り「%Kライン」と「%Dライン」の2本の線で描画されます。
出典:TradingView
2本の線の意味は、それぞれ以下の通りです。
%Kライン | 現在の価格位置の相対的水準 |
%Dライン | 「%Kライン」のn日間の移動平均線 |
移動平均線の意味については「移動平均線とは?」の記事をご参照ください。
それぞれのラインの計算式は、以下の通りです。
%K | (当日終値-過去n日間の最安値)÷(過去n日間の最高値-過去n日間の最安値)×100 |
%D | (当日終値-過去n日間の最安値)のm日間の合計÷(過去n日間の最高値-過去n日間の最安値)のm日間の合計×100 |
%Kの「現在の価格位置の相対的水準」は、「一定期間の値幅を100としたときに、現在がどの水準にいるか」ということを意味します。
例えば、%Kが「95%」であれば、一定期間の最高値付近に近づいているということです。
同様に、%Kが「5%」であれば、一定期間の最安値付近に近づいていることを意味します。
また「50%」であれば、一定期間の値幅のちょうど中央値ということです。
一方の「%D」は、「%K」を移動平均化したものです。
ファーストストキャスティクスの特徴は、スローストキャスティクスよりも相場の動きに対して敏感に反応する点です。
このため、スローストキャスティクスよりもダマシが発生しやすくなっています。
スローストキャスティクス
スローストキャスティクスは、下チャートの通り「%Dライン」と「SDライン(スロー%D)」の2本の線で描画されます。
出典:TradingView
2本の線の意味は、それぞれ以下の通りです。
%Dライン | 「%Kライン」のn日間の移動平均線 |
SDライン | 「%Dライン」のn日間の移動平均線 |
それぞれのラインの計算式は、以下の通りです。
%D | (当日終値-過去n日間の最安値)のm日間の合計÷(過去n日間の最高値-過去n日間の最安値)のm日間の合計×100 |
SD | %Dのn日間平均 |
スローストキャスティクスの特徴は、ファーストストキャスティクスよりも相場の動きに対する反応が穏やかな点です。
このため、ファーストストキャスティクスよりもダマシが発生しにくくなっています。
一般的には、ファーストストキャスティクスよりもスローストキャスティクスが用いられることが多いとされています。
ストキャスティクスの見方・使い方
実際にチャートを用いて、ストキャスティクスの使い方について紹介します。
- ・判断基準
- ・買いサイン(ゴールデンクロス)
- ・売りサイン(デッドクロス)
- ・ダイバージェンス
判断基準
売買サインの判断基準は、以下の通りです。
2本のラインが80%以上で推移 | 買われ過ぎ |
2本のラインが20%以下で推移 | 売られ過ぎ |
また、買われ過ぎゾーンでデッドクロスが発生すれば売りサイン、売られ過ぎゾーンでゴールデンクロスが発生すれば買いサインと判断します。
出典:TradingView
デッドクロスとゴールデンクロスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
> ゴールデンクロス・デッドクロスとは|買い時・ダマシ対策・注意点を解説
買いサイン(ゴールデンクロス)
ストキャスティクスにおけるゴールデンクロスとは、ファーストなら「%K」が「%D」を下から上に抜ける現象、スローなら「%D」が「SD」を下から上に抜ける現象です。
売られ過ぎゾーンでゴールデンクロスが発生すると買いサインとなり、価格が上昇しやすいと判断できます。
出典:TradingView
価格の下落が弱まった場面でサインが出るため、流れが変わるタイミングを掴みやすいといえます。
ただし、ゴールデンクロスが発生しても、必ず価格が上昇するわけではありません。
売りサイン(デッドクロス)
ストキャスティクスにおけるデッドクロスとは、ファーストなら「%K」が「%D」を上から下に抜ける現象、スローなら「%D」が「SD」を上から下に抜ける現象です。
買われすぎゾーンでデッドクロスが発生すると売りサインとなり、価格が下落しやすいと判断できます。
出典:TradingView
価格の上昇が弱まった場面でサインが出るので、流れが変わるタイミングを掴みやすいといえます。
ただし、デッドクロスが発生しても、必ず価格が下落するわけではありません。
ダイバージェンス
ストキャスティクスには、ダイバージェンスという売買サインもあります。
ダイバージェンスとは、価格とインジケーターの動きが逆行する現象です。
出典:TradingView
上のチャートでは、価格は安値を「切り下げる」動きになっています。
これに対して、ストキャスティクスは「切り上げる」動きになっており、両者の動きは逆行していることがわかります。
このような状況となった場合は、下落の勢いが以前よりも弱くなったことを示し、トレンド転換の前兆となることがあります。
上のチャートではその後、下落基調から上昇基調に転じる動きとなりました。
もちろん、強い下落トレンドが続くような局面では、他のオシレーター系のインジケーター同様に、低い水準に張り付くダマシが続くこともあります。
そのため、毎回このような動きとなるわけではありませんが、トレンドの勢いが弱くなっていることには注目すべきです。
利益が出ているポジションの利益確定や、現在のトレンド方向への新たなトレードを見送る検討などの目安に使えます。
ダイバージェンスの活用方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
> ダイバージェンスを使い相場の反転タイミングを察知する方法
ストキャスティクスの注意点
ストキャスティクスを使う際には、「ダマシ」に注意が必要です。
ダマシとは、売買サインと逆の方向に価格が動いてしまう現象です。
ダマシの対策方法はいくつかあり、他のインジケーターを組み合わせることやスローストキャスティクスを使うなどが有効です。
それぞれのやり方について以下で詳しく紹介します。
ストキャスティクスと他のインジケーターを組み合わせた取引手法
ダマシを回避する対策の1つとして、他のインジケーターを組み合わせると前述しました。
ここでは、ストキャスティクスとMACDを組み合わせた取引手法について紹介します。
ストキャスティクス×MACDを組み合わせた取引手法
ストキャスティクスとMACDを組み合わせた取引手法について紹介します。
出典:TradingView
上チャートの青丸で囲った箇所では、ストキャスティクスでゴールデンクロスが発生し買いのサインが出ています。
しかしこのタイミングで買ってしまうと、価格は下がり損切りとなります。
この時にMACDを参照すると、MACDはゴールデンクロスをしておらず、むしろ2本の線が整列して下落が強いと判断できます。
その後に、ストキャスティクスとMACDでほぼ同時にゴールデンクロスが発生してから、価格が上昇しています。
このように、ストキャスティクスとMACDを組み合わせることでエントリーの精度が高い取引を行えます。
もちろんMACDを組み合わせてもダマシに遭う可能性はありますが、その頻度を少なくすることはできます。
ファーストよりもスローストキャスティクスのほうがダマシは少ない
前述の通り、ファーストストキャスティクスの方が最新の価格水準が反映されるため、相場の動きに対する反応が早いという特徴があります。
しかし価格のぶれに敏感に反応しすぎるため、ダマシも多くなるといったデメリットがあります。
このダマシを軽減させるのが、スローストキャスティクスです。
初動への反応はファーストストキャスティクスには及びませんが、しっかりと方向感が出てきてから反応します。
出典:MT4
ストキャスティクスの設定方法
ここでは、以下の3つの取引ツールでストキャスティクスを設定する方法を解説します。
- ・MT4(メタトレーダー4)への設定方法
- ・MT5(メタトレーダー5)への設定方法
- ・TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
MT4(メタトレーダー4)への設定方法
ストキャスティクスをMT4へ設定する方法を紹介します。
設定する手順は以下の通りです。
- 「挿入」→「インディケータ」→「オシレーター」→「Stochastic Oscillator」
出典:MT4
MT5(メタトレーダー5)への設定方法
ストキャスティクスをMT5へ設定する方法を紹介します。
設定する手順は以下の通りです。
- 「挿入」→「インディケータ」→「オシレーター」→「Stochastic Oscillator」
出典:MT5
TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
ストキャスティクスをTradingViewへ設定する方法を紹介します。
設定する手順は以下の通りです。
- 「インジケーター」→検索窓に「ストキャスティクス」と入力→「STOCH(ストキャスティクス)」
出典:TradingView
ストキャスティクスに関するQ&A
ここでは、ストキャスティクスに関してよく見られる以下の疑問点に回答します。
- ・ストキャスティクスとRSIの違いは何ですか?
- ・ストキャスティクスの弱点を補うにはどうしたらいいですか?
ストキャスティクスとRSIの違いは何ですか?
ストキャスティクスとRSIの違いは「RSIは30〜70%の範囲に留まりやすいのに対して、ストキャスティクスはこの範囲を超えることが多い」という点です。
出典:TradingView
どちらも、背景に色のついている部分が「30〜70%」の範囲です。
そして、赤丸で囲った部分は、その範囲を超えた箇所です。
見ての通り、ストキャスティクスは半分程度超えています。
それに対して、RSIはほとんど超えていません。
また、2本の線のクロスにも違いがあります。
出典:TradingView
上のチャートでは、ストキャスティクスで小さなゴールデンクロス・デッドクロスが発生していますが、同じタイミングのRSIではクロスが発生していません。
このように、クロスが発生するタイミングや頻度も異なります。
こうしたクロスの見方も含め、「RSI」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ストキャスティクスの弱点を補うにはどうしたらいいですか?
ストキャスティクスの弱点は、トレンド相場では2本の線がチャートの上下で張り付いてしまった場合に、判断材料となりにくくなることです。
出典:TradingView
上のチャートでは、ローソク足で上昇トレンドが発生している箇所において、ストキャスティクスは2本の線が70%より上のゾーンで絡み合うように張り付いています。
このように2本の線が絡み合う時は、ダマシのゴールデンクロス・デッドクロスが多発します。
トレンド相場では使いにくいことが、ストキャスティクスの弱点です。
この弱点を補うためには、他のテクニカル指標も併用することが重要です。
ストキャスティクスと併せて用いられるテクニカル指標には、移動平均線やボリンジャーバンドなどが挙げられます。
【まとめ】ストキャスティクスとは|計算式や設定方法・見方・使い方などを詳しく紹介
ストキャスティクスは、相場の過熱感を分析するオシレーター系のインジケーターです。
「ファースト」「スロー」の2種類があり、一般的にはスローストキャスティクスが用いられます。
ストキャスティクスには「トレンド相場では機能しにくい」などの弱点もあります。
このため、単独で用いるのではなく、他のテクニカル指標と併用することが重要です。
そのように様々な指標を用いる分析手法については「FXのテクニカル分析」の記事で詳しく解説しています。
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