テクニカル分析解説

移動平均線とは|基本的な見方や活用方法・期間設定の目安などを解説


移動平均線とは、一定期間の価格を平均し、チャート上に折れ線グラフで表示したテクニカル指標です。

FX取引を含めたあらゆる相場のチャート分析において、王道的なテクニカル指標の1つとして広く用いられています。

本記事では、移動平均線の種類や設定方法、期間の目安などを解説します。

移動平均線とは

ここでは、移動平均線の概要について、以下の内容に分けて説明します。

移動平均線の意味

移動平均線とは一定期間の終値を平均し、チャート上に折れ線グラフで描画するインジケーター(指標)です。

英語では、Moving Average(MA)と訳します。

移動平均線とは_20241225

出典:TradingView

移動平均線はチャート上に折れ線グラフを表示するシンプルな指標です。

その傾きによってトレンドの方向性を一目で確認することができます。

移動平均線の計算方法

移動平均線は、移動平均(時系列データにおいて計算期間をずらしながら平均値を求める手法)という計算方法によって作成されます。

「ある期間をn期間とし、そのn期間の終値を平均する」計算を、期間をずらしながら繰り返し、その値を結んでグラフ化します。

例えば5日移動平均線は、日足が確定するたびに直近5日の終値の平均値を求め、それを折れ線グラフで結びます。

移動平均線の種類

移動平均線には様々な種類がありますが、以下が代表的な3種類です。

この3種類を実際のチャートで表示すると、下図の通りです。

移動平均線の種類
出典:TradingView

上の図では、3種類とも全て同じ「50日」の期間で移動平均線を表示しています。

同じ期間でもそれぞれの動きが異なるのが特徴です。

以下では、それぞれの移動平均線の特徴を解説していきます。

単純移動平均線(SMA)

単純移動平均線は、一定期間の終値を平均化しただけのシンプルな移動平均線です。

一般的に移動平均線という場合、この単純移動平均線を指します。

英語ではSimple Moving Average(SMA)と訳します。

シンプルでわかりやすく、相場の大きな方向感を探る場面で注目したい移動平均線です。

単純移動平均線(SMA)とは|チャートの見方や使い方について解説

指数平滑移動平均線(EMA)

指数平滑移動平均線は、過去の価格よりも直近の価格に比重を置いて算出された移動平均線です。

英語ではExponential Moving Average(EMA)と訳します。

直近の価格が重視されているため、相場の変化に素早く反応するのが特徴です。

ただし、反応が早い分ダマシも発生しやすいため、注意が必要です。

指数平滑移動平均線の計算方法や他の移動平均線との違いを紹介

加重移動平均線(WMA)

加重移動平均線とは、指数平滑移動平均線(EMA)と同じく、直近の価格に比重を置いて算出された移動平均線です。

英語では、Weighted Moving Average(WMA)と訳します。

EMAとの違いは「直近の価格をどれだけ重視するか」です。

EMAは、WMAよりも直近の価格を重視しています。

直近の価格を重視する度合いを、不等式で表現すると以下の通りです。

  • 指数平滑移動平均線(EMA)>加重移動平均線(WMA)

相場の変化に素早く反応するという特徴も、WMAとEMAは共通します。

EMAでは反応が早すぎる場合に、WMAを用いるのが有効だと考えられます。

加重移動平均線(WMA)とは?計算方法や単純移動平均線(SMA)との違い

移動平均線の見方

移動平均線を用いると、様々な見方から相場を分析できます。

ここでは、以下の見方による分析方法を解説します。

移動平均線と価格の位置

移動平均線と価格の位置関係から、相場を分析できます。

移動平均線よりも価格が上にあれば上昇基調、下にあれば下落基調と判断します。

移動平均線と価格の位置
出典:TradingView

移動平均線の傾き

移動平均線の傾きによる分析も可能です。

上向きなら上昇基調、下向きなら下落基調」と判断します。

また、傾きがない場合は方向感のないレンジ相場もみ合い)と判断できます。

移動平均線の傾き
出典:TradingView

移動平均線の乖離率

移動平均線の乖離率とは、「移動平均線と価格がどの程度離れているか」を示す数値です。

移動平均線には、価格が移動平均線からある程度乖離すると移動平均線まで戻る性質があります。

このため、乖離率が高くなるほど相場がピークを迎え、反転する確率が高いと考えられます。

逆に乖離率が低ければ、相場が反転する確率は低いと考えられます。

移動平均線の乖離率
出典:TradingView

実際の相場は、必ずしもこうした乖離率のセオリー通りに動くわけではありません。

しかし、現時点のトレンドがどの程度続くかを推測する上で、1つの判断材料となります。

移動平均線の活用方法

移動平均線は、短期・中期・長期といった複数の種類を組み合わせることで、様々な分析を行えます。

ここでは、その分析の中でも広く用いられる、以下のチャートパターンについて解説します。

ゴールデンクロス(買いサイン)

ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が中期(長期)移動平均線を下から上に突き抜ける現象です。

この現象が発生すると価格が上昇しやすく、買いサインとされます。

ゴールデンクロス(買いサイン)
出典:TradingView

上図ではゴールデンクロスの発生後、価格が継続的に上昇しています。

常にこのように上昇するとは限りませんが、他の指標と組み合わせて分析を行うことで、予測の精度をさらに高められます。

ゴールデンクロスとは|意味・売買シグナル・注意点などを詳しく解説

デッドクロス(売りサイン)

デッドクロスとは、短期移動平均線が中期(長期)移動平均線を上から下に突き抜ける現象です。

この現象が発生すると価格が下落しやすく、売りサインとされます。

デッドクロス(売りサイン)
出典:TradingView

上図ではデッドクロスの発生後、価格が継続的に下落しています。

ゴールデンクロス同様、常にこのように下落するとは限りませんが、他の指標を組み合わせて分析することで、予測の精度をさらに向上させられます。

デッドクロスとは|売買サイン・具体例・注意点などを解説

グランビルの法則

グランビルの法則とはジョゼフ・E・グランビルが考案したもので、移動平均線の向きや乖離などから相場を分析する理論です。

移動平均線とローソク足の位置関係から、8パターンの売買サインを分類しています。

その8つのパターンを図でまとめると、以下の通りです。

グランビルの法則

緑の数字のパターンは「買いシグナル」、グレーの数字のパターンは「売りシグナル」です。

【買いシグナル】
No. パターン(条件)
移動平均線が下落後、横ばい、または上向きに転じた時に、価格が移動平均線を下から上に抜けている
移動平均線が上向きの時に、一旦価格は下落し移動平均線を下回るも、再度上昇し移動平均線を下から上に抜けている
移動平均線が上向きの時に、一旦価格は移動平均線の手前まで下落するも、移動平均線を下抜けることなく再度上昇している
価格が移動平均線の下に大きく乖離している
【売りシグナル】
No. パターン(条件)
移動平均線が上昇後、横ばい、または下向きに転じた時に、価格が移動平均線を上から下に抜けている
移動平均線が下向きの時に、一旦価格が上昇し移動平均線を上回るも、再度下落し移動平均線を上から下に抜けている
移動平均線が下向きの時に、一旦価格が上昇するも、移動平均線の手前で止まり再度下落している
価格が移動平均線の上に大きく乖離している

用いられる移動平均線の日数は「200日」、ローソク足は「日足」という組み合わせが一般的です。

グランビルの法則については、以下の記事で詳しく解説しています。

グランビルの法則とは?8つの売買パターンや注意点などを紹介

移動平均線の期間設定の目安

移動平均線の期間設定の目安を「短期・中期・長期」に分けてまとめると、以下の通りです。

短期移動平均線 5日・10日・14日・15日・20日・21日
中期移動平均線 50日・60日・75日
長期移動平均線 100日・200日

これらの期間設定はあくまで目安ですが、多くの投資家に用いられている設定です。

相場は投資家心理によって動くため、多くの投資家が用いている設定であれば、機能しやすいといえます。

期間設定についてのより詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。

移動平均線の期間設定値は何が最適?MT4やMT5への設定方法も紹介

移動平均線に関するQ&A

移動平均線に関して、よくある以下の疑問について解説します。

移動平均線の注意点はありますか?

移動平均線では「ダマシ」が発生することもあります。

ダマシとは「売買サインと価格が逆行する現象」です。

ダマシ
出典:TradingView

上図では、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスの両方が発生しています。

しかし、最後に明確に下落するまでは、方向感がないレンジ相場となっています。

このようにレンジ相場では、ゴールデンクロスやデッドクロスなどの売買サインが機能しないケースもあるため注意が必要です。

移動平均線のダマシを補うにはどうしたらいいですか?

移動平均線のダマシを100%回避するのは難しいですが、他のインジケーターと組み合わせて使うことで対策できると考えられます。

移動平均線はトレンド相場を得意とする一方、レンジ相場を苦手とします。

レンジ相場を回避するためには、RSIMACDなどのインジケーターを併用することが有効です。

単純移動平均線(SMA)の計算方法は何ですか?

単純移動平均線(SMA)の場合、下図の要領で計算と描画を行います。

移動平均線の計算方法

計算方法は、移動平均線の種類によって異なります。

【まとめ】移動平均線とは|基本的な見方や活用方法・期間設定の目安などを解説

移動平均線とは、一定期間の終値の平均を結んだ折れ線グラフのことです。

この線の向きや傾き、価格との乖離によって、トレンドの方向や強弱などを判断できます。

ゴールデンクロス、デッドクロス、グランビルの法則など、移動平均線を用いた分析が多くあります。

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