ボリンジャーバンドとは?見方や使い方・設定方法について紹介
ボリンジャーバンドは、米国で投資マネジメント企業を経営する「ジョン・ボリンジャー」氏が考案したインジケーターです。
一般的に、相場のトレンドや強弱を分析するのに使用し、視覚的に相場環境を把握しやすいインジケーターのため、多くのトレーダーから人気があります。
ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心として、その上下に統計学を用いて計算された標準偏差を表示します。
バンドの標準偏差が拡大していれば、その拡大している方向への値動きが強いと分析できます。
本記事では、このボリンジャーバンドの見方・使い方・設定方法を解説します。
目次
- 1.ボリンジャーバンドとは
- 2.ボリンジャーバンドの見方
- 3.ボリンジャーバンドの活用方法
- 4.ボリンジャーバンドの設定方法
- 5.開発者が推奨するボリンジャーバンドの設定
- 6.ボリンジャーバンドに関する本
- 7.ボリンジャーバンドを使う際の注意点
- 8.ボリンジャーバンドに関するよくある質問
- 9.【まとめ】ボリンジャーバンドとは?見方や使い方・設定方法について紹介
ボリンジャーバンドとは
ここでは、以下について解説します。
- ・標準偏差とは
- ・標準偏差の一般的な計算式
標準偏差とは
標準偏差とは、ある一定期間のデータの平均値から、どのくらいのばらつきがあるのかを計算した数値です。
例えば、過去10日間のデータの平均値を計算した場合、ばらつきがあるほど標準偏差の数値は高くなります。
つまり、標準偏差の数値が高くなるほど、ボラティリティが高くなります。
標準偏差の単位は、σ(シグマ)を用い、一般的に以下の表記や呼び方で使われます。
表記 | 呼び方 |
---|---|
+1σ | アッパーバンド1 |
+2σ | アッパーバンド2 |
+3σ | アッパーバンド3 |
-1σ | ロワーバンド1 |
-2σ | ロワーバンド2 |
-3σ | ロワーバンド3 |
各σ(シグマ)をチャートで表示すると、下図のようになります。
出典:TradingView
各σ(シグマ)の見方は、以下の表の通りです。
±1σ(シグマ)に収まる確率 | 68.2% |
±2σ(シグマ)に収まる確率 | 95.4% |
±3σ(シグマ)に収まる確率 | 99% |
ほとんどの相場では±3σ内に価格が収まると判断できますが、強いトレンドや急な相場変動などが起きた場合、±3σ内に収まらないケースもあることを理解しておきましょう。
標準偏差の一般的な計算式
標準偏差の計算式は、以下の通りです。
上記の式によって標準偏差のσ(シグマ)を算出します。
このσを、ボリンジャーバンドの中心となる移動平均線(Simple Moving Average:SMA)に加減して、「±1σ・±2σ・±3σ」を求めます。
【各バンドの計算式】
±1σ | 単純移動平均±標準偏差 |
±2σ | 単純移動平均±標準偏差×2 |
±3σ | 単純移動平均±標準偏差×3 |
標準偏差とは、統計学で用いられる考え方です。
簡単に解説すると「データ(終値)が平均値からどの程度散らばっているか」を示します。
ボリンジャーバンドにおいて、この標準偏差が表すのは「直近n期間の各終値が、n期間のSMAからどれくらい散らばっているか」です。
SMAから離れた終値が多ければ標準偏差は大きくなり、SMAに近い終値が多ければ標準偏差は小さくなります。
この性質がバンド幅の拡大や縮小になって現れます。
ボリンジャーバンドの見方
ここでは、ボリンジャーバンドの見方を以下の4つのポイントに分けて説明します。
- ・スクイーズ
- ・エクスパンション
- ・ボージ
- ・バンドウォーク
スクイーズ
出典:TradingView
スクイーズとは、ボリンジャーバンドが収縮している状態です。
ボリンジャーバンドがスクイーズしている状態では、ボラティリティが少なく価格が上下に行ったり来たりするレンジ相場(揉み合い)が発生する傾向があります。
そのため、あまり値動きを期待できる相場ではありません。
エクスパンション
出典:TradingView
エクスパンションとは、ボリンジャーバンドが拡大している状態です。
ボリンジャーバンドがエクスパンション(拡大)していると、ボラティリティが高くどちらか一方向に動くトレンドが発生しやすいです。
そのため、値幅を大きく狙いやすい相場といえるでしょう。
ボージ
出典:MT4
ボージとは、エクスパンションによってバンド幅が最も拡大した部分です。
ボージの後はバンド幅が縮小に向かうため、トレンド反転の可能性が高まります。
スクイーズからエクスパンションするタイミングがトレンドの開始を示唆するのに対し、ボージはトレンドの終了を示唆することが多いとされています。
より、ボージを明確に判断したい場合、BandWidth(バンドウィドゥス)を用いるのも1つの選択肢です。
上図の通り、BandWidthはバンド幅の広さが単純なグラフで示されるので、その期間内でバンド幅が最大になった場所(ボージ)が一目で分かります。
バンドウォーク
出典:TradingView
バンドウォークは、価格が1σ(シグマ)や2σ(シグマ)に沿って一方方向に動いている状態です。
ボリンジャーバンドがバンドウォークしている状態では、トレンドが継続し、その方向へより大きく動く傾向があります。
そのため、トレンドが発生している方向へ取引をすれば、大きな値幅を稼ぐ期待ができます。
ボリンジャーバンドの活用方法
ここでは、ボリンジャーバンドの活用方法を、以下の内容に分けて説明します。
- ・エクスパクションで順張り
- ・エクスパンションの縮小で逆張り
エクスパクションで順張り
バンドが拡大していくエクスパンションでは、順張りをするのが基本とされています。
エクスパンションではトレンドが発生する可能性が高いため、価格が上昇したら買い、下落したら売りで順張りします。
基本的に、トレンドが発生する前にはボラティリティの低い停滞期があり、その停滞期を打ち破るかのように、ボラティリティの高いトレンド期が訪れます。
この変化は、ボリンジャーバンドのバンド幅を観察することで、より察知しやすくなります。
例えば、以下の条件を満たした場合、その次のローソク足の始値付近を目安に、順張りでエントリーすることが推奨されます。
【エントリー条件】
- ・①:バンドがスクイーズ状態からエクスパンションする
- ・②:ローソク足が±2σの外側で終値をつける
②については、+2σの外側(上側)であれば買い、-2σの外側(下側)であれば、売りでエントリーします。
以下の図では、Aの位置で「-2σ」の外側に達したため、売りでエントリーします。
出典:MT4
ここでエントリーした場合、その後に発生した大きな下落トレンドで、利幅を伸ばせたことが分かります。
エクスパンションの縮小で逆張り
エクスパンションする段階では「順張り」が一般的に有利ですが、逆に縮小する段階では「逆張り」が有利になります。
既に順張りでエントリーをしていた場合、縮小段階はそのポジションを決済すべきタイミングでもあります。
エクスパンションの縮小を判断するには、ローソク足の推移とは反対側のバンドを確認し、その向きが逆に変わるときを、逆張りやポジション決済のタイミングと考えます。
以下の図では、Aの箇所でローソク足とは反対側のバンドが方向を変えています。
そして、同時に上昇トレンドが下降に転換していることが分かります。
出典:MT4
反対側のバンドがこのように方向転換した場合は、エクスパンションが縮小に向かう可能性があります。
ボリンジャーバンドの設定方法
ここでは、ボリンジャーバンドの設定方法を以下の3つに分けて説明します。
- ・MT4(メタトレーダー4)への設定方法
- ・MT5(メタトレーダー5)への設定方法
- ・TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
MT4(メタトレーダー4)への設定方法
MT4(メタトレーダー4)へボリンジャーバンドを設定する方法を解説します。
ステップ①:「挿入」→「インディケータ」→「トレンド」→「Bollinger Bands」を選択
出典:MT4
ステップ②:ポップアップ画面が表示されるので、デフォルト値でよければ「OK」を選択
出典:MT4
ステップ③:ボリンジャーバンドが表示されれば完了
出典:MT4
ステップ④:標準偏差を3σまで表示する方法
出典:MT4
標準偏差を3σまで表示する際は、チャート上にボリンジャーバンドを3つ表示させるようにしましょう。
MT4(メタトレーダー4)のインストール方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。MT5(メタトレーダー5)への設定方法
MT5(メタトレーダー5)へボリンジャーバンドを設定する方法を解説します。
ステップ①:「挿入」→「インディケータ」→「トレンド系」→「Bollinger Bands」を選択
出典:MT5
ステップ②:ポップアップ画面が表示されるので、デフォルト値でよければ「OK」を選択
出典:MT5
ステップ③:ボリンジャーバンドが表示されれば完了
出典:MT5
ステップ④:標準偏差を3σまで表示する方法
出典:MT5
標準偏差を3σまで表示する際は、チャート上にボリンジャーバンドを3つ表示させるようにしましょう。
MT5(メタトレーダー5)のインストール方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
TradingView(トレーディングビュー)へボリンジャーバンドを設定する方法を解説します。
ステップ①:「インジケーター」を選択
出典:TradingView
ステップ②:検索窓に「ボリンジャーバンド」と入力し選択すれば完了
出典:TradingView
ステップ③:標準偏差を3σまで表示する方法
出典:TradingView
標準偏差を3σまで表示する際は、チャート上にボリンジャーバンドを3つ表示させるようにしましょう。
TradingView(トレーディングビュー)の機能の使い方はこちらの記事で詳しく解説しています。開発者が推奨するボリンジャーバンドの設定
ボリンジャーバンドの開発者であるジョン・ボリンジャー氏が推奨する設定は、以下の通りです。
- ・本家は±2σだけを使用
- ・±1σ・±2σ・±3σの比較
- ・短期・長期に応用する場合の考え方
本家は±2σだけを使用
現代で一般的なボリンジャーバンドは「5本のライン」で構成されています。
しかし、開発者のジョン・ボリンジャー氏は「3本のライン」を基本としていました。
5本と3本のそれぞれのラインは以下の通りです。
5本(一般的なボリンジャーバンド) | 中央の移動平均線、±1σ、±2σ |
3本(開発者推奨のボリンジャーバンド) | 中央の移動平均線、±2σ |
パラメーターに関しては、中期的なトレンドとボラティリティの情報を得るのに十分な期間があれば良しとし、期間20を推奨しています。
実際のチャートで見ると下図のようになります。
出典:MT4
多くのチャートソフトで、ボリンジャーバンドの初期設定は「5本線」が採用されています。
しかし、MT4・MT5の初期設定では、標準偏差を1種類しか設定できないため「3本線」となります。
MT4・MT5で標準偏差を増やして5本線にしたい場合、以下のいずれかの方法で行います。
- ・①:ボリンジャーバンドを重ねて表示する
- ・②:プロパティ画面の「レベル」で、追加したい偏差を増やす
±1σ・±2σ・±3σの比較
開発者が「±2σ」を重視した理由は「±1σ・±3σ」と比較すると、理解しやすくなります。
以下の図は、同じ期間のチャートに±1σ(左)、±2σ(中)、±3σ(右)を並べて比較したものです。
出典:MT4
右の±3σの場合、バンドが広すぎてローソク足がほとんどバンドに到達しません。
左の±1σの場合、バンドが狭すぎてローソク足が頻繁にバンドに到達し、超えてしまっています。
中央の±2σの場合、ローソク足が適度にバンドに到達しており、バンドを超えることがあまりありません。
このような理由から、相場の動きを読み取る上で、±2σは最も過不足なく、使い勝手の良い標準偏差といえます。
短期・長期に応用する場合の考え方
ここまで説明してきた通り、開発者はボリンジャーバンドの期間と標準偏差について、「期間20・標準偏差±2σ」を基本としています。
しかし、短期や長期で用いる場合は、それぞれ以下の組み合わせも推奨しています。
短期用 | 期間10・標準偏差±1.9σ |
長期用 | 期間50・標準偏差±2.1σ |
ただし、これらの内容は書籍の中で説かれたもので、書籍出版後のセミナーなどでは「どの期間であっても標準偏差±2σが良い」とも解説しています。
ボリンジャーバンドとローソク足のクロスは、それ自体が単純な売買サインになるわけではありません。
そのため、期間や標準偏差の幅については、それほどナーバスに調整する必要はありません。
ボリンジャーバンドに関する本
OANDA証券では、「すべては賢明なる投資家になるために」をコンセプトに多くの良書を出版・販売しているパンローリング社とタイアップし、初心者~上級者までの方に向けて様々なFX本を提供しています。
ボリンジャーバンドに関する本も、初心者~中上級者向けと豊富な種類を展開しています。
ここでは、初心者と中上級者向けにそれぞれおすすめのボリンジャーバンドに関する本を紹介します。
入門編
ボリンジャーバンドに関する初心者向けの本としては、「ボリンジャーバンド入門」がおすすめです。
ボリンジャーバンドの開発者「ジョン・ボリンジャー」氏による本であり、主にボリンジャーバンドの基本的な使い方について書かれています。
開発者自身が作った本であるため、どのような意図でボリンジャーバンドを作ったのかを知ることができる貴重な一冊です。
「ボリンジャーバンド入門」はこちら中上級者向け
ボリンジャーバンドに関する中上級者向けの本として、「ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード」があります。
主に、MACDやボリンジャーバンド、RSIなどのインジケーターを使い、トレンド方向に仕掛けるというトレンドフォロー戦略について書かれています。
この本で紹介されている手法を覚えても必ず勝てるわけではありませんが、FXではシンプルな手法が大切ということを教えてくれる一冊です。
「ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード」はこちらボリンジャーバンドを使う際の注意点
ボリンジャーバンドを使う際の注意点は、以下の通りです。
- ・未来の終値がバンド内に収まる確率を表すわけではない
- ・ヘッドフェイクが起こる可能性がある
未来の終値がバンド内に収まる確率を表すわけではない
ボリンジャーバンドは、未来の終値がバンド内に収まる確率を表すわけではありません。
あくまでも過去の終値から標準偏差を求め、それぞれの終値が正規分布の確率でバンド内に収まるよう描かれているに過ぎません。
そのため、±2σの範囲外で終値が連続することは、決して珍しいことではありません。
強いトレンドが発生している局面では、±2σの範囲を連続で抜け出すパターンが見られます。
以下の図では、バンドウォーク(±2σに沿うようローソク足が推移すること)と呼ばれるトレンド継続の特徴的な形が現れています。
出典:MT4
この局面では、ローソク足が+2σの外側で連続して終値をつけていることが分かります。
こうした性質があることから、ローソク足がボリンジャーバンドの±2σ(±3σ)に達した際、単純に買われ過ぎ/売られ過ぎと判断するのは早計です。
ローソク足の推移とバンドの形状の両方を見て、トレンドを判断する必要があります。
ヘッドフェイクが起こる可能性がある
ヘッドフェイクとは、ローソク足がボリンジャーバンドの外側に抜けてエクスパンションとなったものの、値動きが逆行して初動とは逆側のバンドに達する動きのことです(下図参照)。
出典:MT4
いわゆる「ダマシ」の動きであり、エクスパンションが発生したときには、常にヘッドフェイクの発生を警戒する必要があります。
エクスパンションで順張りした後にヘッドフェイクが発生した場合、一定の損失が出ることがありますが、その際には的確に損切りを行うことが重要です。
ボリンジャーバンドに関するよくある質問
ここでは、ボリンジャーバンドに関するよくある質問について答えていきます。
- ・エンベロープとの違いは何ですか?
- ・MT4でボリンジャーバンドが上下に行き過ぎて見えないのですが見える方法はありますか?
- ・ボリンジャーバンドの真ん中の線は何と呼びますか?
エンベロープとの違いは何ですか?
ボリンジャーバンドとエンベロープの違いは「バンドの幅が変動か固定か」という点です。
下図の左のように、変動しているのがボリンジャーバンド、右のように固定しているのがエンベロープです。
出典:MT4
エンベロープは、日本語で「移動平均乖離率バンド」と呼び、移動平均線に対し一定の乖離(固定の幅)を持つ伴線を引き、バンドを表示するものです。
MT4でボリンジャーバンドが上下に行き過ぎて見えないのですが見える方法はありますか?
出典:MT4
相場に強いトレンドが発生すると、上画像のようにボリンジャーバンドが行き過ぎてしまい全て見えないときがあります。
そんなときは、下画像のように「縦軸目盛」を左クリックしたまま下にドラッグするとチャートが縮小し、ボリンジャーバンドの全体が表示されるように調整できます。
出典:MT4
ボリンジャーバンドの真ん中の線は何と呼びますか?
ボリンジャーバンドの真ん中の線は、「移動平均線」です。
ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心として、その上下に統計学を用いて計算された標準偏差を表示します。
【まとめ】ボリンジャーバンドとは?見方や使い方・設定方法について紹介
ボリンジャーバンドとは、中央に移動平均線、上下に標準偏差(σ)から算出した線を組み合わせたテクニカル指標です。
トレンドの勢いや変化を見る上で有効な指標ですが、単独ではなく他のテクニカル指標と併せて用いることで、より精度の高いトレードに繋がります。
他のテクニカル指標については「テクニカル分析解説」のページで分かりやすく解説しているので、こちらも参照ください。
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長く為替トレーディングの第一線で活躍されてきた山中康司(やまなかやすじ)氏監修のもと、ボリンジャーバンドの基本的な知識や使い方、トレーディングアイデアなどをご紹介します。またOANDAでは、ボリンジャーバンドに関するオリジナルインジケーターを多数提供しています。このオリジナルインジケーターは、OANDAの口座をお持ちのお客様だけがお使いいただけます。