米国雇用統計とは|日程や注目される理由などをわかりやすく解説
米国雇用統計とは、米国の雇用情勢を調査した統計で、金融市場で最も重要視される経済指標の1つです。
本記事では、米国雇用統計とは何かや、発表日程、注目される理由などを、わかりやすく解説します。
目次
- 1.米国雇用統計とは
- 2.米国雇用統計「家計調査」と「事業所調査」の違い
- 3.米国雇用統計【特に注目される項目】
- 4.米国雇用統計が為替市場に与える影響
- 5.米国雇用統計に関するQ&A
- 6.【まとめ】米国雇用統計とは|日程や注目される理由などをわかりやすく解説
米国雇用統計とは
ここでは米国雇用統計とは何かを、以下の内容に分けて解説します。
- ・意味
- ・日程・スケジュール【2025年】
意味
米国雇用統計とは、毎月米国労働省によって発表される「米国の雇用情勢を調査した統計」のことです。
世界経済を牽引し、基軸通貨のドルを擁する米国の雇用情勢(就業者や失業者の情勢)は、米国の景気を判断する上で最も重要視される経済指標に数えられます。
その結果は金融市場に大きな影響を及ぼすため、市場関係者から注目を集めます。
雇用統計では10以上の項目が発表されますが、「非農業部門雇用者数」や「失業率」などが重要視されます。
日程・スケジュール【2025年】
米国雇用統計は、原則的に毎月第1金曜日に発表されます。
2025年の日程・スケジュールは以下の通りです(時間は日本時間。サマータイムでは1時間前倒し)。
統計対象月 | 発表日時 |
---|---|
2025年1月 | 2月7日(22:30) |
2025年2月 | 3月7日(22:30) |
2025年3月 | 4月4日(21:30) |
2025年4月 | 5月2日(21:30) |
2025年5月 | 6月6日(21:30) |
2025年6月 | 7月3日(21:30) |
2025年7月 | 8月1日(21:30) |
2025年8月 | 9月5日(21:30) |
2025年9月 | 10月3日(21:30) |
2025年10月 | 11月7日(22:30) |
2025年11月 | 12月5日(22:30) |
米国雇用統計「家計調査」と「事業所調査」の違い
米国雇用統計における「家計調査」と「事業所調査」の違いは、以下の通りです。
比較項目 | 家計調査 | 事業所調査 |
---|---|---|
調査先 | CPS (Current Population Survey) |
CES (Current Employment Statistics) |
データソース | 約6万世帯を対象とした 毎月のサンプル調査 |
約12万2千の企業・政府機関、 約66.6万個人事業主を対象とした 毎月のサンプル調査 |
雇用の範囲 | 下記も含む。 ・法人化されてない自営業者 ・家族経営の無給労働者 ・農業関連労働者 ・無給休暇中の労働者 |
左記の全てのグループを除外。 (農業のみ含む) |
家計調査・事業所調査はそれぞれ、米国雇用統計の主要な5項目の数値を導き出すためのデータとして用いられています。
それぞれどの項目のベースとなっているかを一覧にすると、以下の通りです。
種類 | 発表日時 |
---|---|
家計調査 | ・失業率 ・労働参加率 |
事業所調査 | ・非農業部門雇用者数 ・平均時給 ・平均労働時間 |
以下のグラフは、2021年1月~2023年1月における、2つの調査での雇用者数のデータを比較したものです。
オレンジの線は家計調査における雇用者数、青の線は事業所調査における非農業部門雇用者数を示しています。
双方の乖離が大きかった場合、片方のデータから導き出された指標のみを参照していると、発表される米国雇用統計の数値が予想外の結果になることがあります。
米国雇用統計【特に注目される項目】
米国雇用統計で特に注目される項目は、以下の4つです。
- ・非農業部門雇用者数(事業所調査)
- ・失業率(家計調査)
- ・平均時給(事業所調査)
- ・労働参加率(家計調査)
非農業部門雇用者数(事業所調査)
非農業部門雇用者数とは「農業以外の産業(民間企業や公的機関)で働く雇用者数」のことです。
各産業での雇用者数が多いほど個人消費が増加しやすく、この数値が多いほど景気が良いと判断できます。
英語ではNFP(Non-farm payrolls)と呼ばれます。
非農業部門雇用者数の最新データは、以下より確認できます。
失業率(家計調査)
失業率とは「働く意思がある人のうち、失業している人の割合」を示した数値です。
米国雇用統計における失業率は、失業者の定義(深刻度)によって「U-1」~「U-6」までの6段階に分かれています。
一般的な米国雇用統計の失業率は「U-3」のデータを指します。
6段階の数値の概要や定義は、それぞれ以下の通りです。
段階 | 概要 | 定義 |
---|---|---|
U-1 | 15週間以上失業している人の割合(長期失業率) | 文民労働力人口(軍人を除く労働力人口)に占める,失業期間15週間以上の失業者の割合 |
U-2 | 解雇や一時的な仕事の終了で離職した人の割合(失職率) | 文民労働力人口に占める失職失業者及び一時的な雇用の雇用契約が満了したことにより離職した失業者の割合 |
U-3 | 一般的な失業者の割合(米国の公式失業率) | 文民労働力人口に占める失業者の割合 |
U-4 | U-3+ 仕事探しを諦めた人の割合 | 文民労働力人口及び求職意欲喪失者に占める,失業者及び求職意欲喪失者の割合 |
U-5 | U-4+ 現在は働けないが働く意思がある人の割合 | 文民労働力人口及び縁辺労働者に占める,失業者,求職意欲喪失者及びその他の縁辺労働者の割合 |
U-6 | U-5+ フルタイムで働きたいがパートタイムで働いている人の割合 | 文民労働力人口及び縁辺労働者に占める,失業者,縁辺労働者及び経済的な理由による短時間就業者の割合 |
失業率が改善されているほど、景気も上向いていると判断できます。
失業率の最新データは、以下より確認できます。
平均時給(事業所調査)
米国雇用統計における平均時給とは「農業以外の主要産業の平均時給と、その増減をまとめた数値」です。
平均時給によって人件費の推移を把握することで、景気の動向を判断できます。
平均時給が上がると個人消費が拡大するため、インフレ傾向を示していると考えられます。
平均時給の最新データは、以下より確認できます。
労働参加率(家計調査)
労働参加率とは「働く意思がある人の割合」です。
下図の⑤(グレー)に対する③(オレンジ)の割合が、労働参加率です。
米国の労働市場の状況を見る上で、労働参加率は失業率と並んで重要な数値です。
失業率が低下していても労働参加率も同時に低下している場合、労働市場の状況は改善されていない可能性があります。
労働参加率の低下は「自分の希望する求人がなく、職探しを諦めてしまった人が増えた」可能性もあるためです。
一方で、景気後退期から回復に向かう場面で多く見られる、失業率の上昇とともに労働参加率も併せて上昇しているような場合であれば、求人が少なく働く意欲を無くしていた労働者が職探しを始めた可能性も考えられ、労働市場の状況が好転している可能性を見出すことができます。
労働参加率の最新データは、以下より確認できます。
米国雇用統計が為替市場に与える影響
米国雇用統計は、米国経済の状況を色濃く反映して、為替市場にも大きな影響を与えます。
米国のGDPの約7割は個人消費が占めており、雇用統計の結果は個人消費の増減にも影響します。
雇用情勢の結果が景気の好転を予測させる内容であれば、米ドルの価格が上昇、後退を予測させる内容であれば下落する傾向があります。
雇用統計がプラスで景気が良くなるとインフレ率が上がり、FRBが政策金利を引き上げ、景気の過熱を抑える動きを見せる可能性があります。
政策金利が上がれば米ドルの金利も上昇し、米ドルを保有してスワップポイントの獲得を狙う投資家が増える傾向があります。
結果がマイナスの場合は、この逆が考えられます。
このように米国雇用統計の結果は、為替市場に大きな影響を与える傾向があります。
米国雇用統計に関するQ&A
米国雇用統計に関してよくある質問は、以下の通りです。
- ・イエレン・ダッシュボードとは何ですか?
- ・米国雇用統計はどこが発表していますか?
- ・米国雇用統計はどこで見られますか?
イエレン・ダッシュボードとは何ですか?
イエレン・ダッシュボードとは、米国のイエレン前FRB議長が金融政策を考える上で重視していた、以下の9つの雇用指標のことです。- ①:非農業部門雇用者数
- ②:失業率
- ③:労働参加率
- ④:広義の失業率(U-6)
- ⑤:長期失業者の割合
- ⑥:退職率
- ⑦:求人率
- ⑧:採用率
- ⑨:解雇率
イエレン氏はすでにFRB議長を退任しているものの、上記9つの指標は今後もFRBが重視すると考えられる指標です。
米国雇用統計はどこが発表していますか?
米国雇用統計は、米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics:BLS)が発表しています。
米国労働省とは、米国の労働者・求職者・退職者の福祉の発展や、労働条件の改善などを目的とする政府機関です。
米国雇用統計はどこで見られますか?
米国雇用統計は、米国労働省労働統計局のホームページで確認できます。
> Current Employment Statistics – CES (National)/現在の雇用統計-CES(全国)
原則として毎月第1金曜日に発表されており、発表時間は夏時間で21時30分、冬時間で22時30分です(いずれも日本時間)。
なお、OANDA証券の国別経済指標では米国雇用統計を含む、各国の主要経済指標の推移を見ることができます。
【まとめ】米国雇用統計とは|日程や注目される理由などをわかりやすく解説
米国雇用統計とは、米国労働省によって発表される、米国の雇用情勢を調査した統計です。
毎月第1金曜日に発表され、米国の経済状況を強く反映することから、景気を判断する上で最も重要な
米国雇用統計の結果は米ドルの相場にも影響するため、FX取引においても重要な指標です。
OANDA証券では米国雇用統計の数値も含め、ファンダメンタルズ分析で役立つ市場の最新情報を「マーケットニュース」で配信しています。
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