FOMCが為替相場に与える影響|声明文やドット・プロットの見方を詳しく解説
FOMCが為替相場に与える影響
FOMCとは、Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略です。
米国における金融政策決定会合で、日本でいえば日銀が行う「日銀政策決定会合」、欧州で言えばECBが行う「ECB理事会」のことです。
米国は経済的にも軍事的にも、世界で最も力のある国です。
GDPは世界全体の21.9%、株式時価総額はおおよそ50%ほどです。
その米国の金融政策を決定する会合なので、その影響力は極めて大きいといえます。
特にこのところは急激なインフレ上昇に対応するなどで、かつてないほどのスピードで米政策金利を引き上げています。
その結果、為替市場でも急激に円安が進み、2022年10月には150円台に達したことは記憶に新しいことです。
以下は、米政策金利の推移(1954年-2023年)です。
(出典:FRED)
(出典:トレーディングビュー)
上記は、ドル円レート(上段)と米政策金利の推移(下段)を表示したチャートです。
FOMCにおいて利上げが決定されたのが2022年3月ですが、米金利上昇を先取りする形でドル円が上昇したことがわかります。
また、米政策金利ピークのタイミングはわかりませんが、それよりも先にドル円がピークをうったのは、いずれ来る米政策金利の天井を先取りしているのかもしれません。
FOMC後の値動きは、最近特に大きくなっています。
2021年から現在(2023年3月)まで、過去のFOMC後のドル円の値幅をグラフにしてみました。
FOMC後から翌日の終値までの値幅をとっています。
2021年は政策の変更がなかったので、FOMC後のドル円の値動きも限定的で、1円を超えることはほとんどありませんでした。
しかし、2022年3月に利上げ開始して以降は、会合後に2円以上動くケースも多くなっています。
日時 | 変更幅 | 政策金利 | 発表時レート | 翌日終値 | 値幅 | 値幅(%) |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/3/22 | 0.25% | 4.75% | 132.5 | 130.89 | -1.61 | -1.22% |
2023/2/1 | 0.25% | 4.50% | 129.33 | 128.65 | -0.68 | -0.53% |
2022/12/14 | 0.5% | 4.25% | 134.86 | 137.78 | 2.92 | 2.17% |
2022/11/2 | 0.75% | 3.75% | 146.94 | 148.2 | 1.26 | 0.86% |
2022/9/21 | 0.75% | 3.00% | 144.25 | 142.38 | -1.87 | -1.30% |
2022/7/27 | 0.75% | 2.25% | 137.22 | 134.24 | -2.98 | -2.17% |
2022/6/15 | 0.75% | 1.50% | 134.33 | 132.22 | -2.11 | -1.57% |
2022/5/4 | 0.5% | 0.75% | 130 | 130.18 | 0.18 | 0.14% |
2022/3/16 | 0.25% | 0.25% | 118.59 | 118.6 | 0.01 | 0.01% |
2022/1/26 | 0% | 0.00% | 114.33 | 115.36 | 1.03 | 0.90% |
2021/12/15 | 0% | 0.00% | 113.9 | 113.7 | -0.2 | -0.18% |
2021/11/3 | 0% | 0.00% | 113.96 | 113.75 | -0.21 | -0.18% |
2021/9/22 | 0% | 0.00% | 109.59 | 110.32 | 0.73 | 0.67% |
2021/7/28 | 0% | 0.00% | 110.09 | 109.48 | -0.61 | -0.55% |
2021/6/16 | 0% | 0.00% | 109.87 | 110.23 | 0.36 | 0.33% |
2021/4/28 | 0% | 0.00% | 108.89 | 108.92 | 0.03 | 0.03% |
2021/3/17 | 0% | 0.00% | 109.26 | 108.88 | -0.38 | -0.35% |
2021/1/27 | 0% | 0.00% | 104.08 | 104.23 | 0.15 | 0.14% |
それではFOMCとは何か、見ていきましょう。
FOMC (連邦公開市場委員会) | |
発表日時 | 原則年8回 結果発表は水曜日、米東部時間14時 日本時間 木曜日 午前3時(夏時間) 午前4時(冬時間) 議長会見は、30分後 |
2023年のスケジュール |
|
URL | https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomc.htm |
FOMC発表時のポイント
FOMC発表時、何に注目すれば良いのか見ていきましょう。
発表は米東部時間水曜日の14時です。
日本時間では木曜日午前3時(夏時間)、午前4時(冬時間)。
米雇用統計や米消費者物価指数発表時と違い、日本居住者がリアルタイムでFOMC発表を見るには、非常に厳しい時間帯です。
午前3時
FOMCのホームページに声明文(Statement)が掲載されます。
声明文を読むことで、政策変更の内容、政策変更に至った考え、今後の見通し等を理解できます。
微妙な文章の変更が将来の金融政策の変化を示すので、多くのエコノミストによって慎重に分析されます。
しかし、多くの為替トレーダーは、瞬時の判断が必要なので、声明文を直接見るのではなく、報道機関の発表等を見て売買の判断をしているでしょう。
3月、6月、9月、12月のFOMCでは、声明文以外にも、経済予測の概要(Summary of Economic Projections)が発表されます。
これも非常に重要です。
FOMCに参加する各メンバーが予想するGDP、失業率、インフレ率(PCEデフレーター)の予測が2ページ目に書かれています。
そして、FOMC参加メンバーによる、今後2~3年の各年末のFFレート(政策金利)予想をドットで表したチャートが4ページ目にかかれています。
これが有名な「ドット・プロット(ドット・チャートという人もいます)」です。
FOMC予定表
以下は、FOMCの発表スケジュールです。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm
FOMCの発表スケジュールの見方について、以下で見ていきましょう。
声明文は次のような形式になっています。
経済予測の概要(Summary of Economic Projection)
ドット・プロットについて
各メンバーが予想する各年の年末FFレートをドットとして表現したものです。
午前3時半
午前3時半より、FRB議長による会見が始まります。
マスコミ各社からの質問を受け、答える形式です。
会見の中で、マーケットを動かす重要な発言が出ることもあります。
会見の内容は、インターネット経由で同時中継を見ることもできますし、後日、先程見たFOMCのページから会見内容の全文(Transcript)を読むこともできます。
なおFOMCの発表スケジュールや今後の見通しなどについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>FOMCとは?2023年最新の発表スケジュールやマーケットに与える影響
記事執筆者:志摩力男(しまりきお)
慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。
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