FOMCの発表直前にチェックすべきことは?必ず確認すべきことを詳しく解説
FOMC直前、何をチェックすればよいか?
FOMCは年に8回行われます。
この重要な8回の会合を、トレーディング収益につなげられるよう、FOMC直前には何をチェックすれば良いか、見てみましょう。
(1)市場予測のチェック
OANDA証券では、経済指標カレンダーを出しています。
ここで日程と予想される政策変更をチェックしましょう。
このとき、CME (シカゴ・マーカンタイル取引所 Chicago Mercantile Exchange)が提供しているCMEのFedWatchツールをチェックしても良いでしょう。
https://www.cmegroup.com/ja/markets/interest-rates/cme-fedwatch-tool.htmlここで80%を超えるような織り込み度であれば、かなり高い確率でその政策が実行されます。
そうでなければ「サプライズ」が起こる可能性が高く、マーケットは大きく動きます。
※折込度画像
市場の習性として、予想通りの結果であれば、発表後の動きは小さく、予想外であれば、動きは大きくなります。
※予想と動き画像
(2)徹夜して臨むのか、それとも早起きして結果を見るか
重要な発表であるものの、FOMCの結果発表は日本時間の午前3時(冬時間の場合午前4時)、FRB議長の会見が終わるのは午前4時半(冬時間の場合午前5時半)と、起きたまま結果発表を見るには厳しい時間です。
トレーディングスタイル、生活スタイルにもよりますが、ほとんどの個人トレーダーの方は、少し早めに起きて結果を見る程度で良いと考えます。
結果発表後の動きが、東京市場の午前中も続くということがよく起こるためです。
昨今のFOMC後の値動きを見てみましょう。
5月3日FOMC
3月22日FOMC
2月1日FOMC
過去3回を振り返りましたが、2月1日と3月22日のFOMCではFOMC後の動きが東京市場の午前中に続けて起こったといえます。
発表直後は、声明文の内容や、会見の時のFRB議長発言に左右されたり、他のニュースに翻弄されたりもします。
FOMCの結果をライブで見て、リアルタイムでのトレードをしなくても、FOMC後の動きに沿ったポジションで東京市場の午前中に利益を狙うこともできるのではないかと考えます(もちろん、そうならない場合もあるため、あくまでトレードは自己責任にはなります)。
FOMC議事要旨について
FOMCで話し合われた内容は、3週間後に「FOMC議事要旨」という形で発表されます。
毎回、おおよそ12ページに及びますが、報道される内容を押さえるぐらいで良いと思います。
しかし、しっかりと内容を把握したいということであれば、ポイントを抑えて直接本文を読まれるのも、FOMCの方向性を理解する上でも有益です。
FOMC議事要旨は、だいたい以下の内容です。
- ・Developments in Financial Markets and Open Market Operations
(金融市場の動向と公開市場操作について) - ・Staff Review of the Economic Situation
(経済情勢に関するスタッフレビュー) - ・Staff Review of the Financial Situation
(金融情勢に関するスタッフレビュー) - ・Staff Economic Outlook
(スタッフによる経済見通し) - ・Participants’ Views on Current Conditions and the Economic Outlook
(参加者の現状と経済見通しに対する見解) - ・Committee Policy Actions
(委員会の決定)
ここで重要なのはParticipants’ Views on Current Conditions and the Economic Outlook(参加者の現状と経済見通しに対する見解)です。
ここにFOMCに参加するFRB理事(現状6名)と12地区連銀総裁、合計18名の米経済に対する見解が書かれています。
長く書かれていることが多いのですが、本当に重要なのは、最後の2~3段落ぐらいです。
そこに、今後の政策に対する参加者の意見が書かれます。
どういった政策に対しメンバーのうち何人が賛成なのか、その人数が重要です。
その政策に多くの人が賛成しているのか、反対があるとすればそれは多いのか少ないのか、ということです。
「数を表す言葉」が重要になり、FOMC議事要旨ではそれがある程度定義されています。
量を表す言葉 | 具体的な数(筆者推測) |
---|---|
all | 全員(18人) |
all but one | 一人を除いて全員(17人) |
almost all or participants/members generally | ほとんど全員(15~16人) |
most or majority | 大多数(13~14人) |
many | 多数(9~12人) |
some | 何人か(7~8人) |
several | 数名(5~6人) |
few | 3、4人 |
a couple or two | 2人 |
one … another | 1人 |
上記の表は、FRB内の下記のサイトに書かれています。
https://www.federalreserve.gov/econres/notes/feds-notes/the-fomc-meeting-minutes-an-update-of-counting-words-20170803.html
この他にも”a number of”という言葉もよく使われます。
この表現は、人数を特定されたくないときに使われているようです。
よく問題になるのは、”SOME”、“SEVERAL”どちらが多いのか、ということです。
通常の感覚だとSOME < SEVERALでしょう。
しかし、FOMC議事要旨ではSOME > SERIALと決まっています。
5月24日に発表された議事要旨に、問題となった部分があります。
Some participants commented that, based on their expectations that progress in returning inflation to 2 percent could continue to be unacceptably slow, additional policy firming would likely be warranted at future meetings.
Several participants noted that if the economy evolved along the lines of their current outlooks, then further policy firming after this meeting may not be necessary.
上の文章では、何人か(SOME)の参加者が利上げ継続を求めているとか書かれています。
そして下の文章では、何人か(SEVERAL)の参加者が、これ以上の引き締めは必要ないかもと書かれています。
重要な見解の違いです。
ここでSOMEとSEVERAL、どちらが多いのかが決定的に重要です。
日経新聞では下記の様に訳していました。
「何人かの参加者は次回以降の会合でも追加の引き締めが必要になる可能性が高いと指摘したが、それを上回る参加者が利上げの停止を主張しており、見方は分かれている。」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24DC50U3A520C2000000/日経なので英語のスペシャリストの手による翻訳でしょうが、SOME<SEVERALと訳しています。
一般的にはそれが正しいのでしょう。
しかし、FOMC議事要旨では誤りで、SOME>SEVERALです。
この議事要旨発表後、米金利は上昇し、ドル円は上昇を加速させましたが、SOME>SEVERALとわかっていれば、上昇相場に乗れていたはずです。
以上、4回に渡ってFOMCに関して解説しました。
皆様のトレーディングの参考になれば幸いです。
記事執筆者:志摩力男(しまりきお)
慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。
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