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CPI(消費者物価指数)・PPI(米生産者物価指数)・PCEデフレーターそれぞれの違いを解説


米国のインフレを測る経済指標は、いくつかあります。
米消費者物価指数と比べてどのように違うのか、関連性、連動性はあるかなどわかっていると、消費者物価指数がどのようになるのかを予想しやすくなります。
各指標について解説していきます。

(1)米生産者物価指数(PPI=Producer Price Index)

米生産者物価指数(PPI)とは、米国内の生産者が製造・出荷した製品の販売価格を調査・算出した経済指標です。
約1万品目について調査・発表しており、日本で言えば「卸売物価指数」に近い統計です。
輸入品は含まれず、輸入品を対象とした物価指標には「輸入物価指数」があります。

2023年3月における議会証言において、パウエル議長は重視する経済指標として「雇用統計、JOLTS、消費者物価指数、生産者物価指数」の4つを挙げましたが、このことからもわかるように、物価動向を探る意味で非常に重要視されています。

生産者物価指数にも、すべての対象品目の動向を表した総合指数と、食料品とエネルギーを除いて算出したコア指数があります。

以下は、過去10年ぐらいの生産者物価指数の総合指数と、食品・エネルギーを除いたコア指数を比べたグラフです。
(出所:FREDセントルイス連銀)

PPI

変動率の高い食料品とエネルギーを除いているので、コア指数と総合指数は同じように動いていることが図からわかります。
コア指数は総合指数ほど変動しません。

生産者物価指数は「川上の数字」とよく言われます。
理由として、企業間で取引されている価格指数だからです。
この価格をもとに、製造業者は最終製品の価格を決定し、それが消費者の手に渡り、「川下の数字」である消費者物価指数を形成します。
この関係から言えば、生産者物価指数は消費者物価指数に対し先行性があるように見えます。

ここ数年の生産者物価指数と消費者物価指数を比べてみると、確かに生産者物価指数に先行性があるように見えます。

CPIとPPI

図を見ると、PPIがCPIに先行して、高いレベルで推移してきましたが、最近ではCPI以上にPPIの価格減少が進み、2023年2月の生産者物価指数は4.6%と大幅に低下しました。
消費者物価指数はまだ6%ですが、生産者物価指数が順調に下がって行くならば、消費者物価指数も遅かれ早かれ低下して行くようことが予想できます。

 
生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)
発表日時 毎月第2~第3週(まれに、第4週)
多くの場合、消費者物価指数の翌日から数日後に発表されるが、消費者物価指数に先行するときもある。
(夏時間)21時30分 (冬時間)22時30分
発表内容 ・生産者物価指数(対前月比、対前年比)
・コア指数(変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字、対前月比、対前年比)
発表機関 米労働省労働統計局
(US Bureau of Labor Statistics)
URL https://www.bls.gov/cpi/

(2)PCEデフレーター

PCEは、米国の個人消費者が実際に使った金額にもとづいて集計される個人消費の動向を表したデータです。
FRBが金融政策を決める際に重視していると言われ、消費者物価指数より注目されることがあります。

FOMCでは3ヶ月に一度、Summary of Economic Projection(経済予測レポート)が発表されます。
そこではGDP、失業率、PCEデフレーター、及びPCEコアデフレーターに関して、FOMC参加者の予測が書かれています。
FOMC議事要旨等を読むと、PCEコアデフレーターが重視されているとわかります。

 
PCE デフレーター(Personal Consumption Expenditure Deflator)
発表日時 毎月下旬(夏時間)21時30分
(冬時間)22時30分
発表内容 ・PCEデフレーターとそのコア指数
発表機関 米商務省経済分析局(BEA)
(US Bureau of Economic Analysis)
URL https://www.bea.gov/data/personal-consumption-expenditures-price-index

消費者物価指数とPCEデフレーターの違いは、PCEデフレーターのPCE(個人消費支出)は米国経済分析局(BEA)がGDPを算出する際の「消費」であり、それを元にPCE デフレーターは計算されます。
CPIは家計調査ですが、PCEは企業調査であり、より広い範囲をカバーします。

CPIに比べ、PCEデフレーターは住宅の構成要素が少なくなっています。
さらに、帰属家賃を計算に入れていません。
医療費の計算方法も違い、実際に家計が支出した分ではなく、保険会社が支出した分も含まれます。

CPIに比べ、PCEデフレーターはあまり上方に突出しないと言われています。

CPIとPCEデフレーター

PCEデフレーターとコアPCEデフレーター

PCEコアデフレーターはPCEデフレーターより、かなり落ち着いた動きとなっていますが、ノイズが消え、物価の方向性をより客観的に観察できるように見えます。
FRBが最も重要視する物価指標というのも頷けます。

記事執筆者:志摩力男(しまりきお)

慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。


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