砂糖の価格変動要因とは?需要と供給、在庫、産地の天候について解説
世界の供給
供給には生産と輸入があります。生産面では、世界最大の生産国であるブラジルの動向が最大の関心事となります。近年の同国の生産量は世界生産の20%前後を占め、その豊凶は世界需給を一変させる力を持ちます。その他、甘しゃ生産地域としてアジア圏最大の輸出国であるタイ、オセアニア圏の輸出大国であるオーストラリアなどの動向が注目されます。ビート糖においては、例年8月頃から開始されるビートテストおよび8月下旬、12月上旬頃にリヒト社から発表される欧州ビート生産第一次、第二次予想などが注目されます。
輸入面では、中国などの買い付け国の動向が注目されます。天候不順などによる減産で国内需給がひっ迫すれば、同国からの輸入意欲が強まり、相場の上昇要因となることもあります。
世界の需要
需要には消費と輸出があります。世界消費は世界人口の増加傾向などから、近年緩やかな増加を示していますが、ほぼ全世界で消費されているため、その動向を正確に把握することは容易ではありません。米国、欧州、日本などの先進国では健康面に対する影響などからの嗜好性の変化、インドや中国など新興消費大国では経済の発展度合いや人口増加率などに左右されます。中東では、ラマダン前後の買い付け動向や、地政学的リスク(同地域での紛争懸念)に伴う消費の増減などが注目されます。
輸出については、ブラジル、タイ、オーストラリアなど輸出大国の動向が注目されます。中でも、ブラジルの砂糖・アルコール政策に絡んだ輸出動向が最大の関心事となっています。ブラジルは収穫した甘しゃから砂糖とアルコール燃料(エタノール)をそれぞれ生産しており、その生産比率を微妙に調節しています。原油価格高騰の際には、エタノール生産の動向が注目されます。またエタノールの供給不足懸念が出た場合などには、砂糖の輸出を抑えるため、輸出関税を一時的に引き上げる政策をとることもあります。
在庫
在庫量や在庫率は、各調査機関の年度設定によって数値が大きく異なることになるため注意が必要です。10月から翌年9月までの期間を採用するリヒト社などは、8月ぐらいから欧州ビート糖の出回りが増加することなどから数値が大きくなり、それに比べ米農務省(USDA)など9月~翌年8月までの期間のものは出回りが少なくなるため、同年度でも数値が大幅に小さくなる傾向があります。
USDAデータによると、世界の期末在庫は2017-18年度に史上初めて5,000万トン台に乗せた後、翌年度には5,300万トン台まで達しています。
資料:USDA
※砂糖図表_世界砂糖期末在庫
産地の天候
砂糖の原料には、甘しゃとビートの2種類があります。甘しゃは熱帯・亜熱帯地方で栽培され、最も生産が多いのはブラジルです。2~3メートルに成育した甘しゃを刈り取ると、1年で再び成長します。そのままでは年々糖分が低下するため、3~5年ごとに新しく植え替えます。新植の場合は成育までに1年半かかるため、1年目の収穫はできません。
砂糖生産の最大の敵は、主要産地の干ばつや洪水などの天候異変です。ブラジルでは生産の約80%を占める中南部の天候と、それを受けた生育過程が最も注目されます。
ビートは北半球で栽培され、春に播種(はしゅ)、秋に収穫します。前半は雨を必要としますが、後半は適度な乾燥状態を好みます。8~9月にかけての成熟期は、昼間暑く夜間冷え込む状況が続くとビートの糖分が高くなり、良好な成育が期待できます。低温・冷夏などになると減産の可能性が高まります。
本記事の監修者・佐藤りゅうじ
1968年生まれ。1993年米大卒業後、1995年2月株式会社ゼネックス入社。アナリストとしてマクロ経済分析をはじめ、原油、天然ゴム、小麦などの商品市場、また為替市場、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年1月エイチスクエア株式会社を設立。
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