農産物商品の基礎

砂糖の生産動向や消費動向について|2021年のデータを用いて解説


世界の生産動向


砂糖は世界110か国以上で生産されています。米農務省(USDA)の世界砂糖需給統計によると、世界の砂糖生産は2000年以降も増加傾向で、2017-18年度には過去最高の1億9,419万トンを記録しました。その後は在庫の積み上がりの影響などもあり、1億7,000万トン前後での推移が見込まれています。

砂糖の国別生産高

※砂糖図表_国別生産高


ブラジルの生産動向


ブラジルは、インドと首位を争う砂糖の大生産国です。また、輸出国としては他国を圧倒しているため、国際的な砂糖相場の動向は同国産の豊凶次第といっても過言ではありません。1994-95年度は1,200万トン台にすぎませんでしたが、その後増産を続け、2006-07年度には3,000万トン以上に達し、2020-21年度には4,000万トンを超えています。

近年、生産量の60%以上を輸出しており、70%を超える年度もありました。ブラジルは世界一の生産国であり、生産・輸出動向は世界需給に大きな影響を与えています。


インドの生産動向


ブラジルと世界生産の1、2位を争う大生産国です。生産量のほとんどを国内で消費しているため、ブラジルと比較すると輸出は圧倒的に少ないです。そのため、インドの生産・輸出動向が及ぼす影響は軽微にとどまっています。ただし、年度によっては期末在庫が大きく膨らみ、その潤沢な在庫がいつ放出されるかが注目されることもあります。同国の生産量はここ数年、3,000万トンで推移しています。


EUの生産動向


欧州連合(EU)は、ドイツ、フランス、ポーランドを中心にビート糖の大生産地域です。共通農業政策(CAP)の改革を背景に生産割当の削減などを受け、砂糖生産および輸出量が大幅に減少し、主要輸出地域から主要輸入地域に転換していることが目立ちます。2017-18年度には1,951万トンを記録しましたが、2020-21年度はEU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる萎黄病の被害を受けて、生産量が減少することが見込まれています。なお、2020-21年度の国別の生産割合は、ドイツ、フランス、ポーランド、オランダの順です。


タイの生産動向


タイは、アジア圏最大の輸出国としての地位を固めています。生産量は2018-19年度には1,458万トン台を記録しましたが、その後は干ばつの影響や代替作物の作付増加などもあり、1,000万トンを下回っています。

生産量の60%以上を輸出し、ブラジルに次いで世界第2位の砂糖輸出国であることから、タイの生産・輸出動向が世界需給に与える影響は大きいです。タイ産は日本からの需要が高く、価格はNY市場プラスアルファという形で決められています。この上乗せ分を「タイ産プレミアム」と呼びます。タイ産の需給を反映するタイ産プレミアムは、アジア圏の需給を占う上で非常に注目されています。


中国


年度により豊凶の差が非常に激しいです。世界最大の輸入大国でもあるだけに、その生産・輸入動向が世界需給に大きな影響を及ぼします。2000-01年度に700万トン弱であった生産量は、2007-08年度に史上初めて1,500万トン台に乗せ、1,590万トン近くまで増加しました。2008-09年度以降、生産量は伸び悩んでおり、2015-16年度には1,000トンを割り込みました。ただ、今後は機械化の進展や栽培技術の向上により、糖料作物の単収の増加が見込まれるとして、生産量は増加傾向になると予想されています。


世界の消費動向


世界の消費量は増加傾向にあります。2006-07年度に史上初めて1億5,000万トン台に乗せた後、2014-15年度には1億7,000万トン台に達しています。ここ数年は伸び悩んでいますが、世界人口の増加および発展途上国の生活水準向上に伴う一人当たりの砂糖消費量の増加などがその背景にあります。

また、砂糖消費は概して、先進国において横ばい傾向であるのに対して、インドや中国など、経済発展や人口増加の著しい地域での増加傾向が目立っています。

砂糖の国別消費量

※砂糖図表_国別消費量


インドの消費動向


世界最大の砂糖消費国で、消費量は一国としては群を抜いており、欧州連合(EU)全体や北・中央アメリカ全体を上回っています。人口は13億人(2019年)を超え、中国に次ぐ人口保有国であり、消費量は1993-94年度には1,200万トン台でしたが、その後の人口増加と生活水準の向上などにより飛躍的に増加し、2005-06年度は史上初の2,000万トン台に乗せました。増加傾向は続き、2012-13年度は2,500万トン、2020-21年度は2,800万トンに達することが見込まれています。


EUの消費動向


インドに次ぐ消費地域、また世界最大の輸入地域として、国際需給に大きな影響力を持っています。消費量は、2006-07年度に史上初めて2,100万トン台に乗せた後に落ち込みましたが、ここ数年は1,600万トン前後で安定しています。


中国の消費動向


消費量は2002-03年度に史上初めて1,000万トンを超え、2014-15年度には1,740万トンに達し、その後は1,500万トン台で安定しています。国別ではインドに次ぐ世界第2位の砂糖消費国です。14億人台(2019年)という世界最大の人口を保有し、2003年から2007年まで実質経済成長率(GDP成長率)は前年比10~14.2%の高い経済成長率を記録しています。2008年から経済成長率の伸びは鈍化していますが、富裕層が集中する沿岸部を中心に生活水準は著しく向上しています。内陸部を中心とする貧困層との経済格差は広がっており、砂糖消費においても富裕層と貧困層には大きな隔たりがあります。

2001年12月には世界貿易機関(WTO)への加盟を実現し、市場開放後の中国の貿易事情は従来に増して注目されています。約14億人もの人口を抱える中国の一人当たりの砂糖消費量が年間1キロ増加するだけで、約140万トンもの消費量拡大につながり、市場に大きな影響を与えます。


米国の消費動向


消費量は2009-10年度に史上初めて1,000万トンを超え、その後は1,100万トン前後で安定しています。人口は3億人台と日本の約2.5倍強に過ぎませんが、消費量は約5倍であることから、一人当たりの消費量は多いことが分かります。なお、豊さの象徴でもある肥満人口の増加から、ダイエット食品への関心は非常に高く、砂糖から代替甘味料への消費の移行が進んでいます。


ブラジルの消費動向


消費量は2003-04年度に史上初めて1,000万トンを超え、その後は1,000万トン台で安定しています。また、世界最大の砂糖生産国であり、自国消費が生産量の30%程度で、残りの70%近くは輸出に振り向けています。

また、同国は収穫した甘しゃから砂糖とアルコール燃料(エタノール)をそれぞれ生産しており、その生産比率を微妙に調節しています。


本記事の監修者・佐藤りゅうじ


1968年生まれ。1993年米大卒業後、1995年2月株式会社ゼネックス入社。アナリストとしてマクロ経済分析をはじめ、原油、天然ゴム、小麦などの商品市場、また為替市場、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年1月エイチスクエア株式会社を設立。

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