用語解説

貿易収支(ぼうえきしゅうし)とは|意味・推移やよくある質問を解説


貿易収支とは、輸出額と輸入額の差額のことです。輸出額が輸入額よりも多ければ貿易黒字、輸出額が輸入額よりも少なければ貿易赤字となります。

貿易収支には、財務省関税局が発表する「貿易統計」に基づいたものと、日本銀行と財務省が共同で発表する「国際収支統計」に基づいたものがあります。

この記事では、貿易収支の意味や推移、よくある質問を詳しく解説します。

貿易収支とは

貿易収支について以下の項目で解説します。

  • ・意味
  • ・貿易統計に基づく貿易収支
  • ・国際収支統計に基づく貿易収支

意味

貿易収支とは、輸出額と輸入額の差額のことです。

輸出額が輸入額よりも多ければ貿易黒字、輸出額が輸入額よりも少なければ貿易赤字となります。

貿易収支には、財務省関税局が発表する「貿易統計」に基づいたものと、日本銀行財務省が共同で発表する「国際収支統計」に基づいたものがあります。

両者の違いを表にまとめると、以下の通りです。

貿易統計に基づく貿易収支 国際収支統計に基づく貿易収支
発表(作成) 財務省関税局 日本銀行と財務省
データ計上範囲 関税境界を通過した貨物 居住者と非居住者との間で所有権が移転した財貨
データ計上タイミング 輸出…積載船舶等が出港した時点
輸入…輸入許可の時点
所有権が移転した時点
建値 輸出…FOB
輸入…CIF
輸出…FOB
輸入…FOB

※FOB=Free On Board(本船渡し価格)

※CIF=Cost, Insurance and Freight(貨物代金に加えて、仕向地までの運賃・保険料が含まれた価格)

例えば、米国から人工衛星を購入してそのまま米国で打ち上げた場合、貿易統計では税関を通過していないためデータ計上されない一方、国際収支統計では所有権移転によりデータ計上されます。

次の項目で、それぞれ詳しく解説していきます。

貿易統計に基づく貿易収支

貿易統計に基づく貿易収支は、財務省関税局によって発表されます。

データに計上されるのは「関税境界を通過した貨物」です。

計上されるタイミングは、輸出の場合は積載船舶等が出港した時点、輸入の場合は輸入許可の時点です。

統計が公表されるのは、原則として翌月末です。

2024年8月15日時点で公開されている公表スケジュールを一覧にすると、以下の通りです。

(時間は全て午前9時30分です)

日時 公表内容(確報)
8月29日 7月分
9月27日 8月分
10月30日 9月分・年度上半期分
11月28日 10月分
12月26日 11月分
1月30日 12月分・年分
2月27日 1月分
3月28日 2月分
4月25日 3月分・年度分

国際収支統計に基づく貿易収支

国際収支統計に基づく貿易収支は、日本銀行と財務省によって発表されます。

データに計上されるのは「居住者と非居住者との間で所有権が移転した財貨」で、計上されるタイミングは所有権が移転した時点です。

統計が公表されるのは、翌々月上旬です。

例えば4月の統計は6月上旬に公表されます。

また、今後の公表予定については6ヶ月先まで公開されています。

2024年8月15日時点での、公表予定は以下の通りです。

(時間は全て午前8時50分です)

日時 内容
9月9日 令和6年7月中(速報)
10月8日 令和6年8月中(速報)
令和6年4~6月中(第2次速報)
11月11日 令和6年9月中(速報)
令和6年度上期中(速報)
令和6年4月~6月中(地域別)
12月9日 令和6年10月中(速報)
1月14日 令和6年11月中(速報)
令和6年7~9月中(第2次速報)

貿易収支の動向と見通し

貿易収支の動向と見通しは、以下の資料によって経済産業省と財務省が公表しています。

それぞれの資料を基に動向と見通しについて解説していきます。

  • ・貿易収支の動向
  • ・貿易収支の見通し

貿易収支の動向

2000年から2022年までの貿易収支の動向がどのような内容だったかを、財務省の資料を基にまとめます。

下図は、2000年以降の貿易収支を「主要品目別・輸出入別」に見たグラフです。

貿易収支の動向

電気機器に着目すると、2000年代前半までは貿易黒字に貢献していたものの、2010年代以降はその貢献が小さくなっていることがわかります。

鉱物性燃料は、一貫して貿易赤字に寄与しています。

2000年代後半以降は、貿易赤字への寄与がさらに大きくなっています。

貿易収支の見通し

財務省は以下の資料の中で、中期的な貿易収支の見通しを示しています。

国際収支から見た日本経済の課題と処方箋(PDF)

資料では、大和総研など主要シンクタンク4社の予測に基づき、中期的には一段と高齢化が進展する中で貿易収支の赤字が定着・拡大する見通しがまとめられています。

4社のうちの1つ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの見通しによると、2024年は2023年よりも貿易赤字が拡大し、2025年には赤字が前年比の半分程度に縮小する見通しです。

しかし、2025年以降は一貫して貿易赤字が拡大していく見通しです。

ニッセイ基礎研究所も貿易赤字拡大見通しを示しており、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの見通しに比べて貿易赤字の拡大が速いペースで進むと予測しています。

貿易収支(日本)の推移

日本の貿易収支の推移は、下図の通りです。

2010年(平成22年)までは貿易黒字が続いていたものの、2011年(平成23年)に東日本大震災の影響を受けて貿易赤字に転じ、しばらく貿易赤字が続きました。

その後、2016年(平成28年)~2021年(令和3年)には貿易黒字に戻りながらも、2022年(令和4年)からは再び貿易赤字になっています。

貿易収支(日本)の推移

貿易収支に関するQ&A

貿易収支に関するQ&Aについて解説します。

  • ・経常収支との違いは何ですか?
  • ・日本が貿易赤字なのはなぜですか?
  • ・国際収支統計との違いは何ですか?

経常収支との違いは何ですか?

貿易収支は、経常収支の一部です。

下図の通り、経常収支の中に含まれています。

貿易収支と経常収支の違い

経常収支は、以下の3つの収支から成り立っています。

  • ・貿易・サービス収支
  • ・第一次所得収支
  • ・第二次所得収支

それぞれの収支の内容をまとめると、以下の通りです。

(貿易収支とサービス収支は分けて説明しています)

種類 収支の内容
貿易収支 財貨(物)の輸出入の収支
サービス収支 無形財のサービス取引による収支
第一次所得収支 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支
第二次所得収支 居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支

日本が貿易赤字なのはなぜですか?

日本は資源輸入国であり、石油と天然ガスのエネルギー輸入による貿易赤字が最大の理由と言われています。

2011年の東日本大震災により、サプライチェーン(部品などの供給網)が混乱し輸出量が低下しました。

それに加えて、原子力発電所停止の影響から火力発電の燃料として石油・天然ガスの輸入が増え、貿易収支は48年ぶりの赤字に転落しました。

その後も、エネルギー輸入による貿易赤字が続いています。

国際収支統計との違いは何ですか?

貿易収支は、国際収支統計の一部です。

国際収支統計の内訳に「経常収支、資本移転等収支、金融収支」があり、その中の経常収支の内訳に「貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支」があります。

【まとめ】貿易収支(ぼうえきしゅうし)とは|意味・推移やよくある質問を解説

貿易収支とは、輸出額と輸入額の差額のことで、輸出額が輸入額よりも多ければ貿易黒字、少なければ貿易赤字となります。

貿易収支には、財務省関税局が発表する「貿易統計」に基づいたものと、日銀と財務省が共同で発表する「国際収支統計」に基づいたものがあります。

前者は関税境界を通過した貨物を計上範囲に、後者は居住者と非居住者の間で所有権が移転した財貨を計上範囲としており、両者の数値には差異があります。

一般的に、FX市場で貿易収支が取り上げられる場合は、国際収支統計に基づいた貿易収支です。

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