ダマシこそ最強のサイン|プライスアクションの基礎知識
「ダマシ」の概念は、日本の罫線理論でも散見されますが、プライスアクションほど体系化されていない上、ダマシこそ最強のサインといった「逆の発想」がありません。
筆者はダマシの理屈、ダマシのサインをトレードに応用できるのが、プライスアクションの醍醐味だと考えています。
そもそもダマシとは何か?
だましとは何かについて、二つ視点から解釈したいと思います。
一つは相場の言語自体が曖昧なところです。
値動きを相場の言語とした場合、実は日本語に似ていると言われています。
例えば「結構です」という表現は、果たしてYESなのかNOなのか、その言葉を発する人、受け取る人によって意味が違ってくるかもしれません。
値動きも市場参加者それぞれの解釈によって違ってくることが多いです。
日本語では、言葉自体の「決まり」や「多重構造」を知らないと悔しい目に遭います。
相場の値動きもそれと同じで、ダマシの可能性を知らないと、後で悔しい思いをすることが多いです。
もう一つの視点は、やはり「相場は詭道なり」に尽きます。
プライスアクションのサインを「単純に」解釈する場合は、上値あるいは下値を試していくと思われるところで、反対の方向に行ってしまったら、「従来」の方向ではなく、かえって逆の方向に行きやすいと判断します。
このロジックがダマシの本質です。
相場における値動きは、常にロング勢とショート勢の戦いの結果を表しています。
戦いなので、当然「騙し合うこと」も含まれます。
もっとも、相場における「騙し合い」は事前の謀略によって作られたものではなく、戦いの状況が常に変化していくうちに、事後的な結果として残されたものです。
また、その結果に鑑み、ロング勢とショート勢が新たな思惑や判断に基づき、さらに行動を起こした結果でもあります。
例えば、上昇トレンドが継続し、過熱感もかなり出たところで、新たな高値が形成されたものの、一転して大きく反落、日足では典型的な「弱気リバーサル」のサインが点灯したというケースを考えてみましょう。
一般論として、この場合ロング勢はさらなる下落を危惧し、ポジションを決済します。
反面、ショート勢はロング勢の決済を見込んで新たなショートポジションを作ることも推測されます。
ロング勢がポジションを決済してから、ドテンしてショート勢として相場に参入してくるのもよく観察されるパターンです。
このようにトレンドが反転するとの思惑が広がり、ファンダメンタルズ上の材料が伴えば、一層ショート勢の勢いが強くなりがちです。
しかし、その後下落せず、逆に一転して上昇し新たな高値を形成した場合はダマシになります。
そうなると、ショート筋は狼狽して損切り(買い戻し)し、新たなロング筋の参入もあって、相場は往々にしてさらなる高騰を演じます。
言ってみれば、ダマシのサインがあったからこそ、さらなる高値更新や強いトレンドが形成されるわけです。
「ダマシこそ最強のサイン」と言われる所以はそこにあります。
例えば、途中のサインが上あるいは下の方向を示し、ロング勢もショート勢もそれを見込んだ判断を一旦下したとします。
その方向へ行かず、逆へ向かう場合は相場の「均衡とバランス」が大きく崩れやすくなるので、さらなる「踏み上げ」、あるいは「損切り」が多数発生する仕組みです。
潜在的な「損する勢」が多ければ多いほど、サインの有効性は高くなります。
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陳 満咲杜(まさと)
中国・上海生まれ。
1992年来日、日本語学校を経て日本大学経済学部に入学。
生活費と学費をアルバイトでまかないながら在学中より株式投資を開始。
大学卒業後、中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期(1999年)のFX業界へ。
香港や米国の金融機関で実務を重ね、トレーダーとしての経験を積む。
GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。
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