FX自動売買基礎と応用

朝スキャEAにマーチンゲールを実装するカスタマイズ【コピペで使用可能】


前回の記事では、単純な時間制限と逆張りのロジックに対して、トレーリングストップを実装することでどのような影響が出るのかを実験しました。
今回の記事では、「トレーリングストップ」ではなく「マーチンゲール」を実装することで、どのような結果になるのかを確認します。

マーチンゲールとは、主にカジノの攻略法として編み出された手法です。
手法は単純で、勝つまでベッド額を倍々にしていくというものです。
FXにおけるマーチンゲールでは、ロット数を2倍にしていくというのが一般的です。

マーチンゲールのメリットとデメリット

マーチンゲールのメリットとデメリットは、以下の通りです。

メリット

メリットは、それまでの負け分を一気に取り戻せるという点です。
通常であれば、1回の負けは2回勝たなければ勝ち越すことはできませんが、マーチンゲールでは1回勝つだけで勝ち越せます。

デメリット

デメリットは、負け続けるとあっという間に資金が尽きてしまう点です。
FXは、各トレードが独立した事象であり、連続で負けてしまうことがあり得ます。
そのため、初めに十分な資金を用意する必要があります。

例えば初回エントリーが0.01ロットで10連敗した場合、11回目のロット数は10.24ロットとなってしまいます。
マーチンゲールは資金が尽きると一気に破綻してしまうのです。

    FXにおけるマーチンゲールの注意点

    マーチンゲールは「1回勝つだけで勝ち越せる」と説明しましたが、これは損切り幅と利確幅が同じ場合に限ります。
    損切り幅が利確幅に比べて大きい場合は、1回勝つだけでは勝ち越せません。
    FXの場合、スプレッドやエントリータイミングの差などの要因もあり、一概に2倍すれば良いという単純な計算は避けるべきです。

仕様

まずは前回作成したEAの仕様をまとめます。

エントリー

時間が日本時間早朝かつRSIが売られすぎラインを下回ったら、買いエントリー
時間が日本時間早朝かつRSIが買われすぎラインを上回ったら、売りエントリー

決済

利確価格と損切り価格による決済

その他

著作権を「OANDA」に設定
スリッページ、スプレッドによってエントリーを制限する
ポジションは同時に1つのみ保有するようにする
マジックナンバーとロット数を変更できるようにする

以上です。

今回はマーチンゲールの回数を設定できるパラメータを追加します。
このパラメータの値が「3」の時、最大で3回までロット数を2倍にしていきます。
その後に4連敗した場合は2倍せず、そのままの値でエントリーを行うようにします。

EAを作成する

プログラムは「5.朝スキャのEAを作ってみよう」をもとに作成するので、前回までの内容は割愛し、今回追加する機能のみ紹介します。

フィールド


input int                   MAGICMA = 23198721;                      // マジックナンバー
input double                Lots =0.01;                                 // 1ロット十万通貨単位
input int                   Slippage = 4;                                // エントリー見送りスリッページ
input double                MaxSpread = 5;                              // エントリー見送りスプレッド
input double                TakeProfit = 10.0;                           // 利益確定幅(pips)
input double                LossCut = 20.0;                             // 損切確定幅(pips)
input int                   RSIPeriod=6;                                // 期間
input   ENUM_APPLIED_PRICE  RSIAppliedPrice = PRICE_CLOSE;      // 適用価格
input int                   UpLine = 85;                                // 上の線
input int                   DownLine = 25;                              // 下の線
input int                   TradeTime = 0;                              // トレードを行う時間

//マーチンゲール設定
input int                   NumMartin = 5;                           // マーチンゲールで倍々する最大回数

前回のパラメータの最後にNumMartinという変数を追加します。

OnTick関数


void OnTick()
{
   dSpread = (Ask - Bid) / (Point * 10);
   int loseCount = 0;      //負けカウント
   for( int i= OrdersHistoryTotal()-1; i>=0; i-- ){                       //①
      if( OrderSelect(i, SELECT_BY_POS, MODE_HISTORY) == true && OrderMagicNumber() == MAGICMA && OrderSymbol() == Symbol() ){
         if( OrderProfit() <= 0 ){                                     //②
            if(loseCount >= NumMartin)break;                        //③
            loseCount++;                                            //②
         }
         else{
            break;
         }
      }
   }
   double lot = Lots * MathPow(2, loseCount);                            //④
   if(CalculateCurrentOrders()==0 && dSpread < MaxSpread) CheckForOpen(lot);            //⑤
}

OnTick関数です。

  • ① マーチンゲール時のロット数は、直近で何回トレードに負けたかによって決まります。
    そのため、OnTick関数のはじめに過去のトレードで何回負けたのかを調べます。
  • ② 「OrderProfit() < =0」という条件によって、損益が0よりも小さければ変数「loseCount」をインクリメント(+1)します。
  • ③ loseCountの値がパラメータNumMartinの値よりも大きくならないようにします。
  • ④ loseCountの回数でロット数を計算します。
    MathPow関数は第1引数の値を第2引数だけべき乗した値を返す関数です。
  • ⑤ CheckForOpen関数に引数として渡します。

CheckForOpen関数


void CheckForOpen(double int lot)
{
   int res;
   double RSI = iRSI(Symbol(), 0, RSIPeriod, RSIAppliedPrice, 1);
   if(TradeTime == TimeHour(Time[1]))
   {
      if(RSI < DownLine)
      {
         res=OrderSend(Symbol(), OP_BUY, lot, Ask, Slippage, Bid - TrailWidth * Point * 10, Ask + TakeProfit * Point * 10,"", MAGICMA, 0, Red);
      }
      if(RSI > UpLine)
      {
         res=OrderSend(Symbol(), OP_SELL, lot, Bid, Slippage, Ask + TrailWidth * Point * 10,  Bid - TakeProfit * Point * 10, "", MAGICMA, 0, Blue);
      }
   }
}

今回、ロット数はOnTick関数内で計算しているので、引数でロット数を指定できるようにします。
受け取ったロット数はOrderSend関数の第3引数に指定するのを忘れないようにしましょう

バックテスト

今回作成したマーチンゲールのEAと、前回作成した単ポジ型のEAのバックテスト結果を比較してみましょう。
条件は以下の通りです。

  • 通貨ペア:GBPUSD
  • 時間足:5分足
  • 期間:2018年1月1日~2023年1月1日の5年間
  • スプレッド:15固定

単ポジ型

単ポジ型

マーチンゲールのEA

マーチンゲールのEA

グラフを見ると下の「残量」に緑色のバーが表示されています。
これはエントリー時のロット数です。
つまり緑色のバーが長い部分は、連敗している部分です。

性能としては、取引回数、プロフィットファクター、勝率といった点で単ポジ型を上回る結果となりました。
ただ、ロット数が上下するので、最大ドローダウンについては単ポジ型のものよりも大きい結果となりました。

注意点

今回のバックテストは、スプレッドを固定で行っています。
日本時間早朝の相場が緩やかになる時間帯は、スプレッドが広がりやすいという特徴があります。
実運用を行うにはスプレッド制限をかけるなど対策が必要です。
マーチンゲールは自己資金を一瞬で失ってしまうリスクがあるので、運用には十分注意してください。

プログラム全文


#property copyright "Copyright(C) 2023, OANDA"
#property link      "https://www.mql5.com"
#property version   "1.00"
#property strict

input int                   MAGICMA = 23198721;                         // マジックナンバー
input double                Lots =0.01;                                 // 1ロット十万通貨単位
input int                   Slippage = 4;                               // エントリー見送りスリッページ
input double                MaxSpread = 5;                              // エントリー見送りスプレッド
input double                TakeProfit = 10.0;                          // 利益確定幅(pips)
input double                LossCut = 20.0;                             // 損切確定幅(pips)
input int                   RSIPeriod=6;                                // 期間
input   ENUM_APPLIED_PRICE  RSIAppliedPrice = PRICE_CLOSE;              // 適用価格
input int                   UpLine = 85;                                // 上の線
input int                   DownLine = 25;                              // 下の線
input int                   TradeTime = 0;                              // トレードを行う時間

//マーチンゲール設定
input int                   NumMartin = 5;                              // マーチンゲールで倍々する最大回数

double dSpread;

int OnInit()
{
   return(INIT_SUCCEEDED);
}
void OnTick()
{
   dSpread = (Ask - Bid) / (Point * 10);
   
   int loseCount = 0;      //負けカウント
   for( int i= OrdersHistoryTotal()-1; i>=0; i-- ){
      if( OrderSelect(i, SELECT_BY_POS, MODE_HISTORY) == true && OrderMagicNumber() == MAGICMA && OrderSymbol() == Symbol() ){
         if( OrderProfit() <= 0 ){
            if(loseCount >= NumMartin)break;
            loseCount++;          
         }
         else{
            break;
         }
      }
   }
   double lot = Lots * MathPow(2, loseCount);
   if(CalculateCurrentOrders()==0 && dSpread < MaxSpread) CheckForOpen(lot); 
   
}
void CheckForOpen(double lot)
{
   int res;
   double RSI = iRSI(Symbol(), 0, RSIPeriod, RSIAppliedPrice, 1);
   if(TradeTime == TimeHour(Time[1]))
   {
      if(RSI < DownLine)
      {
         res=OrderSend(Symbol(), OP_BUY, lot, Ask, Slippage, Bid - LossCut * Point * 10, Ask + TakeProfit * Point * 10,"", MAGICMA, 0, Red);
      }
      if(RSI > UpLine)
      {
         res=OrderSend(Symbol(), OP_SELL, lot, Bid, Slippage, Ask + LossCut * Point * 10,  Bid - TakeProfit * Point * 10, "", MAGICMA, 0, Blue);
      }
   }
}

int CalculateCurrentOrders()
{
   int positions = 0;
   for(int i=0;i<OrdersTotal();i++)
   {
      if(OrderSelect(i,SELECT_BY_POS,MODE_TRADES)==false) break;
      if(OrderSymbol()==Symbol() && OrderMagicNumber()==MAGICMA)
      {
      positions++;
      }
   }
   return positions;
}

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