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FOMCの参加メンバーとは?計11名の特徴を詳しく解説


FOMCメンバー

米金融政策はFOMCにおいて決定されますが、いったい誰が参加するのでしょうか?

FOMC投票権のある参加者は

  • ・FRB理事(通常7人、2023年5月時点では6人)
  • ・ニューヨーク連銀総裁(FOMC副議長です)
  • ・NY以外の11地区連銀総裁のうち4人

合計12名(2023年5月時点では11名)。
この12名の投票により、米国の金融政策は決定されます。

なぜFOMCメンバーの特定が重要かというと、FRB議長がリーダーシップを持って、各メンバーの意見調整を行うとはいえ、タカ派的な考え方を持つメンバーが多くなれば、FOMCの方向性もタカ派方向となりやすく、ハト派的メンバーが多くなれば、FOMCの方向性もハト派に傾くと想定されるからです。

現在の参加者11名は
FRB理事6人

  • ・ジェローム・パウエルFRB議長
  • ・マイケル・バーFRB理事
  • ・ミッチェル・ボウマンFRB理事
  • ・リサ・クックFRB理事
  • ・フィリップ・ジェファーソンFRB理事
  • ・クリストファー・ウォラーFRB理事

NY連銀総裁(FOMC副議長)

  • ・ジョン・ウィリアム ニューヨーク連銀総裁

他の地区連銀総裁

  • ・オースタン・グールスビー シカゴ連銀総裁
  • ・パトリック・ハーカー フィラデルフィア連銀総裁
  • ・ニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁
  • ・ローリー・ローガン ダラス連銀総裁

彼らをタカ派からハト派へと並べると、以下の通りです。

タカ派からハト派へと並べた画像

パウエルFRB議長

             

パウエルFRB議長

パウエル議長は共和党員で、トランプ前大統領によりジャネット・イエレン前FRB議長の後任として指名されました。

トランプ前大統領からハト派的な金融政策運営を託されましたが、政策に不満を持った前大統領から任期中に何度も「解任」のプレッシャーを受けました。
バイデン大統領に再任されましたが、その時にはインフレ抑制が条件だったと言われています。
ハト派的な考えからタカ派へと、状況に合わせて柔軟にスタンスをシフトさせてきたと言えます。
その意味では、政策スタンスは中立的。
2012年にFRB理事となり、FRB議長に選出されるまで、FOMCにおいて反対票を投じたことはありません。

元々、経済学者ではなく、弁護士(ECBラガルド総裁と同じバックグラウンド)。
プライベート・エクイティ・ファンドであるカーライル・グループ共同経営者であり、歴代のFRB議長の中で最も個人資産が多い人物です。

金融政策の決定方法については、カーライル・グループ創業者であるデービット・ルーベンシュタイン氏とのパネルディスカッションで話していますが、FOMC決定プロセスは1週間ほど前からFRB理事と12人の地区連銀総裁と毎晩話し、意見を取りまとめるようです。
パウエル議長のスタイルは、各メンバーの意見を聞き、最後に自分の意見を話すとのことです。
>パウエル議長の動画はこちら

パウエル議長は、タカ派でもハト派でもなく、多くのメンバーの意見を聞きながら、政策調整を行う柔軟性も兼ね備えた、中立派と言えます。

マイケル・バーFRB副議長

             

マイケル・バーFRB副議長

マイケル・バー氏は民主党員で、金融規制担当のFRB副議長。
2023年3月にSVB(シリコンバレー銀行)、シグネチャー銀行が破綻し、ファースト・リパブリック銀行がJPモルガンに救済されましたが、バーFRB副議長は大忙しだったでしょう。
破綻銀行の経営のミスを糾弾すると同時に、FRBも監督を怠ったと素直に認めていました。

2022年7月19日に就任したばかりで、金融政策に関する意見はあまり聞かれません。
イエール大学ロースクールにて法学博士号を取得。
金融規制の専門家です。
FRB副議長は通常FRB議長と意見を統一するので、今後も金融政策に関しては、パウエル議長と同じ意見と考えて良いと思われます。

ミッシェル・ボウマン理事

             

ミッシェル・ボウマン理事

元弁護士。
共和党員。
1996年に博士号を取得。
ボブ・ドール議員のインターンをスタートに米政府内で働き、夫の仕事でロンドン在住後に、ご実家の銀行の取締役、コンプライアンス担当等を務め、2018年11月にトランプ前大統領によりFRB理事に氏名されました。

金融政策に関しての考えは、極めてパウエル議長に近く、あまり違いはないように思われます。
バックグラウンドからも、金融政策と言うよりは、金融法制度の専門家と推察されます。

フィリップ・ジェファーソン理事

             

フィリップ・ジェファーソン理事

経済学者。
2022年1月にバイデン大統領にFRB理事に指名されました。
民主党員。
黒人としては4人目の理事です。
上院では91対7と、民主党のみならず共和党からも大きな支持を得てFRB理事に承認されました。

当初、NEC(国家経済会議)委員長になるためにFRB副議長職を辞したブレイナード氏に代わって、FRB副議長になると報じられました。

連邦準備制度理事会の元リサーチエコノミスト。
考え方は、まだ就任して日が浅いので、十分な情報が伝わってきませんが、これまでチーフエコノミストとしてFRB議長の判断を支えてきたという経歴からすると、中立的な考え方と思われます。
経済への知見の高さを考えると、今後注目していきたい理事の一人です。

リサ・クック理事

             

リサ・クック理事

ジェファーソン理事と同じタイミングでFRB理事に就任。
経済学者。
民主党員。
FRB理事で初めての有色人種女性です。
研究の範囲は広く、マクロ経済学と経済史の交差する部分やロシア経済の権威など。

就任したばかりなので、これまでの発言をまとめてもタカ派ハト派のレッテルを貼るにはまだ早そうです。

クリストファー・ウォラー理事

             

クリストファー・ウォラー理事

元来ハト派でしたが、この1-2年、積極的なタカ派発言で有名。
ブラード・セントルイス連銀総裁と共に、FOMCのタカ派シフトを主導してきました。
経済学者であり、専門は貨幣理論、政治経済学、マクロ経済学。
共和党員。
トランプ大統領の指名によりFRB理事に就任。

FRB理事になる前は、セントルイス連邦銀行リサーチ・ディレクター。
同じセントルイス連銀なので、ブラード総裁と同じ考え方をしているのでしょう。
今後も、ウォーラー理事とブラード総裁の発言は重要視すべきと思います。

ジョン・ウイリアムズNY連銀総裁

             

ジョン・ウイリアムズNY連銀総裁

NY連銀総裁は、FOMCにおいて副議長です。
ウイリアムズNY連銀総裁は、2018年に前任のダッドリー総裁から職を引き継ぎました。
その前は、サンフランシスコ連銀総裁。
サンフランシスコ総裁になる前は、サンフランシスコ連銀リサーチ・ダイレクターとして、その当時のイエレン・サンフランシスコ総裁を支えました。
経済学博士。

彼も元々はハト派でしたが、インフレ率の上昇を前に、インフレファイターになっています。
パウエル議長をサポートする立場なので、考え方は近いといえます。

オースタン・グールスビー シカゴ連銀総裁

             

オースタン・グールスビー シカゴ連銀総裁

経済学者。
民主党員。
2023年1月9日、前任のエバンス氏からシカゴ連銀総裁のポジションを引き継ぎました。
オバマ政権下で上級政策アドバイザー、リーマン・ショック後の大統領経済回復諮問委員会ではポール・ボルカー氏のチーフエコノミスト兼スタッフ。
イエール大学で経済学修士、MITにて博士号。

経済学者にとどまらず、テレビ司会者、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、コメディ番組等にも頻繁にゲスト出演。
全米スピーチ・ディベート協会における即興スピーチコンテストチャンピオンと多才です。

シカゴ連銀総裁に就任したばかりなのですが、SVB、シグネチャー銀行の破綻を受けて、「FRBは利上げすべきでない」とCNBCで述べており、「ハト派(金融システム安定重視派)」。
今後FOMC内で大きな存在となるでしょう。
個人的には、今後最も注目したい人物です。

パトリック・ハーカー フィラデルフィア連銀総裁

             

パトリック・ハーカー フィラデルフィア連銀総裁

2015年7月以来、フィラデルフィア連銀総裁。
それ以前は、デラウェア大学学長、ペンシルバニア大学ウォートン・スクール学部長。

従来より、クリーブランド連銀メスター総裁と並びタカ派として知られた存在。
タカ派スタンスは崩れないでしょう。

ニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁

             

ニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁

2016年1月より現職。
ウォートン・スクールにてMBA取得後、ゴールドマン・サックスに勤務。
財務長官となったヘンリー・ポールソン氏に補佐官として雇われ、リーマン・ショックへの対応で活躍。
その後、PIMCOで勤務し、カリフォルニア州知事選に出馬するも敗れ、こうした経緯を経てミネアポリス連銀総裁となっています。

コロナ危機前まで、極めつけのハト派として知られ、SEP(経済予測概要)での「ドット・プロット」では、いつも唯一人、常識はずれに低いところにドットを入れる人で有名になりました。

しかし、インフレ率上昇の前にタカ派に転じることを決意。
今では(ブラード氏やウォーラー氏同様)FOMC内タカ派の論客となっています。

ローリー・ローガン ダラス連銀総裁

             

ローリー・ローガン ダラス連銀総裁

2022年8月より現職。
就任して時間が間もないので、ローガン氏がどのような政策を支持しているのか、今一つ不明です。

その前はNY連銀にてエグゼクティブ・バイスプレジデントとして働いていたので、ウイリアムズ現NY連銀総裁に近い考え方と思われます。

投票権のない地区連銀総裁

今年投票権のない地区連銀総裁は7人いますが、持ち回りでおおよそ3年に一回投票権を得ます。
NYを除く、11の地区連銀が地域ごとに4つのグループに別れ、順繰りに投票権が回ってきます。

投票権

2024年、投票権を持つ地区連銀

  • ・トーマス・バーキン リッチモンド連銀総裁
  • ・ラファエル・ボスティック アトランタ連銀総裁
  • ・メアリー・デイリー サンフランシスコ連銀総裁
  • ・ロレッタ・メスター クリーブランド連銀総裁

2025年、投票権を持つ地区連銀

  • ・オースタン・グールスビー シカゴ連銀総裁
  • ・スーザン・コリンズ ボストン連銀総裁
  • ・ジェームズ・ブラード セントルイス連銀総裁
  • ・カンザスシティ連銀総裁(ジョージ前総裁の後任が正式には決まっていません)

2026年、投票権を持つ地区連銀

  • ・ロレッタ・メスター クリーブランド連銀総裁
  • ・パトリック・ハーカー フィラデルフィア連銀総裁
  • ・ローリー・ローガン ダラス連銀総裁
  • ・ニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁

トーマス・バーキン リッチモンド連銀総裁

             

トーマス・バーキン リッチモンド連銀総裁

2018年1月に現職。
ハーバードロースクールにてJD(法務博士)、ハーバードビジネススクールにてMBA取得後、マッキンゼーに30年勤務。

リッチモンド連銀総裁になって4年ですが、主流派の意見に沿った意見が多く、驚くような発言をしたところを見たことはありません。
バックグラウンド通り、ソツのないビジネスマン。
彼の意見を注視する必要は、今のところ特にないように見えます。

ラファエル・ボスティック アトランタ連銀総裁

             

ラファエル・ボスティック アトランタ連銀総裁

2017年6月より現職。
スタンフォード大学にて経済学博士号。
1995-2001年FRBエコノミスト。
その後、米住宅都市開発省、南カリフォルニア大学ソルプライス公共政策大学院学科長。
一時はバイデン政権の財務長官候補。
アフリカ系アメリカ人初の地区連銀トップ。
民主党員。

以前は、ややハト派的なスタンスでしたが、インフレ率の上昇に沿ってタカ派スタンスになりました。
ただ今年の5月に「0.5%以上の利上げは必要ない」と発言しましたが、その後FRBは0.75%利上げにシフトしたように、気持ちハト派スタンスに見えます。

ジェームズ・ブラード セントルイス連銀総裁

             

ジェームズ・ブラード セントルイス連銀総裁

2008年よりセントルイス連銀総裁。
インディアナ大学で経済学博士号。
セントルイス連銀にエコノミストとして入行、総裁になる前はセントルイス連銀金融分析担当副総裁兼調査副部長。

かつてはハト派の代表格。
米国が「日本型デフレに巻き込まれる」危険性があると2010年に指摘していました。
しかし、コロナ後のインフレに対しては、いち早く利上げを主張。
FRBタカ派化の先頭に立ちました。

2011年、ブルームバーグはブラード総裁を「(FOMCの)全委員会がどこに向かっているかを示す指標」である「ベルウェザー・パーソン」と名付けました。
2014年には世界で7番目に影響力のある経済学者に選ばれましたが、その高い評価は今も続いています。

経済予測の精度の高さは驚くほどであり、今後もFOMC内のオピニオンリーダーであり続けると思われます。
投票権は2025年までありませんが、最も発言を重要視すべきFOMCメンバーです。

ロレッタ・メスター クリーブランド連銀総裁

             

ロレッタ・メスター クリーブランド連銀総裁

2014年6月より現職。
コロンビア大学で数学と経済学の学士号、プリンストン大学にて経済学修士・博士号。

従来、タカ派FOMCメンバーといえば、フィラデルフィア連銀ハーカーかクリーブランド・メスター総裁でした。
いつもSEPのドット・プロットの一番高いところに二人はいると想定されていました。

デフレが問題だった時には、ハーカー総裁も、メスター総裁も、なんだか現実からずれているというイメージだったのですが、今はしっくりきます。
むしろ、ブラード総裁の方が、今はよりタカ派に見えます。
タカ派スタンスは今後も変わらないでしょう。

メアリー・デイリー サンフランシスコ連銀総裁

             

メアリー・デイリー サンフランシスコ連銀総裁

2018年10月より現職。
苦学して経済学博士号を取得後、サンフランシスコ連銀にエコノミストとして入行、ジャネット・イエレンを師と仰ぐ。

専門はマクロ経済学と労働経済学。
イエレン現財務長官、ウイリアムズNY連銀総裁の元でエコノミストとしてのキャリアを積み重ねてきたので、基本的にはハト派スタンスでしたが、インフレ率上昇に対応しタカ派的スタンスにシフトし、今はFOMC内の主流派路線と言えそうです。

メディア対応での、曖昧な表現ではなく、スッキリとした説明は好感が持てます。
しかし、SVB、そしてファースト・リパブリック銀行がサンフランシスコ連銀管轄内だったことから、銀行監督の手落ちを指摘されているはず。
責任を取る形で退任することがあれば残念です。

スーザン・コリンズ ボストン連銀総裁

             

スーザン・コリンズ ボストン連銀総裁

2022年7月現職に。
地区連銀を率いる初のアフリカ系アメリカ人女性、有色人種女性。
ジャマイカ系米国帰化人。
1980年にハーバード経済学部を首席で卒業、1984年にMITで経済学博士号取得。

就任されてから日が浅いので、どのような考えなのか、はっきりとはわかりませんが、メディアでの発言を見ると、わりとFOMC内の正統派ではないかと思います。
パウエル議長に意見が近いです。

エスター・ジョージ カンザスシティ連銀総裁(後任 ケリー・ダバート氏)

             

エスター・ジョージ カンザスシティ連銀総裁(後任 ケリー・ダバート氏)

2011年から2023年までカンザスシティ総裁。
定年により2023年1月31日に退任しました。

2月1日より、ケリー・ダバート(Kelly Dubbert)氏が一時的にCEOの地位についていますが、正式に決まったわけではありません。

18人も理事がいるので、全員を把握するのは難しいと思います。
次の焦点は、ブレイナード氏のあと、誰がFRB副議長になるかでしょう。
下馬評ではジェファーソン氏ですが、グールズビー氏が副議長となれば、FOMC内の議論がかなりハト派化にシフトしそうです。

パウエル議長、ウイリアムズNY連銀総裁といった「主流派」の発言に注意しつつも、FOMC内の方向性はブラード・セントルイス連銀総裁、ウォラー理事に加え、ジェファーソン理事、グールズビー・シカゴ連銀総裁といった新しいメンバーの発言にも左右されていくと思います。
今後、彼らの発言を注視していきたいものです。

記事執筆者:志摩力男(しまりきお)

慶應義塾大学経済学部卒。
ゴールドマン・サックス、ドイツ証券などの大手金融機関でプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任。
その後、香港でマクロヘッジファンドマネージャーを務める。
独立後も世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍中。


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