投資苑 | FX/CFD初級者〜中級者向け書籍
お勧めポイント
サンプルを見る
投資苑
心理・戦略・資金管理
トレードを上達させたい全ての人におすすめ
精神分析医でもあるアレキサンダー・エルダー博士が執筆した書籍で世界中で読まれている有名な書籍です。
相場でうまく利益を上げることができず悩んでいる方はもちろん、これから相場と対峙しようとする初心者の方にもおすすめな書籍です。
投資家個人の心理に始まり、相場全体の心理、テクニカル分析の基本、リスクマネジメントなどトレードに必要なことが全てこの一冊に詰まっています。
個人の心理
個人トレーダーが陥り易い心理状態を具体例を挙げて説明しています。
つい抱いてしまう幻想やトレード依存症など相場で失敗してしまう典型例を中心に紹介されています。
トレードを始めた頃に調子よく勝ってしまったばかりに自信過剰になってしまい、その後口座資産を全て失ってしまうといった事例は少なくありません。特にトレードを始めたばかりの人はこの部分をしっかりと理解することができれば、初心者が陥り易い失敗に陥る可能性が軽減すると思います。
集団の心理学
相場参加者のみならず、相場を取り巻く人間の心理も合わせ分析することで、普通に相場と対峙しているだけでは見えなかったものが見えてくることもあります。本書では、様々な相場関係者の立場や思惑などを例に挙げ、初心者の方にも容易に理解できるような内容になっています。
情報が錯綜するマーケットでトレーダーは情報をどのように活かすかが見えてきます。
テクニカル分析
本書では古典的分析としてサポート、レジスタンス、トレンドラインの引き方、ヘッドアンドショルダーなどのフォーメーション分析などの基本的なテクニカル分析や移動平均線やMACD、ウィリアムズ%Rなどのテクニカル指標などの分析方法を多数の画像を使用し丁寧に説明しています。
またエルダー線(Bulls Power,Bears Power)や勢力指数(Force Index)といったオリジナルの分析手法も紹介しています。
ちなみに本書で紹介されている、アレキサンダー・エルダー氏によって開発されたエルダー線(Bulls Power,Bears Power)や勢力指数(Force Index)はMT4のデフォルトのインジケーターとなっており、OANDAのMT4で自由に使うことができます。
マーケット心理の指標
マーケット心理の指標の章では大衆心理と相場の関係をうまく説明しています。市場のコンセンサスが一方向に傾いた時にはトレンド転換期が近づいているというのは相場の性質でもあります。昔、為替相場では「〇〇新聞に乗ったらそのトレンドは終わり」と言われていたこともあるそうです。
また、以前紹介した「フルタイムトレーダー」では経済の知識のあまりない母親が知ったらそのトレンドは終わりというような話がありましたが、皆が同じことを言い出した場合は注意が必要ということです。
OANDAのオープンポジションも大衆のポジションを確認する上では有効な情報となります。OANDAの顧客のポジションの偏りと反対方向に相場が進んでいくことが多いというのも、このマーケット心理の考え方と共通するものがあります。
トレーディングシステム
トレーディングシステムに関しては3段階のスクリーントレーディングシステムということで第1のスクリーンとして「マーケットの潮流」、第2のスクリーンとして「マーケットの大波」、第3のスクリーンとして「日中のブレイクアウト」と定義し、長期、中期、短期の3つの時間軸を用いて売買の判断を行う手法を紹介しているほか、パラボリックを使ったトレーディングシステムやチャネルを使ったトレーディングシステムを具体的な例を挙げて紹介しており、初心者の方から中級者の方に参考になると思います。
リスクマネジメント
リスクマネジメントの基本を様々な例を挙げて紹介しています。損切りできない初心者の心理状態や、マネーマネジメントに関してページを割いて説明しています。
初心者を抜け出す第一歩は損切りができるようになることです。なぜ損切りができないかを理解することで損切りの際のストレスが大きく後退すると思います。
また、マネーマネジメントは売買手法よりも大事と言っても過言ではありません。マネーマネジメントをしっかりと行うことは負けにくいトレーダーになる近道です。
投資苑
心理・戦略・資金管理
日本語版への序文/アレキサンダー・エルダー博士
Trading for A Livingの日本語版出版にあたり、日本の読者に本書の紹介をするこ とを嬉しく思います。トレーディングに関する書物の世界では、日本のものが世界最 古であり、そのような伝統の一部に本書が加わることを光栄に感じます。本書の執筆にはほぼ4年の歳月を要しました。アメリカで最初に出版の後、それは世界中のトレーダーの間で徐々に支持されるようになり、やがて世界中で最も人気があるトレーディングの解説書になりました。現在までに、ドイツ語、ポーランド語、 オランダ語、ロシア語、中国語、フランス語、韓国語に翻訳されており、そして今回、日本語にも訳されることになりました。これほど、世界的に読者の支持を得ることになった訳は、トレーディングがわれわれ人間の根源的な性質に根差していることを本書が明らかにしているからであると思われます。トレーディングは歓喜、恐怖、欲望、希望、高揚、絶望やその他の強烈な感情を人々にもたらします。そこで、トレーディングの心理に関するいくつかの重要なルールを、精神分析医およびトレーダーとしての私の知識と経験に基づいて、本書の中でみなさんに紹介していきたいと思います。それと共に、テクニカル分析とマネー・マネジメントの重要なコンセプトもみなさんにお教えします。マーケットで成功するために、あなたはライバル以上に 周到な準備をしておく必要があるのです。
さて、ここで筆者と日本にかかわるひとつのエピソードをみなさんに披露したいと思います。それは本書の執筆に先立つ数カ月前のことで、記憶に残るある出来事に遭遇しました。それは太平洋上高度1万メートルのニューヨークから東京に向かう機内においてのことでした。そのとき私には、相場の天井がもうすぐそこまできていると、大声で私に向かって警告を発しているのが聞こえたのです。 その話を続ける前に、ところで、みなさんはケネディ大統領の父親であるジョセ フ・ケネディが1929年の株式大暴落の際に株を空売りして、財を成した話をご存じでしょうか。当時、彼は株式市場は強気相場が過熱して、買われ過ぎの状態になっていると感じていました。そんなある日、彼は路上で靴を磨いてもらっていたときに、その靴磨き屋からある株に関する「耳寄りな情報」を聞かされたのです! この抜け目のない投機家は、これこそ相場の天井を告げるシグナルだと信じて、株式市場で大規模な空売りのポジションを作り始めました。靴磨き屋までが株で投機を始めるころには、マーケットは極端に買われ過ぎており、下落するのは時間の問題だったの です。
話を元に戻すと、1989年のその日、私はあるセミナーに出席するために東京へ向かって機上の人となっていました。ジャンボ機の2階席で、私は搭乗していたスチュワードの1人と仲良くなりました。彼は50歳くらいの日本人で、戦後の貧しかった子供時代から今日、航空会社のビジネスクラスのスチュワードにまで出世することができたことを大変誇りにしていると語ってくれました。他の乗客が眠っている間、われわれは階段の近くでおしゃべりを続けました。そこで彼は、昨年、株式投資により自分の給料以上の金を儲けることができたと幸せそうに私に話してくれたのです。当時、日本の株式市場は高騰しており、経済規模において米国よりはるかに小さいにもかかわらず、時価総額では米国株式市場を凌駕するまでになっていました。私が出会ったスチュワードは、株でボロ儲けしたお金で太平洋のある島に別荘を建てて、そこで早めの引退生活を楽しむべく、既にその準備に入っているのだと話してくれました。そして彼の引退計画は、まだ大半は未実現で評価益に過ぎない株の儲けで賄われることになっているのでした。そんな順風満帆な彼に も、ひとつだけ不満がありました。それは、同僚のスチュワーデスたちが自分以上に株で儲けており、家族を養わねばならない自分とは違って、彼女たちは親と同居しているの で、もっとたくさん株にお金を回すことできるのだということでした。
この話を聞いていて、1929年のあのジョセフ・ケネディに靴磨き屋がしたのと同様に、スチュワードが私に売りシグナルを与えてくれているのだと、即座にひらめきました。結果はまさにその通りの事態となりました。その数カ月後に日本の株式市場は暴落したのです。ある日、私はニューヨークの自分のオフィスに夜になってから再び戻ってきて、モニターをオンにして、日経先物が200ポイント刻みで下落していくのを見入っていたものです。
ギャンブラーと知的なトレーダーの間には大きな違いがあります。真剣なトレーダーは論理的で、現実的な計画を立て、マーケットをよく研究し、有効であると証明された方法を使い、決して運に頼ったりすることはしません。知的なトレーダーは何を、いつ売り買いするかを選別する方法とリスクを軽減するルールを身につけています。彼は、トレーディングの心理が大変重要なファクターであることをよく理解しています。なぜなら感情や態度がトレーダーとしての私たちの成否に直接的な影響を及ぼすからです。トレーディングをしていると、群衆心理の中に引き込まれそうになる場面に私たちはしばしば遭遇し、またトレーディングそのものが私たちに強烈な感情を引き起こします。しかし、成功するためには、あなたは集団から独立して規律を守って行動しなければなりません。
2000年の4月に、著者は本書の訳者である福井強氏に会える喜びにあずかりました。彼は、私に会うためにニューヨークにやって来て、大変有意義で愉快な夕べを共に過ごすことができました。われわれは本書のテーマについて語り合いました。私は、これまで多くの本書の訳者に会ってきましたが、彼はその中でも最も熱心で、本書の翻訳に使命感を持った人の1人であると感じました。会って話しているうちに、私と同じように、彼も 2つの世界を持つ人間であることが分かりました。つまり、日本で生まれてそこで教育を受け、米国に住んでそこで仕事をしているという点にお いてです。彼の質の高い翻訳により、本書をみなさんに楽しんでいただけるけること を希望します。
この本を開くことにより、あなたはトレーディングへの旅路につくのです。そのコンセプトをよく研究して、ご自分のデータでテストしてみてください。読者の皆さん がより知識のある、成功するトレーダーとなるために、本書が大いに役立つことを願ってやみません。
みなさんの成功を祈ります。
2000年7月 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー博士
イントロダクション
1.トレーディング――最後のフロンティア
あなたは自由になることができます。あなたは世界中のどこででも暮らせ、仕事をすることが可能です。あなたは毎日の雑事に一切、煩わされることなく、だれに対しても返答する必要もないのです。
これが成功したトレーダーの生活です。
多くの人々がこのような生活を切望しますが、成功できるのはごく少数の人たちです。アマチュアは相場情報を伝えるコンピューターの端末を見て、自分の目の前に何百万ドルものおカネが輝いているのを見ます。彼はそのおカネをつかもうと手を伸ばしますが、結局、相場に負けてしまいます。彼は、さらに手を伸ばそうとしますが、今度はもっと損してしまいます。トレーダーが損をするのは、まずトレーディングというゲーム自体が困難なものであるということ、第二に、トレーダーの勉強不足からくる無知によるもの、第三に、規律を欠くトレーディングをするためです。もしこれらのいずれかの理由であなたが現在お困りであれば、本書はまさにあなたのような方のために書かれたのです。
どのようにして私はトレードを始めたか
1976年の夏、私はアメリカ東海岸のニューヨークから西海岸のカリフォルニアを目指して、車を走らせていました。中古の大衆車ダッジのトランクに数冊の心理学の本(当時、私は精神科の研修医1年目でした)と、歴史の本、エンゲルの『株の買い方』なるペーパーバックを投げこんで目的地に向かって出発したのでした。当時の私は、弁護士の友人から拝借したページの角に折り目がついた1冊のペーパーバックが後の自分の人生をやがて大きく変えるであろうなどとは知る由もありませんでした(ところで本筋からそれますが、その友人の弁護士は、偶然にも完璧な逆ゴールデン・タッチの持ち主で、彼が手をつけた投資はあまねく失敗して、損する破目に陥っていました)。
私はこのアメリカ横断の旅先のキャンプ場で、エンゲルの株の本を読み続け、カリフォルニアの太平洋に面したラホーヤの海岸でそれを読み終えたのです。株式市場については全くの門外漢で、頭を使ってお金を儲けるというアイデアが私の注意を引きました。かつての米国大統領の言葉を借りれば、私は「悪魔の帝国」と呼ばれたソビエト連邦で育ちました。ソビエト・システムを憎悪して、国外脱出を夢見ましたが、一般市民が海外に出ることは当時、禁じられていました。私は16歳の若さでで大学に進み、22歳で医学部を卒業して、研修医としての期間を全うしました。それから、船医の職に就いたのです。こうして、今まさに自由になれるチャンスがとうとう巡ってきたのです。私は、コートジボアールの首都アビジャンに停泊中のソビエト船から逃亡を企てました。
同僚の船乗りたちの追跡を振り切り、このアフリカの港町の混み合った埃っぽい通りを必死の思いで走り抜け、なんとかアメリカ大使館にたどり着きました。大使館員たちの不手際から危うくソ連に強制送還されそうになりましたが、頑強にそれを拒んだので、彼らはひとまず私を「安全な家」にかくまい、飛行機に乗せてニューヨークまで送り届けてくれました。こうして、私は1974年の2月に、ニューヨークのケネディ国際空港に夏服の格好のまま、アフリカから着の身着のままでたどり着いたのでした。そしてポケットの中にはわずかに25ドルがあるのみでした。当時、英語は少しは話せましたが、この国の(資本主義の)精神については何も知りませんでした。
共産主義国からやってきた当時の私には、株や債券、先物、オプションなどのことは理解の範囲を超えており、財布の中のドル紙幣を見るだけで、時折不安な感情が心をよぎったものです。というのも、故国ソ連では、ひとつかみのドル紙幣の所有が露見すれば、それだけで軽く3年はシベリア流刑暮らしの目に遭うことになったからです。
このようなバックグラウンドの私に、『株の買い方』は全く新鮮な世界を私の前に開いて見せてくれたのです。ニューヨークに舞い戻ると、早速私は最初の株を購入しました。それはキンダーケアなる会社の株でした。それ以来、私は、熱心にマーケットについて勉強し、株やオプションに投資し、いまや主に先物を中心にトレードするまでになりました。
しかし、米国亡命後の私のプロフェッショナルとしてのキャリアはトレーディングとは別の世界で始まりました。米国の有名大学のひとつであるコロンビア大学の大学病院で精神科の研修医としての研修期間を完了した後、ニューヨーク精神分析インスティチュートでさらに学び、米国における最大発行部数を誇る精神分析専門の新聞のための書評編集者の職に就いたのです。今日、私はトレーディングに忙しく、カーネギー・ホールの向かいにある精神分析クリニックには、マーケットが引けた後の午後に、週数回だけ顔を出すようになってしまいました。私は、開業医として精神分析を行うことが好きなのですが、現在では、自分の時間の大半をマーケットと共に過ごしています。
トレードすることを学ぶことは長い旅路でした。その間、儲かったときは舞い上がった気分になり、反対に、損をして落ち込んだりしたものです。前進する過程で、あるいはただグルグル一カ所を巡っていただけかもしれませんが、繰り返し壁にぶち当たっては、自己資金を失いました。そのたびに、病院の仕事に専念して態勢を立て直し、関連の文献を読み漁り、思考し、より多くのテストを行って、再度トレーディングに挑戦したものでした。
私のトレーディングはゆっくりとではあるものの、進歩を遂げました。しかし、本当の意味で壁を打ち破ることができたのは、勝利のカギは自分の頭の中にあり、決してコンピューターの中にあるのではないということが分かったときだったのです。精神分析はトレーディングに関してある洞察を与えてくれました。そして、それを私は読者であるみなさんと本書の中で分かち合いたいと思います。
あなたは本当に成功したいと思っているのでしょうか?
過去17年間、私にはその細君が肥満に悩む友人がいました。彼女はエレガントな装いをする女性で、彼女のことを知って以来、ずっとダイエットをしていました。彼女曰く、痩せたいので、人前ではケーキやポテトは口にしないとのことでした。しかし、私が彼女の家の台所に足を踏み入れたとき、彼女はばかでかいフォークを持ってよくそこにいるのを目撃しました。彼女は痩せてスリムになりたいと口では言っているのですが、彼女に会ったころと同じように、今日も彼女は太ったままなのです。これは一体どうしたわけなのでしょう。
つまり、彼女にとって、食べるという短期的な享楽が、減量がもたらす長期的な快適さと健康上の恩恵に勝っていたのです。友人の細君は成功したいとは口では言うものの、ギャンブルのもたらす短期的なスリルを味わうためにマーケットで衝動的なトレードを繰り返している実に多くのトレーダーたちのことを思い出させるのです。
人々は自分のことを偽って、自分自身とイタチごっこをしているのです。他人にウソをつくことは十分に悪いことですが、自分自身を偽ることはお先真っ暗であるといえます。書店にはダイエットの本が山ほどあるのに、巷では肥満体の人々であふれかえっているのです(これは特に肥満大国アメリカに関しての記述です=訳者注)。
本書は、いかにマーケットを分析し、いかにそれをトレードし、そしてどのようにあなた自身の心理に対処したらよいかを、あなたに教えます。
2.トレーディングのカギは心理である
あなたは、自分のトレードをファンダメンタル分析またはテクニカル分析に基づいて行うことができます。あるいは、あなたは経済や政治のトレンドに関する「カン」を頼りにトレードしたり、「インサイダー情報」に基づいたり、それとも、単純に自分の希望のみに基づいてトレードするかもしれません。あなたが最後にトレードの注文を出したときに、どのように感じたかを思い出してください。あなたはポジションを持ちたくてウズウズしていましたか、それとも損するのが怖くて仕方がなかったでしょうか? 注文をブローカーに出す際に、電話の受話器を取るべきか、取らぬべきか、あなたは逡巡しましたか? ポジションを手仕舞ったときに、あなたの気分は高揚していましたか、それとも損して屈辱を受けたような気持ちでしたか? 数千のトレーダーのこうした感情が集まって巨大な心理の波となり、それが実際に、マーケットを動かしているのです。
ジェット・コースターから飛び降りて
大多数のトレーダーたちは良いトレードを探そうとして自分の時間を費やします。そして、トレードに入るやいなや、彼らはコントロールを失い、苦痛にもがくか、喜びのためにニンマリするかのいずれかの精神状態に陥ります。彼らは、まさに感情のジェット・コースターに乗っていて、トレーディングに勝利するための必須の要素である自分の感情を制御することを見失っているのです。自分のことを管理できないということは、自己資金に対するお粗末なマネー・マネジメントにつながります。
もしあなたの精神がマーケットの動きに合っていないか、あるいは、もしあなたがマーケットの群衆心理の変化に注意を払わない場合、あなたがトレーディングでお金を儲けられる見込みはゼロであると断言できます。すべての成功しているプロのトレーダーたちはトレーディングにおける心理学のとてつもない重要性について熟知しています。これに対し、すべてで損を出すアマチュア・トレーダーたちはそれを無視しているのです。
私が精神科医であることを知っている友人や顧客から、そのことがトレーダーとしての自分に役立っているかどうかをよく質問されます。答えはイエスです。すなわち、良い精神分析と良いトレーディングには、相通ずる重要なひとつの原則が存在します。すなわち、どちらも現実に焦点を当てて、世界を先入観なしに、ありのままの形でとらえるという原則です。健康な精神生活を送るためには、あなたの目を見開いて生きる必要があるのです。同様に、良いトレーダーになるためには、あなたは自分の目を見開いてトレードし、真のトレンドや相場の転換を理解し、後悔や希望的観測に時間とエネルギーを浪費しないようにしなければならないのです。
トレーディングはオトコのためのゲームか?
ブローカーのデータによれば、大半のトレーダーの性別は男性であるそうです。私自身のトレーダー向けの教育を目的とする会社であるフィナンシャル・トレーディング・セミナー社の顧客ファイルもおよそ95%のトレーダーは男性であるので、このことを裏付けています。この理由のため、私は本書の例え話や例題において登場人物に男性形の主語(「彼」)を用います。もちろん、これは成功した女性トレーダーたちに対して敬意を払わないということでは全くありませんので、念のため。
銀行やトレーディング会社などの機関投資家のトレーダーにおける女性の比率は、個人トレーダーより高いといえます。しかし、私の経験から言わせていただけば、女性がトレーダーとしてトレーディングで成功することは、男性に比べるとあまり多くないといえるでしょう。このことから、この男性優位のトレーディングの世界で女性が成功していくためには、何か例外的な推進力が必要であることは確かなようです。
トレーディングはスカイ・ダイビングやロック・クライミングやスキューバ・ダイビングのようなスリルがあり、危険なスポーツに似ています。それらのスポーツは一般的に男性を魅了します。例えば、女性ハング・グライダー愛好家は全体の1%未満しかいません。 見方によっては、われわれが住む管理社会において、男性は危険なスポーツに引き寄せられるのかもしれません。ミシガン大学のデビッド・クライン博士が『ニューヨーク・タイムズ』に述べたコメントによれば、「仕事がより退屈で面白味のないものになればなるほど、われわれは達成感を求めてレクリエーションに向かいます。仕事がより安全で、面白味のないものになればなるほど、われわれ精神科医の立場から、個人の差が目立ち、個人の裁量が許され、冒険や興奮が役割を担うレクリエーションをすることを、人々に強く勧めています」とのことです。
これらのスポーツは強烈な快感を与えてくれますが、多くの参加者たちがそれに伴う危険を無視して、思慮なく無茶をする結果、危険なスポーツというレッテルを張られてしまっています。ハング・グライダーによる事故を調査したオレゴンの整形外科医であるジョン・トング博士によれば、より経験を積んだパイロットの方が事故で死亡する確率が高くなるということです。これは、経験者になればなるほど、より大きなリスクを取りたがるからです。危険を伴うスポーツを楽しもうという人は安全ルールに従わなければいけません。リスクを自分の注意によって減らすことができたとき、さらなる達成感とコントロールが得られるのです。同じことがトレーディングについても言えます。
すなわち、それを真剣な知的な追求として取り扱う場合に限って、あなたはトレーディングに成功することが可能となるのです。感情的なトレーディングは命取りになります。成功を確かなものにする手助けとして、防衛的なマネー・マネジメントを実践することです。良いトレーダーは、彼の自己資金を、プロのスキューバ・ダイバーが自分の酸素ボンベの酸素の残量をウオッチするように、注意深く見守るのです。
本書の構成
成功するトレーディングは3本の柱によって成り立っています。すなわち、それは、トレーディングの心理学、マーケット分析およびトレーディング・システム、そして最後にマネー・マネジメントです。本書は、あなたがこれからこの3つの分野を探究する助けとなるでしょう。
本書の最初の章は、あなたに、トレーダーとして自分の感情をコントロールするための新しいアプローチを呈示します。私は、この方法を、精神分析を実践するかたわら、発見しました。それは私のトレーディングを飛躍的に向上させたので、あなたにも必ず役立つはずです。
第2章は、マーケットにおける群衆心理について説明します。集団の行動は、個人の行動に比べて、より原始的です。もしあなたが群衆の行動の仕方を理解していれば、あなたは彼らの気分のスイングを利用して儲けることができ、彼らの感情によって自分を見失うことを回避できるのです。
本書の第3章では、いかにチャート・パターンが群衆の行動を示すかについて説明します。古典的なテクニカル分析は、選挙の世論調査と同様に応用心理学であると考えることができます。トレンドライン、窓(ギャップ)、その他のチャート・パターンは実のところ、群衆の行動を反映しているのです。
第4章は、コンピューターによるテクニカル分析の方法について教えます。テクニカル指標は古典的テクニカル分析に比べて、集団心理により深い洞察を与えてくれます。トレンド追随型の指標はマーケットのトレンドを見つけるのに役立ち、一方、オシレーターはトレンドが反転する準備に入ったことを示唆します。
出来高と建玉もまた群衆の行動を反映します。第5章ではこれらに注目すると共に、マーケットにおける時間の経過についても触れています。群衆は非常に短期間しか、その注意が及ばないため、価格の変化を時間に関連させることができるトレーダーは競争をより有利に進めることが可能となるのです。
第6章は、株式市場を分析する最善のテクニックに焦点を当てています。それらは、株式インデックス先物およびオプション・トレーダーに特に有用であるといえます。
投資家やトレーダーたちのオピニオンを測るセンチメント指標は第7章で概観されています。群衆は、トレンドに追随するので、価格が動き出したときはそれに合流するのが得策です。センチメント指標は、群衆からいつ離れればよいかを示してくれます。つまり、群衆が重要な相場の反転を見過ごす以前に、指標の助けを受けて、あなたは群衆と袂を分かつのです。
第8章では、私が開発した2つの自家製の指標を紹介します。エルダー線と呼ばれる指標は、価格データに基づくもので、マーケットの水面下におけるブルとベアの力関係を計測するものです。勢力指数(Force Index)と呼ばれる指標は、価格と出来高の両方を計測します。それは優勢であるマーケットの集団(買い手または売り手)が力をさらに付けているのか、または弱体化しつつあるのかを教えてくれます。
第9章では、いくつかのトレーディング・システムを提示します。3段階スクリーン・トレーディング・システムは私自身が開発した手法です。私はこのシステムを実際、過去何年間も使用してきました。これとその他のトレーディング・システムのことを学ぶことにより、あなたはどのようにトレードを選択し、注文執行および手仕舞いすべきポイントの見つけ方を具体的に習得することができます。
第10章では、マネー・マネジメントに焦点を当てます。成功するトレーディングにとって必須のこの一面は大半のアマチュアたちから無視されています。あなたは素晴らしいトレーディング・システムを持つことができますが、もしあなたのマネー・マネジメントが悪ければ、たった数回の連続の負けによって、あなたの自己資金は消滅してしまうでしょう。適切なマネー・マネジメントを欠いたトレーディングは裸足で灼熱の砂漠を横断しようとするのと同じようなものです。
あなたはこれから本書と共に多くの時間を過ごそうとしています。本書の中であなたにとって価値のあるように見えるアイデアを見いだしたら、それらをあなた自身のこれまでの経験という最も重要な試験管の中でテストしてみてください。つまり、あなたは本書に書かれている知識を、それが本当かどうか試してみることによってのみ、自分のものにできるのです。
3.あなたに不利なオッズ
なぜ大半のトレーダーたちは損をして、やがマーケットから消え失せる運命にあるのでしょうか? 感情的なトレーディングと思慮を欠いたトレーディングがその二大要因ですが、実は、そこにもうひとつ理由があるのです。すなわち、マーケットというものは、そもそも大半のトレーダーたちが損するように設計されているのです。
トレーディング業界は、コミッション(売買手数料)とスリッページ(売買執行を行う際に不利に働く誤差)の2つによって、トレーダーの命を奪うのです。大抵のトレーダーはこのことを信じようとしません。それは、中世の農民たちが微細で目に見えないコレラ菌が彼らの命を奪うことができることを理解できなかった話をまさに彷彿とさせます。もしあなたがスリッページを無視し、高いコミッションを請求するブローカーを通じて取引するとしたら、あなたはまるでコレラ菌に汚染された共同の井戸からくんだ水を飲むようなものなのです。
あなたはコミッションを、注文を出すときと、手仕舞うときの両方で支払わされます。スリッページは、あなたが注文を出したときの価格と実際に執行された価格の差のことです。言うまでもなく、これは成り行き注文の場合のことで、あなたが指値注文を出した場合は、その注文はあなたが指定した価格で執行されるか、あるいは全く執行されないかのいずれかです。しかし、マーケットにどうしても入りたいか、または手仕舞いたい場合、成り行きで注文を出すことになり、しばしば注文を出した時点の価格よりも悪い価格で売買が執行されてしまうのです。
こうしてトレーディング業界はマーケットから巨額の金を抜き取り続けているのです。証券取引所、監督機関、ブローカー、そして投資アドバイザーたちはマーケットのおかげで生計を立てているのであり、その一方で、トレーダーたちは数世代にわたりマーケットから姿を消し続けているのです。マーケットは敗者の新たな供給を常に必要としているのです。それは、古代エジプトのピラミッド建設でそれに従事させる奴隷たちの新たな供給が常に必要だったのとよく似ています。敗者がマーケットにお金をせっせと運び込むこと、それがトレーディング業界の繁栄のためには不可欠なのです。
マイナス・サム・ゲーム
ブローカー、証券取引所、および投資アドバイザーたちは、マーケットにより多くの敗者たちをおびき寄せるために宣伝キャンペーンを実施します。ある者は、先物トレーディングはゼロ・サム・ゲームであるなどと言ったりします。彼らの狙いは、大半の人々に自分のことを平均よりは賢いと感じてもらい、自分たちは頭の悪い他の人々を出し抜いてゼロ・サム・ゲームに勝利することができるという甘い期待を持ってもらうことなのです。
ゼロ・サム・ゲームにおける勝利者は、その敗者が損する分だけ儲かります。もしあなたと私が、ダウの次の100ポイントの方向に10ドル賭けたとすると、われわれのうちのいずれかが10ドル儲かり、他方が10ドル損するのです。つまり、一定の期間の後に、より賢い方がこのゲームに勝利するのです。
人々は、トレーディング業界のゼロ・サム・ゲームに関するプロパガンダを真に受けて、それにまんまと引っかかり、トレーディング用の口座を開設することになります。彼らは、おめでたいことに、トレーディングが実はマイナス・サム・ゲームであることを知りません。つまり、勝者は敗者が損するより少ない額しか受け取れません。これは、業界がマーケットからそのおこぼれを吸い取っているからなのです。
例えば、カジノのルーレットは典型的なマイナス・サム・ゲームです。なぜならカジノはすべての賭けの3~6%を取ってしまうからで、このために期的にルーレットで勝つことは不可能なのです。もしわれわれがダウの次の100ポイントの方向に関して先程と同じ10ドルをブローカーを通じて賭けるとすると、あなたと私はマイナス・サム・ゲームに参加することになります。つまり、賭けの清算をする際に、例えば、敗者は13ドル支払い、勝者は7ドル受け取り、その一方で、ブローカーはニンマリして両者から受け取ったコミッションを銀行に預金をしに行くという次第です。
トレーダーにとってのコミッションとスリッページは、われわれすべての人間にとって税金と死が意味することと同じような意味合いを持ちます。つまりそれらは、人生の喜びのいくらかを奪い去り、最後には人生を終末に導くのです。トレーダーは自分のために10セント稼ぐ前に、まずブローカーと取引所を養わねばなりません。そういうわけで、トレーダーとしては、単に「平均より優れている」だけでは十分に優秀とはいえないのです。マイナス・サム・ゲームに勝利するためには、あなたは群衆から抜きん出て優秀でなければなりません。
コミッション(売買手数料)
あなたは、トレードするすべての銘柄の1枚に対して、往復の売買で12ドルから100ドルくらいコミッションを支払うことになります。ディスカウント・ブローカーとトレードする大口トレーダーはより安いコミッションですみ、いわゆるフルサービスを受ける小口トレーダーはより高いコミッションを取られます。アマチュアは、大きな儲けを夢見る一方で、コミッションのことを無視します。それを助長するように、ブローカーは先物やオプションの原資産の丸代金に比べて、手数料はごく少額にすぎないと言うでしょう。
しかし、コミッションの役割をよく理解するために、あなたはコミッションとその銘柄1枚の想定元本金額を比較するのではなく、それとあなたが供託する証拠金(マージン)を比較する必要があります。例えば、あなたはトウモロコシ先物1枚をトレードするために30ドルのコミッションが必要であるとします(トウモロコシ先物1枚は5000ブッシェルがその原資産の想定元本で、約1万ドルの価値に相当します=訳者注)。ブローカーは、「コミッションの30ドルは1枚の価値のわずか1%にも満たない金額です」と説明するでしょう。しかし、現実には、トウモロコシ先物1枚をトレードするために、約600ドルの証拠金が必要です。30ドルのコミッションは証拠金の5%にもなります。このことは、ただ収支ゼロにするために、あなたはトレードのために供託した資金の5%を儲けなければならないのです。もしあなたが年間にトウモロコシ先物を4回トレードする場合、あなたの資金を失わないためには20%の利益を年間で出さなければならないのです! こんな芸当ができる人々はごく限られています。多くのファンド・マネジャーたちは年率20%のリターンを恒常的に達成できるならどんな代償でも払うでしょう。「少額コミッション無用」などというものではなく、それは成功への道に立ちはだかる大きな障害物なのです!
多くのアマチュアたちは、年間で自己資金のサイズの50%かそれ以上にも上るコミッションをブローカーに払っています。ただし、これは彼らが1年もてばの話ですが。大口向けのディスカウント・コミッションですら成功するトレーディングへの高い障害になります。私はかつてブローカーたちが、自分たちの客がゲームに参加し続けることにいかに知恵を絞っているのかを含み笑い浮かべながらうわさ話しているのを耳にしたことがあるくらいです。
まず、とにかく、可能な限り最低のコミッションのブローカーを探して回ることです。そして、レートをさらにまけてもらえないか、恥ずかしがらずに値切りの交渉をすべきでしょう。私は、多くのブローカーたちがお客の数が少ないと不平を言うのをこれまでよく耳にしてきましたが、お客がブローカーの数が少なすぎると不平を言っているのをあまり聞いたことがありません。低い手数料を取る方が、お客が相場に生き残って、長期間取引関係を維持できるのだから、ブローカーにとってもその方が結果的には最善なはずであると、ブローカーを説得することです。
スリッページ(売買執行に伴う誤差)
スリッページはあなたがマーケットに出入りするたびに、あなたの自己資金にピラニアもしくはサメの大きさ程の咬みキズを残していきます。スリッページとはあなたが成り行きで注文を出したときに現存した価格より悪い価格で注文が執行される場合の誤差を意味します。それは例えて言えば、八百屋でリンゴ1個29セントと表示してあるにもかかわらず、30セント支払わねばならない状況に似ています。
スリッページには3種類あります。すなわち、通常のもの、ボラティリティーに基づくもの、そして犯罪といえるものの3つです。通常のスリッページは売値(オファー)と買値(ビッド)の間のスプレッドに起因するものです。フロア・トレーダーはマーケットでこの2つの価格(売値と買値)を常に提示します。
例えば、ブローカーがS&P500先物6月限をあなたに390.45(本書執筆時当時のレベル=訳者注)を提示したとします。そこで、もしあなたが1枚を成り行きで買いたい場合、少なくとも390.50で買わなければなりません。反対に、もし成り行きで売りたい場合、その売値は390.40か、それ以下になります。各1ポイントは5ドルに相当するので、10ポイントの売値と買値の間のスプレッドは50ドルをあなたのポケットからフロア・トレーダーに移転することになるのです。彼らは、あなたにトレードに出入りする権利を与える代償に、このスプレッドを請求するのです。
売値(オファー)と買値(ビッド)のスプレッドは合法的なものです。スプレッドはS&P500や30年国債先物のような流動性の高いマーケットにおいては狭まる傾向があります。反対に、オレンジジュースやココアのように商いが薄いマーケットにおいては広がる傾向にあります。取引所は、スプレッドはあなたがマーケットで流動性を得るための代償に支払う価格であると説明しています。ちなみに流動性とは、あなたが、いつでも好きなときにトレードできることを指します。また、電子トレーディングはスリッページを減らす方向に働きます。
スリッページはマーケットのボラティリティー(価格変動)の増加と共に拡大します。フロア・トレーダーは急変するマーケットにおいて、より大きなスリッページを要求します。マーケットが急騰または急落する場合、スリッページは怒濤の勢いで急拡大します。例えば、S&P500先物が急騰または急落する局面では、20~30ポイントのスリッページを被ることを覚悟する必要があり、ときには100ポイントまたはそれ以上になることすらあります。
3番目のスリッページは、フロア・トレーダーたちによる犯罪的行為によって引き起こされます。彼らは、お客から金を盗む多くのやり方を用意しています。ある者は、不利な価格で執行されたトレードを意図的にあなたの口座に回して、自分のトレードとして有利な価格のトレードを独り占めにしたりします。この種の行為やその他の不正な犯罪行為は、デビッド・グレイシングとローリー・モースによる『ブローカー、悪徳仲買人、マーケットに巣くうモグラたち』(Brokers,Bagmen and Moles)という本の中で取り上げられています。 数百人の人々が、狭苦しい取引所のピットで肩を寄せ合いながら毎日立ち続けているうちに、彼らの間には、おのずと仲間としての連帯感が生じます。つまり、いわゆる「自分たちとそれ以外の部外者」というメンタリティーです。フロア・トレーダーたちは、部外者のことを「ペーパー(紙切れ)」という隠語を使ってよく呼びますが、これこそ、彼らが部外者のことを人間以下にしか見ていないことの証左であるといえます。例えば、「今日はペーパーが来ているか?」などというように彼らの内輪の会話で用いられます。
このことは、あなたが自分を彼らの不当な行為から未然に守る防衛手段を講ずる必要があることを物語っています。
具体的防衛策として、スリッページを減らすために、流動性の高いマーケットでトレードし、商いが薄い、値動きが激しいマーケットは避けるようにします。次に、マーケットが静かなときにトレードに入るように心がけます。第三に、成り行きで注文せずに、指値注文を使うようにします。つまり、あらかじめ指定した価格で売買するということです。成り行きで注文を出す場合は、注文を出した時点の価格を記録しておいて、必要であれば、あなたのために、ブローカーからフロア・トレーダーに掛け合って、執行価格の改善を毅然として要求させることです。
ダメージの合計
スリッページとコミッションを課されたトレーディングは、サメがうようよしている珊瑚礁の海で泳ぐのに似ています。ブローカーのセールストークと現実の世界で起こることを例を挙げて比較してみましょう。
宣伝トークはこんな具合に行われます。金の先物は金100オンスを想定元本としています。5人の個人投資家が、5枚の金先物をカラ売りしたい人から各1枚ずつ買います。金価格が4ドル下落し、買い手はあきらめて、買いポジションを処分し、1オンス当たり4ドルの損、あるいは1枚当たり400ドルの損を確定します。一方、相場を正しく予想した賢明な投資家は1枚当たり400ドルの儲けで、合計2000ドルの利益です。
しかし、現実の世界では、敗者たちは各々、400ドル以上の損をすることになるのです。まず、彼は往復で少なくとも25ドルのコミッションを支払い、さらに多分、20ドルのスリッページをマーケットの出入りで失うことでしょう。この結果、各敗者は、1枚当たり465ドル失うことになります。そして、グループ合計で2325ドルの損になります。
一方、5枚をカラ売りした勝者は、多分、往復で15ドルのコミッションを支払い、マーケットへの出入りの際に、10ドルのスリッページを被ったことでしょう。これにより、利益は1枚当たりで35ドル減少し、あるいは5枚では175ドルだけ減少することになります。この結果、勝者である彼の儲けは1825ドルだけになってしまうのです。
勝者は2000ドル儲けたと考えたのですが、実際の受取額は1825ドルでしかないのです。一方、敗者たちのグループは2000ドル損したと考えたのですが、実際は2325ドル損したのです。合算すると500ドル(2325ドル-1825ドル)がテーブルから吸い上げられてしまったのです。その大部分はフロア・トレーダーたちとブローカーたちのポケットに収まりました。こうして彼らは、あらゆるカジノや競馬場関係者が望むべくもない、はるかに大きな分け前に預かっているのです!
その他の支出もまたトレーダーの金を食い荒らします。それには、コンピューターやデータのコスト、投資アドバイス・サービスの購読料、書籍代などが含まれます。それには、あなたが今読んでいる本書の代金も含まれます。これらすべてのコストは結局のところあなたのトレーディング資金から賄われているのです。
最低のコミッションのブローカーを見つけて、彼のことをタカのような目でよく監視しましょう。そして比較的、低頻度でシグナルを発し、なおかつ静かなときにマーケットに入ることを可能にするトレーディング・システムを設計するのです。
Trading for A Livingの日本語版出版にあたり、日本の読者に本書の紹介をするこ とを嬉しく思います。トレーディングに関する書物の世界では、日本のものが世界最 古であり、そのような伝統の一部に本書が加わることを光栄に感じます。本書の執筆にはほぼ4年の歳月を要しました。アメリカで最初に出版の後、それは世界中のトレーダーの間で徐々に支持されるようになり、やがて世界中で最も人気があるトレーディングの解説書になりました。現在までに、ドイツ語、ポーランド語、 オランダ語、ロシア語、中国語、フランス語、韓国語に翻訳されており、そして今回、日本語にも訳されることになりました。これほど、世界的に読者の支持を得ることになった訳は、トレーディングがわれわれ人間の根源的な性質に根差していることを本書が明らかにしているからであると思われます。トレーディングは歓喜、恐怖、欲望、希望、高揚、絶望やその他の強烈な感情を人々にもたらします。そこで、トレーディングの心理に関するいくつかの重要なルールを、精神分析医およびトレーダーとしての私の知識と経験に基づいて、本書の中でみなさんに紹介していきたいと思います。それと共に、テクニカル分析とマネー・マネジメントの重要なコンセプトもみなさんにお教えします。マーケットで成功するために、あなたはライバル以上に 周到な準備をしておく必要があるのです。
さて、ここで筆者と日本にかかわるひとつのエピソードをみなさんに披露したいと思います。それは本書の執筆に先立つ数カ月前のことで、記憶に残るある出来事に遭遇しました。それは太平洋上高度1万メートルのニューヨークから東京に向かう機内においてのことでした。そのとき私には、相場の天井がもうすぐそこまできていると、大声で私に向かって警告を発しているのが聞こえたのです。 その話を続ける前に、ところで、みなさんはケネディ大統領の父親であるジョセ フ・ケネディが1929年の株式大暴落の際に株を空売りして、財を成した話をご存じでしょうか。当時、彼は株式市場は強気相場が過熱して、買われ過ぎの状態になっていると感じていました。そんなある日、彼は路上で靴を磨いてもらっていたときに、その靴磨き屋からある株に関する「耳寄りな情報」を聞かされたのです! この抜け目のない投機家は、これこそ相場の天井を告げるシグナルだと信じて、株式市場で大規模な空売りのポジションを作り始めました。靴磨き屋までが株で投機を始めるころには、マーケットは極端に買われ過ぎており、下落するのは時間の問題だったの です。
話を元に戻すと、1989年のその日、私はあるセミナーに出席するために東京へ向かって機上の人となっていました。ジャンボ機の2階席で、私は搭乗していたスチュワードの1人と仲良くなりました。彼は50歳くらいの日本人で、戦後の貧しかった子供時代から今日、航空会社のビジネスクラスのスチュワードにまで出世することができたことを大変誇りにしていると語ってくれました。他の乗客が眠っている間、われわれは階段の近くでおしゃべりを続けました。そこで彼は、昨年、株式投資により自分の給料以上の金を儲けることができたと幸せそうに私に話してくれたのです。当時、日本の株式市場は高騰しており、経済規模において米国よりはるかに小さいにもかかわらず、時価総額では米国株式市場を凌駕するまでになっていました。私が出会ったスチュワードは、株でボロ儲けしたお金で太平洋のある島に別荘を建てて、そこで早めの引退生活を楽しむべく、既にその準備に入っているのだと話してくれました。そして彼の引退計画は、まだ大半は未実現で評価益に過ぎない株の儲けで賄われることになっているのでした。そんな順風満帆な彼に も、ひとつだけ不満がありました。それは、同僚のスチュワーデスたちが自分以上に株で儲けており、家族を養わねばならない自分とは違って、彼女たちは親と同居しているの で、もっとたくさん株にお金を回すことできるのだということでした。
この話を聞いていて、1929年のあのジョセフ・ケネディに靴磨き屋がしたのと同様に、スチュワードが私に売りシグナルを与えてくれているのだと、即座にひらめきました。結果はまさにその通りの事態となりました。その数カ月後に日本の株式市場は暴落したのです。ある日、私はニューヨークの自分のオフィスに夜になってから再び戻ってきて、モニターをオンにして、日経先物が200ポイント刻みで下落していくのを見入っていたものです。
ギャンブラーと知的なトレーダーの間には大きな違いがあります。真剣なトレーダーは論理的で、現実的な計画を立て、マーケットをよく研究し、有効であると証明された方法を使い、決して運に頼ったりすることはしません。知的なトレーダーは何を、いつ売り買いするかを選別する方法とリスクを軽減するルールを身につけています。彼は、トレーディングの心理が大変重要なファクターであることをよく理解しています。なぜなら感情や態度がトレーダーとしての私たちの成否に直接的な影響を及ぼすからです。トレーディングをしていると、群衆心理の中に引き込まれそうになる場面に私たちはしばしば遭遇し、またトレーディングそのものが私たちに強烈な感情を引き起こします。しかし、成功するためには、あなたは集団から独立して規律を守って行動しなければなりません。
2000年の4月に、著者は本書の訳者である福井強氏に会える喜びにあずかりました。彼は、私に会うためにニューヨークにやって来て、大変有意義で愉快な夕べを共に過ごすことができました。われわれは本書のテーマについて語り合いました。私は、これまで多くの本書の訳者に会ってきましたが、彼はその中でも最も熱心で、本書の翻訳に使命感を持った人の1人であると感じました。会って話しているうちに、私と同じように、彼も 2つの世界を持つ人間であることが分かりました。つまり、日本で生まれてそこで教育を受け、米国に住んでそこで仕事をしているという点にお いてです。彼の質の高い翻訳により、本書をみなさんに楽しんでいただけるけること を希望します。
この本を開くことにより、あなたはトレーディングへの旅路につくのです。そのコンセプトをよく研究して、ご自分のデータでテストしてみてください。読者の皆さん がより知識のある、成功するトレーダーとなるために、本書が大いに役立つことを願ってやみません。
みなさんの成功を祈ります。
2000年7月 ニューヨークにて
アレキサンダー・エルダー博士
イントロダクション
1.トレーディング――最後のフロンティア
あなたは自由になることができます。あなたは世界中のどこででも暮らせ、仕事をすることが可能です。あなたは毎日の雑事に一切、煩わされることなく、だれに対しても返答する必要もないのです。
これが成功したトレーダーの生活です。
多くの人々がこのような生活を切望しますが、成功できるのはごく少数の人たちです。アマチュアは相場情報を伝えるコンピューターの端末を見て、自分の目の前に何百万ドルものおカネが輝いているのを見ます。彼はそのおカネをつかもうと手を伸ばしますが、結局、相場に負けてしまいます。彼は、さらに手を伸ばそうとしますが、今度はもっと損してしまいます。トレーダーが損をするのは、まずトレーディングというゲーム自体が困難なものであるということ、第二に、トレーダーの勉強不足からくる無知によるもの、第三に、規律を欠くトレーディングをするためです。もしこれらのいずれかの理由であなたが現在お困りであれば、本書はまさにあなたのような方のために書かれたのです。
どのようにして私はトレードを始めたか
1976年の夏、私はアメリカ東海岸のニューヨークから西海岸のカリフォルニアを目指して、車を走らせていました。中古の大衆車ダッジのトランクに数冊の心理学の本(当時、私は精神科の研修医1年目でした)と、歴史の本、エンゲルの『株の買い方』なるペーパーバックを投げこんで目的地に向かって出発したのでした。当時の私は、弁護士の友人から拝借したページの角に折り目がついた1冊のペーパーバックが後の自分の人生をやがて大きく変えるであろうなどとは知る由もありませんでした(ところで本筋からそれますが、その友人の弁護士は、偶然にも完璧な逆ゴールデン・タッチの持ち主で、彼が手をつけた投資はあまねく失敗して、損する破目に陥っていました)。
私はこのアメリカ横断の旅先のキャンプ場で、エンゲルの株の本を読み続け、カリフォルニアの太平洋に面したラホーヤの海岸でそれを読み終えたのです。株式市場については全くの門外漢で、頭を使ってお金を儲けるというアイデアが私の注意を引きました。かつての米国大統領の言葉を借りれば、私は「悪魔の帝国」と呼ばれたソビエト連邦で育ちました。ソビエト・システムを憎悪して、国外脱出を夢見ましたが、一般市民が海外に出ることは当時、禁じられていました。私は16歳の若さでで大学に進み、22歳で医学部を卒業して、研修医としての期間を全うしました。それから、船医の職に就いたのです。こうして、今まさに自由になれるチャンスがとうとう巡ってきたのです。私は、コートジボアールの首都アビジャンに停泊中のソビエト船から逃亡を企てました。
同僚の船乗りたちの追跡を振り切り、このアフリカの港町の混み合った埃っぽい通りを必死の思いで走り抜け、なんとかアメリカ大使館にたどり着きました。大使館員たちの不手際から危うくソ連に強制送還されそうになりましたが、頑強にそれを拒んだので、彼らはひとまず私を「安全な家」にかくまい、飛行機に乗せてニューヨークまで送り届けてくれました。こうして、私は1974年の2月に、ニューヨークのケネディ国際空港に夏服の格好のまま、アフリカから着の身着のままでたどり着いたのでした。そしてポケットの中にはわずかに25ドルがあるのみでした。当時、英語は少しは話せましたが、この国の(資本主義の)精神については何も知りませんでした。
共産主義国からやってきた当時の私には、株や債券、先物、オプションなどのことは理解の範囲を超えており、財布の中のドル紙幣を見るだけで、時折不安な感情が心をよぎったものです。というのも、故国ソ連では、ひとつかみのドル紙幣の所有が露見すれば、それだけで軽く3年はシベリア流刑暮らしの目に遭うことになったからです。
このようなバックグラウンドの私に、『株の買い方』は全く新鮮な世界を私の前に開いて見せてくれたのです。ニューヨークに舞い戻ると、早速私は最初の株を購入しました。それはキンダーケアなる会社の株でした。それ以来、私は、熱心にマーケットについて勉強し、株やオプションに投資し、いまや主に先物を中心にトレードするまでになりました。
しかし、米国亡命後の私のプロフェッショナルとしてのキャリアはトレーディングとは別の世界で始まりました。米国の有名大学のひとつであるコロンビア大学の大学病院で精神科の研修医としての研修期間を完了した後、ニューヨーク精神分析インスティチュートでさらに学び、米国における最大発行部数を誇る精神分析専門の新聞のための書評編集者の職に就いたのです。今日、私はトレーディングに忙しく、カーネギー・ホールの向かいにある精神分析クリニックには、マーケットが引けた後の午後に、週数回だけ顔を出すようになってしまいました。私は、開業医として精神分析を行うことが好きなのですが、現在では、自分の時間の大半をマーケットと共に過ごしています。
トレードすることを学ぶことは長い旅路でした。その間、儲かったときは舞い上がった気分になり、反対に、損をして落ち込んだりしたものです。前進する過程で、あるいはただグルグル一カ所を巡っていただけかもしれませんが、繰り返し壁にぶち当たっては、自己資金を失いました。そのたびに、病院の仕事に専念して態勢を立て直し、関連の文献を読み漁り、思考し、より多くのテストを行って、再度トレーディングに挑戦したものでした。
私のトレーディングはゆっくりとではあるものの、進歩を遂げました。しかし、本当の意味で壁を打ち破ることができたのは、勝利のカギは自分の頭の中にあり、決してコンピューターの中にあるのではないということが分かったときだったのです。精神分析はトレーディングに関してある洞察を与えてくれました。そして、それを私は読者であるみなさんと本書の中で分かち合いたいと思います。
あなたは本当に成功したいと思っているのでしょうか?
過去17年間、私にはその細君が肥満に悩む友人がいました。彼女はエレガントな装いをする女性で、彼女のことを知って以来、ずっとダイエットをしていました。彼女曰く、痩せたいので、人前ではケーキやポテトは口にしないとのことでした。しかし、私が彼女の家の台所に足を踏み入れたとき、彼女はばかでかいフォークを持ってよくそこにいるのを目撃しました。彼女は痩せてスリムになりたいと口では言っているのですが、彼女に会ったころと同じように、今日も彼女は太ったままなのです。これは一体どうしたわけなのでしょう。
つまり、彼女にとって、食べるという短期的な享楽が、減量がもたらす長期的な快適さと健康上の恩恵に勝っていたのです。友人の細君は成功したいとは口では言うものの、ギャンブルのもたらす短期的なスリルを味わうためにマーケットで衝動的なトレードを繰り返している実に多くのトレーダーたちのことを思い出させるのです。
人々は自分のことを偽って、自分自身とイタチごっこをしているのです。他人にウソをつくことは十分に悪いことですが、自分自身を偽ることはお先真っ暗であるといえます。書店にはダイエットの本が山ほどあるのに、巷では肥満体の人々であふれかえっているのです(これは特に肥満大国アメリカに関しての記述です=訳者注)。
本書は、いかにマーケットを分析し、いかにそれをトレードし、そしてどのようにあなた自身の心理に対処したらよいかを、あなたに教えます。
2.トレーディングのカギは心理である
あなたは、自分のトレードをファンダメンタル分析またはテクニカル分析に基づいて行うことができます。あるいは、あなたは経済や政治のトレンドに関する「カン」を頼りにトレードしたり、「インサイダー情報」に基づいたり、それとも、単純に自分の希望のみに基づいてトレードするかもしれません。あなたが最後にトレードの注文を出したときに、どのように感じたかを思い出してください。あなたはポジションを持ちたくてウズウズしていましたか、それとも損するのが怖くて仕方がなかったでしょうか? 注文をブローカーに出す際に、電話の受話器を取るべきか、取らぬべきか、あなたは逡巡しましたか? ポジションを手仕舞ったときに、あなたの気分は高揚していましたか、それとも損して屈辱を受けたような気持ちでしたか? 数千のトレーダーのこうした感情が集まって巨大な心理の波となり、それが実際に、マーケットを動かしているのです。
ジェット・コースターから飛び降りて
大多数のトレーダーたちは良いトレードを探そうとして自分の時間を費やします。そして、トレードに入るやいなや、彼らはコントロールを失い、苦痛にもがくか、喜びのためにニンマリするかのいずれかの精神状態に陥ります。彼らは、まさに感情のジェット・コースターに乗っていて、トレーディングに勝利するための必須の要素である自分の感情を制御することを見失っているのです。自分のことを管理できないということは、自己資金に対するお粗末なマネー・マネジメントにつながります。
もしあなたの精神がマーケットの動きに合っていないか、あるいは、もしあなたがマーケットの群衆心理の変化に注意を払わない場合、あなたがトレーディングでお金を儲けられる見込みはゼロであると断言できます。すべての成功しているプロのトレーダーたちはトレーディングにおける心理学のとてつもない重要性について熟知しています。これに対し、すべてで損を出すアマチュア・トレーダーたちはそれを無視しているのです。
私が精神科医であることを知っている友人や顧客から、そのことがトレーダーとしての自分に役立っているかどうかをよく質問されます。答えはイエスです。すなわち、良い精神分析と良いトレーディングには、相通ずる重要なひとつの原則が存在します。すなわち、どちらも現実に焦点を当てて、世界を先入観なしに、ありのままの形でとらえるという原則です。健康な精神生活を送るためには、あなたの目を見開いて生きる必要があるのです。同様に、良いトレーダーになるためには、あなたは自分の目を見開いてトレードし、真のトレンドや相場の転換を理解し、後悔や希望的観測に時間とエネルギーを浪費しないようにしなければならないのです。
トレーディングはオトコのためのゲームか?
ブローカーのデータによれば、大半のトレーダーの性別は男性であるそうです。私自身のトレーダー向けの教育を目的とする会社であるフィナンシャル・トレーディング・セミナー社の顧客ファイルもおよそ95%のトレーダーは男性であるので、このことを裏付けています。この理由のため、私は本書の例え話や例題において登場人物に男性形の主語(「彼」)を用います。もちろん、これは成功した女性トレーダーたちに対して敬意を払わないということでは全くありませんので、念のため。
銀行やトレーディング会社などの機関投資家のトレーダーにおける女性の比率は、個人トレーダーより高いといえます。しかし、私の経験から言わせていただけば、女性がトレーダーとしてトレーディングで成功することは、男性に比べるとあまり多くないといえるでしょう。このことから、この男性優位のトレーディングの世界で女性が成功していくためには、何か例外的な推進力が必要であることは確かなようです。
トレーディングはスカイ・ダイビングやロック・クライミングやスキューバ・ダイビングのようなスリルがあり、危険なスポーツに似ています。それらのスポーツは一般的に男性を魅了します。例えば、女性ハング・グライダー愛好家は全体の1%未満しかいません。 見方によっては、われわれが住む管理社会において、男性は危険なスポーツに引き寄せられるのかもしれません。ミシガン大学のデビッド・クライン博士が『ニューヨーク・タイムズ』に述べたコメントによれば、「仕事がより退屈で面白味のないものになればなるほど、われわれは達成感を求めてレクリエーションに向かいます。仕事がより安全で、面白味のないものになればなるほど、われわれ精神科医の立場から、個人の差が目立ち、個人の裁量が許され、冒険や興奮が役割を担うレクリエーションをすることを、人々に強く勧めています」とのことです。
これらのスポーツは強烈な快感を与えてくれますが、多くの参加者たちがそれに伴う危険を無視して、思慮なく無茶をする結果、危険なスポーツというレッテルを張られてしまっています。ハング・グライダーによる事故を調査したオレゴンの整形外科医であるジョン・トング博士によれば、より経験を積んだパイロットの方が事故で死亡する確率が高くなるということです。これは、経験者になればなるほど、より大きなリスクを取りたがるからです。危険を伴うスポーツを楽しもうという人は安全ルールに従わなければいけません。リスクを自分の注意によって減らすことができたとき、さらなる達成感とコントロールが得られるのです。同じことがトレーディングについても言えます。
すなわち、それを真剣な知的な追求として取り扱う場合に限って、あなたはトレーディングに成功することが可能となるのです。感情的なトレーディングは命取りになります。成功を確かなものにする手助けとして、防衛的なマネー・マネジメントを実践することです。良いトレーダーは、彼の自己資金を、プロのスキューバ・ダイバーが自分の酸素ボンベの酸素の残量をウオッチするように、注意深く見守るのです。
本書の構成
成功するトレーディングは3本の柱によって成り立っています。すなわち、それは、トレーディングの心理学、マーケット分析およびトレーディング・システム、そして最後にマネー・マネジメントです。本書は、あなたがこれからこの3つの分野を探究する助けとなるでしょう。
本書の最初の章は、あなたに、トレーダーとして自分の感情をコントロールするための新しいアプローチを呈示します。私は、この方法を、精神分析を実践するかたわら、発見しました。それは私のトレーディングを飛躍的に向上させたので、あなたにも必ず役立つはずです。
第2章は、マーケットにおける群衆心理について説明します。集団の行動は、個人の行動に比べて、より原始的です。もしあなたが群衆の行動の仕方を理解していれば、あなたは彼らの気分のスイングを利用して儲けることができ、彼らの感情によって自分を見失うことを回避できるのです。
本書の第3章では、いかにチャート・パターンが群衆の行動を示すかについて説明します。古典的なテクニカル分析は、選挙の世論調査と同様に応用心理学であると考えることができます。トレンドライン、窓(ギャップ)、その他のチャート・パターンは実のところ、群衆の行動を反映しているのです。
第4章は、コンピューターによるテクニカル分析の方法について教えます。テクニカル指標は古典的テクニカル分析に比べて、集団心理により深い洞察を与えてくれます。トレンド追随型の指標はマーケットのトレンドを見つけるのに役立ち、一方、オシレーターはトレンドが反転する準備に入ったことを示唆します。
出来高と建玉もまた群衆の行動を反映します。第5章ではこれらに注目すると共に、マーケットにおける時間の経過についても触れています。群衆は非常に短期間しか、その注意が及ばないため、価格の変化を時間に関連させることができるトレーダーは競争をより有利に進めることが可能となるのです。
第6章は、株式市場を分析する最善のテクニックに焦点を当てています。それらは、株式インデックス先物およびオプション・トレーダーに特に有用であるといえます。
投資家やトレーダーたちのオピニオンを測るセンチメント指標は第7章で概観されています。群衆は、トレンドに追随するので、価格が動き出したときはそれに合流するのが得策です。センチメント指標は、群衆からいつ離れればよいかを示してくれます。つまり、群衆が重要な相場の反転を見過ごす以前に、指標の助けを受けて、あなたは群衆と袂を分かつのです。
第8章では、私が開発した2つの自家製の指標を紹介します。エルダー線と呼ばれる指標は、価格データに基づくもので、マーケットの水面下におけるブルとベアの力関係を計測するものです。勢力指数(Force Index)と呼ばれる指標は、価格と出来高の両方を計測します。それは優勢であるマーケットの集団(買い手または売り手)が力をさらに付けているのか、または弱体化しつつあるのかを教えてくれます。
第9章では、いくつかのトレーディング・システムを提示します。3段階スクリーン・トレーディング・システムは私自身が開発した手法です。私はこのシステムを実際、過去何年間も使用してきました。これとその他のトレーディング・システムのことを学ぶことにより、あなたはどのようにトレードを選択し、注文執行および手仕舞いすべきポイントの見つけ方を具体的に習得することができます。
第10章では、マネー・マネジメントに焦点を当てます。成功するトレーディングにとって必須のこの一面は大半のアマチュアたちから無視されています。あなたは素晴らしいトレーディング・システムを持つことができますが、もしあなたのマネー・マネジメントが悪ければ、たった数回の連続の負けによって、あなたの自己資金は消滅してしまうでしょう。適切なマネー・マネジメントを欠いたトレーディングは裸足で灼熱の砂漠を横断しようとするのと同じようなものです。
あなたはこれから本書と共に多くの時間を過ごそうとしています。本書の中であなたにとって価値のあるように見えるアイデアを見いだしたら、それらをあなた自身のこれまでの経験という最も重要な試験管の中でテストしてみてください。つまり、あなたは本書に書かれている知識を、それが本当かどうか試してみることによってのみ、自分のものにできるのです。
3.あなたに不利なオッズ
なぜ大半のトレーダーたちは損をして、やがマーケットから消え失せる運命にあるのでしょうか? 感情的なトレーディングと思慮を欠いたトレーディングがその二大要因ですが、実は、そこにもうひとつ理由があるのです。すなわち、マーケットというものは、そもそも大半のトレーダーたちが損するように設計されているのです。
トレーディング業界は、コミッション(売買手数料)とスリッページ(売買執行を行う際に不利に働く誤差)の2つによって、トレーダーの命を奪うのです。大抵のトレーダーはこのことを信じようとしません。それは、中世の農民たちが微細で目に見えないコレラ菌が彼らの命を奪うことができることを理解できなかった話をまさに彷彿とさせます。もしあなたがスリッページを無視し、高いコミッションを請求するブローカーを通じて取引するとしたら、あなたはまるでコレラ菌に汚染された共同の井戸からくんだ水を飲むようなものなのです。
あなたはコミッションを、注文を出すときと、手仕舞うときの両方で支払わされます。スリッページは、あなたが注文を出したときの価格と実際に執行された価格の差のことです。言うまでもなく、これは成り行き注文の場合のことで、あなたが指値注文を出した場合は、その注文はあなたが指定した価格で執行されるか、あるいは全く執行されないかのいずれかです。しかし、マーケットにどうしても入りたいか、または手仕舞いたい場合、成り行きで注文を出すことになり、しばしば注文を出した時点の価格よりも悪い価格で売買が執行されてしまうのです。
こうしてトレーディング業界はマーケットから巨額の金を抜き取り続けているのです。証券取引所、監督機関、ブローカー、そして投資アドバイザーたちはマーケットのおかげで生計を立てているのであり、その一方で、トレーダーたちは数世代にわたりマーケットから姿を消し続けているのです。マーケットは敗者の新たな供給を常に必要としているのです。それは、古代エジプトのピラミッド建設でそれに従事させる奴隷たちの新たな供給が常に必要だったのとよく似ています。敗者がマーケットにお金をせっせと運び込むこと、それがトレーディング業界の繁栄のためには不可欠なのです。
マイナス・サム・ゲーム
ブローカー、証券取引所、および投資アドバイザーたちは、マーケットにより多くの敗者たちをおびき寄せるために宣伝キャンペーンを実施します。ある者は、先物トレーディングはゼロ・サム・ゲームであるなどと言ったりします。彼らの狙いは、大半の人々に自分のことを平均よりは賢いと感じてもらい、自分たちは頭の悪い他の人々を出し抜いてゼロ・サム・ゲームに勝利することができるという甘い期待を持ってもらうことなのです。
ゼロ・サム・ゲームにおける勝利者は、その敗者が損する分だけ儲かります。もしあなたと私が、ダウの次の100ポイントの方向に10ドル賭けたとすると、われわれのうちのいずれかが10ドル儲かり、他方が10ドル損するのです。つまり、一定の期間の後に、より賢い方がこのゲームに勝利するのです。
人々は、トレーディング業界のゼロ・サム・ゲームに関するプロパガンダを真に受けて、それにまんまと引っかかり、トレーディング用の口座を開設することになります。彼らは、おめでたいことに、トレーディングが実はマイナス・サム・ゲームであることを知りません。つまり、勝者は敗者が損するより少ない額しか受け取れません。これは、業界がマーケットからそのおこぼれを吸い取っているからなのです。
例えば、カジノのルーレットは典型的なマイナス・サム・ゲームです。なぜならカジノはすべての賭けの3~6%を取ってしまうからで、このために期的にルーレットで勝つことは不可能なのです。もしわれわれがダウの次の100ポイントの方向に関して先程と同じ10ドルをブローカーを通じて賭けるとすると、あなたと私はマイナス・サム・ゲームに参加することになります。つまり、賭けの清算をする際に、例えば、敗者は13ドル支払い、勝者は7ドル受け取り、その一方で、ブローカーはニンマリして両者から受け取ったコミッションを銀行に預金をしに行くという次第です。
トレーダーにとってのコミッションとスリッページは、われわれすべての人間にとって税金と死が意味することと同じような意味合いを持ちます。つまりそれらは、人生の喜びのいくらかを奪い去り、最後には人生を終末に導くのです。トレーダーは自分のために10セント稼ぐ前に、まずブローカーと取引所を養わねばなりません。そういうわけで、トレーダーとしては、単に「平均より優れている」だけでは十分に優秀とはいえないのです。マイナス・サム・ゲームに勝利するためには、あなたは群衆から抜きん出て優秀でなければなりません。
コミッション(売買手数料)
あなたは、トレードするすべての銘柄の1枚に対して、往復の売買で12ドルから100ドルくらいコミッションを支払うことになります。ディスカウント・ブローカーとトレードする大口トレーダーはより安いコミッションですみ、いわゆるフルサービスを受ける小口トレーダーはより高いコミッションを取られます。アマチュアは、大きな儲けを夢見る一方で、コミッションのことを無視します。それを助長するように、ブローカーは先物やオプションの原資産の丸代金に比べて、手数料はごく少額にすぎないと言うでしょう。
しかし、コミッションの役割をよく理解するために、あなたはコミッションとその銘柄1枚の想定元本金額を比較するのではなく、それとあなたが供託する証拠金(マージン)を比較する必要があります。例えば、あなたはトウモロコシ先物1枚をトレードするために30ドルのコミッションが必要であるとします(トウモロコシ先物1枚は5000ブッシェルがその原資産の想定元本で、約1万ドルの価値に相当します=訳者注)。ブローカーは、「コミッションの30ドルは1枚の価値のわずか1%にも満たない金額です」と説明するでしょう。しかし、現実には、トウモロコシ先物1枚をトレードするために、約600ドルの証拠金が必要です。30ドルのコミッションは証拠金の5%にもなります。このことは、ただ収支ゼロにするために、あなたはトレードのために供託した資金の5%を儲けなければならないのです。もしあなたが年間にトウモロコシ先物を4回トレードする場合、あなたの資金を失わないためには20%の利益を年間で出さなければならないのです! こんな芸当ができる人々はごく限られています。多くのファンド・マネジャーたちは年率20%のリターンを恒常的に達成できるならどんな代償でも払うでしょう。「少額コミッション無用」などというものではなく、それは成功への道に立ちはだかる大きな障害物なのです!
多くのアマチュアたちは、年間で自己資金のサイズの50%かそれ以上にも上るコミッションをブローカーに払っています。ただし、これは彼らが1年もてばの話ですが。大口向けのディスカウント・コミッションですら成功するトレーディングへの高い障害になります。私はかつてブローカーたちが、自分たちの客がゲームに参加し続けることにいかに知恵を絞っているのかを含み笑い浮かべながらうわさ話しているのを耳にしたことがあるくらいです。
まず、とにかく、可能な限り最低のコミッションのブローカーを探して回ることです。そして、レートをさらにまけてもらえないか、恥ずかしがらずに値切りの交渉をすべきでしょう。私は、多くのブローカーたちがお客の数が少ないと不平を言うのをこれまでよく耳にしてきましたが、お客がブローカーの数が少なすぎると不平を言っているのをあまり聞いたことがありません。低い手数料を取る方が、お客が相場に生き残って、長期間取引関係を維持できるのだから、ブローカーにとってもその方が結果的には最善なはずであると、ブローカーを説得することです。
スリッページ(売買執行に伴う誤差)
スリッページはあなたがマーケットに出入りするたびに、あなたの自己資金にピラニアもしくはサメの大きさ程の咬みキズを残していきます。スリッページとはあなたが成り行きで注文を出したときに現存した価格より悪い価格で注文が執行される場合の誤差を意味します。それは例えて言えば、八百屋でリンゴ1個29セントと表示してあるにもかかわらず、30セント支払わねばならない状況に似ています。
スリッページには3種類あります。すなわち、通常のもの、ボラティリティーに基づくもの、そして犯罪といえるものの3つです。通常のスリッページは売値(オファー)と買値(ビッド)の間のスプレッドに起因するものです。フロア・トレーダーはマーケットでこの2つの価格(売値と買値)を常に提示します。
例えば、ブローカーがS&P500先物6月限をあなたに390.45(本書執筆時当時のレベル=訳者注)を提示したとします。そこで、もしあなたが1枚を成り行きで買いたい場合、少なくとも390.50で買わなければなりません。反対に、もし成り行きで売りたい場合、その売値は390.40か、それ以下になります。各1ポイントは5ドルに相当するので、10ポイントの売値と買値の間のスプレッドは50ドルをあなたのポケットからフロア・トレーダーに移転することになるのです。彼らは、あなたにトレードに出入りする権利を与える代償に、このスプレッドを請求するのです。
売値(オファー)と買値(ビッド)のスプレッドは合法的なものです。スプレッドはS&P500や30年国債先物のような流動性の高いマーケットにおいては狭まる傾向があります。反対に、オレンジジュースやココアのように商いが薄いマーケットにおいては広がる傾向にあります。取引所は、スプレッドはあなたがマーケットで流動性を得るための代償に支払う価格であると説明しています。ちなみに流動性とは、あなたが、いつでも好きなときにトレードできることを指します。また、電子トレーディングはスリッページを減らす方向に働きます。
スリッページはマーケットのボラティリティー(価格変動)の増加と共に拡大します。フロア・トレーダーは急変するマーケットにおいて、より大きなスリッページを要求します。マーケットが急騰または急落する場合、スリッページは怒濤の勢いで急拡大します。例えば、S&P500先物が急騰または急落する局面では、20~30ポイントのスリッページを被ることを覚悟する必要があり、ときには100ポイントまたはそれ以上になることすらあります。
3番目のスリッページは、フロア・トレーダーたちによる犯罪的行為によって引き起こされます。彼らは、お客から金を盗む多くのやり方を用意しています。ある者は、不利な価格で執行されたトレードを意図的にあなたの口座に回して、自分のトレードとして有利な価格のトレードを独り占めにしたりします。この種の行為やその他の不正な犯罪行為は、デビッド・グレイシングとローリー・モースによる『ブローカー、悪徳仲買人、マーケットに巣くうモグラたち』(Brokers,Bagmen and Moles)という本の中で取り上げられています。 数百人の人々が、狭苦しい取引所のピットで肩を寄せ合いながら毎日立ち続けているうちに、彼らの間には、おのずと仲間としての連帯感が生じます。つまり、いわゆる「自分たちとそれ以外の部外者」というメンタリティーです。フロア・トレーダーたちは、部外者のことを「ペーパー(紙切れ)」という隠語を使ってよく呼びますが、これこそ、彼らが部外者のことを人間以下にしか見ていないことの証左であるといえます。例えば、「今日はペーパーが来ているか?」などというように彼らの内輪の会話で用いられます。
このことは、あなたが自分を彼らの不当な行為から未然に守る防衛手段を講ずる必要があることを物語っています。
具体的防衛策として、スリッページを減らすために、流動性の高いマーケットでトレードし、商いが薄い、値動きが激しいマーケットは避けるようにします。次に、マーケットが静かなときにトレードに入るように心がけます。第三に、成り行きで注文せずに、指値注文を使うようにします。つまり、あらかじめ指定した価格で売買するということです。成り行きで注文を出す場合は、注文を出した時点の価格を記録しておいて、必要であれば、あなたのために、ブローカーからフロア・トレーダーに掛け合って、執行価格の改善を毅然として要求させることです。
ダメージの合計
スリッページとコミッションを課されたトレーディングは、サメがうようよしている珊瑚礁の海で泳ぐのに似ています。ブローカーのセールストークと現実の世界で起こることを例を挙げて比較してみましょう。
宣伝トークはこんな具合に行われます。金の先物は金100オンスを想定元本としています。5人の個人投資家が、5枚の金先物をカラ売りしたい人から各1枚ずつ買います。金価格が4ドル下落し、買い手はあきらめて、買いポジションを処分し、1オンス当たり4ドルの損、あるいは1枚当たり400ドルの損を確定します。一方、相場を正しく予想した賢明な投資家は1枚当たり400ドルの儲けで、合計2000ドルの利益です。
しかし、現実の世界では、敗者たちは各々、400ドル以上の損をすることになるのです。まず、彼は往復で少なくとも25ドルのコミッションを支払い、さらに多分、20ドルのスリッページをマーケットの出入りで失うことでしょう。この結果、各敗者は、1枚当たり465ドル失うことになります。そして、グループ合計で2325ドルの損になります。
一方、5枚をカラ売りした勝者は、多分、往復で15ドルのコミッションを支払い、マーケットへの出入りの際に、10ドルのスリッページを被ったことでしょう。これにより、利益は1枚当たりで35ドル減少し、あるいは5枚では175ドルだけ減少することになります。この結果、勝者である彼の儲けは1825ドルだけになってしまうのです。
勝者は2000ドル儲けたと考えたのですが、実際の受取額は1825ドルでしかないのです。一方、敗者たちのグループは2000ドル損したと考えたのですが、実際は2325ドル損したのです。合算すると500ドル(2325ドル-1825ドル)がテーブルから吸い上げられてしまったのです。その大部分はフロア・トレーダーたちとブローカーたちのポケットに収まりました。こうして彼らは、あらゆるカジノや競馬場関係者が望むべくもない、はるかに大きな分け前に預かっているのです!
その他の支出もまたトレーダーの金を食い荒らします。それには、コンピューターやデータのコスト、投資アドバイス・サービスの購読料、書籍代などが含まれます。それには、あなたが今読んでいる本書の代金も含まれます。これらすべてのコストは結局のところあなたのトレーディング資金から賄われているのです。
最低のコミッションのブローカーを見つけて、彼のことをタカのような目でよく監視しましょう。そして比較的、低頻度でシグナルを発し、なおかつ静かなときにマーケットに入ることを可能にするトレーディング・システムを設計するのです。