フィボナッチの活用例|US30で見るコロナショック後の上昇の目安を立てる
1.コロナショック後の上昇の目安を立てる
フィボナッチ比率を相場に応用したテクニカル分析として、フィボナッチ・リトレースメントやフィボナッチ・エクスパンションは、多くのトレーダーに用いられています。前者はトレンドの押し目や戻りを探るために、後者はトレンドの進む先の目標を探るために用いられるのが一般的です。この記事では、そんなフィボナッチの活用例を見ていきます。
NYダウ(US30)の長期的な値動きを振り返ると、右肩上がりの上昇を継続しています。とはいえ、短期的には大きく値下がりすることもあります。実際、2020年2月末からのコロナショックでは、約29,000ドルから約18,000ドルまで下落しました。ここで、コロナショックからどこまで回復すると予測できるか、フィボナッチ・エクスパンションを引いてみましょう。
下画像はNYダウの日足チャートです。コロナショックからの反転局面の初動を見ると、A-Bで一気に大きく上昇し、B-Cでいったん調整が入って押し目を作りました。このA-B-Cにフィボナッチ・エクスパンションを当てます。
すると、61.8%ラインが約23,300ドル、100.0%ラインが約25,000ドル、161.8%ラインが約27,800ドルで、いずれも順調にクリアしていることが分かります。では、底値から161.8%の水準までを一つの波動として考え、フィボナッチ・エクスパンションを引き直してみましょう。
すると61.8%ラインは約30,400ドル、100.0%ラインは約34,000ドルとなります。これらは既に通過した価格水準です。そしてこの上には、161.8%ライン(約39,800ドル)があります。
2.押し目の深さは?
続いて、コロナショック後の上昇相場の性質を探るために、フィボナッチ・リトレースメントを使います。まず、初動となった上昇波動A-Bに対してフィボナッチ・リトレースメントを引き、B-Cの押しがどれくらいの深さであったかを確認してみましょう。下画像の通り、初動の押しは38.2%ラインでした。
それより一回り大きい波動A-Dに対してフィボナッチ・リトレースメントを引いた場合はどうかというと、23.6%ライン過ぎまで押して上昇トレンドに回帰しています。
フィボナッチ・リトレースメントは起点と終点をどこに設定するかによって目安となる水準は変わりますが、いずれかのラインで反発する傾向があります。その傾向を利用するためには、平均足が相性抜群です。例えばフィボナッチ・リトレースメントのライン付近で平均足が陽転すれば、上昇へ転換しそうだと判断できます。
3.週足レベルで見てみよう
続いて、NYダウの週足チャートを用いて値幅観測をしていきます。まずは、コロナショック後の最初の波動A-B-Cにフィボナッチ・エクスパンションを引いてみましょう(赤)。そしてもう一回り大きな波動A-D-Eにも引きます(青)。
最初に引いたフィボナッチ・エクスパンション(赤)の161.8%ラインと、次に引いたフィボナッチ・エクスパンション(青)の100.0%ラインのように、重複している箇所があることが分かります。このようなポイントは非常に重要で、有力な目標候補となります。なお、目標到達後には同水準でもみ合いながら、次の方向性を探る展開になる傾向があります。
4.下げ幅は推測できた?
コロナショックによる下げ幅は、フィボナッチ・リトレースメントの応用(100%を超えた数値を用いる)により推測することができました。直前の上昇波動にフィボナッチ・リトレースメントを引き、100%を超えるラインに注目します。この場合は261.8%ラインの手前で、反発しているのが分かります。
これを平均足に切り替えるともっと分かりやすく、261.8%ライン付近での陽転が反発上昇を示唆していました。
このように100%を超える数値を活用できるのも、フィボナッチ・リトレースメントの魅力です。暴落が起こった際などに、下げ幅の目処を知ることができます。
本記事の監修者:平野朋之氏
ネット証券で、FX業務全般、自己売買部門のディーラー、投資情報室の情報発信、セミナー講師などの業務に携わる。現在は独立して株式会社トレードタイムを設立。マーケット情報の発信や投資教育を行うかたわら、オリジナル手法での自己売買も精力的に行う。
フィボナッチ・リトレースメントが示す各ラインで反発せずに押し目が深くなり、あるいは反発しても高値も更新できないようならば、相場の転機であるという予測を立てることができます。
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