原油・石油の基礎

原油の価格指標(ドバイ原油、オマーン原油、WTI原油、ブレント原油)の特徴を解説


1.ドバイ原油


ドバイ原油とは、アラブ首長国連邦(UAE)の構成首長国の一つであるドバイで産出されている原油です。仕向地の制約がないことから取引に便利な原油として絶対値価格でのスポット取引が活発に行われています。

そのスポット価格は、OPECが設定するバスケット価格にも採用される(最近の新バスケットではアブダビのマーバン原油に取って替わられた)ほか、中東産原油の価格指標となっています。ドバイ原油のAPI度は約31度で中質原油に分類され、硫黄分は約2%です。


2.オマーン原油


オマーン原油とは、中東のオマーンで産出されている原油です。ドバイ原油よりも埋蔵量が多く、比較的産出量が安定しており、仕向地の制約を受けないことから、ドバイ原油とともに中東産原油の価格指標となっています。オマーン原油は、API度が約34度で中質原油に分類され、硫黄分が約2%です。


3.WTI原油


WTI原油とは、米国テキサス州沿岸部の油田で産出されている原油の総称です。WTI原油は、NYMEX(New York Mercantile Exchange:ニューヨーク商業取引所)に1983年から上場されたLight Sweet Crude Oil(軽質低硫黄原油)の受渡供用品の代表的なものです。

同市場は、石油先物取引としては世界最大の出来高を有するため、北米のみならず世界の指標油種として利用されています。NYMEXの受渡しは、テキサス州に隣接するオクラホマ州のクッシングで行われるため、受渡場所の混雑状況により価格が影響を受けることもあります。

WTI原油は、API度が39度以上と超軽質で、硫黄分も0.2%程度と少なく良質です。また消費地に近いことから、ドバイ原油やオマーン原油よりも一般的に高値で取引されています。

なお、サウジアラビアやクウェートは、2010年1月から、米国向けの原油輸出における価格フォーミュラを改訂し、米国向け原油輸出価格を従来のWTI原油のスポット取引価格連動から、ASCI(Argus Sour Crude Index:米国メキシコ湾岸地域で取引される中質マーズ原油、ポセイドン原油およびサザン・グリーンキャニオン原油の加重平均価格)連動に変更しました。

この背景として、これらの油種は中東産原油同様、硫黄分の多い中質原油であり、硫黄分の少ないWTIよりも近い性状であること、またこれら3油種のスポット取引は米国で最も活発に取引されている原油であることから、より現物原油の需給を反映すると考えられたことなどが挙げられます。

さらに、3油種の生産地が分散していることから、局地的な自然災害などの影響が緩和されるという点も考慮されたものと思われます。マーズ原油は通常、WTIよりも割安に評価される傾向にあり、今後の米国向け中東産原油の価格形成に一定の影響があるといわれています。


4.ブレント原油


ブレント原油とは、北海油田・英国領海北部のブレント油田で産出されている原油です。IPE(現ICE Futures Europe)に1988年から上場されています。ブレント原油は欧州向け原油の指標とされ、NYMEXのWTI原油と並んで、世界の原油市場の一角を形成しています。

1973年より石油価格の配信を行うエネルギー関連情報の主要な配信社であるプラッツは、ブレント原油、フォーティーズ原油、オゼバーグ原油、エコフィスク原油およびトロール原油の代替受渡しを認めたBFOE(Brent/Forties/Oseberg/Ekofisk/Troll)条件のブレント原油の取引をアセスメント価格の対象としています。ICE Futures Europeのブレント原油先物の決済価格となるICE Brent Indexも、BFOEの平均価格となっています。

ブレント原油はAPI度が約38度、硫黄分が0.38%です。質的にはWTI原油とドバイ原油やオマーン原油の間に位置付けられています。


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本記事の監修者・佐藤りゅうじ


1968年生まれ。1993年米大卒業後、1995年2月株式会社ゼネックス入社。アナリストとしてマクロ経済分析をはじめ、原油、天然ゴム、小麦などの商品市場、また為替市場、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年1月エイチスクエア株式会社を設立。

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