原油価格の推移をオイルショックから新型コロナの影響まで詳しく解説
1.1970年~90年代の原油価格
1970年代前半の原油価格は2~3ドルで安定していましたが、1973年10月の第四次中東戦争の勃発を受けて、OPEC(石油輸出国機構)が原油の公示価格をそれまでの約4倍となる11.65ドルに引き上げたことにより高騰(第一次オイルショック)しました。また、1970年代後半から1980年にかけては、OPEC原油価格の引き上げ(第二次オイルショック)やイラン革命、イラン・イラク戦争の勃発などにより上昇しました。
その後、1980年台半ばまでは、30ドル前後で安定していました。ただ、高価格を背景とした原油需要の減退や非OPEC諸国の増産などにより供給過剰となる中で、1986年、サウジアラビアがスイング・プロデューサーとしての役割をやめると共に、実質的な値引き販売であるネットバック販売を開始し増産に転じたことで、10ドルの水準まで急落しました。
それ以降は、イラクがクウェートに侵攻した時期を除き、90年代を通じて10~20ドル近辺で推移していました。97年末のOPEC増産決議と翌年のアジア経済危機により、原油価格は10ドル近くまで再び下落しましたが、OPECはプライスバンド(22~28ドル)の採用や非OPEC産油国との協調減産で市況を立て直しました。
画像1/原油価格の推移
2.2000年以降の原油価格
2000年代に入ると、2001年9月の米同時多発テロの影響による石油需要減退で一時的に下落する曲面もありましたが、その後は上昇を続ける展開となりました。要因としては、世界的な金融緩和を背景とした原油への投機資金の流入、中国の経済成長による石油需要の急増、ハリケーン「カトリーナ」による米国メキシコ湾岸の生産停止、さらにイラク戦争の勃発など国際情勢の悪化などがあり、2008年7月にはNY原油期近は147.27ドルの史上最高値を記録しました。
その後、価格高騰に対する警戒感と、リーマン・ショックによる世界経済の落ち込みなどにより暴落しました。しかし、「アラブの春」と呼ばれる中東・北アフリカの民主化運動やイランの核兵器開発疑惑、シリアの政情不安、ロシア・ウクライナ情勢の緊張激化といった地政学的リスクの高まりを受けて、100ドル前後の水準まで相場が押し上げられました。
それから米国のシェール・オイル増産や、新興国の経済成長減速による需給緩和を背景に急落し、2015年にかけては一段と下落しました。また、経済制裁解除に伴うイランの増産観測による供給過剰や、中国株式市場の急落を契機とした需要減退懸念の増大も加わり、2016年1月には26ドル水準まで急落しました。
その後は、OPECの減産合意や地政学的リスクなどを背景に上昇基調に転じ、2018年後半には70ドル台後半の水準に到達しましたが、供給過剰懸念や米中貿易摩擦の激化による世界的な需要減少懸念が上値を抑え、50ドル前後で推移しました。
2020年に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大と世界経済への影響が深刻化するにしたがい下げ足を速め、同年4月にはNY原油期近は史上初のマイナス価格になりました。ただ、世界各国で経済活動再開の動きが始まり、新型コロナウイルスワクチンに対する期待感から反転している状況となっています。
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本記事の監修者・佐藤りゅうじ
1968年生まれ。1993年米大卒業後、1995年2月株式会社ゼネックス入社。アナリストとしてマクロ経済分析をはじめ、原油、天然ゴム、小麦などの商品市場、また為替市場、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年1月エイチスクエア株式会社を設立。
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