EA(自動売買)の評価値の見方|特に注目すべき8つの項目を解説
MT5でのバックテストの項目
EAの有効性を知るためには、バックテスト(過去データでのシミュレーション)やフォワードテスト(実運用)を行い、その結果を評価する必要があります。下画像は、MT5でのバックテストのレポート(Strategy Tester Report)です。
画像1/MT5のStrategy Tester Report
このレポートに表示されるEAの評価指標について、ここでは重要なものを選抜し、その概要をまとめます。
① | 総損益 | テストの最終成績 |
---|---|---|
② | 残高最大ドローダウン
(証拠金最大ドローダウン) |
残高曲線において山から谷までの下落幅が最大になっている箇所の合計額(証拠金最大ドローダウンは、含み損益を加えて算出) |
③ | プロフィットファクター | 総利益が、総損失の何倍かを表す |
④ | リカバリーファクター | ドローダウンに対して、どれくらいの利益が期待できるかを表す |
⑤ | 期待利得 | 1回のトレードで期待できる損益額を表す |
⑥ | 取引数 | テストにおける総取引回数 |
⑦ | ショート(ロング) | 売りの取引回数とその勝率(買いの取引回数とその勝率 |
⑧ | 勝ちトレード(負けトレード) | 全ての取引に対する、勝ち負けの割合 |
また、グラフで表されるのは口座残高の推移です。これが右肩上がりだと残高が増えていることを意味し、どんな推移を経て勝っているのか負けているのかを一目で確認できます。
参考記事:MT4でバックテストを行うやり方は?できない場合の対処方法も紹介
注目すべき項目
より注目すべき項目について紹介します。一つの指標にこだわらず、総合的に評価するのがポイントです。
画像1/MT5のStrategy Tester Report
①総損益
全ての取引の結果を表します。「総利益(全ての勝ち取引の合計)―総損失(全ての負け取引の合計)」で求められます。単純に、ここがマイナスのEAは有効性がないものと判断できます。
②残高(証拠金)最大ドローダウン
残高を基準にするか、含み損益を加えた証拠金を基準にするかで大別されます。一般的には、残高の方を見ます。テスト期間において、残高が最大になったところからもっとも減少した局面の金額および下落率を表す指標です。
MT5のレポートでは、最大ドローダウンは金銭単位、相対ドローダウンはパーセント単位です。また、絶対ドローダウンという項目もあり、こちらは初期入金額からの下落の最大幅を表します。実運用する場合、この最大ドローダウン規模の下落は、起こり得るものとして想定する必要があります。
③プロフィットファクター
PF (Profit Factor)とも呼びます。勝ち(総利益)が、負け(総損失)の何倍かを表す指標で、1.0が損益分岐点です。1.0よりも数値が大きければ勝っていることを、小さければ負けていることを示します。
注意点として、PFが大きければ良いというわけではありません。その場合は過剰最適化(過去データに合わせすぎたあまり、実運用に有効性がないこと)の可能性を疑う必要があるため、フォワードテストでの検証が必要になります。参考までに、単一ポジション保有タイプのEAの場合、PFは1.3~2.0程度が適正な範囲だといえます。
④リカバリーファクター
総損益と最大ドローダウンの比率であり、「総損益÷最大ドローダウン」で求められます。回復率とも呼ばれ、リスク(ドローダウン)に対してどれだけのリターン(回復)が期待できるかを示す指標です。
この数値が大きいほど、より少ないリスクで大きな利益が得られる可能性があります。例えば、1年間のテスト期間に対して1.0という数値ならば、ドローダウンが発生してから1年かけて回復できるということを意味します。適正な目安は、1年間のテストなら1.0以上、10年間のテストなら10.0以上です。
⑤期待利得
「総損益÷総取引数」で求められる、1トレードあたりで期待できる損益額です。トレードに要する時間によって数値の水準は異なり、短時間ほど数値は小さく、長時間ほど数値は大きくなります。
スキャルピングタイプは1~3pips、デイトレ-ドタイプは2~5pips、スイングトレードタイプは3pips以上が目安となります。この数値について、裁量トレードの基準で考えると小さく感じますが、EAではこれくらいが目安となります。
⑥取引数
文字通り、取引の回数を意味します。この取引数(試行回数)が多いほど、テストの信頼度が増すという意味において注目する必要があります。取引数が少なすぎる場合は、優位性があるとは言い難いところがあります。
⑦ショート(ロング)
売り取引(および買い取引)の回数と勝率を表します。売りと買いのロジックが同じ場合、どちらかに偏りがあるよりも、同程度の回数の方が好ましいです。
⑧勝ちトレード(負けトレード)
全てのトレードに対する、勝ち負けの割合です。一般的な感覚でいうと勝率が高い方が優秀なものであると考えがちですが、EAの売買ロジックによって適正な勝率というものがあるので、一概にどれくらいが良いとはいえません。勝率そのものよりも、「勝率×平均勝ちトレード」と「負率×平均負けトレード」を比較し、前者が後者を上回っていれば優秀だという判断ができます。
本記事の監修者・Trader Kaibe(@K_FLASHES)
慶応義塾大学法学部卒業後、国内の証券会社に入社。1986年から14年間以上にわたり、債券現物・先物のディーリングを担当する。債券市場のホームページの草分け
FXトレード歴は15年(2021年現在)。世界でも有名なFXトレード大会『ロビンスカップ』で、FXトレードの経験と本職の研究開発ノウハウを生かして作った自作自動売買だけで準優勝。 投資雑誌掲載、ラジオ日経出演、投資戦略EXPO登壇など、各種メディアでFX自動売買の良さを発信中。
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