米国CPI上昇で市場が動揺|今週はFOMC議事録等に注目 OANDAラボ-マーケット最新情報(2021年5月17日)
米国消費者物価指数が市場予想を大幅に上回り、警戒感強まる
先週は水曜日に発表された米国の消費者物価指数が前年比+4.2%と市場予想を大きく上回ったことで、 米国の金融緩和縮小(テーパリング)の前倒しの可能性が意識され、米国債利回りが上昇、FX市場ではドル買い、株式市場は大幅下落となりました。
しかし、その後、下落が一服した後は、週末に発表された米国小売売上等が冴えない結果となったことで、金融緩和縮小観測が後退したことを受けて巻き戻しが強まり、米国債利回りは低下、FX市場ではドル売り、株式市場は反発地合いが強まっています。
【ドルインデックス、S&P500、米国10年債利回りの動き】
今後はこの消費者物価指数に関するFOMC関係者の評価に注意が必要となりそうです。パウエルFRB議長はこれまで、物価の上昇は一時的なものとし、容認する姿勢を見せていましたが、消費者物価指数がエコノミストの予想を大幅に上回る結果となったことで、金融緩和の縮小を早めることを検討するのか、これまで通り、物価上昇は一時的なものとの評価を維持するのかで市場が大きく揺さぶられる可能性が考えられそうです。
【米国の消費者物価指数とブレイクイーブンインフレ、政策金利の推移】
【残存期限別の米国債利回りの推移】
出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY
【3Dグラフで見た米国債イールドカーブの推移】
出所:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY
ドル円のチャートと米国10年債利回りと日本10年債利回りの差を表示したチャートを比較すると、利回り差の変化との相関性を見出すことができます。
【ドル円と米国10年債利回り-日本10年債利回りの比較】
今週はFOMC議事録等に注目
今週は米国でFOMC議事録の公表が予定されています。テーパリングに関する議論に注目が集まり、金融緩和縮小を意識させるような内容となると米国債利回り上昇、株式市場下落、ドル買い圧力が強まる可能性が考えられるのに対し、テーパリングは時期尚早というような内容となると、米国債利回り低下、株式市場上昇、米ドル売りで反応する可能性が考えられそうです。ただし、消費者物価指数発表前の議論ということもあり、反応は限定的となる可能性も考えられそうです。
経済指標は、米国で製造業や住宅関連の経済指標の発表が予定されています。最近の傾向では、個々の経済指標のインパクトは限定的と考えられますが、偏った結果が続くと金融緩和縮小に関する思惑につながり、市場に影響が出てくる可能性も考えられそうです。
日本ではGDPや消費者物価指数が予定されています。特に消費者物価指数は物価の弱さが目立つような結果となると、物価上昇基調にある国との差が意識され、円売り地合いを後押しする材料となりそうです。
このほか、英国の消費者物価指数、オーストラリアの雇用統計等に注目が集まり、発表後にそれぞれの国の通貨を揺さぶる材料となりそうです。
主要通貨の強弱
先週は週明けから上昇が続いたポンドが一番強い通貨となったほか、消費者物価指数が市場予想を大幅に上回る結果となった米国のドル、カナダドルが強い推移となったのに対し、豪ドル、円、NZドルが弱い推移となりました。
【先週の主要8通貨の通貨別の騰落率】
直近30日間の主要通貨の通貨の強弱チャートを見ると、引き続き、円の弱さが目立つほか、米ドルも依然として弱い状態が続いています。これに対し、カナダドル、スイスフラン、ポンドが比較的強い推移となっています。
【直近30日間の主要8通貨の通貨の強弱チャート】
直近30日間の株価指数の変化率
米国市場
先週の米国株式市場は消費者物価指数が市場予想を大幅に上回る結果となったこともあり、下押しが強まりましたが、下落が一段落後は小売売上高等が冴えない結果となり金融緩和縮小観測が後退したこともあり、週末にかけては反発に転じています。
欧州市場
欧州の株価指数も米国消費者物価指数ショックを受けて下押しが強まったものの、終盤にかけては反発に転じています。
アジア・オセアニア市場
先週のアジア・オセアニアの株価指数も下押しが強まった後、週末にかけては反発に転じてはいるものの、米国や欧州の銘柄に比べると、今のところ、戻りが鈍い銘柄が多いようです。
主要銘柄の相関性分析
先週の主要なドルストレートの銘柄の相関性を見ると、前週に続き、多少の強弱はあるものの、対米ドルで主要通貨は相関性の高い動きとなっていたのが確認できます。
【先週の主要ドルストレート通貨ペアの相関性】
先週はドル円とクロス円はドル円とカナダドル円で相関が高かったほか、ユーロ円、ポンド円等でも比較的相関性の高い動きとなりましたが、豪ドル円やNZドル円では逆相関の動きとなり、円は対主要通貨で動きがバラバラであったのが確認できます。クロス円同士を見ても、ユーロ円とスイスフラン円等の相関性は高いものの、その他は相関性を見出しにくい通貨ペアが多いようです。
【先週のドル円、クロス円の相関性】
先週の主要通貨と米国株価指数(ここでは代表的なUS500との相関性を表示しています)の相関性を見ると、株価指数と米ドルが逆相関の関係となったほか、株価指数とクロス円では、豪ドル円の相関性が高いものの、その他との相関性は見出しにくく、株式市場と米ドルの相関性を見出すことはできても、円との相関性を見出すことは難しい状況が続いています。
【先週の主要銘柄と米国株価指数の相関性】
OANDA、先物市場のポジション、主要銘柄の値動き
FX
米ドル/円(USD/JPY)
先週のドル円は序盤は上値の重い推移となった後、米国消費者物価指数の結果を受けて上昇となりましたが、週末にかけてはジリジリと下押しする動きとなりました。
OANDAのオープンポジションは、大きな流れでは方向感を見出しにくい動きが続いていることもあり、売買のバランスは比較的均衡する中、直近の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションが少し増えている状況です。
今のところ偏りがあまり大きくないということもあり、鈍い動きが続く可能性も考えられますが、109円台で構築されたポジションが多く、109円台を上下のいずれかにしっかりと抜ける動きとなると、苦しくなったポジションの損切りを絡めて、方向感が出てくる可能性も考えられそうです。
【USD/JPYの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の円の通貨先物ポジションは、買いポジション、売りポジションがいずれも少し減少となり、ネットすると円売りポジションの比率が少し増加となりました。前週までの円売りの減少傾向が一段落しており、今後も売り優勢な状況が続くか、再度、売り比率の減少傾向が続くかを見守りたいところです。
【投機筋の通貨先物市場の円のポジションの推移(最終更新日2021/5/11)】
ユーロ/米ドル(EUR/USD)
先週のユーロドルは上値の重い推移となりましたが、終盤には反発に転じる動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、引き続き高値圏で推移しているということもあり、売りポジションの比率が高い中、その多くが含み損を抱えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
4時間足チャートを見ると、底堅い推移が続く中、安値を結んだライン付近でサポートされる動きが続いており、今週もこのラインや直近のサポート水準を守れるか等に注目しながら、上昇基調が続くかに注目したいです。
【EUR/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の通貨先物市場のユーロのポジションは、前週に続き、買いポジション、売りポジションが共に増加となり、ネットすると買いポジション比率が微増となりました。
このところ、ユーロ買いポジションがジリジリと増加しており、今後も増加傾向が続くかを見守りたいです。
【投機筋の通貨先物市場のユーロのポジションの推移(最終更新日2021/5/11)】
ポンド/米ドル(GBP/USD)
先週のポンドドルはスコットランドの選挙結果を受けて売りが強まる可能性が指摘されていましたが、ポンド買いが続き、1.41台に乗せる動きとなりました。その後は米国消費者物価指数の結果を受けて下押しするものの、週末にかけて再度、上値を探る動きに転じています。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買ポジション比率の偏りは少ない中、高値圏で推移していることもあり、含み損を抱えた売りポジションが多い状況が続いており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
【GBP/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点における投機筋のポンドの通貨先物市場のポジションは買いポジション、売りポジションがいずれも少し増加となり、ネットすると買いポジション比率が増加となりました。
依然として買いポジションが優勢な状況が続いてはいますが、伸び悩む状態が続いており、今後の変化を見守りたいところです。
【投機筋の通貨先物市場のポンドのポジションの推移(最終更新日2021/5/11)】
豪ドル/米ドル(AUD/USD)
先週の豪ドルは上値の重い推移となり、前週の上昇分を吐き出すような動きとなった後に反発に転じています。
OANDAのオープンポジションを見ると、上下に振れる方向感の鈍い推移が続いているため、偏りはそれほど大きくないですが、先週の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションが比較的多く、上昇した水準では利益確定の売りが上値を圧迫、安値を切り下げる動きとなると損切りの売りが増え、上値の重い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
【AUD/USDの4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
先週火曜日時点の投機筋の通貨先物市場における豪ドルのポジションは大きな変化はありませんが、ネットすると買いポジション比率が少し上昇となりました。引き続き、売買の偏りはほとんどない状態が続いていますが、今後、売買いずれにポジションが傾いていくかに注目したいです。
【投機筋の通貨先物市場の豪ドルのポジションの推移(最終更新日2021/5/11)】
CFD
米国S&P株価指数500(US500)
先週のUS500は序盤は上値の重い推移が続いた後、反発に転じ、下落分の7割程度を回復する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買比率の偏りは少ないものの、直近の反発により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すこともできそうです。
大きな下落となった後の動きということもあり、反発がどの程度続くか、下押しの際は直近のサポート水準を守れるか等に注目しながら、方向感を探っていきたいところです。
【US500の4時間足チャート】
表示しているインジケーター:OANDA_Orderbook3、OANDA_Multi_Parabolicの日足、OANDA_Multi_RSIの日足
S&P500の先物市場における投機筋のポジションを見ると、買いポジションの比率がやや多い状態が続いていますが、、依然として、売買の偏りの少ない状況です。今後、ポジションの偏りが出てくるのかを見守りたいです。
【投機筋の先物市場のS&P500 consolidatedのポジションの推移(最終更新日2021/5/11)】
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