移動平均線とは|基本的な見方や活用方法・期間設定の目安などを解説
移動平均線とは、一定期間の価格を平均し、チャート上に折れ線グラフで表示したインジケーターです。
FX取引を含めたあらゆる相場のチャート分析において、基本的なインジケーターの1つとして広く用いられています。
移動平均線には様々な種類があり、種類ごとに読み取れる情報が異なります。
また、実際に活用する上では、各種取引ツールへの設定方法や、期間設定の目安なども理解しておくことが重要です。
本記事では、そのような移動平均線の種類や設定方法、期間の目安などを解説します。
目次
- 1.移動平均線とは
- 2.移動平均線の種類
- 3.移動平均線の見方
- 4.移動平均線の活用方法
- 5.移動平均線の期間設定の目安
- 6.移動平均線を取引ツールで設定する方法
- 7.移動平均線に関するQ&A
- 8.【まとめ】移動平均線とは|基本的な見方や活用方法・期間設定の目安などを解説
移動平均線とは
ここでは、移動平均線の概要について、以下の内容に分けて説明します。
- ・移動平均線の意味
- ・移動平均線の計算方法
移動平均線の意味
移動平均線とは一定期間の終値を平均し、チャート上に折れ線グラフで描画するインジケーター(指標)です。
英語では、Moving Average(MA)と訳します。
出典:TradingView
上図の通り、移動平均線はチャート上に折れ線グラフのみを表示する、シンプルな指標です。
シンプルで使いやすいことから、多くの投資家に用いられています。
移動平均線の計算方法
移動平均線の計算式はとてもシンプルで、ある一定期間をn日間として、n日間の終値を平均するだけです。
例えば50日間移動平均線であれば、過去50日間の終値を平均したものがチャート上に表示されます。
より具体的な計算方法は、移動平均線の種類によって異なります。
単純移動平均線(SMA)の場合、下図の要領で計算と描画を行います。
移動平均線の種類
移動平均線には様々な種類がありますが、主な3種類を一覧にすると以下の通りです。
- ・単純移動平均線(SMA)
- ・指数平滑移動平均線(EMA)
- ・加重移動平均線(WMA)
この3種類を実際のチャートで表示すると、下図の通りです。
出典:TradingView
上の図では、3種類とも全て同じ「50日」の期間で移動平均線を表示しています。
同じ期間でもそれぞれの動きが異なり、どれを採用するかは自身で選ぶ必要があります。
ここでは、それぞれの平均線の特徴を解説していきます。
単純移動平均線(SMA)
単純移動平均線は、一定期間の終値を平均化しただけの、シンプルな移動平均線です。
一般的に移動平均線という場合、この単純移動平均線を指します。
英語ではSimple Moving Average(SMA)と訳します。
シンプルでわかりやすく、相場の大きな方向感を探る場面で注目したい移動平均線です。
単純移動平均線(SMA)とは?計算方法や他の移動平均線との違いも紹介指数平滑移動平均線(EMA)
指数平滑移動平均線は、過去の価格よりも直近の価格に比重を置いて算出された移動平均線です。
英語ではExponential Moving Average(EMA)と訳します。
直近の価格が重視されているため、相場の変化に素早く反応するのが特徴です。
ただし、反応が早い分ダマシも発生しやすいため、注意が必要です。
指数平滑移動平均線の計算方法や他の移動平均線との違いを紹介加重移動平均線(WMA)
加重移動平均線とは、指数平滑移動平均線(EMA)と同じく、直近の価格に比重を置いて算出された移動平均線です。
英語では、Weighted Moving Average(WMA)と訳します。
EMAとの違いは「直近の価格をどれだけ重視するか」です。
EMAは、WMAよりも直近の価格を重視しています。
直近の価格を重視する度合いを、不等式で表現すると以下の通りです。
- 指数平滑移動平均線(EMA)>加重移動平均線(WMA)
相場の変化に素早く反応するという特徴も、WMAとEMAは共通します。
EMAでは反応が早すぎると感じた場合に、WMAを用いるのが有効です。
加重移動平均線(WMA)とは?計算方法や単純移動平均線(SMA)との違い移動平均線の見方
移動平均線を用いると、様々な見方から相場を分析できます。
ここでは、以下の見方による分析方法を解説します。
- ・移動平均線と価格の位置
- ・移動平均線の傾き
- ・移動平均線の乖離率
移動平均線と価格の位置
移動平均線は一定期間の平均水準であるため、移動平均線と価格の位置関係から相場を分析できます。
移動平均線よりも価格が上にあれば上昇基調、下にあれば下落基調と判断します。
出典:TradingView
移動平均線の傾き
移動平均線の傾きによる分析では、「上向きなら上昇基調、下向きなら下落基調」と判断します。
また、傾きがない場合は方向感のないレンジ相場(もみ合い)と判断できます。
出典:TradingView
移動平均線の乖離率
移動平均線の乖離率とは、「移動平均線と価格がどの程度離れているか」を示す数値です。
移動平均線と価格は、ある程度乖離すると近づく傾向があります。
このため、乖離率が高くなるほど相場がピークを迎え、反転する確率が高いと考えられます。
逆に乖離率が低ければ、まだ相場が反転する確率は低いと考えられます。
出典:TradingView
実際の相場は、必ずしもこうした乖離率のセオリー通りに動くわけではありません。
しかし、現時点のトレンドがどの程度続くかを推測する上で、1つの判断材料となります。
移動平均線の活用方法
移動平均線は、短期・中期・長期といった複数の種類を組み合わせることで、様々な分析を行えます。
ここでは、その分析の中でも広く用いられる、以下のチャートパターンについて解説します。
- ・ゴールデンクロス(買いサイン)
- ・デッドクロス(売りサイン)
- ・グランビルの法則
ゴールデンクロス(買いサイン)
ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が中期(長期)移動平均線を下から上に突き抜ける現象です。
この現象が発生すると価格が上昇しやすく、買いサインとされます。
出典:TradingView
上図ではゴールデンクロスの発生後、価格が継続的に上昇しています。
常にこのように上昇するとは限りませんが、他の指標と組み合わせて分析を行うことで、予測の精度をさらに高められます。
ゴールデンクロス・デッドクロスとは|買い時・ダマシ対策・注意点を解説デッドクロス(売りサイン)
デッドクロスとは、短期移動平均線が中期(長期)移動平均線を上から下に突き抜ける現象です。
この現象が発生すると価格が下落しやすく、売りサインとされます。
出典:TradingView
上図ではデッドクロスの発生後、価格が継続的に下落しています。
ゴールデンクロス同様、常にこのように下落するとは限りませんが、他の指標を組み合わせて分析することで、予測の精度をさらに向上させられます。
ゴールデンクロス・デッドクロスとは|買い時・ダマシ対策・注意点を解説グランビルの法則
グランビルの法則とは、移動平均線の向きや乖離などから相場を分析する理論です。
ジョゼフ・E・グランビルが考案したものであり、単純移動平均線とローソク足のパターンを8つに分類しています。
その8つのパターンを図でまとめると、以下の通りです。
緑の数字のパターンは「買いシグナル」、グレーの数字のパターンは「売りシグナル」です。
それぞれがどのようなパターンかをまとめると、以下の通りです。
【買いシグナル】No. | パターン(条件) |
---|---|
① | 移動平均線が下落後、横ばい、または上向きに転じた時に、価格が移動平均線を下から上に抜けている |
② | 移動平均線が上向きの時に、一旦価格は下落し移動平均線を下回るも、再度上昇し移動平均線を下から上に抜けている |
③ | 移動平均線が上向きの時に、一旦価格は移動平均線の手前まで下落するも、移動平均線を下抜けることなく再度上昇している |
④ | 価格が移動平均線の下に大きく乖離している |
No. | パターン(条件) |
---|---|
⑤ | 移動平均線が上昇後、横ばい、または下向きに転じた時に、価格が移動平均線を上から下に抜けている |
⑥ | 移動平均線が下向きの時に、一旦価格が上昇し移動平均線を上回るも、再度下落し移動平均線を上から下に抜けている |
⑦ | 移動平均線が下向きの時に、一旦価格が上昇するも、移動平均線の手前で止まり再度下落している |
⑧ | 価格が移動平均線の上に大きく乖離している |
用いられる移動平均線の日数は「200日」、ローソク足は「日足」という組み合わせが一般的です。
グランビルの法則については、以下の記事で詳しく解説しています。
グランビルの法則とは?8つの売買パターンや注意点などを紹介移動平均線の期間設定の目安
移動平均線の期間設定の目安を「短期・中期・長期」に分けてまとめると、以下の通りです。
短期移動平均線 | 5日・10日・14日・15日・20日・21日 |
中期移動平均線 | 50日・60日・75日 |
長期移動平均線 | 100日・200日 |
これらの期間設定はあくまで目安ですが、多くの投資家に用いられている設定です。
相場は投資家心理によって動くため、多くの投資家が用いている設定であれば、機能しやすいといえます。
期間設定についてのより詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
移動平均線の期間設定値は何が最適?MT4やMT5への設定方法も紹介移動平均線を取引ツールで設定する方法
ここでは、移動平均線を取引ツールに設定する方法を、以下の通りツールごとに説明します。
- ・MT4(メタトレーダー4)への設定方法
- ・MT5(メタトレーダー5)への設定方法
- ・TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
MT4(メタトレーダー4)への設定方法
MT4に移動平均線を設定する場合、以下のメニューを順番に選択していきます。
- ・挿入
- ・インディケータ
- ・トレンド
- ・Moving Average
以下のGIF動画は、実際の画面を操作しているものです。
出典:MT4
MT5(メタトレーダー5)への設定方法
MT5に移動平均線を設定する場合、以下のメニューを順番に選択していきます。
- ・挿入
- ・インディケータ
- ・トレンド系
- ・Moving Average
以下のGIF動画は、実際の画面を操作しているものです。
出典:MT5
TradingView(トレーディングビュー)への設定方法
TradingViewに移動平均線を設定する手順は、以下の通りです。
- ・「インジケーター」を選択
- ・検索窓に「SMA」と入力
- ・「SMA(単純移動平均)」を選択
以下のGIF動画は、実際の画面を操作しているものです。
出典:TradingView
指数平滑移動平均線は「EMA」、加重移動平均線は「WMA」と検索窓に入力し、それぞれを選択することで表示できます。
TradingViewについて詳しく知りたい方はこちら移動平均線に関するQ&A
移動平均線に関して、よくある以下の疑問について解説します。
- ・移動平均線の注意点はありますか?
- ・移動平均線のダマシを補うにはどうしたらいいですか?
移動平均線の注意点はありますか?
移動平均線では「ダマシ」が発生することもあります。
ダマシとは「売買サインと価格が逆行する現象」です。
出典:TradingView
上図では、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスの両方が発生しています。
しかし、最後に明確に下落するまでは、方向感がないレンジ相場となっています。
このようにレンジ相場では、ゴールデンクロスやデッドクロスなどの売買サインが機能しないケースもあるため注意が必要です。
移動平均線のダマシを補うにはどうしたらいいですか?
移動平均線のダマシを100%回避するのは難しいですが、ダマシを対策する方法はあります。
その方法は、他のインジケーターと組み合わせて使うことです。
移動平均線はトレンド相場を得意とする一方、レンジ相場を苦手とします。
レンジ相場を回避するためには、RSIやMACDなどのインジケーターを併用することが有効です。
複数のテクニカル指標を用いることで、より根拠を重ねた分析が可能となります。
【まとめ】移動平均線とは|基本的な見方や活用方法・期間設定の目安などを解説
移動平均線とは、一定期間の価格(一般的には終値)の平均を結んだ折れ線グラフのことです。
この線の向きや傾き、価格との乖離によって、トレンドの方向や強弱などを判断できます。
ゴールデンクロス・デッドクロスなどの代表的なチャートパターンも理解することで、テクニカル分析の精度をさらに高めることが可能です。
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