用語解説

ADP雇用統計とは|発表日時・推移・米国雇用統計との違いなどを解説


ADP雇用統計とは、米国の給与計算サービスなどを行う民間企業ADP(Automatic Data Processing)が発表する雇用報告リポートです。

米労働省労働統計局(BLS)が発表する雇用統計の2営業日前に発表されるため、雇用統計を補完するという意味で重要な指標と位置付けられます。

本記事では、ADP雇用統計の内容や見方、雇用統計との違いなどについて詳しく解説していきます。

ADP雇用統計とは

ADP雇用統計について、発表日時や内容、米国雇用統計との違いを解説します。

  • ・発表日時
  • ・内容
  • ・米国雇用統計との違い

発表日時

ADP雇用統計は、米労働省労働統計局(BLS)が主に毎月第一金曜日に発表する雇用統計の、2営業日前に発表されます。

発表時刻は22:15(日本時間)です。

※米国サマータイム期間は21:15(日本時間)に発表されます。

内容

ADP雇用統計とは、企業向け給与計算サービスを行う民間企業ADP(Automatic Data Processing)が全米2500万人以上(約50万社)の給与データを基に集計した雇用報告リポートです。

2022年8月より米スタンフォード大学のデジタル・エコノミー・ラボと共同で集計しています。

米国雇用統計との違い

米国雇用統計は行政機関による調査、ADP雇用統計は民間企業による調査です。

また、両者の違いは、サンプルデータと集計方法にあります。

米労働省労働統計局が発表する雇用統計は、全米の家計調査や事業所調査を基に集計します。

それに対して、ADP雇用統計は自社顧客の給与データを基に集計しています。

ADP雇用統計の見方

ADPのホームページを開くと、やや下方に次のグラフがあります。

ADP雇用統計の見方
出典:ADP Research Institute

このグラフの上に、次の4つのタブがあります。

  • ・National(全体)
  • ・Industry(業種別)
  • ・Establishment Size(企業規模別)
  • ・Region(エリア別)

最初に開かれている画面は「全体」です。

業種別・企業規模別・エリア別などのグラフは、タブを切り替えることで確認できます。

業種別
出典:ADP Research Institute

個別のグラフを開くと、上のように複数の線が表示されます。

ADP雇用統計の見方
出典:ADP Research Institute

上の赤枠部分には、それぞれの線の説明が記載されています。

1本だけ表示
出典:ADP Research Institute

任意の項目をクリックすると、上のグラフのようにその線だけを表示できます。

1本だけ消す
出典:ADP Research Institute

もう1回クリックすると「その線だけを消す」ことができます。

複数の線を消す
出典:ADP Research Institute

線を消すのは複数同時でもできるため、不要な線を消せば、必要な線だけを複数残せます。

詳細な数値を見る
出典:ADP Research Institute

グラフの線にカーソルを当てると、その年月の詳細な数値も見られます。

ADP雇用統計の推移

ADP雇用統計の推移について企業規模別、業種別、調査エリア別に紹介します。

  • ・企業規模別の推移
  • ・業種別の推移
  • ・調査エリア別の推移

企業規模別の推移

企業規模別の過去14年間(2010年~2024年8月調査日時点)の雇用者数の推移をグラフで見ると、全体的に右肩上がりの傾向が見られます。

企業規模別
出典:ADP Research Institute

2020年〜2022年頃はコロナショックによって数字が落ち込んでいますが、それ以降はコロナ禍以前と同等かそれ以上の勢いで上昇しています。

雇用者数が多い企業規模を上から順に並べると、以下の通りです。

  • ・50〜249人
  • ・1〜19人
  • ・20〜49人
  • ・500人以上
  • ・250〜499人

企業規模別では、50〜249人の企業が常に最も大きな雇用者数を示しています。

続いて1〜19人の企業、20〜49人の企業、500人以上の企業と続き、最も雇用者数の増加が少ないのは250〜499人の企業となっています。

全体的には、企業の規模にかかわらず雇用者数は増加傾向にありますが、特に中小企業(50〜249人の企業)が最も顕著な増加傾向にあります。

業種別の推移

業種別
出典:ADP Research Institute

業種別の雇用者数は、過去14年間で右肩上がりの業種と、横ばいの業種に分かれます。

右肩上がりの業種を上から順に並べると、以下の通りです。

Trade, transportation, and utilities 貿易・運輸・公共事業
Education and health services 教育・医療サービス
Professional and business services 専門職・ビジネスサービス
Leisure and hospitality レジャー・娯楽
Construction 建設

横ばいの業種を上から順に並べると、以下の通りです。

Manufacturing 製造業
Financial activities 金融・財務
Other services その他サービス
Information 情報サービス
Natural resources and mining 天然資源・鉱業

右肩上がりの業種は2020年のコロナショックで一時落ち込んでいます。

一方、横ばいの業種はコロナ禍の影響が小さかったことがわかります。

コロナ禍で最も落ち込んだ業種は4位の「レジャー・娯楽」で、次に落ち込んだ業種は1位の「貿易・運輸・公共事業」です。

調査エリア別の推移

調査エリア別の推移
出典:ADP Research Institute

調査エリアを、雇用者数の多い順に並べると以下の通りです。

South Atlantic 南部大西洋岸
Pacific 太平洋岸
East North Central 東北中部
Mid-Atlantic 中部大西洋岸
West South Central 西南中部
Mountain 山岳部
West North Central 西北中部
East South Central 東南中部
New England ニューイングランド

それぞれのエリアを地図上で表すと、下図の通りです。

各エリアの地図

1位の南部大西洋岸はワシントン特別区があり、エレクトロニクスベルトとして知られる、フロリダ州・オーランドなどの工業都市を抱えています。

2位の太平洋岸はシリコンバレーのあるカリフォルニア州・サンフランシスコと、航空産業が発展している同州・ロサンゼルス、同じく航空産業が発展しているワシントン州・シアトルの位置するエリアです。

3位の「東北中部」は自動車産業が盛んなミシガン州・デトロイトを抱えている地域です。

4位の「中部大西洋岸」は面積は小さいものの、ニューヨーク州を抱えていることで、上位に位置しています。

ADP雇用統計に関するQ&A

ADP雇用統計に関する、以下の疑問について解説します。

  • ・ADP雇用統計がFX市場に与える影響は何ですか?
  • ・ADP雇用統計は意味がないのですか?
  • ・ADP雇用統計は労働統計局の月次雇用報告を予測するものですか?

ADP雇用統計がFX市場に与える影響は何ですか?

FRBデュアルマンデート(Dual Mandate)として「物価の安定」と「雇用の最大化」を掲げています。

そのため、雇用指標の1つであるADP雇用統計の結果を受け、FRBの金融政策への思惑から、米国の債券市場や株式市場、為替市場などに影響を与える可能性があります。

ADP雇用統計は意味がないのですか?

ADP雇用統計は、米労働省労働統計局が発表する雇用統計の2営業日前に発表されるため、市場の注目が集まる傾向にありますが、サンプルデータや集計方法の違いから雇用統計と結果が異なる場合があります。

そのため、ADP雇用統計の結果をもって雇用統計を予想しても、精度は高くない可能性があります。

ただし、雇用統計のデータを補完するという意味で、重要な指標と位置付けられます。

ADP雇用統計は労働統計局の月次雇用報告を予測するものですか?

ADP雇用統計は、米労働省労働統計局(BLS)月次雇用報告を予測するものではありません。

ADPは民間企業向けに雇用管理サービスを提供しており、その顧客企業の雇用データを基にした推計を行っています。

ADP雇用統計は独立した指標であり、政府のデータを補完するものと位置付けられています。

とはいえ、米国の雇用統計、特に非農業部門雇用者数(NFP)との間には高い相関性があるため、ADP雇用統計は市場参加者にとって雇用統計の先行指標として重視されています。

ただし、ADP雇用統計とBLSの雇用統計は異なる方法でデータを収集しているため、必ずしも同じ結果になるわけではない点に注意が必要です。

【まとめ】ADP雇用統計とは|発表日時・推移・米国雇用統計との違いなどを解説

ADP雇用統計とは、米国の給与計算サービスなどを行う民間企業ADP(Automatic Data Processing)が発表する雇用報告リポートです。

ADPのホームページでは、企業規模別・業種別・調査エリア別の雇用統計の結果を詳細に確認できます。

ADP雇用統計は、米労働省労働統計局(BLS)が発表する雇用統計の2営業日前に発表されるため、雇用統計を補完するという意味で重要な指標と位置付けられます。

ただし、両者は異なる方法でデータを収集しており、結果が必ずしも同様になるわけではないため注意が必要です。

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