用語解説

ドルペッグ制とは|採用している国や地域やメリット・デメリットをわかりやすく解説


ドルペッグ制とは、自国通貨の価値を米ドルと連動させる制度のことです。

自国経済の安定化や発展を目的としています。

本記事では、ドルペッグ制の意味や、メリットなどについてわかりやすく解説します。

ドルペッグ制とは

まず、ドルペッグ制の意味や採用している国や地域について解説します。

  • ・意味
  • ・採用している国や地域

意味

ドルペッグ制とは、外国為替の分野で使われる用語で、自国通貨の価値を米ドルに連動させることです。

対米ドルの為替レートはおおむね固定化される一方、その他の通貨とは固定されません。

ペッグ制にはいくつかの種類があり、各国は自国の実情に応じて使い分けています。

採用している国や地域

ドルペッグ制を採用している国は新興国が多いです。

一方、OECD加盟国などは、一部を除いて変動相場制を採用する傾向にあります。

2022年に発行されたIMFの報告書によると、採用している国や地域の数は37で、全体の20%弱を占めます。

ドルペッグ制を採用する主な国と地域

・香港

・UAE

・カタール

・グレナダ

・サウジアラビア

・ドミニカ国

・バーレーン

為替相場制度の例

為替相場は、大きく2つに区別でき、さらに細かく分類可能です。

  • ・固定相場制
  • ・変動相場制

固定相場制

固定相場制とは、為替レートの変動を一定の範囲内で抑える制度のことです。

ペッグ制」と呼ばれることもあります。

以下はドルペッグ制を含めた、主な固定相場制の一覧です。

固定相場制 解説
ドル化

自国内で米ドルが流通し、自国通貨を持ちません。

または、自国通貨と米ドルが対等に扱われます。

カレンシーボード制

自国通貨と特定の外貨の為替レートを固定化します。

これを実現するために、自国が保有する外貨の量を上限として、国内通貨を発行します。

従来のペッグ制 自国通貨と外貨の交換レートを固定化し、わずかな価格変動を容認します。
通貨バスケット制 複数の外国通貨のまとまり(通貨バスケット)に対して、自国通貨との交換レートを固定化します。
クローリング・ペッグ制 自国通貨と特定の外貨の交換レートを固定化しつつ、交換レートを随時見直します。

固定相場制」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

変動相場制

変動相場制とは、為替レートを市場に任せて自由に変動させる制度のことです。

フロート制」と呼ばれることもあります。

以下は、主な変動相場制の一覧です。

変動相場制 解説
管理変動相場制 通貨当局が積極的に外国為替制度に介入し、為替レートを誘導します。
自由変動相場制

為替レートは市場が決定します。

通貨当局による介入は限定的で、特定の為替レート実現でなく安定化のために介入します。

変動相場制」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ドルペッグ制のメリット・デメリット

ドルペッグ制のメリット・デメリットについて解説します。

メリット

ドルペッグ制の主なメリットは以下の通りです。

  • ・為替レートの安定と経済の発展
  • ・インフレの沈静化

ドルペッグ制を採用すると、自国通貨と米ドルの交換レートがおおむね固定化され、為替レート変動を心配する必要がなくなります

為替差損益を考慮しない貿易が可能で、経済発展に寄与します。

また、インフレ率が高い国がドルペッグ制を採用すると、インフレ率が沈静化すると期待できます。

デメリット

ドルペッグ制のデメリットは、以下の通りです。

  • ・自国の判断で自由に金融政策を実行できない

ドルペッグ制を採用すると、自国通貨と米ドルの交換レートを固定しなければならず、自由な金融政策を実行できなくなります

自国と米国の景気循環が同一の場合、この問題は大きくありません。

自国も米国も不景気ならば、米国の金融政策が自国にも好影響をもたらすと期待できます。

しかし、自国と米国の景気循環が逆になる場合には、問題が生じます。

自国が不景気になるとき、本来ならば経済を刺激する金融政策を実施すべきですが、自由に実行できません。

景気回復には、通常よりも長い時間が必要な可能性があります。

ドルペッグ制に関するよくある質問

ドルペッグ制に関するよくある質問に回答していきます。

  • ・ドルペッグ制を廃止した国はありますか?
  • ・ドルペッグ制は米ドル以外に適応されることはありますか?

ドルペッグ制を廃止した国はありますか?

ドルペッグ制を廃止した国はいくつか存在します。

例えば、クウェートの自国通貨ディナールは、2007年5月にドルペッグ制を廃止し、通貨バスケット制に変更しました。

その他に、ナイジェリアのナイラ、中国の中華人民元、マレーシアのリンギットなどもドルペッグ制を廃止しています。

ドルペッグ制は米ドル以外に適応されることはありますか?

米ドル以外の通貨にペッグさせる例も珍しくありません。

IMFの報告書によると、ユーロとペッグさせている国の数は26です。

ユーロ以外にも、複数国の通貨やシンガポールドルとペッグしている国や地域が存在します。

ペッグ制を採用する主な国や地域 ペッグ対処位通過
デンマーク ユーロ
シンガポール 通貨バスケット(複数の国の通貨)
ブルネイ シンガポールドル

IMF加盟国全体のうち、ペッグ制を採用している国の割合はおよそ60%です。

【まとめ】ドルペッグ制とは|採用している国や地域やメリット・デメリットをわかりやすく解説

ドルペッグ制とは、外国為替の分野で使われる用語で、自国通貨と米ドルの交換レートを固定化する制度です。

インフレを沈静化させ、経済を発展させる効果を期待できる一方、自国の自由な金融政策を阻害するデメリットがあります。

ペッグ制は複数の分類が可能で、各国は自国の実情に沿う制度を採用しています。

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