用語解説

口先介入(くちさきかいにゅう)とは|意味・事例・よくある質問を解説


口先介入とは、政府や中央銀行等の関係者が実際の通貨の売買はせず、発言によって市場に影響を与えようとすることです。

自国通貨の価格を、通貨安または通貨高に誘導する目的で行われますが、効果は市場介入に比べて限定的になりやすい傾向があります。

本記事では、口先介入の意味や、過去の事例について詳しく解説します。

口先介入とは

ここでは、口先介入の一般的な意味と、FX市場での意味について詳しく解説します。

  • ・一般的な意味
  • ・FX市場での意味

一般的な意味

口先介入は、一般的に「政府や中央銀行等の関係者が実際に通貨の売買はせず、発言によって市場に影響を与えようとすること」を意味します。

自国通貨の相場に関するコメントで警戒感を示したり、市場介入を示唆したりすることで、市場を牽制し、通貨誘導します。

FX市場での意味

FX市場では、「外国為替相場の行き過ぎを是正するため、発言によって市場を牽制したり、通貨誘導したりすること」を意味します。

例えば、日本では円安水準が高まった際に政府が口先介入を実施し、円安の進行を抑えようとします。

口先介入によるメッセージには強弱があり、以下などが挙げられます。

下に行くほど強いメッセージとなります。

  • 「安定的に推移するのが望ましい」
  • 「急激な変動は望ましくない」
  • 「必要であれば適切な措置を講じる」
  • 「あらゆる措置を排除せず必要な対応を取る」
  • など

口先介入の事例

口先介入の事例について詳しく見ていきましょう。

  • ・2024年3月25日の神田財務官の発言
  • ・2024年4月11日の鈴木財務相・神田財務官の発言
  • ・2024年4月15日の神田財務官の発言

2024年3月25日の神田財務官の発言

2024年3月25日の神田財務官の発言
出典:TradingView

2024年3月25日の午前中に、口先介入がありました。

神田財務官は、円安傾向について「明らかに投機」「常に準備はできている」と、為替介入も辞さない姿勢を見せました。

当日の値動きは上のチャートの黄色部分で、発言の直後は円高ドル安方向に動いたものの、すぐに元の水準に戻っています。

最終的に、始値の151.31円に対して終値は151.42円と、一日を通してほぼ横ばいの価格で推移しました。

2024年4月11日の鈴木財務相・神田財務官の発言

2024年4月11日の鈴木財務相・神田財務官の発言
出典:TradingView

2024年4月11日午前、鈴木財務相・神田財務官により、2回の口先介入がありました。

まず朝の時点で神田財務官が「行き過ぎた動きにはしっかりと適切な対応を取りたい」という旨の発言をしています。

さらに午前のうちに鈴木財務相が「あらゆるオプションを排除することなく適切に対応していく」という旨の発言を行いました。

いずれも円安ドル高を牽制する発言であり、午前中は円高ドル安の方向に価格が動きました。

(チャートの黄色部分)

しかし、午後になると逆に円安ドル高が進行し、最終的に11日のドル円相場は34年ぶりの水準となる「1ドル=153円台前半」まで円安が進行しています。

2024年4月15日の神田財務官の発言

2024年4月15日の神田財務官の発言
出典:TradingView

2024年4月15日、神田財務省長官による口先介入が行われました。

発言は「日常的に、米国を含む主要国の財務官や中銀幹部と頻繁に連絡を取り合っている」というものです。

この発言は、15日以前になされてきた「断固たる措置」「あらゆる選択肢」などの発言と比較すると、円安を牽制する意思が弱いと受け取ることができます。

発言が報道されたのは15日の17時40分頃ですが、上のチャートの通り発言の前後の値動きを見ても、15日の口先介入はドル/円相場に大きな影響を与えていないと判断できます。

結果的に、この口先介入によって円安ドル高傾向が止まることはなく、15日は1ドル154円台目前の水準までドル高円安が進行しました。

口先介入に関するQ&A

口先介入に関して、よく見られる疑問点は以下のようなものです。

  • ・口先介入は意味があるんですか?
  • ・市場介入(為替介入)との違いは何ですか?
  • ・公表しない為替介入のことは何といいますか?

口先介入は意味があるんですか?

口先介入に市場参加者が反応し、一時的に相場の流れが変わることがあります。

ただし、実際に大規模な金額で売買を行う市場介入と比べると、効果は限定的です。

前述の通り、2024年4月に口先介入が行われていますが、一時的に円高で反応しているものの、円安の大きな流れは変わりませんでした。

また、口先介入が頻繁に行われると、効果が薄れていく傾向にあります。

市場介入(為替介入)との違いは何ですか?

口先介入は発言のみですが、市場介入は各国の政府や中央銀行等が実際に市場に資金の投入を行います。

また、市場介入には1つの国が行う単独介入と、複数の国が協力して行う協調介入があります。

大規模な資金が動く協調介入では、相場に長期的な影響を与えやすい傾向があります。

公表しない為替介入のことは何といいますか?

公表しない為替介入は、隠密介入もしくは覆面介入と呼びます。

通常の為替介入でも隠密介入でも、事前に公表されることはありませんが、介入後には財務省ホームページ内の「外国為替平衡操作の実施状況」のページで公表されます。

【まとめ】口先介入(くちさきかいにゅう)とは|意味・事例・よくある質問を解説

口先介入とは、政府や中央銀行等の関係者が実際の通貨の売買はせず、発言によって市場に影響を与えようとすることです。

自国通貨の相場に関するコメントで警戒感を示したり、市場介入を示唆したりすることで、市場を牽制し、通貨誘導します。

口先介入の効果は、市場介入と比較すると限定的になりやすい傾向があります。

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